本日(5月23日)夕刻、仕事を切り上げて国会前に駆けつけた。5時少し過ぎころだったが、衆議院の本会議は既に終わっていた。共謀罪法案は、自民・公明・維新の保守3党の数の力で、衆議院を通過した。4野党は、論戦に力を尽くしたと思う。しかし、衆寡敵せず、数の力に押し切られた。この数の力を、自民・公明・維新の非立憲・非民主3党に与えたのは、国民自身だ。
本来、民主主義とは多数決主義ではない。討議によって国民に利益をもたらす政策を見いだし合意して決定するプロセスである。言うまでもなく、重要なのは審議時間ではなく、よりよい政策に到達すべき議論の深まりこそが重要だ。
国民の自由にかくも危険きわまる法案である。討議を通じて、その欠陥が炙り出されつつあった。当然に廃案になるか、大きく修正されるべきことが明らかとなってきていたではないか。277罪の共謀罪を作ろうという法案。1罪について4時間の議論を重ねれば1000時間が必要だ。30時間では、ようやく議論が緒に就いたばかり。熟議にはほど遠い醜態をさらしての審議打ち切りと採決の強行。
自・公・維の思惑は、「この欠陥法案は審議を重ねるほどにボロが出る。日が経つに連れ反対世論が大きくなるのだから、無理は承知で早めに審議を打ち切って成立させるに越したことはない。国民がこの法案の危険性を見抜いて、大きな反対運動が盛りあがらないうちに」というもの。そのよこしまな思惑を潰しきることができない。これが、私たちの国の民主主義成熟度の現状なのだ。
もちろん、共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)は衆院を通過しただけで、まだゴールは先のことだ。ようやく、法案の危険性は国民の間に浸透しつつある。メディアも本格的な報道や論評をするようになってきた。
これまで、「テロ等準備罪」という、取って付けた法案名の印象操作が功を奏してきたのがもどかしい。「テロ制圧のためなら、多少の人権制約に行き過ぎがあっても、やむをえないじゃないか」「テロ対策は、屋上屋を重ねてもよいじゃないか」「安全のためだ。自由だの人権だのと言っておられないのでは」という、気分がありはしないか。
しかし、この法案はテロ対策を目的としたものではない。テロ防止に役に立たない。もともとは、TOC条約(パレルモ条約)の締結に必要という政府の説明だった。同条約は、マフィアやヤクザという組織暴力に対する経済面からの封殺を目的とするもので、政治的テロの予防や制圧を目的とするものではない。
しかも、277もの犯罪について実行行為着手以前の「共謀」の段階で摘発しようという無茶な法律を作ろうというのだ。犯罪の実行行為がないのに処罰の対象となるのだから、「内心を処罰する悪法」と言われ、刑罰権の恣意的な発動に道を開くことになる。何が国民に禁止される行為で、何が自由になしうる行為なのかの境界が不明なる。権力は、その恣意でどんな行為も摘発しうることになる。暗い監視社会が到来しかねない。
その指摘に、政権の側はこう反論する。「それは杞憂だ。この法は、『テロリズム集団その他の組織的犯罪集団』の活動として行われる行為だけを処罰するもので、「一般人が捜査の対象になることはない」。これに欺されてはならない。
そもそも、「一般人」とは何だ。定義なしに「一般人が捜査の対象になることはない」ということはまったく無意味である。刑法は、殺人・窃盗・詐欺・放火等々の犯罪行為を定める。「犯罪を犯す者は、一般人ではない」と言えば、「全ての刑事法の全ての犯罪は、犯罪者だけを対象とするもので、一般人を対象とするものではない」ことになる。
むしろ政権は、特定のグループに属する人々を念頭において、それに属しない人々を「一般人」と言っているとの疑念を払拭できない。政権の頭の中では、国民が二分されている。処罰対象の「組織的犯罪集団たりうる、特定グループ」とそれ以外の「一般人」に。『テロリズム集団その他の組織的犯罪集団』の定義は極めて曖昧なのだ。だから、「特定のグループ」は、法の運用次第、どのようにでも構想できることになる。
1925年成立の治安維持法においては、「特定のグループ」は、法文に書きこまれていたわけではないが、明らかに共産党であった。つまり、「この法律は、共産党だけに適用します。それ以外の『一般人』が捜査の対象になることはない」「だから、『一般の方』が案ずるには及ばない」としての立法だった。
しかし、治安維持法がその後大きく育ち、共産党だけではなく、社会民主主義者にも、労働運動にも、在日の民族独立運動にも、平和運動にも、報道の自由にも、教育運動にも、宗教家にも弁護士にも、猛威を振るったことは周知の歴史的事実。「特定のグループ」は限りなく肥大し、「一般人」は限りなくその範囲を狭めていったのだ。
歴史的教訓として確認しなければならないことは、弾圧立法の下において、国民はけっして「自分は一般人の範疇」として安閑としてはおられないということなのだ。それは、特定の人の自由を見殺しにするにとどまらず、自分が享有するものでもある自由一般を失うことにつながる。共謀罪法案とは極めて曖昧な構成要件で、日常行為が広く犯罪として摘発される危険性をもつことにある。まずは、「特定グループ」がターゲットになるのではあろうが、やがては誰をも、摘発の対象にしかねないのだ。
これからが、反対運動の本番だ。私も非力ながら、できるだけのことをしなければならない。あとになって悔やむよりは、今の苦労を選ぶべきなのだから。
(2017年5月23日)
2017年5月19日
共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会
社会文化法律センター 代表理事 宮里邦雄
自由法曹団 団長 荒井新二
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 原和良
日本国際法律家協会 会長 大熊政一
日本反核法律家協会 会長 佐々木猛也
日本民主法律家協会 理事長 森英樹
日本労働弁護団 会長 徳住堅治
明日の自由を守る若手弁護士の会
共同代表 神保大地・黒澤いつき
本日,衆院法務委員会において、共謀罪(「テロ等準備罪」)法案を含む組織犯罪処罰法改正案の採決が強行された。来週にも本会議への上程を計画していると伝えられる。私たちは,この暴挙に対し,満腔の怒りをもって強く抗議する。
そもそも、刑法は、どの行為が犯罪とされるかを定めているが、裏返せば、犯罪とされずに自由に行動できる範囲を定めているといえる。犯罪とは人の生命や身体自由名誉財産に被害を及ぼす行為と説明され、法益の侵害又はその現実の危険性が生じて初めて事後的に国家権力が発動されるというシステムは,我々の社会の自由を守るための制度の根幹である。
約300もの多くの犯罪について共謀の段階から処罰できることとする共謀罪法案は、既遂処罰を基本としてきた我が国の刑法体系を覆し、人々の自由な行動を制限し、国家が市民社会に介入する際の境界線を、大きく引き下げるものである。
私たちは沖縄ですでに弾圧の道具に使われている威力業務妨害罪の共謀罪が法案化されていることに警鐘を鳴らしたい。1999年に制定された組織犯罪処罰法によって、組織的威力業務妨害罪、組織的強要罪、組織的信用毀損罪が作られ、法定刑が長期3年から5年に引き上げられ、廃案となった2003年法案で共謀罪の対象犯罪とされた。これらの犯罪は、もともと構成要件があいまいで、労働運動などの弾圧法規として使われてきた問題のある犯罪である。この共謀罪はひとつだけでも治安維持法に匹敵する著しい危険性を持っている。自民党の2007年小委員会案では、これらの犯罪は共謀罪の対象から外されていたのに、これを何が何でも共謀罪の対象としようとしている安倍政権には、市民の異議申し立て活動に対する一網打尽的弾圧の意図を疑わざるを得ない。
「組織犯罪集団」の関与と「準備行為」を要件としても、法案の適用範囲を厳しく限定したものとは評価できない。首相は、一般人は処罰の対象にならないと説明しているが、同法案では、原発反対運動や基地建設反対運動などに適用され得る組織的威力業務妨害罪や、楽譜のコピー(著作権法違反)や節税(所得税法違反)など市民が普通の生活の中で行う行為が犯罪に問われかねないものも,対象犯罪に含まれている。そもそも、同法案には一般人を対象としないなどという文言はなく、「計画」と「準備行為」があれば、条文解釈上、誰でもが処罰対象となり得る規定となっている。現在の審議状況では、到底、私たち市民が納得できるだけの充分な説明が尽くされたとは言えない。警察は今でも,市民運動に関わる人の情報を収集したり,イスラム教徒だというだけで調査の対象とするなどの違法なプライバシー侵害を繰り返しているが,共謀罪が制定されれば、今以上に,市民の行動や,人と人との会話、目配せ、メール、LINEなど、人の合意のためのコミュニケーションそのものが広く監視対象とされる可能性が高い。政府は,共謀罪の制定が国連越境組織犯罪防止条約(TOC条約)の批准のために不可欠であるかのように主張するが,諸外国の例を踏まえれば、このような広範な共謀罪法案を成立させることなく国連条約を批准しても、国際的な問題は全く起きるものではない。また,この条約の目的はマフィアなどの経済的な組織犯罪集団対策であり、テロ対策ではない。日本は、国連の13主要テロ対策条約についてその批准と国内法化を完了している。法案には「テロリズム集団その他の組織犯罪集団」という言葉は入れられたものの、テロリズムの定義もなく、法の適用範囲を限定する意味はない。
共謀罪法案をめぐる衆議院法務委員会の審議・運営は,政府が野党議員の質問にまともに答える姿勢を放棄して「一般市民は捜査の対象にもならない」など根拠のない答弁を機械的に繰り返したり,野党議員が大臣に答弁を求めたにもかかわらず政府職員が勝手に答弁するなど,異常かつ非民主的という他ないものであった。5月17日,野党議員が金田法務大臣の解任決議案を提出したことは,道理にかなったものである。こうした異常な審議の挙句,いまだ審議すべき重要問題が多数積み残されたまま,本日,採決が強行されたことは,暴挙といわざるを得ない。
