澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「試されているのは一人ひとりの当事者意識と覚悟」-北星学園「応援」を自らの課題に

本日(11月29日)の毎日新聞・オピニオン面の「メディア時評欄」に目が留まった。筆者は阪井宏、その肩書は「北星学園大教授(ジャーナリズム倫理)」。

標題が、「大学脅迫問題、問われるのは『覚悟』」とある。これを読んで、心強く思うとともに、あらためて私自身の覚悟も問われていることを自覚した。具体的な行動を起こさねばならない。

阪井論文は、次のように状況を説明する。
「朝日の慰安婦報道にかかわった元記者が教壇に立つ大学が、相次いで脅迫を受けた。脅されたのは、帝塚山学院大学(大阪狭山市)と、私の勤める北星学園大学だ。両大学は今春以降、文書、電話、メールで脅迫を受けた。『辞めさせなければ、学生に痛い目に遭ってもらう』と学生への危害をほのめかす文書もあった。」
「帝塚山の元記者は自ら辞職した。北星は当初、脅しに屈しない姿勢を示した。全国から応援の声が寄せられた。市民団体『負けるな北星!の会(通称・マケルナ会)』が東京と札幌で生まれた。大学教員、ジャーナリスト、弁護士らが名を連ね、学生5000人足らずの私大がにわかに注目の的となった。」
「しかし10月31日、学長が元記者の本年度での雇い止め方針を表明すると、空気が変わった。報道には弱腰の大学を嘆くかのようなニュアンスも漂う。」

これが時代の空気なのだろうか。卑劣な輩が群れをなして、弱いところを狙って理不尽な攻撃を仕掛けているのだ。大学は学生の安全に配慮しなければならない立場。文書、電話、メールでの脅迫には弱い。「学生に痛い目に遭ってもらう」などという脅迫を無視することなど到底できない。大学の苦境はよく分かる。経営陣も、第一線の職員も、そして学生も、不安でもあろうし面倒でもあろう。学生の家族の憂慮もさぞかしと思われる。学長の「元記者の本年度での雇い止め方針を表明」も、現実的な対応として、深く悩んだ末のことであったろう。(その後、この学長の方針表明は、決して確定的なものではないとされている)

この状況を踏まえての阪井宏意見に耳を澄まさねばならない。
「毎日は今月8日、全国の弁護士380人が脅迫の容疑者を本人不詳のまま刑事告発するという動きを社会面準トップで取り上げた。地元紙はマケルナ会のシンポジウムを紹介し、『大学が間違った選択をしないよう応援する』との北大教授の発言を伝えた。ありがたい応援である。ただ、この事件は北星だけの頑張りで済む話ではない。あらゆる組織が、いつ何時、同様の脅迫によって活動を阻害されるかも分からない。ところがそんな事態の深刻さが報道からは伝わってこない。」

渦中にある人でこその言葉である。多数の弁護士や他大学教授らの行動に対して「ありがたい応援」と敬意を払ってはいる。しかし、「大学(北星)が間違った選択をしないよう応援する」という姿勢に苛立ちが感じられる。「自分のこととしてとらえきれていないのではないか」という鋭い指摘と読み取らねばならない。

阪井が当事者としては言いにくいことを私なりに解釈すれば、「この事件は北星だけの頑張りで済む話ではない。この時代に、人権や平和を語ろうとするあらゆる組織が、いつ何時、同様の脅迫によって活動を阻害されるかも分からない。それぞれにとって、自分自身の問題なのだ。その深刻な事態をみんな良くわかっていないのではないか。『応援する』『頑張れ』というだけでは、自分の問題としてとらえたことにならない。この事態の困難さを、少しずつでも、自ら引き受ける覚悟が必要ではないのか」ということなのだ。

そこで、阪井は次のように具体的な提案をする。
「志ある大学教員に提案したい。自らが勤務する大学に、元記者を講師として招く授業をぜひ検討してほしい。マスコミ各社にもお願いしたい。多彩なカルチャー講座の一コマに、元記者を呼んではどうか。市民の方々にも問いたい。集会所の会議室を借り、元記者と語る手があるではないかと。」

そのとおりだ。匿名性に隠れて卑劣な脅迫状を送りつけ、インターネットで記者の家族を誹謗する輩、そして歴史を偽ろうとする者とは果敢に闘わねばならない。いま、北星学園が余儀なくされている孤立した闘いに具体的な援助が必要なのだ。まずは警察や司法当局の本腰を上げての真剣な対応が必要だが、それだけではない。これまで北星学園独りが前面に立って受けている圧力を分散することを考えなければならない。元記者と北星支援の声を全国で上げようではないか。それは、北星への卑劣な攻撃を許さないとする大きな世論があることを示すことでもあり、またさらに大きな世論を形成する運動でもある。

「自らのフィールドでテロと戦う。その決断は口で言うほどたやすくはない。単独ではきつい。しかし、大きなうねりとなれば話は別だ。元記者を招く動きが全国に広がれば、脅迫者は的を絞れない。」

集会を組織することは、右翼の標的になることかも知れない。だから、「自らのフィールドでテロと戦う」決断が必要ということになる。だからこそ、いま、北星学園ひとりが標的となって孤立している「テロとの戦い」の一部を引き受ける意味がある。阪井は、「応援する」と口先だけで言うのではなく、「テロとの戦い」の一部を自ら引き受けよ、その覚悟を示せ、と具体案を提示しているのだ。

阪井は、最後を次のように結んでいる。
「この国の民主主義を人任せにしてはいけない。試されているのは我々一人ひとりの当事者意識と覚悟だろう。」

私も、全国の弁護士380人とともに脅迫の容疑者を本人不詳のまま威力業務妨害罪で刑事告発したひとりだ。告発人となった弁護士団の共同代表の一人でもある。これまで「頑張れ北星」と言っては来た。しかし、指摘されてみれば、なるほどそれでは足りない。提案の通り、東京で「集会所の会議室を借り、元記者と語る市民集会」を周囲に呼び掛け企画したいと思う。

もう、「元記者」などと言わなくてもよいだろう。北星学園大学講師の植村隆氏のスケジュールを管理し調整する手立てを講じてもらいたいと思う。「負けるな北星!の会(通称・マケルナ会)」のホームページが適当てはないか。マケルナ会で具体的な招請方法を練っていただき、募集していただきたい。私は、仲間を語らって必ず応募する。
(2014年11月29日)

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Published in 土曜日, 11月 29th, 2014, at 22:53, and filed under 朝日バッシング, 歴史認識.

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