澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

本件では瑕疵担保責任は生じないー森友学園への土地譲渡に代金値引きの理由はない。

 森友学園事件も加計学園事件も、うやむやのうちに幕引きをしてはならない。徹底した追求が必要だ。世論もメディアも矛を収めてはならない。国会も会計検査院も本気にならねばこの国は腐ってしまう。そして、最後の切り札が刑事司法。そろそろその出番ではないのか。

そんな問題意識で、本日(11月22日)醍醐聡さん以下の「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」有志が、近畿財務局長を背任で告発した。告発状は以下のとおり。

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 発 

2017年11月22日

東京地方検察庁 御中

 

告発人   醍醐聰以下別紙告発人目録に記載のとおり

 

被告発人  美並義人(財務省近畿財務局長)

 

告発人ら代理人弁護士 澤藤統一郎

同          澤藤 大河

同          杉浦ひとみ

 

第1 本件告発の概要と背景事情

1 本件は、いわゆる森友学園事件の一連の経過における疑惑の一端について関係者の刑事訴追を求めるものである。

森友学園事件は、我が国の最高権力者の行政私物化を象徴する事件として、国民から徹底的な疑惑解明を切望されているにもかかわらず、説明責任を負う行政が政権に対するおもねりの故に事実の隠蔽に終始して全容の解明にはほど遠い実情にある。疑惑の中心にある安倍晋三首相とその夫人の疑惑解明への熱意も乏しい。このままでは、いくつもの疑問を残したまま疑惑解明に幕が下ろされるのではないかと危惧せざるを得ない。

この事態において、告発人らは行政から独立し、不偏不党の立場にあって一切の忖度や行政からの介入に無縁の存在としての刑事司法に疑惑の全容解明を期待して、本告発に及ぶものである。

2 森友学園をめぐる一連の疑惑の核心は、学校法人森友学園が小学校建設予定地とした国有地の極端な低額譲渡にある。この国有地の極端な低額譲渡は、必然的に当該国有財産の管理担当官の国に対する背信行為の存在を疑わしめ、背任罪の成否解明を必要とする。

具体的には、国有財産法や財政法に定められた、国有財産を適正に管理し、これを譲渡する場合には客観的に適正な価格を以てするよう職務上の義務を負う近畿財務局担当官の背任罪の成否である。

その被疑事実に関しては、すでに木村真豊中市議らによる背任罪での刑事告発が先んじ、さらに本年7月13日付で、「国有地の低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会」の阪口徳雄弁護士(大阪弁護士会)や上脇博之神戸学院大学教授らが、詳細な理由を付した告発状を大阪地検に提出してこれに続いている。

また、本件告発人と重なる「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」有志103名が、本年10月16日に御庁に対して池田靖近畿財務局統括国有財産管理官(当時)を背任で、佐川宣寿財務省理財局長(当時)を証拠隠滅で告発したところでもある。しかし、現在まで告発対象の被疑事実について見るべき捜査の進展はない。

3 詳細は後述するが、当該国有地の極端な低額譲渡は、買主(森友学園)から売主(国)に対する瑕疵担保責任に基づく損害賠償相当金額を予め控除するとの口実をもって実行された。具体的には、瑕疵とは当該土地に地下埋設物が存在するということであり、損害賠償相当金額とは地下埋設物の撤去費用とされた。

しかし、瑕疵担保責任とは、売買対象物に「隠れたる瑕疵」が事後的に発見された場合の民事的責任(民法570条)である。事後的に高額な損害賠償責任を負担せざるを得ない場合があることはともかく、予め売主において瑕疵の有無や程度を確認することなく瑕疵担保責任を認めて、幻の地下埋設物の撤去費用相当の損害賠償を認めるなどは考え難い。しかも、契約締結時点において確認されていない瑕疵を原因として、土地価格の85%もの金額の損害賠償を認めたのである。これは、合理的な取引主体としてありうべからざる行為というほかはない。

4 なお、本件において問題となるべきは、合理的な地下埋設物撤去費用の算定如何ではない。本告発は、そもそも本件売買対象地には(法的意味における)瑕疵は存在していないことを指摘するものである。

