(2021年9月22日)
ワタシがブロック太郎だ。ワタシの突破力を疑う人もないではないが、ワタシのブロック力を疑う人とてこの世にはない。誰もが認める、六十余州に隠れもない史上最強のブロック太郎…だぁ。
あれもヤメレ、これもヤメレ。見たくないものには目をふさぐ、聞きたくない言葉には耳をふさぐ。ブロックに何の遠慮が要るものか。聞いてほしけりゃ、ワタシの喜ぶ意見をもってこい。
ナニ? 「自民党総裁選候補者及び各党代表への『桜を見る会・前夜祭』に関する公開質問状」だと? いったい誰がそんな公開質問状を出しているんだ? 「『桜を見る会』を追及する法律家の会」だと。そんなもの、どう答えたって、総裁選に有利になるはずはない。ヤメレ、ブロックだ。受領拒否で送り返せ。また来たら、また送り返せ。ブロック太郎のブロック力の見せどころだ。
「news23」で、「首相になってもブロックはするのか」と質問されたから、「ワタシのやりたいようにやる」と答えてやった。ブロックは、ブロック太郎のレーゾンデートルだ。ブロックやめたら、ワタシがワタシでなくなる。誰の意見も聞きましょうなんて、面倒なことはやってられない。できっこない。
記者会見なら、「次の質問どうぞ」「次の質問者どうぞ」だ。あなたの質問には答えない。気にいらない記者には答えない。耳に痛い質問には答えたくない。だって、ワタシはいつも正しく忙しい。つまらぬ記者やその質問に、時間をとられるのはまっぴらだ。
ワタシもそれほどバカではない。作戦というものが二つある。一つは公私の区別曖昧化作戦。もう一つが、中傷・批判混交作戦。意図的にやっている。マ、安倍さんのご飯論法みたいなもんだ。
こういうことだ。まずツイッターはワタシの「暇つぶし」と私的な言論であることを強調する。こうしておいて、公的情報をどんどん入れてフォロアー数を稼ぐ。何か批判があれば、すぐにブロックして「私的な言論にとやかく言われる筋合いはない」と開き直る。私と公との行ったり来たり。境界曖昧にしておくことが、何よりのブロック術の秘訣。
もう一つが、意識的な誹謗と批判の曖昧化。卑劣な誹謗は許せない、なんて言いながら政治的批判の言論をブロックしようというずる賢い高等戦術。「ツイッター上の会話も普通のリアルの会話のように礼節をもってやってもらえればいいんだが」などと言いつつ、面白くない批判者の言論はブロックなんだ。
ワタシのや目指すところはトランプの流儀。ワタシにとって大切なのは、熱狂的な支持者の一群を作ることであって、満遍なく説明責任を全うすることではない。なんで、自分を批判する「あんな人たち」の言い分を聞かなきゃならないんだ。ブロックしたって何が悪い。
「『桜を見る会・前夜祭』に関する公開質問状」なんて、どうせ前首相や自民党を誹謗中傷する法律家の集まりだろう。ワタシはまだ私人だ。ブロック力を発揮して、受領拒否をしても、ちっとも問題はないだろう。これからも、「ワタシのやりたいようにやる」だけさ。
(参照) https://article9.jp/wordpress/?p=17589
(2021年9月21日)
国会議員とは辛い仕事だ。共産党の議員ともなれば格別に辛い。楽しい弁護士稼業に専念せずに、辛さ覚悟で議員になってる山添拓には、ご苦労様というほかはない。
この辛さには二面ある。一つは、一般人ならなんでもないことをことさらにあげつらわれ、悪意ある輩から過剰に叩かれること。もう一つは、積極的な弁明をしがたいことだ。「大したことをやったわけではない」と自ら言えば、反省が足りないとさらに深みにはまる恐れがある。
自己弁護をしがたい辛い境遇なのだから、周囲が弁護を買って出なければならない。私も、一言申し上げておきたい。
彼のツィッターでの発言によれば、「2020年11月3日、休日を利用して趣味の鉄道写真を撮りに行った際に、長瀞町の秩父鉄道の線路を横断したことが、埼玉県警秩父警察署から軽犯罪法違反であるとの指摘を受け、本年9月16日付で送検した旨の連絡を受けました。」という。
送検の被疑罪名が必ずしも明らかではないが、軽犯罪法とすれば、「第1条第32号 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた」しか考えられない。
鉄道の線路は、「入ることを禁じた場所」に当たるのだろうが、実生活においては線路を渡るのも、線路を歩くのも、必要あれば誰でもすることだ。右を見左を見て安全を確かめたうえ、線路を渡る。私もこれまでの人生でおそらくは何百回もやってきたことだ。普通、これを犯罪と意識することはない。ましてや送検されるなど思いもよらないこと。
このような、法益侵害の極限までに軽微な行為に対しては法の適用の公平性を厳格に確保し、厳しく濫用を警戒しなければならない。軽犯罪法自身が、その4条で、「この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」と、司法警察や検察官を戒めているとおりである。
よもや立件はあり得ないだろうが、送検されただけで悪意ある中傷にさらされている現実がある。山添拓弁護の材料を提供しておきたい。
まずは、「一厘事件」大審院判例を淵源とする可罰的違法性論である。形式的には構成要件に該当する行為も、刑罰法規が刑事罰に値するとして予定する違法性の質・量を欠く行為は処罰に値せず、罪とならない。
