澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

NHK・OBの受信料支払い停止の記

本日は、下記ホームページの紹介である。
「多菊和郎のホームページ」http://home.a01.itscom.net/tagiku/

多菊さんは、NHKのOB。
8月21日、NHK退職者有志が、NHK経営委員会に対して「籾井勝人会長に対して辞任勧告をせよ、会長がこれに応じない場合には罷免せよ」という申し入れを行ったことが話題となっている。申入は、賛同者1527名の名をもって行われた。浜田委員長ならずとも、「退職者の1割が署名したというのは、少ない数字ではない」(8月26日時事)と言わざるを得ない。

「NHK全国退職者有志のホームページ」http://obseimei.sakura.ne.jp/ を開くと、呼びかけ人180名の中に、「多菊和郎(報道番組プロデューサー・国際放送局国際企画部長)」を見つけることができる。彼も、1527のドラマのひとこまをプロデュースしていたのだ。

実は多菊さんは私の学生時代の同級生。1964年進学の東大文学部社会学科で席を同じくした仲である。とはいえ、当時親しかった記憶はない。いや、お互いの存在すら知らなかった。わずか30人ほどのクラスでのこと。私の授業への出席率が極端に悪かったからなのだ。当時私は、もっぱら生活費を稼ぐためにアルバイトに明け暮れていた。

その多菊さんと、偶然この7月に初対面同然で巡り会った。そして、彼がNHKに勤務していたこと、既に退職し、OBとして籾井勝人会長の発言に怒り心頭であること、退職者有志1000人の糾合を目標に会長罷免要求の賛同者を集めて運動していることなどを知った。

なによりも驚いたのは、彼がNHK退職者でありながら、受信料支払い停止を実践していることだった。しかも学ぶべきは、彼の行動が実に堂々としていることである。匿名に隠れたり、遅疑逡巡するところが皆無なのだ。信念の行動であると感じさせずにはおかない。

彼には、「放送受信料制度の始まり- 『特殊の便法』をめぐって-」(江戸川大学紀要『情報と社会』第19号 2009年3月14日発行)というボリューム十分な論文がある。
「NHKを定年退職し大学の教員をしていた2008年に、上記題名の論文を書きました。大正末期のラジオ放送開始に際して聴取料制度がどのように形づくられたかを検証したもので今日の時事的なテーマを扱ったわけではありません。しかし執筆の動機となった出来事は直近のNHK経営問題でした。」というもの。

彼は、受信料制度を支持する立場である。しかし、「2004年7月に明るみに出たNHK職員による巨額の番組制作費不正支出問題に端を発して,多くの視聴者が受信料支払いの拒否や保留に転じたためNHKの経営が危機に瀕した」事件に関して、「少なからぬ受信者が…NHKの側が十分に“視聴者に顔を向けた”放送局でなかったために,視聴者の“権利”のうちの『最後の手段』を行使した。その意味では,受信料制度は破綻したのではなく,設計どおりに機能したと言えよう」と、視聴者の「最後の手段」としての受信料支払い拒否を「制度の設計どおりの機能」と肯定する。

その一方で、「なお一点確認しておくべきことがある。それは,NHKの経営基盤が弱体化すれば,政治権力は間髪を容れずこのメディアヘの支配権拡大に着手することがはっきりと見えたことである」ともいう。

視聴者の賢い対応で、公共放送を育てていくことが必要だということなのだろう。

ほかならぬその彼の受信料支払い停止実践の記録が、紹介するホームページに掲載されている。
掲載文書は以下のもの。とりわけ、「3 受信料支払い停止の経緯」が興味深い記録。
1 籾井勝人NHK会長あて「会長職の辞任を求める書簡」(2014年3月3日付)
2 浜田健一郎NHK経営委員長あて「NHK会長の罷免を求める書簡」(2014年3月3日付)
3 受信料支払い停止の経緯に関する報告資料
4 参考資料 「放送受信料制度の始まり」(論文)

いろんなところで、自分の持ち場となるところを定めて、民主主義や人権を自分自身の生き方の問題としてとらえて、深くものを考え実践している人がいる。そのことに心強さを感じる。この社会、まだ捨てたものではない。
(2014年8月28日)

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