澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

そこのけ、そこのけ、「総理様のご意向」だ。 ー 醜悪なりアベ政治。

前川喜平前文科省事務次官の肚をくくった発言に驚いた。驚いただけでなく、爽快感と感動をさえおぼえた。なんと言っても、つい先日までの事務次官である。腹心の友学園設立認可問題の当事者中の当事者。その人が決然と、ホイッスルを吹き鳴ならしたのだ。政権への衝撃は計り知れない。

人は、どこかで迷いを吹っ切って決断する。後戻りのできないことを覚悟で、ルビコンを渡るのだ。多くの場合、自分のプライドを守るために。一寸の虫にも五分の魂があることを、自分にも言い聞かせ、人にも知ってもらうために。

この人の場合も、黙っていれば安穏な立場。政権に不愉快なことを言えば首が寒くなることは百も承知で、危険を冒して敢えて言わねばならないことを言ってのけたのだ。その心意気やよし。拍手を送りたい気分。

誰もが知っている。組織の中の人間は、組織に縛られている。発言も行動も組織に制約される。官僚機構において、人事権を握られている立場であればなおさらのことだ。「辞めたあとではなく、在職中に言うべではなかったか」とは、ためにする愚論。そんなことができるはずもない。在職中に言ってみろ。炙り出されて、叩かれ踏みにじられて追い出されるのがオチとなる。

今にして思えば、この人が天下り問題で引責辞任したのは、日本国民にとっての僥倖だった。しかも、「8枚のレク文書」について、政権が怪文書扱いとし、文科大臣に「存在を確認できなかった」と言わせたことも。「あったものをなかったことにはできないということを申し上げたい。」と、発言を決断したのだから。これも、菅官房長官のお手柄であったと言ってよい。

今や前川発言は、文書の存在・真正の問題をはるかに飛び越え、たくまずしてアベ政権の醜悪な心臓部を射貫くことになった。アベ政権の醜悪とは、総理の腹心の友の利益のために、行政機構をあげての密室政治のことだ。行政の公平・公正が大きく歪められていることだ。それを外に漏らさぬように内部を締めつけ、秘密が漏れそうになるとスキャンダル情報を収集し御用メディアを使って個人攻撃をする。これを醜悪と言わずしてなんと言うべきか。

幾つかの感想があるが、最初に述べておきたいのは、毎日新聞西山記者事件の苦い経験を思い起こさねばならないということ。スキャンダル問題への論点ずらしの策略に乗せられてはならない。

報じられているこの人のスキャンダルが真実かどうか、どの程度のものかは知る由もない。それがどのようなものであってもこの際問題ではない。問題は、政権がスキャンダルをもちだして、論点ずらしをたくらんでいることなのだ。

論点の中心は、飽くまで行政の公平・公正が害されたことにある。前川発言は、「非常に行政のあり方として問題だ。きわめて薄弱な根拠のもとで規制緩和が行われた。また公正公平であるべき行政のあり方がゆがめられたと認識している」「これ以上、行政のあり方をゆがめることがないようにしてほしい」と言っている。これが、腹心の友学園に大学設立認可を与えた文科省の事務方トップの言なのだ。

行政は公正公平なものでなければならない。しかもその過程が透明で、説明責任を全うするものでなくてはならない。いやしくも、総理の腹心の友に利益を供与するために行政がゆがめられてはならない。それだけではなく、行政の公正性に国民が信頼をおけるものでなくてはならない。疑惑を払拭できなければアウトなのだ。

「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」「総理のご意向」「30年4月で決まったことだ、大前提である」。こんな文字が踊っている文書がホンモノだというのだ。納得できる根拠の説明あるまでは、疑惑を否定しえない。

「いったん設置が認可された大学は、国民から預かった税金から私学助成もしなければならない。したがって大学の認可はきちんと根拠をもって行わなければならない。」「獣医師の将来需要について、農水省に、きちんと見通しをたててもらわないといけない。文科省としては将来の人材需要についてきちんと見通してくれなければ、責任がもてないといい続けてきた。ところが農水省、厚労省も明確な見通しを示してくれなかった。その中で規制改革が行われた。獣医学部の新設について特例を認めるという結論が出てしまった。」

このことをもって、「行政のあり方として問題」「きわめて薄弱な根拠のもとで規制緩和が行われた」「公正公平であるべき行政のあり方がゆがめられた」と言っているのだ。

「危険にして醜悪なるアベ政治」。もう、国民の手で舞台から降ろさねばならない、その潮時ではないか。
(2017年5月26日)

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