澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

臍を噛むまい。「憂しと見し世も 今は恋しき」と。

永らへば またこの頃や しのばれむ
 憂しと見し世ぞ 今は恋しき

百人一首でおなじみの藤原清輔の詠。『新古今集』から採られているそうだが、これは恐い歌だ。希望のない、絶望の歌。この頃そう思う。

この先もっと長く生きていて、憲法の理念が輝く民主的な時代を見ることは、どうやらできそうもないようだ。改憲を唱える反動勢力が跳梁するひどい時代と思っている今日この頃だが、この先になって思い返してみると今の時代が懐かしく思い出されてくることになってしまうのだろう。「ああ、あのときはまだマシだった」と。いま、振り返ってみれば、あのときにはムチャクチャだったと思っていた昔の日々も、今に較べればまだマシだったと恋しいほどに思い出されるのだから。きっと同じことが繰り返されるに違いないのだ。

この歌に貫かれているのは徹底した厭世観だ。世の中、今日より明日がよくなるはずがない。これまでも、どんどん悪くなるばかりだったのだから。一昔前に比べて今はなんとひどいことになっているのだろうか。何年か経って、一昔前となったこの頃を振り返ってみても、今よりよくなっていようはずはない。

驚いたのは、ブッシュ大統領親子が共同して、トランプ批判の声明を出したことだ。トランプのやり方が生温いというのではない。その人種差別主義の言動を真っ向から批判している。あのブッシュ親子にさえ、乱暴で非人権的と批判されているのが超大国アメリカの現政権なのだ。悪しきポピュリズム、反知性主義、排外主義、アメリカの独善。あの当時には、「ひどい」、「最悪」と思われたブッシュでさえ、「今は恋しき」対象なのだ。

アメリカだけではない。日本も同様なのだ。55年体制確立以来、自民党政権は長期低落傾向にあった。弥縫を重ね公明党を抱き込み、何とか延命を重ねた自民党。長く、事実上は改憲をあきらめていた。それがどうだ。安倍晋三という、改憲執念勢力の代表各が首相におさまっている。あの当時は、金権、反動、最悪と思われた田中角栄も、中曽根康弘も、「今は恋しき」ではないか。

そして都政だ。石原慎太郎時代には、こんな保守反動の知事は空前であるばかりでなく絶後だろう、と思ったものだ。しかし、どうもそうではなさそうだ。小池百合子都政は、明らかに猪瀬・舛添時代以下だ。もしかしたら、石原時代よりもひどいことにもなりかねない。その理由は、知事子飼いの政党が議会の第一党になっているからだ。それだけではない。石原慎太郎が筋金入りの右翼で、排外主義者で、差別主義者だったことは天下周知のことだった。ところが、小池百合子がなにものであるかについては、よく知られていないという事情もある。

ようやく、大手メディアが小池批判をするようになってきた。本日(8月21日)の毎日「<政治団体>日本「ファースト」どこへ 米国第一のコピペ?」という記事はその典型だろう。

記事の書き出しは、「小池百合子東京都知事の側近、若狭勝衆院議員が設立した政治団体『日本(にっぽん)ファーストの会』が揺れている」というもの。
識者のコメントを連ねる手法で、「『アメリカ・ファースト』とうり二つ 排外主義連想の指摘も」とし、「東京都議選で都民ファーストはいきなり第1党に躍り出た。」「利益誘導型の旧来の自民党政治が顔を出して無党派層の不満が高まるなか、小池氏はポピュリズムをうまく利用し、民進党に代わって『受け皿』になった」「日本ファーストは近隣諸国からどうみられるか。排外主義を連想するなという方が無理だ」「政策決定者である私が決めた。文書としては残していない。『情報公開は東京大改革の一丁目一番地』と言いながら、結局は『自分ファースト』だった」。若狭氏は7月9日の報道番組で新党のスタンスとして「憲法改正が必要というのは共通している。安倍さんとあえて対立構図を作ることはない」と述べた。「自民党との本質的な違いは見えにくい」。

慎重な言い回しだが、「小池百合子を警戒せよ」「小池百合子にだまされるな」という警告である。安倍晋三、橋下徹、小池百合子などのポピュリストに警戒せよ、だまされるな、ということでもある。

私は、心底心配せざるを得ないのだ。安倍晋三のごとき知性に欠けた反文明人の利己主義者を長く首相に据えておく、「この頃」の世の雰囲気についてである。民主主義運用の難しさについてということでもある。もう少し先になって、「素晴らしい憲法だったと悔やむ日が」(8月21日万能川柳欄・浜松よんぼ)としてはならない。「あの頃に世を憂しと見しは、杞憂なりしか」と詠う日が来なければならない。漫然と待つのではなく、その日が来るように努力を重ねなければならない。それは、可能なはずなのだから。
(2017年8月21日)

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