5月16日報道された朝日新聞の世論調査では、共謀罪法案を今国会で成立させる必要はないという意見は64%に達し、必要とする意見18%を大きく上回った。共謀罪法案反対の世論は急速に広がっており,国民の多数は、この間の審議を通じて浮かび上がってきた法案の多くの問題点について,審議を深めることを願っている。私たち共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会は、我が国の人権保障と民主主義の未来に大きな禍根を残す共謀罪法案の成立を阻止するため、引き続き全力を尽くす決意である。
以上
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以上の声明の「超訳ver.」が発表されている。「明日の自由を守る若手弁護士の会」の文責になるもの。これも、ご紹介しておきたい。
今日、衆議院の委員会で、共謀罪をつくる法律案が無理やり通されました。来週にも、衆議院の本会議にかけられる計画だと報じられています。私たちは、心のどん底から怒ってるので抗議のシャウトをします。
刑法という法律は、どういうことをすれば犯罪になるか、どういう行為は自由にしていいのかを決めています。人の命や身体、財産などを傷つけたり、傷つける危険性があってはじめて、国家権力が動く、というシステムになっています。そうでないと、私たち自由に行動できないからです。共謀罪の法案は、約300もの犯罪について、話し合っただけのときから刑罰をあたえることができるとしています。この法案は、命などの危険があってはじめて罰されるというシステムをひっくり返し、私たちが自由に行動できないようにし、国家が市民の行動に簡単に口を出せるようにするものです。沖縄では、「威力業務妨害罪」という犯罪がすでに、市民の行動を取り締まるための『名目』に使われてしまっています。今回の法案では、その「威力業務妨害罪」も話し合えば共謀罪になるとされているので、めちゃくちゃ危険です。「組織的威力業務妨害罪」という犯罪は、もともと「何をすれば犯罪になるのか」があいまいで、労働組合の活動などをつぶすために使われてきたので、大問題です。これひとつとっても、戦前の治安維持法と同じレベルでキケンな法律なのです。自民党は、2007年の党内の議論では「組織的威力業務妨害罪」などは共謀罪に入れていなかったのに、安倍政権は、なにがなんでも話し合っただけで犯罪にしようとしています。「物言う市民」を手当たり次第に取り締まるつもりだとしか思えません。首相は、イッパンジンは処罰されないと言っています。でも、「組織的威力業務妨害罪」は、原発反対や米軍基地反対の活動に使われかねません。楽譜のコピーは著作権法違反になりますし、節税も所得税法違反と疑われかねません。こういった行為は、市民が普通にやっていることなのに、話し合っただけで犯罪になりえるのです。だいたい、「イッパンジンは処罰されない」なんて、法案のどこにも書いてありません。「計画」して「準備行為」があったとされれば、誰でも処罰される可能性があるのです。全然納得できません。警察は今でも、犯罪をしていない人の個人情報を集めたり、イスラム教徒だというだけで尾行したりして、プライバシーを侵害しています。共謀罪ができれば、今以上に、私たちの行動や会話、目線、メール、LINEなど、コミュニケーションそのものが監視されるおそれがあります。政府は、「共謀罪を制定しないとTOC条約を批准できない」と言っていますが、諸外国を見てみても、こんな広範な共謀罪法案を作らずに条約を批准しても、問題ありません。そもそもTOC条約はマフィア対策のもので、テロ対策ではありません。日本はすでに国連の13個のテロ対策条約を批准しているし国内にもバッチリ適用できています。共謀罪法案にはとってつけたように「テロリズム集団その他の組織犯罪集団」って言葉は入っていますが、テロリズムの定義もなく、あたかも「テロ対策」っぼく見せるためだけのものです。
衆議院法務委員会では、政府は野党議員の質問にまっっったくまともに答えず、「一般市民は捜査の対象にならない」と根拠レスな答弁をただただ繰り返したり、野党議員が大臣の答弁を求めているのに政府の職員が勝手に答弁したり、異常としか言いようがなく、民主主義を踏みにじるものでした。5月17日に野党議員が金田法務大臣の解任決議案を提出したのは、当たり前すぎるほど当たり前のことです。こんなめちゃくちゃな審議のあげく、まだまだ審議しなければならない問題は山ほどあるのに、今日、強行採決されたことは、「暴挙」以外の何者でもありません。
5月16日に報じられた朝日新聞の世論調査では、「共謀罪法案を今国会で成立させる必要はない」という声は64%に達し、「必要」という声(18%)を大きく上回りました。共謀罪法案に反対する声は猛烈なスピードで広がっていて、多くの国民が、衆議院での審議を通じて浮かび上がってきたこの法案の「ヤバさ」について、もっと審議してよと願っています。私たち共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会は、日本の人権保障と民主主義の未来を大きくゆがめるであろう共謀罪法案の成立を食い止めるため、これからも全力を尽くします。
以上
ただいま、大谷昇文京春闘共闘会議議長から「STOP共謀罪、安倍暴走政治を許さない! 5・18 文京区民集会」の主催者としての開会のご挨拶がありました。引き続いて共謀罪法案審議の内容についての報告と学習に移ります。
主催者のご挨拶にもありましたように、はからずも風雲急を告げる事態での共謀罪反対集会となりました。本集会には、特別ゲストとして、暴走する安倍内閣の暴走法務大臣金田勝年さんをお招きいたしております。野党や市民からは「歴史に先例のない無能な法務大臣」と酷評されながら、数の力で救われてホッとしておられる金田法務大臣から、上程されている「共謀罪法案」の内容について、ご説明をいただきたいとの企画です。
ご紹介申しあげます。こちらが金田法務大臣です。実は、澤藤大河弁護士が法務大臣になりきって、共謀罪についてのご質問をいただき、ホンモノの法務大臣よりはるかに上手に、分かり易く共謀罪法案について、解説してもらいます。
もっとも、金田法務大臣は「共謀罪法案」という言葉を使いません、正確には「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」なのですが、どういうわけかこの法案を、提案者である内閣は「テロ等準備罪法案」と略称しているのです。政府の言い分がいかにインチキであるか、法務大臣自らに語っていただくことにいたします。
この金田法務大臣から説明を引き出す質問者役には、結束して共謀罪法案の廃案をめざす立場にある4野党の中から、日本共産党の福手ゆう子さんにお願いいたしました。実は、4月15日にも、同じ会場でよく似たシナリオで、福手さんに法務委員会での質問者役をお引き受けいただいたのです。これが、大変好評でしたので地元の大規模な集会に本日もう一度の登場をお願いした次第です。
その質問と回答のあと、金田法務大臣ご自身が、パワーポイントを駆使して、共謀罪の危険な本質と政権のねらいを解説します。そして、若干の質疑や意見交換のあと、集会アピールを採択して、デモ行進に移ることにいたします。
なお、皆様ご存じのとおり、共謀罪法案は3月21日閣議決定を経て国会上程され、衆議院法務委員会で審議が続いています。本日5月18日、つまり今日が法務委員会の強行採決かとの観測が報じられておりましたが、昨日17日に4野党共同の金田法務大臣不信任決議案が提出されて、現在審議がストップしております。
本日、午後1時開会の衆院本会議で同不信任決議案の審議が行われ、提案理由、賛成討議、反対討議を経て、先ほど残念ながら否決されました。場合によっては、明19日に法務委員会で自民・公明・維新の3党が強行採決し、週明けの23日にも、衆院通過となるかも知れないとの報道が飛びかっています。
是非とも、本集会で共謀罪の危険性を確認し、法案阻止の決意を固めようではありませんか。
では、質疑をお二人にお任せかせしますので、どうぞ。
Q 日本共産党の福手ゆう子でございます。
本日は、金田法務大臣には、わざわざ地域の共謀罪反対集会にご出席いただきありがとうございます。
最初にお伺いしますが、まだまだ議論が煮詰まらない法案審議ではありせんか。民主主義の常識から言えば、明日の強行採決などあってはならないこととと思いますが、大臣のお考えを聞かせてください。
A 審議が煮詰まったか否かは、私ではなく、法務委員会の委員長と、理事の皆さんが決めることですから、責任あるお答えは控えさせていただきます。
でも、ここは国会ではないから、本音をしゃべらせてもらえば、まあ、いつまでもだらだらと質疑を繰り返していてもしょうがない。衆議院では、30時間の審議があれば採決してもいいだろうとは思っています。委員会審議時間はもう26時間を超えていますから、30時間までは、もう少しの我慢と辛抱。それが過ぎたら、もう、こっちのもの。
Q なるほど、呆れたお考え。不信任決議案の中に、あなたのことを「国務大臣としての資質の欠如ぶりは、憲政史上例を見ないものと言っても過言でない」といっていることが、まことに的確であることがよく分かりました。
時間がありませんので、本論に移ります。大臣。なぜ、今、共謀罪の新設が必要なのでしょうか。
この共謀罪法案が成立すれば、広範な犯罪について、実行行為がなくとも共謀あるいは準備行為の段階で刑罰を科すことが可能になります。当然に、捜査も可能となります。つまりは犯罪の着手がなくとも、常に一般の市民に逮捕や捜索の危険が生じることになります。私たちの生活が、常に捜査機関の監視のもとにおかれることにもなりかねない。
とりわけ、政府が好もしいと思わない団体の行動については、恣意的に監視し取り締まることができるようになってしまいます。つまり、治安立法として、また弾圧法規として利用される危険な法案ではありませんか。だから、国民の強い反対を受けて、過去に3度も提案されながら、その都度廃案に追い込まれてきたではありませんか。
にもかかわらず、今回、4度目の法案提出となったその理由を明確に述べていただきたい。
A お答えのまえに、一言申しあげます。
今、あなたのご質問に「共謀罪法案」という法案名が出てきました。しかし、「共謀罪法案」ではございません。正確には「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」でありまして、これを提案者である内閣は「テロ等準備罪法案」と略称しているわけででございます。
