澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

籾井勝人NHK会長に辞職を勧めるの記

カネに汚い人間は軽蔑される。カネについてだけではなく、生き方そのものが廉潔性を欠くと推測されるからだ。もっとも、市井の人物であれば、カネに汚くても軽蔑されるだけの問題でおわる。だが、公職にあってカネにまつわる公私混同を指摘される人物は、公的な場で徹底して指弾されなければならない。カネで、職務が左右されることになっているのではないかという疑惑を払拭できないからだ。指弾を受けた上、信用できない人物として辞職してもらうに如くはない。

ことがNHK会長職の問題となれば、なおさらのことだ。NHKとは視聴者国民の信頼があって初めて存立しうる公共放送である。運営の資金は視聴者国民の懐から出ている。金銭の管理に関する綱紀にも、コンプライアンス全般に徹底した厳正さが要求されている。そのコンプライアンスに責任を持つ立場にあるトップには、いささかの瑕瑾も許されない。李下に冠を正さなければならず、瓜田に沓を踏み入れてはならないのだ。籾井勝人にはその自覚がない。

思想信条の如何と、生き方の廉潔性とは無関係である。国家主義ジャーナリストも、権力追随主義国営放送経営者も、カネには潔癖でありうる。廉潔な右翼活動家は珍しくない。しかし、籾井勝人は、その思想において権力に対する批判精神を欠いてるのみならず、高給を食んでいながらカネに汚い。天は籾井から二物とも奪った。籾井勝人ほどNHK会長職に相応しからぬ人物はない。

即刻辞めてもらいたい。できれば、明日(3月19日)を待たずに、今日中の辞職をお勧めする。せめて、散り際の潔さくらいは見せてはいかがか。高給故か、職に恋々としているみっともなさは、さらに惨めな結末をもたらすことになるだろうから。

ことは単純だ。NHKの籾井勝人会長は、今年1月2日私的なゴルフに出かけた。遊びの場所は、名門・小金井カントリークラブ。その際ハイヤーを利用したという。純粋に私用なのだから、ハイヤーの手配は自分ですべきであった。あるいは自分でタクシーを呼べばよいこと。ところが、NHKで使っているハイヤー会社の車両が利用され、ハイヤーの手配はNHKの職員にさせた。ここで既に、籾井勝人は瓜田に沓を入れている。

そのハイヤーの代金は4万9585円。なぜか、籾井はこの私用の代金を当日清算していない。当日清算できない事情があれば、「私用だから代金の請求は、NHKにではなく自分宛てにするよう」指示をすべきが当然であるのに、これもしていない。当然のごとく、業者はこれをNHKに請求し、NHKはこれを支払っている。籾井勝人は、自分では支払う意思がなかったのだとしか考えられない。少なくも、その疑惑を拭うことができない。

ハイヤー業者から籾井勝人への傭車代の直接の請求はなされていない。籾井は、「NHKから請求書が回ってきたから直ぐに支払った」と国会(16日衆院予算委員会・小川敏夫議員の質問に対する回答)で述べている。また、小川議員が「支払ったのは監査委員会の調査の後か」「NHKは立て替えたのか」と質問したのに対し、籾井は「答えは控えたい」と回答している。

籾井自身の説明でも、1月2日の私用ハイヤー代を、3月9日に支払ったというのだ。「こんなことは、民間ならあり得ない」ことではないのか。それともお得意の「よくあること」だというのだろうか。

事件は内部告発によって発覚し、経営委員3人で構成される監査委員会が調査を始めた。この調査が始まったあとで、籾井は金を支払った。調査があったから、慌てて支払ったのだと誰もが考える。内部告発がなければ、あるいは監査委員会の調査が始まらなければ、籾井が金を支払うことはなかったのではないか。そう国民から疑惑を持たれて当然の事態の推移なのだ。

監査委員会を構成する3名が誰かは知らない。が、法律家やコンプライアンスの専門家がいるとは思えない。この道のプロとして、上村達男さんがこのメンバーに加わっていればと残念でならない。

以上が昨日までの情報。今日あらたな重要情報に接した。
まず毎日の報道。「NHKの籾井勝人会長が私用ハイヤー代の請求をNHKに回した問題で、代金を自己負担したのは、監査委員会側から支払いを促された後だったことが17日分かった」というもの。

籾井に代金支払いを督促したのはNHKではなく、監査委員会だったというのだ。内部告発があって、それに基づいて監査委員会が構成されて、一応の調査があっての後に監査委員会が籾井に支払うよう督促したのだ。籾井にこのことがわからなかったはずはない。16日予算委員会における小川敏夫議員に対する回答は、欺瞞に満ちている。

さらに、朝日の報道。
「NHKの籾井勝人会長が私用のゴルフで使ったハイヤー代がNHKに請求されていた問題で、役員が業務の際に使用する乗車伝票が作成され、会長の業務に伴う支出として経理処理されていたことが17日、分かった」
「籾井会長は今年1月2日、東京都渋谷区の自宅と小平市の小金井カントリー倶楽部をハイヤーで往復。車両は午前7時に出庫し、約12時間利用した。伝票上は業務内容として『外部対応業務』と記され、籾井会長名のサインもあった」

この報道は、決定的だ。ことの性質上ニュースソースを出せないだろう。しかし、その記事の具体性から信頼に足りるものと判断してよいだろう。立て替え払いが公私混同で道義的に問題だというレベルではない。プライベートの遊びのカネを「外部対応業務」として、NHKに支払わせたのだ。

籾井勝人は李下に冠を正しただけではなく、スモモの実をもいでいたのだ。そして、あたかも冠を正しただけと繕っていたのだ。せっかくもいだスモモだが、発覚したから返さざるをえなかったということ。「見つかったから返すよ。返したんだから問題なかろう」という例の逃げ口上の常套手段を、またまた聞かされることになったのだ。

籾井君、君はアウトだ。私用の傭車代金をNHKに支払わせたのだ。詐欺罪に当たるのか背任罪なのかはともかく、法的な問題として追求されて当然なのだ。

監査委員会は当初24日に予定していた経営委員会への報告を、19日に開かれる臨時経営委員会で行う、と報道されている。明日(19日)の監査委員会報告に注目したい。どのくらい厳正な調査をおこなったのか、厳正に不適格会長を指弾しているのか。経営委員会側も、その姿勢に関して国民の批判に曝されているのだ。

二つの感想を付け加えておきたい。
一つは、政権と籾井勝人とのつながりの深さについてである。
「菅義偉官房長官は16日午前の記者会見で、籾井会長のハイヤー報道について、『私が承知する限りにおいては全く問題がない』との認識を示した。」と報道されている。

政権は、NHKのコンプライアンスに口出しする立場にはない。ましてや会長の個人スキャンダルをもみ消そうとするかのごとき発言はあってはならないもの。この菅発言は政権と籾井勝人との持ちつ持たれつの関係を露わにするものとなった。おかげで、籾井勝人スキャンダルは、政権の責任を問うものともなっている。

もう一つは、内部告発者の勇気とその功績を称えたいということ。あらためて、内部告発(公益通報)が社会にもたらす有益性を確認したい。そして、この有益な情報を社会に公開するきっかけとなった内部告発者を擁護しなければならないと思う。籾井勝人とその配下の者たちは、内部告発者の犯人捜しをしたり、報復を企てるなどしてはならない。そのようなことがあれば、さらなるNHKの国民不信が深まることになるのだから。
(2015年3月18日)

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Published in 水曜日, 3月 18th, 2015, at 14:33, and filed under ジャーナリズム, NHK問題.

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