「一厘事件」は、葉煙草専売法(不納付)違反での起訴事件。被告の農民が、大蔵省専売局に納入することを怠った乾燥葉煙草の相当価格は、1厘(1円の千分の1)であった。この起訴が、一審無罪、控訴審有罪となり、注目された大審院は、無罪とした。処罰に値するほどの違法性を欠くということなのだ。
刑事弾圧には、常にこの可罰的違法論が問題となる。山添拓弁護はまずここから始まる。そして、故意の欠如、公訴権濫用論等々。
もう一つ。新訳聖書(ヨハネ伝)を引用しておきたい。
イエスは身を起して彼らに言われた、「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」。
これを聞くと、彼らは年寄から始めて、ひとりびとり出て行き、ついに、イエスだけになり、女は中にいたまま残された。そこでイエスは身を起して女に言われた、「女よ、みんなはどこにいるか。あなたを罰する者はなかったのか」。
女は言った、「主よ、だれもございません」。イエスは言われた、「わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。今後はもう罪を犯さないように」。
これも、示唆に富んでいる。誰もが自信をもって処罰すべきと言える行為でなければ、犯罪として扱ってはならない。恣意的な捜査や起訴の危うさを忘れてはならない。
山添拓よ。怖じけるな、たじろぐな、動じるな。この一件、大成に至る一里塚とせよ。
(2021年9月20日)
9月17日のテレビ番組で、司会者から「靖国の参拝ですけれども、内閣総理大臣になられましても続けられますか?」と聞かれて、高市早苗は、下記のように答えている。事実上内閣総理大臣になっても靖国参拝を継続する宣言と聞こえる。右翼・右派には喝采だろうが危険な発言。こんな政治家が、与党の総裁選に出てくる時代状況なのだ。
まだ、自由民主党の総裁選挙、これから戦おうということですけれども、靖国神社への参拝はわたくしは一人の日本人として、信教の自由に基づいて続けております。
それで、ま、なんでか、これを外交問題にしようという報道、まあ海外からの反応もあったり、日本の中でも「これ外交問題になりませんか?」とよくマイクを向けられるたりするんですけれども
わたくしはそれぞれの国の為に、ま、国の為に命をかけられた方、国策に殉じられた方の御霊をいかに、こう、お祀りするのかっていうのはそれぞれの国の中の問題であると思っています。外交問題であっちゃいけないと思っています。
わたしも閣僚として、また別の議員外交の一員として海外に出た時にですね、相手国の首相や大臣と会談をする前にその国の為に命を捧げられた方の、ま、慰霊施設に、あの、先に参拝するようにさせて頂いてます。
過去の戦争の歴史というのは本当に不幸な物であって誰が悪い、どっちが悪いと言い出したらきりがないんですけれども、それぞれの国の為に命をかけられた方にお互いに敬意を表しあう、そういう関係を作っていければいいなと思ってます。
この発言に、逐語で批判しておきたい。
「まだ、自由民主党の総裁選挙、これから戦おうということですけれども、靖国神社への参拝はわたくしは一人の日本人として、信教の自由に基づいて続けております。」
高市さん、お分かりだと思いますが、《一人の日本人としての信教の自由にもとづく参拝》と、《内閣総理大臣としての公的資格における参拝》とは、違うのです。もし、あなたが内閣総理大臣になったとしたら、あなたの靖国参拝は《一人の日本人としての参拝》ではなく、《内閣総理大臣としての参拝》とならざるを得ません。この両者は厳格に区分しなければならない。分からないフリをしてはならないし、ごまかしてもならないのです。
「それで、ま、なんでか、これを外交問題にしようという報道、まあ海外からの反応もあったり、日本の中でも「これ外交問題になりませんか?」とよくマイクを向けられるたりするんですけれども」
高市さん、問題は《外交問題》だから、ではないんですよ。中国や韓国やアメリカが問題にしなければよいということでもない。中国や韓国やアメリカが外交上問題にしなくても、日本国憲法における政教分離原則が許さないのです。そこは、内閣総理大臣となろうという人には、お分かりいただかなくてはなりません。
「わたくしはそれぞれの国の為に、ま、国の為に命をかけられた方、国策に殉じられた方の御霊をいかに、こう、お祀りするのかっていうのはそれぞれの国の中の問題であると思っています。外交問題であっちゃいけないと思っています。」
《国の為に命をかけられた方、国策に殉じられた方の御霊》が靖国に祭神として合祀されているという信仰を、国家は肯定も否定もしてはなりません。国家が、靖国神社やその信仰を特別の存在としてはいけません。その宗教施設にも信仰にも一切関わってはならないのです。それが、外交上の要請ではなく、我が国の憲法の決まりなのです。信仰をもつ人がお祀りし、お詣りすることは自由です。でも、国家を代表する人は決して参拝してはならないというのが、国内のルールなのです。
「わたしも閣僚として、また別の議員外交の一員として海外に出た時にですね、相手国の首相や大臣と会談をする前にその国の為に命を捧げられた方の、ま、慰霊施設に、あの、先に参拝するようにさせて頂いてます。」
