澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

無難で穏やかだったゼレンスキー演説、私はこう聞いた。

(2022年3月23日)
 本日午後6時、注目のゼレンスキー・ウクライナ大統領の国会演説。オンラインで12分間のスピーチだった。激したところはなく、戦時下のリーダーの言とは思えない穏やかな内容。軍事につながる支援要請はなかった。安倍・プーチン関係についても、真珠湾攻撃も口にしなかった。ロシア軍の原発攻撃についての言及はあったが、核の脅威や核威嚇についての踏み込みは意外なほどに浅かった。あれもこれも、計算し尽くしてのことなのだろう。

 日本の国会での演説。当然全国に放映される。この機会をどう生かすべきか。ゼレンスキーは、なりふり構わぬ軍事支援要請ではなく、戦争終結後までを見据えて日本からの好感獲得を第一目標としたようだ。ところが、その「日本」は一様ではない。何を訴えれば好感につながるか、実はなかなかに難しいのだ。

 一方に《政権とそれを支える自公維国》があり、他方に《野党と自覚的市民勢力》の存在がある。この2グループの望むところはまったく異なる。「平和を守るためには武器が必要だ」「侵略者ロシアに対抗するための武器の提供を」「武器を購入するための資金の提供を」と言えば、与党側は身を乗り出してくるだろうが、野党側はそっぽをむくことになる。また、ロシアの核脅迫をとことん非難し核廃絶を訴えれば、野党陣営は喝采するだろうが、与党側は渋い顔をせざるを得ない。
 
 なにしろ生中継での演説でである。ゼレンスキーが何を言い出すか与党側も心配だったようだ。「日本企業はロシアから全部撤退しろと言うのでは」とか、「真珠湾攻撃には触れないでと要望した」などと報道されていた。結局、与野党とも、胸をなで下ろす結果となったというところ。

 結局、ゼレンスキーはロシア非難に徹し、その余は無難なスピーチに終始した。それが、ソフトで穏やかな印象の演説となった。パンチの効かない、話題性に欠ける、印象の薄い演説になったことは否めない。しかし、それでも、多くの日本人から広く好感を獲得するという目的には成功したと言えるだろう。

 とはいえ、現に攻撃を受けている被侵略国の大統領の発言である。ロシアに対する非難は痛烈だった。何よりも日本のロシアに対する制裁を継続するよう求めた。そして、同時通訳では要領を得ないところもあったが、「1000発以上のミサイル、空爆があった。多くの街では家族、隣人が殺されても、彼らはちゃんと葬ることさえできない。家の庭、道路沿いに(埋葬)せざるを得ない」と説明した。また、ロシアの侵攻で多数の子供が犠牲になっていることを強調して、「最大の国(ロシア)が戦争を起こしたが、その影響・能力の面では大きくない。(ロシアは)道徳の面では最小の国だ」と非難している。この点については、多くの日本人の共感を得たものと思う。よかったのは、それ以上に「祖国のために、ウクライナ国民は立ち上がり、闘っている」などとは言わなかったこと。抑制が利いていたとの印象を受けた。
 
 ところが、ぎごちなくオーバーに「閣下の勇気に感動しております」「わが国とウクライナは常に心は一つ」などと続けた参院議長山東昭子の空回り挨拶。完全に白けた。聞くだにこちらが恥ずかしい。

 ウクライナと日本、はからずも両国のタレント出身政治家のスピーチが並んだが、彼我のレベルの大きな落差を見せつけられることとなった。

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