法律の名称は、正確におっしゃっていただきたい。あなた方は、すぐにレッテルを貼りたがるが、これまで3度廃案となった「共謀罪法案」と今回提案の「テロ等準備罪法案」とはまったく違うものであることを最初に申しあげておきます。
Q えっ? では、これまで3度廃案となった「共謀罪」と、今回提案の内閣が「テロ等準備罪法案」という法案が、どう違うのか。そこから、ご説明をいただきましょうか。
A まず、分かり易いところでは、テロ等準備罪の対象となる犯罪の数が違います。
共謀罪法案では、実行行為への着手がなくても共謀の段階で処罰される犯罪の数は、676もあったのです。今回は、これをわずか91本の法律の、たった277罪に絞り込んだのです。どうです。676を277ですよ。全然違うでしょう。
Q 数の違いは大したことではありません。これこそ現代版「五十歩百歩」というべきでしょう。刑法や憲法の大原則を崩していることが問題なのではありませんか。
A いや、もちろん数だけというわけではありません。何が犯罪で、何が犯罪ではないかかが大変明瞭になったのです。
ご存じのとおり、「共謀罪」という罪を新たにつくろうということではありません。277の今ある罪を、「共謀」の段階でつかまえようと言うことです。具体的には、今ある組織的犯罪処罰法という法律に、6条の2という、分かり易い条文を新設することにしました。どんなに分かり易いか、その新設条文を読み上げてみましょう。
「次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮」
どうです。分かり易いでしょう。あとは、別表四と、別表三に書いてある277の罪のリストを探し、条文をよく読めばよいのです。しかも、捜査機関が濫用しないよう、厳格にいくつもの縛りがかけられていることがよくお分かりでしょう。
Q よくお分かりでしようと言われても、ちっとも、分からない。
「人を殺す」「人を傷つける」「財物を窃取(せっしゅ)する」という条文の記載なら、分かり易い。この共謀罪はことさらに分かりにくく作られているではありせんか。こんな条文がどう使われるのか、不安でなりません。
本筋に戻って、いったいなぜ、いま4度目の法案提出となったのかその理由をお聞かせください。
A これは、国際組織犯罪防止条約の批准のために必要な法案であると考えております。
この法案が成立すれば、条約の批准ができます。そうすることで、効果的に国際的な組織犯罪を防止し,テロをも防止することができます。
この条約は平成15年9月に発効しています。この条約については,同年5月にその締結について国会の承認を得ておりますが、我が国としても,早期に批准することが必要です。我が国も,国際社会の一員として,この条約を早期に批准し,国際社会と協力して,一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するため,この条約が義務付けるところに従い,「テロ等準備罪」を新設する必要があることをご理解ください。
Q 国際組織犯罪防止条約、これはテロ対策とは無関係でしょう。だいたい何年に締結された条約ですか。
A 平成12年です。
Q 西暦2000年ですね。2001年の9・11事件の前年のことじゃないですか。テロが国際的な関心事になる前の条約ですよ。この条約はパレルモという都市で締結されて、パレルモ条約とも呼ばれているわけですが、パレルモとは、イタリア、シチリア島の最大都市でマフィアの本拠地といわれているところ。マフィアやヤクザ、そういう組織犯罪を対象にした条約ではありませんか。経済的なマネーロンダリングを防止することを主たる目的とした条約であって、政治的なテロを対象にした条約ではないことをお認めいただきたい。
A あなたは、よく勉強なさっているようですが、組織的な犯罪に対する対応は、経済的なマネーロンダリング防止だけではなく、この際、今や待ったなしのテロ対策を盛りこんだ方がよいに決まっていると考えています。
Q 新たな刑罰法規を作ろうというのですから、差し迫った必要性がなくてはならないわけです。我が国に、テロが差し迫っているというのでしようか。日本がテロの脅威にさらされているという具体的な根拠をお示しください。
A 世界中で、不安定な地域がたくさんあります。これだけ安全保障体制が揺らいでおるわけでありまして、先進諸国、たとえばアメリカでの9・11事件、イギリス・ロンドンでの連続爆破テロ、フランス・パリでの出版社襲撃事件などが起こっているわけです。
日本だけが、これらの事件に目を背けていていいのでしょうか。自由と民主主義・人権という共通の価値を守るために、憎むべきテロリストとの戦いに、日本だけが安穏としていることはできないのです。
Q 世界の情勢を聞いているのではありません。立法事実として、つまり、新たな法律を作らなければならない根拠として、日本にテロの具体的な危険があるかとお聞きしています。
A それはいろいろな考え方がありえます。日本人が、イラクやシリアで誘拐され、殺害される事件も起こっている。
Q 日本でのテロが差し迫っている状況にあるのかと聞いています。
A 我々は、テロの脅威から、国民を守るべき責務を負っております。常に備えなければならないのです。オリンピックも迫っております。安全なオリンピックを開催するためにも、どうしてもテロ等準備罪は必要なのです。
Q 日本にテロが迫っていると、あなたですら言えないような状態で、どうして包括的な共謀罪が必要と言えるでしょうか。
国連のテロ防止関連条約は13件あり、日本はすべてその批准を終え、それに対応した国内法の整備もできているではありませんか。たとえば、「テロリズム資金供与防止条約」「プラスチック爆薬探知条約」「核物質の防護に関する条約」「空港不法行為防止議定書」「海洋航行不法行為防止条約」「プラスチック爆薬探知条約」「爆弾テロ防止条約」などなど。テロ対策の法整備はきちんとされており、共謀罪法案が成立しなければテロ対策がされていない訳ではありません。
どうして、屋上屋を重ねるような、「共謀罪」の新設が必要でしょうか。
A 政府といたしましては、国民をテロから守る責務を負うものです。何重に屋を重ねても、念には念を入れて、国民の安全を守る法律を作ろうとしているわけでございます。
Q 問題は、不必要な法律というだけのものではなく、国民の人権を侵害する有害な法律であるということなのです。この共謀罪法案、もし成立してしまったら、犯罪の実行とは無関係に、ただ話し合っただけで処罰されてしまうのではありませんか。
A そういう印象操作はやめていただきたい。絶対にそんなことは、ないのであります。先ほど読み上げた条文に書いてあったとおり、まずは、組織的犯罪集団の団体の活動でなければ、処罰されることはありません。しかも、共謀が成立しただけ、つまり計画しただけでは犯罪が成立しないことは、法文上明らかであります。「準備行為」が必要なのです。一般の方が話しているだけで犯罪者になるなど、絶対にあり得ません。
Q では「組織的犯罪集団」から、お伺いします。労働組合や、市民団体が組織的犯罪集団に当たることはないのでしょうか。
A 組織的犯罪集団だけしか、対象とならないことは、明文で規定しております。
適法な活動をしている労働組合や、その他の団体は、その目的が犯罪はないのですから、当然対象とはなりません。繰り返しますが、この法律はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団を取り締まるのが目的で、一般の方には無関係なのです。
Q 更にお尋ねします。既に存在する適法な団体の目的が、ある時点から犯罪目的に変化したと認定することはあり得ないのですか。
A 一般論としてお答えすると、この法律は組織的犯罪集団の組織的行為だけを処罰対象とし、一般人は対象とならないことは申しあげたとおりです。しかし、もしこれまでは合法的な活動をしていた団体が、ある時点から犯罪を企む集団となったとすれば、すでにその集団の構成員は一般人ではないのです。適法な団体の目的が、ある時点から犯罪目的に変化することがないとは言えません。
Q おや、大変な答弁が出た。つまり、「この法律が罰するのは、一般国民ではない」という意味は、「この法律が罰するときには、既に一般人ではないからだ」と、こういうことではありませんか。これでは、何の縛りにもならないではありませんか。
A あなたの解釈は、あまりに一方的で偏っているのではないでしょうか。重大犯罪を目的とする団体に、それと知って属しているということは、一般国民の目から見て、一般人とは呼べないことは通常の感覚ではないですか。
Q 企業でも、市民団体・労働組合、サークルでも、適法な通常の団体が、ある時点から犯罪目的だと認定されることはありうるのだから、国民誰でも、共謀罪の犯罪者になり得るということじゃないですか。
A 重大な犯罪を計画している団体に属して、具体的な重大犯罪を計画していたらできるだけ早期に、摘発せられるべきは当然ではありませんか。
Q ついに、国民の誰もが共謀罪適用の対象になりうることが分かりました。しかも、犯罪目的があるかどうか、計画があるかどうか、捜査段階では、判断するのは、裁判所ではなく、捜査機関。つまりは警察になるわけです。その結果、警察が、国民生活に監視の目を光らせ、あらゆる団体が犯罪目的をもっていないかを調べる。これは、まさに現在の治安維持法ではないか。
A 全くそうではございません。
治安維持法は、私有財産制を否定し、国体を変革しようとするという、思想そのもの、つまり、犯罪とは切り離して、特定思想を有する団体を結成すること、加入することを処罰する法律でございます。
今回の、テロ等準備罪は、思想のみを処罰するのものではありません。準備行為という外に表れた具体的行為の存在を要求しています。
Q いったい、その準備行為とは、どのようなものだというのですか。
A 先ほど、分かり易い条文を朗読したなかに書いてあったじゃありませんか。もう一度その部分だけを読見上げて見ましょう。
「資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為」というものです。