高市さん、それは素晴らしいことだと思います。中国に行けば南京の「侵華日軍南京大屠殺遭難同胞紀念館」、旧満州の「平頂山・惨案遺跡紀念館」、韓国なら「西大門刑務所歴史館」、そしてシンガポールなら「日本占領時期死難人民記念碑」など、こういう場所で尊い命を失った人の追悼をされることが、その国の人々との友好の第一歩だと思われます。
「過去の戦争の歴史というのは本当に不幸な物であって誰が悪い、どっちが悪いと言い出したらきりがないんですけれども、それぞれの国の為に命をかけられた方にお互いに敬意を表しあう、そういう関係を作っていければいいなと思ってます。」
「過去の戦争、誰が悪いどっちが悪いと言い出したらきりがない」には同意できません。国際法や人道に照らして、誰が悪いどっちが悪いはきちんと言うべきだし、謝罪も必要ではありませんか。 歴史を曖昧にしたり美化したりしてはいけません。
結局あなたが首相になっても続けると言わんばかりの靖国参拝は、侵略戦争であったあの戦争を美化し曖昧にするもの、あの戦争を聖戦とし天皇のために命を落とした兵士を英霊と礼賛する危険なものとして、憲法20条の政教分離原則違反と言わざるを得ません。
憲法を厳格に遵守しようとしない人物に、内閣総理大臣となる資格はありませんよ、高市さん。
(2021年9月19日)
私も参加している「『桜を見る会』を追及する法律家の会」という団体がある。もっぱら「桜を見る会前夜祭」にまつわる安倍晋三元首相の犯罪を刑事告発するために結成された。
昨年(2020年)2月13日、126名の原始呼びかけ人の訴えに応えて5月21日の第1次告発状提出時の参加者は622名だった。第2次告発時には941名となつている。いま、第3次告発まで行い、果敢に首相の犯罪に切り込んで、既に具体的な成果を上げている。
その「『桜を見る会』を追及する法律家の会」が、自民党総裁選と総選挙を目前に、自民党総裁選の候補者4人と7政党の代表に下記の公開質問状を送付した。一昨日(9月17日)のことで、公表は昨日(9月18日)。質問は、桜を見る会本体についてのものと前夜祭に関するものと、併せて5問である。回答期限は9月24日。
ほかにも、いくつもあるが、安倍・菅政権の最大のネックは、「モリ・カケ・桜」疑惑であり、その説明責任の欠如である。
まずは、自民党総裁選4候補の、そして与野党を問わず、各政党の明瞭な回答を聞かせてもらいたい。
**************************************************************************
自民党総裁選候補者及び各党代表への
「桜を見る会・前夜祭」に関する公開質問状
自民党総裁選候補者
岸 田 文 雄 殿
高 市 早 苗 殿
河 野 太 郎 殿
野 田 聖 子 殿
立憲民主党代表
枝 野 幸 男 殿
公明党代表
山 口 那津男 殿
日本維新の会代表
松 井 一 郎 殿
日本共産党委員長
志 位 和 夫 殿
社会民主党党首
福 島 みずほ 殿
国民民主党代表
玉 木 雄一郎 殿
れいわ新選組代表
山 本 太 郎 殿
安倍政権では、森友・加計学園問題や「桜を見る会」問題にみられる政治の私物化が国民的な批判を受け、真相究明と責任追及が求められましたが、菅政権は、これらの課題に全く向き合うことなく、退陣することになりました。
このような中で、本日、自民党総裁選挙が告示され、遅くとも11月には総選挙が行われると言われています。
私たち「桜を見る会」を追及する法律家の会(以下「法律家の会」)は、昨年2月13日結成以来、「桜を見る会」の私物化問題と「前夜祭」の政治資金問題を追及してきました。私たちが取り組んだ「前夜祭」に関する刑事告発では、本年7月、東京検察審査会が、被疑者安倍晋三らに対する不起訴を不当とする議決(別紙参照)を行いました。
「桜を見る会・前夜祭」問題は、現在も未解決の問題であり、国民は政治に対する強い不信感をいだくとともに、疑惑の真相究明と責任追及を強く求めています。
このような問題意識から、自民党総裁選候補者と各党党首の方々に、下記の公開質問を行わせていただきますので、9月24日(金)正午までに上記回答先(弁護士泉澤章宛て)にFAXにてご回答頂きたくお願い致します。短い回答期限で恐縮ですが、宜しくお願い致します。
また、回答内容は、回答の有無も含め、マスコミ等への公開を予定しております。
記
第1 「桜を見る会」について
総理主催の「桜を見る会」に、約800名の安倍晋三後援会員が招待され、また、深刻な消費者被害を引き起こしたジャパンライフ及び48(よつば)ホールディングスの経営者並びに反社会的勢力の人物が招待されたと報じられました。安倍内閣は、招待者名簿を破棄して実態を明らかにせず、菅内閣も、「桜を見る会」問題は決着済みとして、真相究明や責任追及を行いませんでした。
第1問 検察審査会は、「桜を見る会」について、「税金を使用した公的な行事であるにもかかわらず、本来招待されるべき資格のない後援会の人達が多数参加しているのは事実であって、今後は、候補者の選定に当たっては、国民からの疑念が持たれないように、選定基準に則って厳格かつ透明性の高いものにしてもらいたい。」と指摘しています。この検察審査会の指摘に対する貴殿のお考えをお示し下さい。
第2問 貴殿が首相になった場合ないしは貴党が政権与党となった場合、「桜を見る会」問題についてどのような対応をするか、ご回答下さい。
何らかの対応をとる場合、どのような体制でどのような真相究明・責任追及の取組みを行うのか、具体的にご説明下さい。