したがって、背任罪は埋設物の撤去費用算定を必要とせずに成立し、その損害額は、地下埋設物撤去費用相当額として譲渡代金から控除された全額である。

本告発は、以上の視点から、被告発人の本件国有地売却を背任罪に問擬して刑事訴追を求めるものである。

5 繰り返すが、本告発は森友事件疑惑の一部についてのものに過ぎない。告発人らは、本件被疑事実の捜査を端緒とする厳正な刑事司法の発動によって森友学園をめぐる疑惑全容の解明を期待するものである。

 

第2 告発の趣旨と告発事実

被告発人美並義人の下記行為は、背任(罰条:刑法第247条)に該当するので、同被疑事実について厳正な捜査の上、刑事上の処罰を求める。

  被告発人は、財務省近畿財務局長の任にあって、国に対して、国有財産法、財政法等の規定に基づき、所管の国有財産を適正に管理しこれを譲渡する場合には客観的に適正な対価をもってすべき任務を負う者であるところ、

2016年6月20日、大阪府豊中市野田町1501番(8770.43㎡)の国有地(以下、「本件国有地」という)について、売払人国の契約担当官として、買受人学校法人森友学園との間に国有財産売買契約を締結するに際して、

本件国有地の地下埋設物撤去費用を過大に評価しこれを控除する費用が必要との外観を装うことによって、極端に低廉で不適正な対価をもって譲渡しようと企図し、

本件国有地には、契約の目的に支障となる地下埋設物の存在が確認されていないことを知悉しながら、これあるとの架空の想定の下、不要な地下埋設物撤去費用8億1900万円を計上し、

森友学園の経済的利益または自己の身分上の利益を図る目的のもと、

時価評価額9億5600万円から、不要な地下埋設物撤去費用8億1900万円を控除する名目をもって、売買代金を金1億3400万円と定めて、もってその任務に違背して国に金8億1900万円相当の損害を与えたものである。

 

第3 本件被疑事実と告発に至る事情

1 国有財産法第9条1項は、「国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない」と定める。

当然のことながら、国有財産の譲渡は、適正な対価をもってしなければならない。換言すれば、当事者の交渉による任意の価格設定はあり得ず、担当官には客観的に適正な対価での譲渡が義務づけられている。このことが、確認しておくべき大原則である。

民有財産の売買においては、売買対象物の処分権限をもつ売主がどのような思惑にもとづいて価格設定をしても問題にはならない。価格交渉の妥結点がいかなるものであっても、刑事上なんの問題も起きない。しかし、国有財産の譲渡における対価は、自由な価格交渉によって決することを許されていない。国有財産の管理を任務とする公務員が、適正な対価を下回る価格での譲渡をすれば、国に対する関係で、背信行為となり、損害を与えたことにもなって背任罪が成立する。

2 本件では、時価9億5600万円の土地の売買代金が、地下埋設物撤去費用相当額8億1900万円を控除することによって1億3400万円となっている。実に、土地価格の85.67%の値引きである。

本件における背任罪成否の焦点は、この値引きに根拠があるかの1点にかかるものであるが、そのような値引きの根拠はあり得ない。

仮に、適正な撤去費用相当額を8億1900万とする地下埋設物が存在したとすれば、そのような地下埋設物の種類や量、埋設場所などの確認と記録が不可欠であり、金額算定の根拠も明示されなければならない。しかし、そのような資料も根拠も残されてはいない。

3 この点について、政府委員として国会での答弁を担当した佐川宣寿理財局長(当時)は、この8億1900万円は、本件国有地売買における瑕疵担保責任免除の対価である旨を繰り返し答弁している。

その趣旨は、民法570条の瑕疵担保責任について特約を締結し、民法上の瑕疵担保としての地下埋設物撤去費用相当分の損害賠償債務を負わないとするものであるから、値引額である8億1900万円は埋設物の撤去費用相当額として適正なものでなくてはならない。

地下埋設物撤去費用金額の妥当性を判断する前に、2段階の問題が存在する。まず、果たして地下埋設物が存在するか。そして、仮に地下埋設物が存在するとして、それが損害賠償を必要とする瑕疵に当たるか。前者が事実の問題であり、後者が法的評価の問題である。