Q 「資金又は物品の手配」と言えば、ATMから現金を下ろすこと、コンビニで買い物をすること、日常の行為じゃないですか。「関係場所の下見」と言えば、散歩も花見も含まれる。これじゃ誰もがつかまるじゃないですか。
A だから、一般人か、怪しい奴か、常日頃から警察が監視しておけばよいのですよ。監視を徹底させておきさえすれば、きのこ狩りでも、双眼鏡をもって花見をしても、一般人は安心なのです。怪しいやつだけをつかまえるのです。
Q 結局は怪しいか怪しくないかは、捜査機関が判断する。政府に批判的な活動をしていると、犯罪を行っているとして、捜査の対象とされかねない。しかも、計画と準備で犯罪が成立するのだから、団体監視を常に行うことが主たる捜査方法になることは明白ではありませんか。団体に対する警察の監視、団体内部でも密告を恐れて活動が萎縮する。これこそ治安維持法そのものではないですか。
A あなたは、少し感情的になっておられる。お答えしたとおり、一般人が処罰されることはないのです。
治安維持法だって、一般人は処罰されることはなかったわけですよ。天皇制を否定したり、社会革命をたくらむような、当時の国賊・非国民を取り締まったわけで、けっして善良な一般人が取り締まりの対象となったわけではないのです。
Q 具体例でお伺いしましょう。
労働組合が、団体交渉での使用者側の姿勢が不誠実だ、のらりくらりの回答でいっこうに進展しない。もう我慢できない。みんなで社長をカンヅメにしててつやの交渉をやろうと相談をした。徹夜になりかねないから、おにぎりを買っておこうとコンビニで買い物をした。つまり、物品の手配です。
277の対象犯罪の一つに、組織的監禁罪がはいっています。すると、おにぎり購入の時点で、共謀罪が成立し、その後交渉は急転妥結して徹夜交渉にはならなかった。それでも犯罪は成立するということになりませんか。
A 乱暴な組合員たちですね。日常的な監視が必要だとは思いますが、共謀罪で処罰できるかどうか、「テロ等準備罪」として処罰可能かどうか、なんともお答えのしようがない。
Q つまり、犯罪が成立しうるから検討が必要だということですね。
A それはそのとおり。犯罪が成立するか否かは、常に微妙な事実の問題を含んで諸般の事情をよく調べなければなりません。
Q 諸般の事情をよく調べるとは、つまり、とりあえず逮捕や家宅捜査をしなければならないと言うことではありませんか。
A それは、そのとおりであることもあれば、そうではないこともある。一概には申しあげられないところです。
Q 結局、共謀罪は成立しうる、少なくとも、絶対に共謀罪が成立しないわけではないということを確認しました。
共謀罪は、国民の自由な団体活動のみならず、表現の大幅な萎縮を生み出し、思想・信条の自由を侵害する、違憲なものであることが明白になりました。けっして成立させるわけにはいきません。
戦前の悪名高い治安維持法で大弾圧を受けたのは、共産党だけではありせん。出版人も、労働組合員も、平和運動も、教育運動も、宗教家もでした。
私たちは、日本国の主権者として、絶対にこのような弾圧法規の成立を許しせん。あくまで、この法案の廃案を求める国民運動の先頭に立つ覚悟を述べて、締めくくりの言葉とさせていただきます。会場の皆様のうちで、共謀罪の廃案にご賛同いただける方には拍手を
A お答えのまえに、一言申しあげます。
今、あなたのご質問に「共謀罪法案」という法案名が出てきました。しかし、「共謀罪法案」ではございません。正確には「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」でありまして、これを提案者である内閣は「テロ等準備罪法案」と略称しているわけででございます。
法律の名称は、正確におっしゃっていただきたい。あなた方は、すぐにレッテルを貼りたがるが、これまで3度廃案となった「共謀罪法案」と今回提案の「テロ等準備罪法案」とはまったく違うものであることを最初に申しあげておきます。
Q えっ? では、これまで3度廃案となった「共謀罪」と、今回提案の内閣が「テロ等準備罪法案」という法案が、どう違うのか。そこから、ご説明をいただきましょうか。
A まず、分かり易いところでは、テロ等準備罪の対象となる犯罪の数が違います。
共謀罪法案では、実行行為への着手がなくても共謀の段階で処罰される犯罪の数は、676もあったのです。今回は、これをわずか91本の法律の、たった277罪に絞り込んだのです。どうです。676を277ですよ。全然違うでしょう。
Q 数の違いは大したことではありません。これこそ現代版「五十歩百歩」というべきでしょう。刑法や憲法の大原則を崩していることが問題なのではありませんか。
A いや、もちろん数だけというわけではありません。何が犯罪で、何が犯罪ではないかかが大変明瞭になったのです。
ご存じのとおり、「共謀罪」という罪を新たにつくろうということではありません。277の今ある罪を、「共謀」の段階でつかまえようと言うことです。具体的には、今ある組織的犯罪処罰法という法律に、6条の2という、分かり易い条文を新設することにしました。どんなに分かり易いか、その新設条文を読み上げてみましょう。
「次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮」
どうです。分かり易いでしょう。あとは、別表四と、別表三に書いてある277の罪のリストを探し、条文をよく読めばよいのです。しかも、捜査機関が濫用しないよう、厳格にいくつもの縛りがかけられていることがよくお分かりでしょう。
Q よくお分かりでしようと言われても、ちっとも、分からない。
「人を殺す」「人を傷つける」「財物を窃取(せっしゅ)する」という条文の記載なら、分かり易い。この共謀罪はことさらに分かりにくく作られているではありせんか。こんな条文がどう使われるのか、不安でなりません。
本筋に戻って、いったいなぜ、いま4度目の法案提出となったのかその理由をお聞かせください。
A これは、国際組織犯罪防止条約の批准のために必要な法案であると考えております。
この法案が成立すれば、条約の批准ができます。そうすることで、効果的に国際的な組織犯罪を防止し,テロをも防止することができます。
この条約は平成15年9月に発効しています。この条約については,同年5月にその締結について国会の承認を得ておりますが、我が国としても,早期に批准することが必要です。我が国も,国際社会の一員として,この条約を早期に批准し,国際社会と協力して,一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するため,この条約が義務付けるところに従い,「テロ等準備罪」を新設する必要があることをご理解ください。
Q 国際組織犯罪防止条約、これはテロ対策とは無関係でしょう。だいたい何年に締結された条約ですか。
A 平成12年です。
Q 西暦2000年ですね。2001年の9・11事件の前年のことじゃないですか。テロが国際的な関心事になる前の条約ですよ。この条約はパレルモという都市で締結されて、パレルモ条約とも呼ばれているわけですが、パレルモとは、イタリア、シチリア島の最大都市でマフィアの本拠地といわれているところ。マフィアやヤクザ、そういう組織犯罪を対象にした条約ではありませんか。経済的なマネーロンダリングを防止することを主たる目的とした条約であって、政治的なテロを対象にした条約ではないことをお認めいただきたい。
A あなたは、よく勉強なさっているようですが、組織的な犯罪に対する対応は、経済的なマネーロンダリング防止だけではなく、この際、今や待ったなしのテロ対策を盛りこんだ方がよいに決まっていると考えています。
Q 新たな刑罰法規を作ろうというのですから、差し迫った必要性がなくてはならないわけです。我が国に、テロが差し迫っているというのでしようか。日本がテロの脅威にさらされているという具体的な根拠をお示しください。
A 世界中で、不安定な地域がたくさんあります。これだけ安全保障体制が揺らいでおるわけでありまして、先進諸国、たとえばアメリカでの9・11事件、イギリス・ロンドンでの連続爆破テロ、フランス・パリでの出版社襲撃事件などが起こっているわけです。
日本だけが、これらの事件に目を背けていていいのでしょうか。自由と民主主義・人権という共通の価値を守るために、憎むべきテロリストとの戦いに、日本だけが安穏としていることはできないのです。
Q 世界の情勢を聞いているのではありません。立法事実として、つまり、新たな法律を作らなければならない根拠として、日本にテロの具体的な危険があるかとお聞きしています。
A それはいろいろな考え方がありえます。日本人が、イラクやシリアで誘拐され、殺害される事件も起こっている。
Q 日本でのテロが差し迫っている状況にあるのかと聞いています。
A 我々は、テロの脅威から、国民を守るべき責務を負っております。常に備えなければならないのです。オリンピックも迫っております。安全なオリンピックを開催するためにも、どうしてもテロ等準備罪は必要なのです。
Q 日本にテロが迫っていると、あなたですら言えないような状態で、どうして包括的な共謀罪が必要と言えるでしょうか。
国連のテロ防止関連条約は13件あり、日本はすべてその批准を終え、それに対応した国内法の整備もできているではありませんか。たとえば、「テロリズム資金供与防止条約」「プラスチック爆薬探知条約」「核物質の防護に関する条約」「空港不法行為防止議定書」「海洋航行不法行為防止条約」「プラスチック爆薬探知条約」「爆弾テロ防止条約」などなど。テロ対策の法整備はきちんとされており、共謀罪法案が成立しなければテロ対策がされていない訳ではありません。
どうして、屋上屋を重ねるような、「共謀罪」の新設が必要でしょうか。
A 政府といたしましては、国民をテロから守る責務を負うものです。何重に屋を重ねても、念には念を入れて、国民の安全を守る法律を作ろうとしているわけでございます。
Q 問題は、不必要な法律というだけのものではなく、国民の人権を侵害する有害な法律であるということなのです。この共謀罪法案、もし成立してしまったら、犯罪の実行とは無関係に、ただ話し合っただけで処罰されてしまうのではありませんか。