第2 「前夜祭」について
安倍晋三後援会主催の「前夜祭」では、参加した選挙区内の後援会員に対して寄附(飲食代不足分の補填)がなされたのではないか、その補填金の原資は何かが問題となっており、安倍被疑者は補填は秘書が行ったことで自分は知らなかったと弁明しています。
第1問 検察審査会は、安倍被疑者の不起訴不当議決の中で、「総理大臣であった者が、秘書がやったことだと言って関知しない姿勢は国民感情として納得できない。」と指摘しています。この検察審査会の指摘に対する貴殿のお考えをお示し下さい。
第2問 検察審査会は、安倍被疑者の不起訴不当議決の中で、「国民の代表である自覚を持ち、清廉潔癖な政治活動を行い、疑義が生じた際には、きちんと説明責任を果たすべきである。」と指摘しています。
この検察審査会の指摘に対する貴殿のお考えをお示し下さい。
第3問 貴殿は、安倍前首相が「前夜祭」問題について説明責任を果たしているとお考えですか。説明責任を果たしていないとお考えの場合、今後、国会及び内閣はどのような対応をとるべきだとお考えでしょうか。具体的にご説明下さい。
以上
(2021年9月5日)
市民団体「日本平和委員会」の機関紙が、旬刊の「平和新聞」。その「9月5日」号が、間近に迫った20年目の「9・11」に関連して、アフガン問題の特集で充実している。
が、敢えて「ジャーナリスト・伊藤千尋のプーラ・ビーダ」を紹介したい。ここに、バーバラ・リーに触れた記事があるからだ。(なお、「プーラ・ビーダ」とは、「純粋な人生」の意味で、平和憲法持つ国コスタリカのあいさつ言葉と説明されている)
バーバラ・リーについては、私なりにコメントしておきたい。
2001年9月14日、9・11同時多発テロの3日後のこと。米連邦議会の上下院は、ブッシュ大統領に対しテロへの報復戦争について全面的な権限を与える決議を成立させた。これに対し、上下両院を通じてただ一人反対票を投じたのが、カリフォルニア選出のバーバラ・リー(Barbara Lee)民主党下院議員だった(下院賛成票420・反対票1)。私は、この一票を、議会制民主主義に生命を吹き込んだものとして高く評価する。その「ただ一人反対を貫いた下院議員」の議会での発言の一節がこうであったという。下院でただ一人反対票を投じ
私は確信しています。軍事行動でアメリカに対する更なる国際的なテロを防ぐことは決して出来ないことを。この軍事力行使決議は採択されることになるでしょう。(それでも、)…誰かが抑制を利かせなければならないのです。誰かが、しばし落ち着いて我々が取ろうとしている行動の意味をじっくり考えなければならないのです。皆さん、この決議の結果をもっと良く考えて見ませんか?
良心に従い、良心を貫いた、たった一人の反対票。そのおかげで、狂気の時代のアメリカは、全体主義の烙印から救われたのだと思う。以下、伊藤千尋の記事の抜粋である。【「9・11」から20年】「凛として筋を通す」と表題されている。そして、「一挙に愛国社会へ」「ぶれない政治家が」と小見出しが打たれている。
「世界を驚かせた「9・11」のテロから20年。私は10日前の2001年9月1日付けで朝日新聞のロサンゼルス支局長に就任しました。テロの日の米国を今もよく覚えています。
(略)2日後の新聞は一変しました。「われわは被害者だ。報復あるのみ。今は大統領のもとに団結しよう」という主張ばかり。テレビは一日中、愛国歌「神よアメリカを祝福したまえ」を流します。街の建物の窓は星条旗だらけ。車もすべてか国旗をつけて走っるように見えます。
3日後、戦争する権限を大統領に一任する法が連邦議会で可決されました。反対したのは上下院でたった一人だけ。黒人女性のバーバラ・リー議員です。彼女はたちまち全米から「裏切者」と非難されました。
4ヵ月後の講演会で彼女は反対した理由を語りました。「議会の投票前に憲法を読みなおして、思い出したのはベトナム戦争です。大統領が虚偽の口実で戦争を始めました。大統領に全権を任せればまた同じことが起きる。今こそ私たちは過去に学ぶべきです。行政を監視する議会の役割を放棄すべきではない」と。
後ろで聴いていた私は思わず最前列に走り、壇上の彼女に質問しました。「たった一人でも反対するには勇気が必要です。あなたの勇気の源は何ですか」と。
リー議員は「勇気を出したのではありません。憲法を考え、憲法に沿って行動したまでです」と微笑んで答えました。自分は憲法を背負っているという自信が支えだったのです。彼女はその主張を貫きました。
1年後、議会の改選が行われ、リー議員は再び立候補しました。まだ愛国社会のさなかで、彼女は惨敗すると言われました。ところが逆に、対立候補の4倍の票を得て圧勝したのです。ぶれない政治家こそが人々の信頼を勝ち得るのです。
20年後の今、米国はベトナムの轍を踏み、アフガンから撤退しています。リー議員を非難した人々がこの間、彼女を訪ねて涙を浮かべて謝罪しています。
人間だれしも周囲から孤立することがあります。正しいと信じていても同調圧力に耐えられず、つい妥協しがちです。そんなときは彼女を思い出しましょう。
凛として筋を通す生き方こそ、尊敬に値するのです。」
付け加えるべきことはない。バーバラ・リーのように、凛として筋を通した生き方に共感あるのみ。
(2021年9月2日)