この両者が共に肯定された場合にはじめて、損害賠償金額つまりは撤去費用相当額の妥当性が問われることになる。いずれかが否定されれば撤去費用相当額を特定する必要なく、値引きの8億1900万円全額が背任の被害額となる。

4 まず、地下埋設物の有無の問題である。

国(近畿財務局)と森友学園間の、本件国有地についての「国有財産売買契約書」において、本件土地に存在すると確認された埋設物は「陶器片、ガラス片、木くず、ビニール等のごみ」のみ(第42条第4項)であって、校舎建設のための杭打工事に支障となるコンクリート片などは発見されていない。

また、近畿財務局の依頼を受けて2016年5月31日に「不動産鑑定評価書」を同局宛てに提出した担当不動産鑑定士も評価書の中で、「地中埋設物として廃材、ビニール片等の生活ゴミが確認されている」と記しており、校舎建設のための杭打工事に支障となるコンクリート片などは挙げていない。

さらに、国土交通省大阪航空局が作成した「参議院予算委員会視察時資料」(2017年3月16日)は、本件国有地の断面図(イメージ図)を添付している。それによると、深さ3.8mまでに汚染土のほか、配水管、マンホール・アスファルト・コンクリートガラ等が存在したと記しているが、それらは国が森友学園に精算払い済みの「有益費の支払い対象」と明記している。

その上で、大阪航空局は、深さ3.8m~9.9mまでに存在すると想定された廃材等が、本件国有地に係るごみ撤去費用の見積もり対象となると記しているが、9.9mの掘削工事中に「掘削機の先端部に絡みつくほどの廃材等」が目視されたことを廃材が地中に存在する根拠としたに過ぎない。

しかし、仮にその想定が当たっているとしても、大阪航空局の前掲資料によれば、2009年8月に行われた土地の履歴調査等から、深さ9.9mあたりのの地中は昭和40年代初頭まで池や沼で、その後宅地化されたものと推定している。こうした経過で深さ9m前後の地中に存在すると推定された廃材等が校舎建設工事に支障をきたすとは、およそ考えられない。

5 次いで、瑕疵に当たるかという問題である。

「陶器片、ガラス片、木くず、ビニール等のごみ」の存在は、瑕疵担保責任の根拠としての「瑕疵」に該当することになるであろうか。

この点、佐藤善信国土交通省航空局長(当時)も、こうした廃材、生活ごみが存在していても「工事の施工には問題はございません」(参議院予算委員会、2017年2月28日、会議録)と答弁している。森友学園の籠池理事長(当時)も2017年2月20日に放送されたTBSの単独インタビューにおいて、「運動場の下は取り出さなくていいんですから、さわっていないんだから、そこにお金がかかることはありません」と明言している(衆議院財務金融委員会、2017年2月21日、会議録)。現に、森友学園は2017年4月の小学校開校に向けて、地中深くから廃材等を取り出すことなく、校舎の建設工事を続けてもいた。

6 類似案件の下級審判例として、神戸地裁、昭59・9・20判決(『判例タイムズ』No.541, 1985年2月1日、180頁)がある。

「鉄筋三階建ての分譲マンションを建築する目的で買い受けた造成地の地下にビニール片等の廃棄物が混入していたとしても、杭打工法により予定どおりのマンションを新築して買受目的を達している場合には、右造成宅地に瑕疵があるとはいえないとされた事例」と紹介されている。

その理由として同判決は、「本件土地にはビニール片等の廃棄物が混入していたため、当初予定していたベタ基礎工法を杭打工法に変更を余儀なくされたにせよ、現にこれを新築することができてその買受目的を達していたこと、工法の変更が必要不可欠なものであったという確証はない」ことを挙げている。

「造成地の地下にビニール片等の廃棄物が混入していたとしても、現にこれを新築することができてその買受目的を達していた」場合には、瑕疵はないというものである。

7 売主の瑕疵担保責任として、撤去費用相当額の損害賠償責任を認めた下級審の代表的判決例として次のものを引用しておきたい。

「宅地の売買において、その地中に、大量の材木等の産業廃棄物、コンクリートの土間や基礎が埋設されていたことが、土地の隠れた瑕疵になるとされた事例」(東京地裁平4・10・28判決、『判例タイムズ』No.831,1994年2月1日、159頁)