A そういう印象操作はやめていただきたい。絶対にそんなことは、ないのであります。先ほど読み上げた条文に書いてあったとおり、まずは、組織的犯罪集団の団体の活動でなければ、処罰されることはありません。しかも、共謀が成立しただけ、つまり計画しただけでは犯罪が成立しないことは、法文上明らかであります。「準備行為」が必要なのです。一般の方が話しているだけで犯罪者になるなど、絶対にあり得ません。
Q では「組織的犯罪集団」から、お伺いします。労働組合や、市民団体が組織的犯罪集団に当たることはないのでしょうか。
A 組織的犯罪集団だけしか、対象とならないことは、明文で規定しております。
適法な活動をしている労働組合や、その他の団体は、その目的が犯罪はないのですから、当然対象とはなりません。繰り返しますが、この法律はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団を取り締まるのが目的で、一般の方には無関係なのです。
Q 更にお尋ねします。既に存在する適法な団体の目的が、ある時点から犯罪目的に変化したと認定することはあり得ないのですか。
A 一般論としてお答えすると、この法律は組織的犯罪集団の組織的行為だけを処罰対象とし、一般人は対象とならないことは申しあげたとおりです。しかし、もしこれまでは合法的な活動をしていた団体が、ある時点から犯罪を企む集団となったとすれば、すでにその集団の構成員は一般人ではないのです。適法な団体の目的が、ある時点から犯罪目的に変化することがないとは言えません。
Q おや、大変な答弁が出た。つまり、「この法律が罰するのは、一般国民ではない」という意味は、「この法律が罰するときには、既に一般人ではないからだ」と、こういうことではありませんか。これでは、何の縛りにもならないではありませんか。
A あなたの解釈は、あまりに一方的で偏っているのではないでしょうか。重大犯罪を目的とする団体に、それと知って属しているということは、一般国民の目から見て、一般人とは呼べないことは通常の感覚ではないですか。
Q 企業でも、市民団体・労働組合、サークルでも、適法な通常の団体が、ある時点から犯罪目的だと認定されることはありうるのだから、国民誰でも、共謀罪の犯罪者になり得るということじゃないですか。
A 重大な犯罪を計画している団体に属して、具体的な重大犯罪を計画していたらできるだけ早期に、摘発せられるべきは当然ではありませんか。
Q ついに、国民の誰もが共謀罪適用の対象になりうることが分かりました。しかも、犯罪目的があるかどうか、計画があるかどうか、捜査段階では、判断するのは、裁判所ではなく、捜査機関。つまりは警察になるわけです。その結果、警察が、国民生活に監視の目を光らせ、あらゆる団体が犯罪目的をもっていないかを調べる。これは、まさに現在の治安維持法ではないか。
A 全くそうではございません。
治安維持法は、私有財産制を否定し、国体を変革しようとするという、思想そのもの、つまり、犯罪とは切り離して、特定思想を有する団体を結成すること、加入することを処罰する法律でございます。
今回の、テロ等準備罪は、思想のみを処罰するのものではありません。準備行為という外に表れた具体的行為の存在を要求しています。
Q いったい、その準備行為とは、どのようなものだというのですか。
A 先ほど、分かり易い条文を朗読したなかに書いてあったじゃありませんか。もう一度その部分だけを読見上げて見ましょう。
「資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為」というものです。
Q 「資金又は物品の手配」と言えば、ATMから現金を下ろすこと、コンビニで買い物をすること、日常の行為じゃないですか。「関係場所の下見」と言えば、散歩も花見も含まれる。これじゃ誰もがつかまるじゃないですか。
A だから、一般人か、怪しい奴か、常日頃から警察が監視しておけばよいのですよ。監視を徹底させておきさえすれば、きのこ狩りでも、双眼鏡をもって花見をしても、一般人は安心なのです。怪しいやつだけをつかまえるのです。
Q 結局は怪しいか怪しくないかは、捜査機関が判断する。政府に批判的な活動をしていると、犯罪を行っているとして、捜査の対象とされかねない。しかも、計画と準備で犯罪が成立するのだから、団体監視を常に行うことが主たる捜査方法になることは明白ではありませんか。団体に対する警察の監視、団体内部でも密告を恐れて活動が萎縮する。これこそ治安維持法そのものではないですか。
A あなたは、少し感情的になっておられる。お答えしたとおり、一般人が処罰されることはないのです。
治安維持法だって、一般人は処罰されることはなかったわけですよ。天皇制を否定したり、社会革命をたくらむような、当時の国賊・非国民を取り締まったわけで、けっして善良な一般人が取り締まりの対象となったわけではないのです。
Q 具体例でお伺いしましょう。
労働組合が、団体交渉での使用者側の姿勢が不誠実だ、のらりくらりの回答でいっこうに進展しない。もう我慢できない。みんなで社長をカンヅメにしててつやの交渉をやろうと相談をした。徹夜になりかねないから、おにぎりを買っておこうとコンビニで買い物をした。つまり、物品の手配です。
277の対象犯罪の一つに、組織的監禁罪がはいっています。すると、おにぎり購入の時点で、共謀罪が成立し、その後交渉は急転妥結して徹夜交渉にはならなかった。それでも犯罪は成立するということになりませんか。
A 乱暴な組合員たちですね。日常的な監視が必要だとは思いますが、共謀罪で処罰できるかどうか、「テロ等準備罪」として処罰可能かどうか、なんともお答えのしようがない。
Q つまり、犯罪が成立しうるから検討が必要だということですね。
A それはそのとおり。犯罪が成立するか否かは、常に微妙な事実の問題を含んで諸般の事情をよく調べなければなりません。
Q 諸般の事情をよく調べるとは、つまり、とりあえず逮捕や家宅捜査をしなければならないと言うことではありませんか。
A それは、そのとおりであることもあれば、そうではないこともある。一概には申しあげられないところです。
Q 結局、共謀罪は成立しうる、少なくとも、絶対に共謀罪が成立しないわけではないということを確認しました。
共謀罪は、国民の自由な団体活動のみならず、表現の大幅な萎縮を生み出し、思想・信条の自由を侵害する、違憲なものであることが明白になりました。けっして成立させるわけにはいきません。
戦前の悪名高い治安維持法で大弾圧を受けたのは、共産党だけではありせん。出版人も、労働組合員も、平和運動も、教育運動も、宗教家もでした。
私たちは、日本国の主権者として、絶対にこのような弾圧法規の成立を許しせん。あくまで、この法案の廃案を求める国民運動の先頭に立つ覚悟を述べて、私の質問を終わります。
お願いいたします。
盛大な拍手をありがとうございました。
(2017年5月18日)
国会議員会館前の通路を人が埋めつくしている。連日行われている共謀罪法案反対の抗議行動。正午から1時間が集会。13時30分から16時まで座り込み。そして、18時30分から1時間の集会。これが連日のスケジュール。
昼休みの1時間。各団体の幟旗が林立し、思い思いのプラカードを持った人々が集まってくる。野党の議員が審議の内容を報告する。沖縄からの訴えがある。出版人からのアピールが行われる。見込み捜査に対する警告の発言がある。
そして、コール。
共謀罪は絶対ハイアン
今すぐハイアン
強行採決絶対ハンタイ
審議を尽くせ
採決するな
憲法守らぬ内閣イラナイ
アベ内閣はイラナイイラナイ
アベ内閣は今すぐタイジン
タイジン タイジン
さらに、「一般人が処罰対象になることはない」という法相のインチキ答弁に対する怒りのスピーチが繰り返される。
詭弁というものがある。「白馬非馬(白馬は馬にあらず)」論がその典型。白馬は白い、馬は白いとは限らない、ならば白馬と馬とは違うものだ。だから、白馬は馬ではないという論法。
「一般人は共謀罪の処罰対象にならない」論も、白馬非馬に劣らない新型詭弁。一般人とは違法なことをしない人、違法なことをするのは一般人ではない。処罰されるのは違法なことをした人だけだ。だから、一般人が処罰対象になることはない。バカバカしい「論理」。これぞ、詭弁。
馬への課税を逃れるための論法としての「白馬非馬」論は、現実の役には立たなかったと伝えられている。「一般人は共謀罪の処罰対象にならない」論も、共謀罪成立後の現実において、人権侵害の防止になんの役にも立たない。共謀罪成立までの方便。まさしく、これぞ詭弁。
こんな詭弁論争で、衆議院法務委員会での共謀罪法案審議が深まりを見せないまま、強行採決日程が噂されている。6月18日の予定は延びたものの、「週末にも」「来週冒頭にも」などと報じられている。議論の内容ではなく、数の力だけがものをいう世界となってしまっている。これは、議会制民主主義の衰弱であり、危機と言ってもよい。
ところで、今朝(5月16日)の朝刊。政府広報紙の読売・産経だけでなく、毎日までがトップを皇族の婚約記事とした。これが大きなニュースか。これが国民に伝えるべきトップニュースなのか。共謀罪審議で国会が揺れ、アベ友学園事件追及に新展開があり、加計学園事件に新資料も出てきた。トランプのアメリカもEUも多難、報じなければならないことは山積しているこの今において、である。これがめでたいニュースか。祝意の強制は迷惑千万。こんなことをおめでたがっている国民こそがオメデタイ。
とんでもない時代になりそうな元凶の一つは小選挙区制、加えて政党助成金である。比較第一党の自民が不当に多数の議席を獲得し、少数野党の議席数が不当に少ない。そして、派閥ではなく党中央に権力が集中する。このようにしたのは小選挙区効果であり、政党助成金効果にほかならない。こうして、アベ一強体制ができ、特定秘密保護法に戦争法の強行が続き、さらにいま共謀罪なのだ。
だから、心の底から思う。
憲法守らぬ内閣イラナイ
アベ内閣はイラナイイラナイ
アベ内閣は今すぐタイジン
タイジン タイジン
(2017年5月17日)
国民的映画シリーズ「男はつらいよ」にしばしば出て来るのがサクラ。倍賞千恵子演じる寅次郎の妹ではなく、露天商の常套手口としてのサクラ。当て字で「偽客」と書いてサクラと読ませる。なるほど「偽の客」だ。