DHCは、デマとヘイトとスラップとステマで名高い悪質な企業である。そのデマとヘイトを象徴する事件が、「DHCテレビジョン」制作の「ニュース女子」沖縄基地問題放映。高江の米軍ヘリパッド反対運動を取りあげて事実に基づかない中傷をし、その背後に在日3世の辛淑玉さんがいるとして、名誉毀損の損害賠償請求訴訟を提起された。昨日(9月1日)その一審判決となったが、原告の辛さん側が「画期的な判決をいただいた」と表明する認容判決となった。慰謝料と弁護士費用を合計した認容額は550万円。異例の高額である。しかも、謝罪文の掲載命令まで言い渡されている。
「DHCテレビジョン」はDHCの子会社。親会社のDHCと同様に、その代表取締役会長が、差別主義者として知られる吉田嘉明。メディアも官僚も法曹も裁判所も在日が支配していると妄想している人。この人の体質がヘイト番組の制作に関わっている。吉田は、今回の東京地裁(大嶋洋志裁判長)の判決をも、在日の裁判官による在日のための判決などと強弁するのだろうか。
番組は、基地建設反対派の人たちを「テロリスト」「犯罪者」と表現したほか、「黒幕」として辛さんを名指ししていた。「在日韓国・朝鮮人の差別に関して戦ってきた中ではカリスマ。お金がガンガンガンガン集まってくる」などという発言もあったという。
この番組をめぐっては、既にBPO(番組倫理向上機構)の2つの委員会が審査の上、取材の欠如や事実確認の不足、人権や民族を取り扱う際に必要な配慮を欠いたことなどを指摘のうえ、「重大な放送倫理違反」「名誉毀損」などと結論づけている。このDHC子会社の番組は、沖縄の平和運動に対するヘイトでもあり、在日に対する偏見の発露でもある。
判決は、番組で「(辛さんの)社会的評価が著しく低下し、重大な精神的損害を受けた」とまずは名誉毀損を認めた。その違法性を阻却する事由があるかに関して、「重要な部分の真実性が証明されているとは到底いえない」「真実と信じるについての相当な理由があったともいえない」と結論した。裏付け取材ないままの、デマ報道であったと認めたことになる。
判決を受けての記者会見で、辛さんは、次のように述べたという。
「この番組は私を利用して沖縄の平和運動を愚弄する、もっとも悪質なフェイクニュースでした。」「日本人ではない私が、反戦運動に声をあげること、沖縄のことに思いを馳せることを巧みに利用された。そして、そのことで2017年から受けた私への仕打ちは、酷いものでした」
「今回の判決は、番組が問題であったということを明確に示した。私への名誉毀損の部分でしか戦うことはできませんでしたが、あの番組が問われているのは、まごうことなきフェイクです。沖縄の人たちを愚弄し続けたのです。そこの部分はこれから次のステージで戦っていかなければいけない」
またこうも語ったという。
「多くの人に支えられ、持ちこたえられた。在日3世の私が日本の良心とタッグを組んで、道が開けるということを思い起こさせてくれた。第1ラウンドが終わった」
「差別を禁止する法律があれば、と感じました。1行でも良いので、これは人種差別だったと記載してほしかった。そういうものがダメなんだと活字になって出ていくことは、私たちマイノリティにとって大きな力になると思っています」
第1ラウドは終わったが、第2ラウンドがすぐに始まる。訴訟は終わっても、民族差別のない社会への歩みは続くことになる。この社会の歪みを直す道のりは、まだ険しい。
(2021年8月29日)
アフガンから米軍が撤退を開始して、現地にはタリバンの支配が戻りつつある。あらためて、武力による他国への侵攻や支配の当否が話題となり、アフガンという地域の歴史や風土、そして中村哲医師の業績に関心が寄せられている。
毎日新聞8月27日の「金言」欄に、「手術では治らない」との標題で小倉孝保論説委員が中村医師を回顧している。「手術では治らない」は、中村医師が国会で述べた言葉だ。「手術」とは武力の行使、あるいは武力による威嚇のこと。この場合は、自衛隊のアフガン派兵を意味している。「手術」を必要とする疾患は、「テロ」である。アフガンのテロ組織を根絶するために、自衛隊を現地に派遣してはどうかという議論に対して、現地を最もよく知る中村が、「手術では治らない」と言ったのだ。「自衛隊派遣は、有害無益」とも。
以下、「金言」の抜粋である。
「米同時多発テロから約1カ月後の2001年10月13日、衆院特別委員会が開かれた。政府は当時、自衛隊が米軍の対テロ活動を支援できるよう法整備を急いでいた。
軍事評論家らとともに参考人として出席したのが医師の中村哲だった。1983年に国際NGO『ペシャワール会』を設立し、アフガニスタンで農地を作ろうと井戸を掘って水路を通し、隣国パキスタンでも医療活動をしていた。
中村はアフガンの状況について、『私たちが恐れるのは飢餓』と述べ、テロを抑え込むため自衛隊を派遣することを、『有害無益』と明言する。
浮世離れした発言と受け止められたのか、議員席には嘲笑が広がった。『有害無益』発言を取り消せとの自民党議員の要求を中村は、『日本全体が一つの情報コントロールに置かれておる中で、率直な感想を述べただけ』と突っぱねている。
テロを防ぐには敵意の軽減が必要で、武力によってそれは成し遂げられない。『このやろうとたたかれても、報復しようという気持ちが強まるばかり』と述べている。
