澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

渡辺治が語る ー 「激動の10年の政治史と日本民主法律家協会の役割」

(2021年11月24日)
 作日(11月23日)は、日民協創立60周年記念集会だった。60年安保を闘った超党派の法律家運動が、安保後も憲法の理念を擁護し平和を守るための組織をつくった。それが、法律家の統一戦線組織としての日本民主法律家協会である。

 当時、「安保反対」「安保違憲」は国民の常識であった。今も、真っ当な市民の良識ととらえねばならない。

 60周年記念集会のメインの企画は、渡辺治さんの記念講演。演題は「激動の10年の政治史と日本民主法律家協会の役割」というもの。全国町村会館会議室での会場参加とオンライン(Zoom)、ユーチューブ配信でのハイブリッド企画。

 渡辺講演は、たっぷり2時間半。さすがに、緻密な説得力のあるものだった。その講演内容は、「法と民主主義」12月号に掲載されることになるので、詳細はそちらに譲るとして、私の印象に残ったことを少しだけ記録しておきたい。

 渡辺さんによると、2015年を転機として「共闘の時代」が幕を開けたという。共闘とは、「安倍政権の悪政にストップをかけようという市民と野党の共闘」である。このとき、集団的自衛権の行使は許されないとしてきたこれまでの政府解釈を突如強引に変更して「戦争法」を成立させた安倍政権に、未曾有の反対運動が盛り上がった。この運動の中で、市民運動の共闘がまず出来、その呼びかけで民主党・共産党・社民党などの野党による55年ぶりの共闘が実現した。こうして、市民運動と国会内での闘争の連携が前進した。

 この市民運動の高揚の土台には、自衛隊イラク派兵反対や有事法制反対の平和運動、9条の会運動の発展、超党派の反原発運動、そして幅広い法律家運動などの各分野の高揚と共闘への参加があった。

 共闘の一致点は、安保反対でも自衛隊違憲でもない。これまで政府が墨守してきた専守防衛路線の放擲、集団的自衛権の容認への怒りである。自衛隊を認める人も安保を容認する人も、その多くが《安保条約の攻撃的軍事同盟化・自衛隊の海外での武力行使・アメリカの戦争への日本の加担》には反対なのだ。

 こうして始まった「共闘の時代」だが、今回の衆議院選挙は、本格的な「野党共闘路線と自公政権との対立」の初戦であった、という。

 ようやく共通政策ができたのが選挙直前の9月8日。その共通政策の各地への浸透は不十分なままの選挙戦突入であった。それでも共闘の成果を確認することができる。この共通政策を各地域で具体化する努力が必要であり、それが出来たところでは小選挙区での勝利を勝ち取っている

 この立憲各党の初めての本格的な選挙共闘に対しては、初めて本格的な自公政権側からの攻撃がなされた。今回は、その攻撃への対応が不十分だったというほかはないが、次からの戦いにこの経験を活かさなければならない。

 この辺りはよく整理された分かり易い選挙総括と言うべきであろうが、興味深かったのは会場からの質問に対する回答としてなされた幾つかの解説。

 まずは連合をどう見るかということについて

 渡辺説では、連合を実体以上に過大視してはならないという。そもそも連合は一枚岩ではない。確かに民間大企業労組は共闘路線に反対ではあるが、官公労は決して反共闘派ではない。むしろ「平和フォーラム」を結成して積極的に野党共闘の一翼を担っている。

 連合中央は紛れもなく反共・反共闘の立場だが、全国に組織を持っている官公労の意見を無視することはできない。またトヨタに代表されるような大企業の労働組合は地域ではともかく、決して全国的な影響力を持つものではない。何よりもトヨタなど大企業正社員の支持政党は野党ではなく自民党である。自民党の新自由主義路線の徹底で大企業が儲かれば自分たちも潤う、という意識が今の民間大企業正社員労働者の意識であって、決して立憲民主党や国民民主を支持する立場ではない。

 維新については、言われる通り自民党に愛想をつかした保守票の受け皿となって、今回選挙では票と議席を伸ばしたということは基本的に当たっている。しかし、それだけでは説明のつかないことが多くある

 維新は徹底した新自由主義理念の政党と考えてよい。大阪で地方権力を握った維新は、保健所を減らし公立病院を減らし、公務員の人員を削減して人気を博した。さらに、こうして予算を浮かせたその金で高校教育無償化などというポイントの政策に金をつぎ込んでおおきな人気を勝ち得た。この路線は、財政に余裕のある大阪だからできたことで、余裕のない関西の他の府県でできることではない。

 また東京でも、維新は票を伸ばしたがこれは関西の維新票とは性格が違う。東京で維新を支持したのは富裕層、ないしは大企業正社員層とみて良い。自民党以上の徹底した新自由主義路線にもとづく政治改革に期待し歓迎した層である。
 

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Published in 水曜日, 11月 24th, 2021, at 23:23, and filed under 未分類.

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