ものの本によれば、語源は江戸時代の芝居小屋だとか。小屋主が雇った見物人役が、見物席から役者に声をかけて場を盛り上げる。「パッと派手に景気よくやってパッと消える」ことが桜を連想させてのサクラ。見物人の一人と思わせる立場性が重要で、以後芝居に限らず営業主とつるんだ偽客をサクラというようになったとされる。
芝居の掛け声なら客に実害はない。しかし、露天商や的屋などの売り子とつるんで客の中に入り込み、褒めそやしながら率先して商品を買ったり、わざと高値で買ったりすれば、明らかに欺罔行為への荷担だ。これを「仕込み客」というようだが、顧客一般を代表するような顔をした、実は事業者とつるんだ偽客。最近は、サプリメントのコマーシャルに出て来る「個人の感想」を述べる出演者。詐欺罪にも該当する行為に外ならない。また、ウェブサイトへの顧客誘引のためのサクラを用いた書き込みも甚だしく、これをビジネスとしている者もあるという。
今、自民党というテキ屋が日本国民という顧客に向かって、共謀罪という商品購入を勧誘している。自民党が売ろうとしているこの商品、実は買ってはいけない危険物。商品に欠陥があるという生やさしいしろものではない。そもそも危険が丸ごと商品化されたもの。これを真っ赤な嘘の数々でパッケージしてのたたき売り。
「テロ対策に必要」「社会の安全安心のために」「これを買っていただかないことには、国連の条約批准ができない」「国際社会の常識」「オリンピックに備えて」と嘘をならべたて、悪徳商法の手練手管を駆使しての声を枯らしたタンカバイ。しかし、この売り込みは、過去3度も失敗している。4度目もなかなか客の食いつきはよくない。
そこで、さっとサクラが登場する。まずは公明党。この商品を手にとって吟味するフリをして、「おや、この商品は本来とてもよい品だ。でも、ちょっとばかり嵩がはっている。少しそぎ落として、スリムにしてはどうか」。あたかも消費者目線でものを言っているかのごときが、サクラのサクラたる所以。で、676あった共謀罪群は277に縮小された。これで商品の欠陥がなくなったとばかりに、法務委員会審議が始まった。
ところが、審議は思うようには運ばない。そこで2人目のサクラが登場する。言わずと知れた、アベ自民に擦り寄りたい日和見維新である。ここにサクラの謀議が成立し、強行採決のシナリオが完成したとされる。冗談ではない。国民を甘く見るな。
報道では、「自民・公明両党と日本維新の会は11日、『共謀罪』の趣旨を含む組織的犯罪処罰法改正案について、取り調べの可視化(録音・録画)や、GPS(全地球測位システム)捜査の立法措置の検討を盛り込む法案修正に合意した。合意では、法案本則に取り調べなどの捜査の際、『適正の確保に十分配慮しなければならない』との内容を盛り込み、付則に、『取り調べの録音・録画を検討する』などと明記する。また、最高裁で令状が無い捜査は違法だとする判決が出た『GPS捜査』については、立法措置の検討を付則に入れる。」(朝日)という。これがどうして「法案修正」になるのか、不可解千万。サクラによる商品の印象操作にいかほどのメリットあるかも、理解し難い。
それでも、公明・維新が自民に恩を売り、自民が公明・維新をサクラとして利用して、詐欺グループ3者がダマシのテクニックで国民に危険を売り付けようとしていることは確かなのだ。
気をつけよう。季節外れの毒あるサクラ。
サクラ サクラ
5月の議会
公明はサクラ
維新もサクラ
自民にベッタリと
いざや
いざや
眉に唾して
ハイアンとせん
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なお共謀罪についての自民党宣伝の嘘については、「共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会」が、「共謀罪法案 政府・自民党の説明 10の疑問とウソ」としてまとめている。その項目だけ抜粋しておこう。
?東京オリンピック・パラリンピックのために必要?
⇒安倍首相をはじめ、誰もそんなことは言っていませんでした
?「テロ対策」のために必要?
⇒法案は「テロ対策」を目的とするものとはなっていません
?現行法ではテロが防げない?
⇒テロ関連条約の締結をはじめ、すでに実効的な措置がとられています。
?国連越境組織犯罪防止条約条約締結のために必要?
⇒共謀罪をつくらなくても条約は締結できます
?「一般人は対象とならない」?
⇒一般人も対象となることは、政府も認めています
?「準備行為」の要件があるから限定されている?
⇒「準備行為」は、誰もが日常的に行う行為です
?内心を処罰するものではない?
⇒内心を問題にして処罰することは政府も認めました
?対象犯罪を限定したから大丈夫?
⇒「組織的犯罪集団」とはまったくなじまない犯罪が多く含まれています
?「今までの共謀罪とは違う」?
⇒看板を変えても、これまで三度廃案になった共謀罪と同じです
?日本が監視社会になることはない?
⇒いまでも行われている市民の監視がもっと日常的に行われます
最後の?についてだけ、【ミニ解説】を引用しておきたい。
「共謀罪は、結果が発生せず、犯罪の実行行為もなされていない段階で、犯罪の『計画(合意)』を犯罪とするものです。『計画(合意)』段階で摘発するためには、その前から特定の市民、団体を監視対象にしなければならなくなります。
すでに、現行法のもとでも、『犯罪予防』『公共の秩序維持』を口実とした市民の監視、プライバシー侵害が横行しています。
計画(合意)段階で犯罪が成立することになれば、捜査の名の下に、さらに日常的かつ広汎な監視がなされることは明らかです。」
(2017年5月13日)
かごめかごめ
籠の中の鳥は
いついつ出やる
夜明けの池で
晋と朋が滑った
後ろの政治家だあれ?
「右派言論ウォッチャー」を自ら称する佐藤恵美さんの作。「靖国・天皇問題 情報センター通信」の最新号(通算517号)の「新編右翼事情」欄の末尾に載っていたもの。
「かごめかごめ」の元歌がなにやら不可解で、不可解ながら不気味で陰鬱な色合いをにじませている。「籠の中の鳥は いついつ出やる」とは、囚われ人の溜息が言葉になったものだろう。こんな、絶望の雰囲気に満ちた童謡がまたとあろうか。
佐藤恵美版「かごめ」は趣を異にする。「籠の中の鳥」とは、アベ政治のおぞましさ、まがまがしさの根源にある行政を私的にコントロールする仕組みの秘密。「晋」は極右の「朋」には、ねぎらい、振る舞うのだ。行政機構は、忖度を重ねて「晋の朋」のために、大判振る舞いをする。おぼえめでたきを良しとして、見返りを期待するというわけだ。
籠の中に閉じ込められて、なかなか外からはうかがい知れない。この「鳥」が、もう一息でうまく出そうなのだが、出そうでいて実はなかなか出てこない。そのもどかしさが、「いついつ出やる」と愚痴になる。
それにしても、「晋」と「昭」と、その「朋」らが、みっともなくも滑ったことは間違いない。籠からは真実を開け放ち、代わって「晋」と「昭」らを逃さず閉じ込めなければならない。
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何の解決も見ることなく、事態生煮えのままやや下火になった「アベ友学園」問題。このままでよいはずはない。ようやく、このところ再燃の兆し。新たな資料も出てきた。「『森友』音声記録 土地交渉中 昭恵氏に言及〈籠池氏、財務省と面会時〉」(東京)、「森友の国有地取得、財務局が手助け 書類の案文も添付」(朝日)などと、新資料に基づいて、問題解明に積極的に切り込む報道が増えている。
本日(4月27日)の東京新聞「こちら特報部」は、出色。「共謀罪」と「森友問題」をならべて、「ふたつの共通項とは?」と記事にしている。「政府・与党 禁じ手連発」「揺らぐ法の支配」「機能不全の国会」「説明できぬ大臣 反対意見抑圧」「野党の資料要求も拒む」と、大きな活字の見出しが並ぶ。
特報部記事の中に、「デスクメモ」という囲み記事がある。ここに「息苦しい新たな『戦中』がかたちになり始めている。押し返さねば、塗り固められる。いたるところで抵抗を」と書かれている。切実な思いの込められた重い言葉。
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4月21日の当ブログ「森友への国有地低額売買をうやむやにしてはならない」ーそのための具体的提案」で話題にした、近畿財務局への第三者委員会の設置等を求める要請行動。この短期間に、弁護士と学者の要請賛同者は280名を超えた。
本日、代表者が、近畿財務局に要請書を提出し、連休明け5月10日までの回答が約束されたという報告。
MBS(毎日放送)が下記のように取り上げている。
http://www.mbs.jp/news/kansai/20170427/00000023.shtml
「学校法人「森友学園」が大阪府豊中市に小学校を建設するために国有地を取得したいきさつについて、弁護士らのグループが近畿財務局に対し、第三者委員会の設置を求める要望書を提出しました。
去年6月、森友学園は小学校を建設するために豊中市の国有地を買い受けましたが、約8億円が値引きされた算定根拠などは今も不透明なままです。このため、弁護士や法学者など約280人のグループは 土地を売却した近畿財務局に対して交渉経緯などを調査する第三者委員会の設置を求めています。
『国民の大多数は疑問に思っている。法的な手段で可能なものを全てやる』(阪口徳雄弁護士)
グループは、国が交渉記録を廃棄したことについて行政訴訟を起こすことも検討しているということです。」
**************************************************************************
この報道のタイトルが、「『法的な手段全てやる』弁護士ら森友問題で要望書」というもの。阪口徳雄君の、「国民の大多数は疑問に思っている。法的な手段で可能なものを全てやる」発言は、短くて歯切れがよい。
ところで、本日の東京新聞「筆洗」からの引用である。
捨てる。捨てない。
忘れる。忘れない。
戻る。戻れない。
帰りたい。帰れない。
遠い。近い。
どうする。どうしようもない。
陽炎の 向こうに。
ゆれて見える。
これは、福島県相馬市に住む根本昌幸さん(70)の詩集『荒野に立ちて』に収められた詩「わが故郷」だという。微妙で複雑な気持ちが、そのまま言葉になっている。
また、根本さんは、こういう詩も書いているという。