国の荒廃や混乱の背景には教育や医療の欠如、貧困や飢えがある。それを人道支援で予防、改善することで、最後の手段であるべき『外科手術』を回避できると中村は考えていた。
米軍によるアフガン侵攻から20年。飢餓や貧困は改善されず、崩壊したタリバンが勢力を盛り返し、ほぼ全土を掌握した。世界一の「外科医」である米軍をもってしても、アフガンの患部は治癒しなかった。
中村は2年前、アフガンで武装勢力に銃撃され命を落とした。タリバンが戻ってきた今、この国とどう向き合うか。中村が嘲笑を浴びながら残した言葉にこそ、貴重な答えがある。」
当日委員会の議事録で、次のような中村の発言を読みとることができる。
○中村参考人 自衛隊派遣が今取りざたされておるようでありますが、当地の事情を考えますと有害無益でございます。かえって私たちのあれ(現地支援活動の成果)を損なうということははっきり言える。笑っている方もおられますけれども、私たちが必死でとどめておる数十万の人々、これを本当に守ってくれるのはだれか。私たちが十数年間かけて営々と築いてきた日本に対する信頼感が、現実を基盤にしないディスカッションによって、軍事的プレゼンスによって一挙に崩れ去るということはあり得るわけでございます。
○中村参考人 現地は対日感情が非常にいいところなんですね。これは世界で最もいいところの一つ。その原因は、日本は平和国家として、戦後、あれだけつぶされながらやってきたという信頼感があるんですね、我々の先輩への。それが、この軍事的プレゼンスによって一挙にたたきつぶされ、やはり米英の走り使いだったのかという認識が行き渡りますと、これは非常に我々、働きにくくなるということがあります。
○中村参考人 私は、テロの発生する土壌、根っこの背景からなくしていかないと、ただ、たたけたたけというげんこつだけではテロはなくならないということを言っているわけです。本当に人の気持ちを変えるというのは、決して、武力ではない。私たち医者の世界でいえば、外科手術というのは最後の手段…。
中村を嘲笑し、発言を取り消せ、とまで言った自民党議員とは誰だつたのだろうか。特定はできないが、出席議員として衛藤征士郎、下村博文、鈴木宗男などの名が見える。
中村は、その後2008年11月5日の参院外交防衛委員会でも、要旨次のように述べている。
「ヒロシマ、ナガサキのことは現地の皆が知っており、かつては親日的であった。
最近は、日本が米軍の軍事活動に協力していることが知れ渡り、日本人も危険になってきた。
以前は日の丸を付けていれば安全だったが、今は日の丸を消さざるを得ない。」
「外国軍隊の空爆が治安悪化に拍車をかけている。自衛隊の現地派遣は『百害あって一利なし』。また、現在の給油活動について『油は空爆に使われない』と言っても現地の人には通用しない」
以上は、中村哲が語る、日本国憲法9条のリアリティである。同医師の早すぎた逝去が惜しまれてならない。
(2021年8月24日)
「20時当確」という言葉は聞いていたが、「ゼロ打ち」は知らなかった。8月22日20時。横浜市長選の投票箱が閉まると同時に、メディア各社は一斉に山中竹春当確と報じた。開票率ゼロパーセントで当確を打ったのだ。この瞬間に、小此木八郎の大敗が確実となり菅政権が大きく揺れた。
この選挙では、誰が当選するかではなく、もっぱら小此木八郎の勝敗が焦点だった。菅政権の命運を占うものとして注目されたのだ。菅義偉の政治家としての出身地、いまだに地元とも、お膝元とも言われる横浜である。菅と小此木との関係は、切っても切れない間柄。しかも、小此木八郎は現役閣僚を辞しての出馬。菅も、ここは自分の政治生命に直結する踏ん張りどころと、なりふり構わず前面に出た。その結果が、「ゼロ打ち」である。菅から見れば「ゼロ打たれ」。自業自得とは言え、菅の衝撃やいかばかり。
「ゼロ打ち」は、小此木ではなく、明らかに菅内閣への不信任である。とりわけ、コロナ対策への無為無策に対する市民の苛立ちの表明。コロナ禍の中で、市民は政権のあり方が自分の命や暮らしに直結することを実感し始めているのだ。だから、投票率も上がった。だから、次の総選挙、決して菅義偉安泰ではないのだ。
菅の選挙区は神奈川2区、横浜市の西区・南区・港南区がその区域。今回の山中票と小此木票の出方を較べてみると以下のとおり。
西 区 (山中)13,103票 30.79% (小此木)9,362票 22.00%
南 区 (山中)23,765票 31.84% (小此木)18,275票 24.10%
港南区 (山中)31,246票 33.72% (小此木)21,016票 24.10%
1994年の小選挙区制導入以来、8回の選挙で菅義偉は連続当選を果たしている。その菅の選挙区で、小此木は圧倒的に負けているのだ。闘い方次第では、次の選挙で菅落選もあり得なくはない。
カジノ(IR)問題はやや影が薄くなった感があるが、本日の朝日社説がこう論じている。これは、重要な指摘だと思う。
首相は安倍前政権の官房長官当時からIRの旗振り役を務め、地元横浜市は候補地として有力視されていた。にもかかわらず、今回、(IR反対に転じた)小此木氏支持を打ち出したのは、市民の間に反対が強いとみて、野党系市長の誕生阻止を最優先したのだろう。
IRには、ギャンブル依存症の増加やマネーロンダリング(資金洗浄)、治安の悪化などの懸念がある。推進の林氏の得票率は13%にとどまった。首相はこの機会に、IR政策全体の見直しに踏み込むべきだ。でなければ、小此木氏支援はご都合主義の極みというほかない。