その理由として東京地裁は、「本件の場合、大量の材木片等の産業廃棄物、広い範囲にわたる厚さ約15センチメートルのコンクリート土間及び最長2メートルのコンクリート基礎10個が地中に存在し、これらを除去するために相当の費用を要する特別の工事をしなければならなかったのであるから、これらの存在は土地の瑕疵にあたるものというべきである」と指摘している。

つまり、地下埋設物が存在したこと自体ではなく、買主が土地を買受の目的に充てる工事を遂行する上で、埋設物が障害になったという事実にもとづいて「瑕疵」に当たると判断し、当該地下埋設物の撤去に要した費用を売主が賠償すべき損害と認定したものである。

8 以上の常識的見解から、本件国有地の埋設物が土地の「瑕疵」当たらないことが明瞭である。その性状が、「陶器片、ガラス片、木くず、ビニール等のごみ」のみ(第42条第4項)であって、コンクリート土間やコンクリート基礎などではないのである。校舎建設のための杭打工事に支障となる性状のものは発見されていない。

なお、この点について、近畿財務局からの依頼に基づいて不動産鑑定士が作成した前記不動産鑑定評価書の中に、「最有効使用である住宅分譲に係る事業採算性の観点からは地下埋設物を全て撤去することに合理性を見出し難く、正常価格の観点から逸脱すると考えられる」との指摘がある。杭打ちが可能でさえあれば瑕疵には当たらず、その撤去費用を控除して本件国有地の評価を大きく下げることは、正常な価格評価から逸脱するとの考えと理解される。

9 また、本件国有地の売買契約締結に至る過程での価格交渉の席上、近畿財務局の担当者が「土地の瑕疵を見つけて価値を下げていきたい」などと発言していた事実がある(「新たなメモ見つかる」『報道ステーション』2017年8月3日)。これに照らせば、近畿財務局は正常な売買交渉ではないことを十分認識しながら、森友学園に利益を得させるため、瑕疵担保責任を故意に拡大解釈し、異常な廉価での売却を実行する背任を犯したと言わざるを得ない。御庁の捜査において、この点を厳重に究明されるよう強く要望する。

 

以上、本件告発は、森友学園事件疑惑の全容解明を期待する国民世論を代表しておこなうものである。御庁検察官は、権力に屈しない毅然たる姿勢をもって、本告発にかかる事案について厳正な捜査を遂げ、さらに権力中枢の関与についてまで、国民が納得できるよう十分な捜査をされるよう望む次第である。

                                                               以  上

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記者会見で配布した解説のメモも紹介しておきたい。

森友学園事件関連・美並義人近畿財務局長告発メモ

☆ 告発罪名背任(刑法第247条)

☆ 2016年6月20日付「本件国有地」売り払いにおいて、根拠なく、地下埋設物撤去費用名下に8億1900万円の値引きをして、国に対して同額の損害を与えたことが、背任罪に当たる。

☆ 地下埋設物撤去費用の妥当性が問題なのではなく、土地に瑕疵がないのに値引きをしたこと自体が問題で、値引き額の全額が国の損害となる、というのが本告発における指摘。

☆ 佐川理財局長の国会答弁では、「瑕疵担保責任を免れるための対価を値引きした」とされているが、瑕疵担保の要件としての地下埋設物はない。あっても、瑕疵に当たるようなものではない。

☆ 地下埋設物は2層に区別。
深さ 0 ~3.8m  借地契約時代に有益費として支払済み。
深さ3.8m~9.9m   こちらだけが問題。
工事の支障になる埋設物の確認はない。
むしろ、支障がないことの証言があり、現実に工事は進行した。
小学校敷地であることを考えても、
深さ3.8m~9.9mの埋設物は問題にならない。

☆ しかも、「地下埋設物撤去費用名下に8億1900万円の値引き」というスキームは、近畿財務局側からの提案であった。

(2017年11月22日・連日更新第1697回)

 

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Published in 水曜日, 11月 22nd, 2017, at 13:29, and filed under 刑事司法, 安倍政権.

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