人が人を 虫けらや獣のような 扱いをしたとき。
言葉はすくっと 立ち上がるだろう。
そして人に向かって行くだろう…。
復興相の「東北でよかった」発言にちなんでの、「筆洗」の引用であって、まことに適切である。だが、この詩はそのような状況を越えて、普遍性の高い、立派な作品であり、言葉だと思う。
『荒野に立ちて』も、東京新聞「デスクメモ」も、阪口君の「法的な手段で可能なものは全てやる」発言も、言葉がすくっと立っている印象がある。
そういえば、最近「すくっと 立ち上がった」、見事な言葉を聞いた。
多喜二多喜二 総理の夢に現れよかし 山路家子(81)東京都
東京新聞4月20日の「平和の俳句」である。いとうせいこうが、「特高警察に殺された小林多喜二の命日、2月20日にさまざまな句が寄せられた。共謀罪の閣議決定に私たちは過去を見る。そして歌う」と解説している。この句の凜々しさ、厳しさに、解説が追いつかない。
私も、「すくっと 立ち上がる」言葉を発したい。切実にそう思う。
(2017年4月27日)
日本国民救援会の「救援新聞」(月3回刊)が、共謀罪の問題点を衝く記事で充実している。
最近の4月15日号(通算1853号)の一面に、シリーズ「私も反対です『共謀罪』」として、治安維持法犠牲者杉浦正男さんのインタビュー記事がある。同氏は、2014年生まれの102歳。改正治安維持法5条の目的遂行罪で、1942年に検挙され、懲役3年の実刑判決を受けて敗戦後の45年10月に釈放されている。下獄中に、「私の妻は3月10日の東京大空襲で爆死したと聞かされ、房で大声をあげて泣きました」という体験をもった方。
「特高警官5人が竹刀手にリンチ」という小見出しで、逮捕された際の体験が、次のように綴られている。
「『貴様ら、共産主義運動をやりやがって、日本を赤化しようなんて大それたことをやらかすとは、どういうことだ。戦地では兵隊さんがお国を守るために必死に戦っているんだぞ。国賊め、貴様らの一人や二人殺しても、誰のとがめも受けないんだ。たたき殺してやる』
横浜の警察の道場に連れて行かれ、竹刀や樫の棒を持った警官5人が代わる代わるメッタ打ちにし、髪をつかんで引きずり回し、樫の棒で膝を、竹刀で頭を打ち、正座させては膝の上に何人もが乗り、飛び跳ね、蹴飛ばすなど、凄惨なリンチを受けました。」
おそらく、何の誇張もない証言。「国賊め、貴様らの一人や二人殺しても、誰のとがめも受けないんだ」とは、特高の本心だったろう。治安維持法がこの世にあった20年間(1925年?45年)に、送検された者7万5681人だが、現実に特高の手で「たたき殺された」犠牲者は90人。拷問、虐待などによる獄死者1600人余とされている(治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟調べ)。
杉浦さんは、実刑を受けた受刑者5162人の一人。リンチで殺された90人にも、拷問虐待死者1600人余にもはいらなかったが、同様の手荒い扱いは受けたわけだ。戦前の野蛮きわまる天皇制のもとでの狂気の振る舞い、というほかはない。
しかし、こんなことをした特高は、実は鬼でも蛇でもない。おそらくは仕事が終われば妻と花見もし、子連れで花火の見物もする実直な下級公務員であったろう。むしろ、「父母ニ孝ニ、兄弟ニ友ニ、夫婦相和シ、朋友相信シ」という徳目の実践者であったとも考えられる。天皇に逆らう非国民・国賊を痛い目に遭わせることは、「君のため、国のため」の正義の鉄槌だと本気で信じていたに違いない。3・1万歳事件や南京事件で他国の民を虐殺した皇軍兵士も同様だ。これが、人間の恐いところ。教育勅語に象徴される戦前の教育(というよりは洗脳)を受けて作りあげられた人格の現実の姿を冷静に見据えなければならない。
「1925年に制定された治安維持法は、天皇制と資本主義を否定する結社とその活動を取り締まることが目的で、制定の3年後には最高刑を死刑に引きあげ、目的遂行罪が導入され、これが猛威をふるいました。禁止されている結社に加入していなくても、その結社の目的を助けたと警察が判断すれば検挙されたのです。」
実は、杉浦さん自身には、治安維持法が禁止する天皇制と資本主義を否定するという考えはなく、共産党員でもなかった。
「私はただ、悲惨な印刷出版労働者の現状を何とかしたいと思って活動していたら、特高警察に共産主義を信奉して、大衆を集めて教育した犯罪者にされてしまった」という労働運動活動家であった。これが、天皇制政府の戦争遂行政策に邪魔者とされたのだ。
そのような体験を振り返って、杉浦さんがこう語っている。
「『共謀罪の中身を見ると、これは治安維持法と同じだと思います。警察が目を付けた人間を監視し、話している内容を知ろうと捜査する。いったん、法律ができてしまうと、治安維持法と同じく、拡大解釈されたり、改悪される可能性は大きいのです』
杉浦さんは噛みしめるように訴えます。
『私は、治安維持法の恐ろしさを知っている生き証人として訴えます。共謀罪は間違いなく、戦前の治安維持法と同じ、国民の話し合いの自由を奪うものです。必ず、廃案にさせましょう』」
共謀罪の恐ろしさは、構成要件が曖昧なことだ。犯罪実行行為着手のずっと手前で、「資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の…準備行為」の段階で共謀参加者を一網打尽にしようというのだから、当然に曖昧となる。ことさらに曖昧なことが政権にとっての使い勝手の良さなのである。物の購入や金銭の出し入れなど、普通の人の日常の行動を犯罪にすることができるのだ。
これが、改正治安維持法第5条「(結社)ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ1年以上10年以下ノ懲役ニ処ス」の、「目的遂行のためにする行為」という、何でもしょっ引ける構成要件と瓜二つなのだ。
治安維持法が猛威を振るったことに関して、内田博文・九州大学名誉教授が、その拡大解釈を許した法曹の責任を「治安維持法の育ての親」と厳しく問うている。その責任を負うべき「天皇の裁判所」の裁判官たちは、追放されることなく戦後新憲法の司法を受け継いだ。いま、忖度の流行る世の中。裁判官も例外ではない。「信頼できる裁判所があるから大丈夫」などとノーテンキなことを言っていてはならない。102歳翁の「共謀罪必ず、廃案にさせましょう。」の訴えを噛みしめたい。
(2017年4月18日)
はじめに
「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき」
ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった私は共産主義者ではなかったから社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった私は社会民主主義ではなかったから彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった私は労働組合員ではなかったからそして、彼らが私を攻撃したとき私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった
マルティン・ニーメラー
共謀罪とは?
共謀・・・二人以上の者が、共同でたくらむこと(広辞苑)
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共謀罪とは、その名のとおり、「たくらみ(話し合い)」自体を犯罪とするもの
近代刑法において、犯罪とは、人の「行為」に対し、刑罰を科すもの
共謀罪は、近代刑法の基本原理と相反する
刑法の大原則
行為責任主義
違法な「行為」を罰すること
→「行為」がないのに罰する
法益侵害
保護法益を守ることが刑事法の目的
→何の法益侵害もない
罪刑法定主義
どんな行為が犯罪なのか、事前に明示する
→どこまでが犯罪なのかわからなくなる
共謀罪法案、廃案の歴史
2003年に最初に国会に法案提出され、その後合計3回提出されたが、いずれも廃案。2009年以降、法案提出の動きはなかった
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2016年8月突然の法案リーク。安倍政権は、2017年3月21日に法案(政府の呼称は「テロ等準備罪」 )を国会に提出した。会期は6月18日まで。今のところ延長はないと思われる。
従来の法案??? ⇒?????? 今回の法案
犯罪主体???? 団体の活動として⇒組織的犯罪集団の団体の活動として
対象行為???? 共謀 ⇒? 2人以上で計画、準備行為を行う
対象犯罪???? 長期4年以上の懲役禁固(676罪)⇒676罪から絞り込み277罪
組織的犯罪準備罪は共謀罪
安倍首相は、「これまでの共謀罪法案とは違う」と言うが・・・・
国会に提出された法案では、「共謀」という言葉が消え、「テロ等準備罪」とされたが・・・
まず、日本の法定刑は幅が広い
長期4年以上の犯罪は対象犯罪は676 過失犯等除いても637?
これを91法律の277罪にしたとしても「五十歩百歩」
要件は厳格となったか?
?組織的犯罪集団
→しかし、定義なし(あらゆる団体が組織的犯罪集団になりうる)
?準備行為を要求している
→しかし、準備行為に限定はなく、あらゆる行為を「準備行為」とみなすことが可能。しかも準備行為を行っていない者も処罰できる。
法案の共謀罪の規定(組織的犯罪処罰法の新設規定)
(組織的な犯罪の共謀)第6条の2の骨格
「次の各号に掲げる罪に当たる行為で、…団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、…準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮」
組織的犯罪集団
組織的犯罪集団とは、共同の目的が重大な犯罪を実行することにある団体のこと(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第2条1項)
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しかし、労働組合・市民団体・政党の目的が、途中で変更されたと認定されることも
予備行為って何?