本来であれば、IR誘致をどうするのか、方針を転換するならするで、党内論議を重ね、意思統一をしたうえで有権者に提示するのが、政党としてあるべき姿だろう。自民党のガバナンスもまた問われている。
そして、もう一つの注目点が、「カジノ反対の市長を誕生させる横浜市民の会」などの市民運動とも連携した野党共闘の成果である。朝日社説は、こう触れている。
「当選した山中氏は、共産、社民両党も支援する、事実上の野党統一候補だった。内閣支持率が下がっても、野党の支持率は低迷が続くが、しっかりした受け皿を用意できれば、政権への批判票を呼び込めることが示された。総選挙でも有権者に認められる選択肢を示せるか、野党の協力が試される。」
野党は4月の衆参3補選・再選挙で「全勝」し、東京都議選でも議席を伸ばしている。共闘ができれば大きな勝利の展望が開けることの実証を、また一つ積み上げた。共闘は難しいが、総選挙目前の今喫緊の課題なのだ。
(2021年8月22日)
香港情勢の報道には胸が痛む。民主的な運動に携わっていた人々が、野蛮な権力に次第に追い詰められている。歴史は、必ずしも進歩するものではなく、正義は必ずしも勝利するものでもない。この理不尽が、現実なのだ。
ドイツの作家ミヒャエル・エンデのファンタジー「はてしない物語」(ネバーエンディング・ストーリー)を思い出す。「The Nothing」(無)の膨張によって崩壊の危機に瀕した異世界の物語り。あの異世界は中国のことであったか、「The Nothing」(無)とは中国共産党のメタファーであったか、今にしてそう思う。
国家安全維持法施行以来、じわじわと香港での「The Nothing」(無)の膨張は続いている。民主派メデイアの「リンゴ日報」が廃刊になり。最大教員組合の「香港教育専業人員協会」(教協)が解散となり、今度は、「民陣」への弾圧。そして、弁護士協会も危ない。
以下は、赤旗【北京=小林拓也】の報道である。見出しは、「香港民主派団体「民陣」が解散」「大規模デモ主催 弾圧で運営不能に」「主要幹部相次ぎ逮捕 『市民に感謝』と声明」
香港で大規模デモを主催してきた民主派団体「民間人権陣線(民陣)」が15日、解散を宣言しました。昨年6月末の国家安全維持法(国安法)施行後、主要メンバーが次々逮捕され、事務局の機能が維持できなくなったのが理由。民陣は解散を宣言した声明で「香港人がんばれ。人がいれば希望はある」と呼び掛けました。
民陣は2002年、民主派政党や団体によって創設。毎年7月1日の香港返還記念日デモなどの大規模デモを主催。「平和、理性、非暴力」を掲げ、デモによる市民の政治的意見表明を主導してきました。03年7月には50万人デモで「国家安全条例」案を撤回に追い込みました。19年6月には「逃亡犯条例」改定案に反対するデモを呼び掛け、最大で200万人が参加。その後の反政府行動でも重要な役割を果たしました。
国安法が施行された直後の昨年7月1日にもデモを呼び掛けました。しかし同法による弾圧が強まる中、今年の7月1日は創設以降初めてデモを行いませんでした。昨年来、民陣の元代表4人が逮捕され、実刑判決を受けた人もいます。弾圧により事務局の運営が不可能になったとして、13日の会議で解散を決めました。
香港警察は、民陣やそのメンバーが国安法などに違反していないか全力で追及すると表明。中国政府で香港政策を所管する国務院香港マカオ事務弁公室と出先機関の中央駐香港連絡弁公室は、民陣について「反中国で、香港を混乱させた」組織だとし、法によって責任追及すべきだと主張しました。
民陣は15日の声明で、19年間共に歩んできた香港市民に感謝を表明。大規模デモで「世界が香港に注目し、自由や民主の種を人々の心に植え付けた」と強調しました。その上で、「民陣がなくなっても、別の団体が理念を堅持し、市民社会を支援していくと信じている」と訴えました。」
さらに、弁護士会の自治も危うい。英国流の法制度をもつ香港には、2種類の資格の弁護士があり、《香港大律師公会》(法廷弁護士(バリスター)の弁護士会)と、《香港律師会》(事務弁護士(ソリシター)の弁護士会)の2会がある。その両者とも法の支配や人権、民主主義に親和的だが、《香港大律師公会》の方がより尖鋭だという。香港大律師公会のポール・ハリス会長は、民主派政治家への懲役刑を批判し、中国政府高官から「反中国」政治家と批判されている。
この弁護士会の姿勢を「政治主義」と攻撃するのが、中国共産党である。党の方針に忠実でなければ、偏向した政治主義なのだ。『人民日報』(中国共産党機関紙)8月14日付は、香港律師会に関する、大要以下の論説を掲載したと報じられている。
「香港律師会は会員に対して責任を持ち、専業を選び政治を行うべきではない。市民に対して責任を持ち、建設を選び破壊を行うべきでない。香港律師会の重要な役割は香港の法治精神を守ることで、香港法治の盛衰と存亡がその盛衰と存亡に直接の関係がある。」「反中乱港分子と一線を画せば、香港教育専業人員協会(教協)のように特区政府の認可を失うことはない。1国2制度の方針を擁護し、基本法を順守すれば、香港大律師公会のように中国本土との交流・協力を断絶し活路を失うことはない」「8月末(24日)の理事会改選で選出される新たな指導層が建設的役割を発揮するよう求める」
これは、明らかな権力による恫喝である。民主主義を標榜する国家では到底考えがたい。ここでいう「香港の法治精神を守る」とは、中国共産党の指導に服従するということで、法によって権力の横暴を縛るという立憲主義への理解の片鱗もない。民主制国家では、国民世論がこのような権力の暴言を許さない。敢えてすれば、次の選挙でこのような野蛮な政権は潰えよう。しかし、中国共産党のこのような横暴に歯止めはかからない。
先には、「香港民主主義の父」といわれた弁護士・李柱銘氏が、民主化集会開催をめぐり有罪判決を受けて、弁護士資格を剥奪されることになった、という報道もあった。「The Nothing」(無)の拡大は止まるところを知らぬように見える。果たして、本当に「人がいれば希望はある」だろうか。
(2021年7月20日)
東京五輪が、目も当てられぬぐちゃぐちゃの事態である。国民の過半が開会に反対し中止を求めている。これほど、開催国民から愛されず、期待されず、不人気で、中止せよと言われ続けたオリンピックは、過去に例を見ないだろう。おそらくは今後の五輪のあり方を変えるきっかけとなるだろう。
まずはコロナの蔓延である。本日の東京都内での新たな感染者数は1387人。火曜日としては過去最多人数という。先週火曜日の830人から、557人の増。率にすると67%のアップである。これは恐ろしいことになってきた。第5波は、第4波を遙かに凌駕する規模のものとして到来しているのだ。その重大なときに、ワクチンの供給もヨレヨレになっている。菅・河野の無責任な弁明が虚しく不安は募るばかり。そして、コロナに加えて、なんという不愉快な今日の暑さだ。こんなときに大規模運動会を予定したことは正気の沙汰ではない。
次々とバブルの穴が報告される。オリンピック出場のために来日した選手の逃亡が報じられている。国立競技場は強姦の舞台となった。得意げに自分のイジメ体験を吹聴していた異常者が開会式の楽曲を担当していたことが明らかになった。それでも、バッハや菅にも小池にも、危機意識が見えない。
本日の毎日新聞社会面トップの見出しの中に、『この大会呪われている』という言葉が踊る。一瞬そうかも知れないと誰でも思う。コロナに見舞われただけでなく、数々の不祥事の出来で、汚れてぐちゃぐちゃなのだ。
毎日の見出しは、正確には「小山田氏辞任 『この大会呪われている』 五輪組織委関係者嘆く」というもの。
私は、不明にして小山田圭吾を知らない。その辞任のインパクトの大きさはさっぱり分からないが、報道された彼が自ら吹聴する障害者の同級生2人に対する「イジメ」の凄惨さには唖然とするしかない。人が人にそこまで非道なことができるとは信じられないほどの悪行。人非人の所業といってもよい。このような明らかな犯罪行為が学校で行われ、処罰もされずに放置されてきたこと、それを加害者側が得意げにしゃべり、それを記事にする業界誌もあることが信じがたく、慄然とせざるを得ない。
この小山田イジメ記事は業界ではかなり知られたことだったという。小山田と接触した組織委の担当者も、業界には詳しかろうから、知っていたのではないか。あるいは少し調べれば分かること。こんな連中を集めてオリンピックをやっているのだ。
組織委関係者は毎日の記者に、「人間として許しがたく辞任は仕方ない。開幕直前までいろいろなことが起き、本当にこの大会は呪われている」と嘆いて見せた。しかし、そうではあるまい。おそらくは、東京五輪に群がっている連中が薄汚く、劣化しているのだ。
このぐちゃぐちゃのルーツは、安倍晋三の「フクシマは完全にアンダーコントロール」というウソの招致演説にある。その後に、竹田恒和(JOC会長)の2億円賄賂疑惑の発覚もあった。この二人だけでない。競技場デザイン問題もあり、エンブレム問題もあった。電通も、森喜朗も、佐々木宏も、そして小山田も、社会の劣化を象徴する人物なのだ。
薄汚くてぐちゃぐちゃな五輪に近づくと企業イメージが傷付く。「最高位スポンサー」というトヨタが、そう考えてオリンピックと距離を置く方針に踏み切った。五輪を利用したコマーシャルは一切打たず開会式にも出席しないという。これに、同じく最高位スポンサーであるパナソニックが続いた。同社も開会式には出席しないと発表した。「最高位」ではないがこれに次ぐ地位にあるというスポンサー企業では、NTT、NEC、富士通も開会式出席はないという。これは主催者側の大きな痛手だろう。東京五輪は、閉会後に巨大な負のレガシーを残すことになるだろうが、既に開会前からしっかりと負のイメージを焼きつけているのだ。
一方、その不人気の開会式に、天皇(徳仁)が出席し、開会を宣言することがきまったと報じられている。この出席の是非についての本人の意思はない。内閣の指示に従うだけの存在。自分のイメージにどう影響するかの考慮も、それ故の選択も一切許されない。それが彼の立場である。彼が日本の元首であるはずはないにせよ。
なお昨日、上野千鶴子や元駐仏大使の飯村豊らが、東京オリパラの中止を求める要望書と13万9576人分の署名を都や組織委に提出したことが報じられている。要望書では、大会を契機としてコロの爆発的な感染が懸念されるとして「危険なイベントを即刻中止するよう求める」というもの。
都庁で開いた記者会見で上野はこう言ったという。
「多くの人が中止を求めている中で、強行開催するのは正気の沙汰ではない。最後まで中止を訴えていく」
私もあきらめず、最後まで東京五輪中止を訴えていきたい。