予備罪は既に刑法に存在
殺人(さ) / 通貨偽造(つ) / 外患(が) / 内乱(な) / 私戦(し)/ 現住建造物等の放火(ほ) / 強盗(ご) / 身代金目的略取誘拐(しろ)
思考 → 共謀 → 予備 → 未遂 → 既遂
刑法44条 「未遂を罰する場合は、各本条で定める」
既遂の処罰が原則。未遂処罰は、特別の規定があるときの例外。
予備罪は、例外の例外。 では、共謀罪は?
予備行為って何?
未遂
刑法第43条(未遂減免)
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。実行の着手なくては、未遂罪にならない。
実行の着手
法益侵害の危険発生の現実的危険性の発生するとき
予備行為って何?
「実行の着手に至る前の行為」(一般的定義はない)
何でも入るの? 「共謀を裏付ける客観的行為」
移動するための交通チケット購入
口座からの現金の引き出し
道具の購入
文書の作成
メール・手紙の送付
・・・etc.
共謀罪は条約締結に必要不可欠か?
安倍政権は「共謀罪の創設は、国際社会からの要請」と言うが・・・・
2000年採択のTOC条約(国連組織犯罪防止条約・Convention against Transnational Organized Crime)締結のために、共謀罪が必要か?
しかし・・・
条約34条1項は「自国の国内法の基本原則に従って」必要な措置を講じるよう求めているだけで、4年以上の自由刑を法定刑に該当するすべての罪の共謀罪の処罰を求めているわけではない
なお、条約は、マネーロンダリング対策などが主目的
→テロ対策ではない(そもそも911テロ前の採択)
→条約締結と共謀罪創設とテロ対策は連動していない!
共謀罪がないと、テロを防げないか?
安倍首相は、「テロを防げない」「オリンピックが開催できない」と言うが・・
しかし・・・
?日本は、「爆弾テロ防止条約」や「テロ資金供与防止条約」などの5つの国連条約及びその他の8つの国際条約につき、国内立法を整備して、すべて締結している。
?判例理論としての共謀共同正犯の存在
?殺人等の重大犯罪の準備罪・予備罪の存在
?リオ五輪(ブラジル)は???
→テロ防止と共謀罪は、別個の問題!
共謀罪が成立しうるケース?
職場の忘年会を翌日に控え、いつも付き合いの悪い新入社員Vを2次会まで付き合わせようと、上司X・先輩Yら4人が雑談がてら話していたところで、上司Bが、「一次会で全員ジョッキ10杯をノルマにして、帰れないくらいべろべろになってしまえばいい。飲みたくないといっても、無理にでも飲ませよう」と言い出し、他の者も笑いながら、席順やジョッキカウント係を決めようなどと同調(共謀・計画)
↓
翌日、当然のようにテンションが下がった状態で、先輩Yが、新人Vの分も含めて5名で二次会の会場を予約(準備行為)
↓
忘年会は開催されたが、誰もジョッキ10杯など飲むどころか、言い出すこともなく終了、新入社員Vは1次会で帰宅した( (組織的)強要罪不成立)
→組織的強要罪の共謀罪成立
共謀罪が成立しうるケース??
労働組合員X?Wが、翌日の団交の作戦を検討中、Xが高揚して、「もし、社長が要求を呑まないなら、部屋に鍵をかけて、缶詰にしよう!要求を呑むまで、一晩中でも団交してやろう!」と呼びかけ、Yも盛り上がり「そうだ!そうだ!」、Zも頷き、Wは沈黙(共謀・計画)
↓
翌日、前夜の盛り上がりをすっかり忘れていたZが、予定されていた団交のために、要求書を作成(準備行為)
↓
予定された18時からの団交では、要求を受け入れてもらえなかったが、特に鍵をかけることもせず、19時には終了((組織的)監禁罪不成立)
→組織的監禁罪の共謀罪成立
共謀罪が成立しうるケース?
米軍基地の建設に反対している市民団体。ついに本格的工事着手が3日後に迫ってきた。メンバーのXYは、今度は工事現場のゲートに座り込んででも、美しい自然を守ろうと話し合った
(共謀・計画)
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翌日、Yはゴザを購入
(準備行為)
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台風のせいで海が荒れ、当面工事は延期になったので
座り込みはしなかった
( (組織的)業務妨害罪不成立)
→ 組織的威力業務妨害罪の共謀罪成立
これらの例は誇張か?
そんなことじゃ逮捕されないんじゃないかな、と思われる方に・・・・
捜査段階では、判断するのは捜査機関。特に警察。
いずれも監禁罪・組織的強要罪違反行為を計画する
「組織的犯罪集団」
仮に、盛り上がった話し合いの内容を実現・実行していれば
「犯罪」
実際には実行に移していない。しかし、話し合いはある。
→共謀罪は、犯罪が実行されていなくても、話し合いだけを取り出して犯罪とするという危険がある!
捜査機関が共謀罪を切望する理由 何故、共謀罪にこだわるのか・・・
広い範囲の人・行為を捜査の対象とすることができる
→これまでは、客観的・公然とした「捜査の端緒」が必要だった
・「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」
(刑事訴訟法199条逮捕)
・「犯罪の捜査をするについて必要があるとき」
(同法218条捜索差押)
といった要件を簡単に充足できる
情報収集目的の違法捜査の横行を招く!さらには高度監視社会へ
別府事件では
隠しカメラが設置された別府地区労働福祉会館。カメラの一つは、入り口などが見えるように木の幹(手前左側)の高さ約1.5メートルの所にくくりつけられていたという=大分県別府市で2016年8月3日午前9時7分、大島透撮影
参院選の選挙期間中に設置 人の出入りなど録画
7月10日に投開票された参院選大分選挙区で当選した民進党現職らの支援団体が入居する大分県別府市の建物の敷地内に、同県警別府署員が選挙期間中、隠しカメラを設置し、人の出入りなどを録画していたことが、3日分かった。カメラの設置は無許可で、建造物侵入罪などに該当する可能性があり、県警の捜査手法に批判の声が出るのは必至だ。
県警や関係者によると、隠しカメラが設置されていたのは、別府市南荘園町の別府地区労働福祉会館。連合大分の東部地域協議会や別府地区平和運動センターなどが入居しており、参院選の際には大分選挙区で立候補した民進党現職の足立信也氏(59)や、比例代表に出馬した社民党の吉田忠智党首(60)の支援拠点になっていた。
カメラは参院選公示前の6月18日深夜から敷地内に2台設置され、同会館の玄関と駐車場の出入りを録画していたとみられる。公示翌日の同23日、敷地内で草刈りをしていた別の施設の職員が発見した。1台は敷地内の斜面に、もう1台は木の幹にくくりつけられていたという。
内蔵のSDカードを確認したところ、別府署員がカメラを設置する様子も映っていたため、同会館の関係者が同署に連絡。署幹部が謝罪に訪れ、同24日にカメラを撤去したという。県警によると、カメラを仕掛けたのは別府署刑事課の署員2人。同署が設置を決め、場所も同署で判断したという。設置した署員は「雑草地だったので、(同会館の)管理地だとは思わなかった」と話したという。毎日新聞2016年8月3日10時55分
堀越事件では
国家公務員法違反事件
社会保険庁の年金相談係の堀越さん。衆議院選挙前の時期に、仕事と無関係に、職場から離れた自宅周辺で、休日に、赤旗やビラをポスティングしていた。
偉大な無罪判決!
のべ171名の公安警察官が、29日間連日、多いときは11人体制で、堀越さんを尾行。ビラを配りそうとなると、尾行した警察官の鞄や覆面車両に隠した多くのビデオカメラで盗撮。
監視社会が進行している! 今は戦前とは違うと安心されている方に・・・(治安維持法との類似点)
特定秘密保護法の成立(2013年12月)
盗聴法の拡大、司法取引制度の導入を内容とする改悪刑事訴訟法の成立(2016年5月)
・司法取引による免責を前提とするスパイの潜入・扇動の危険
・盗聴法の拡大による、広く電話・メール等が傍受される危険
・新たな捜査手法の導入
・共謀罪によって、実行に移されなかった話し合いが処罰される危険
→突然、犯罪と言われる危険、自由にモノを言えない危険が広がる!
→現代型監視社会の成立
共謀罪創設に反対する!
およそ現在の日本の法体系において、テロの防止の目的で共謀罪を創設する必要性はない。
→要件が「厳格」になったとしても、反対!
終わりに
「自由と安全」
Those who would give up essential Liberty, to purchase a little temporary Safety, deserve neither Liberty nor Safety.
By Benjamin Franklin
わずかな一時の安全を得るために、かけがえのない自由を
放棄する者は、そのどちらも得られない
- ベンジャミン・フランクリン -
2017年4月15日 作成者 弁護士 澤藤 大河
(2017年4月17日)
委員長…静粛に願います。
定刻になりましたので開会し、「テロ等準備罪法案」の審議を始めます。
質問者、福手ゆう子君。
Q 日本共産党の福手ゆう子でございます。
本日は、今、国民の関心が最も高い「共謀罪法案」。その基本構造について、法務大臣の見解をお尋ねします。
大臣。なぜ、今、共謀罪の新設が必要なのでしょうか。
この共謀罪法案が成立すれば、広範な犯罪について、実行行為がなくとも共謀あるいは準備行為の段階で刑罰を科すことが可能になります。当然に、捜査も可能となります。つまりは犯罪の着手がなくとも、常に一般の市民に逮捕や捜索の危険が生じることになります。私たちの生活が、常に捜査機関の監視のもとにおかれることにもなりかねません。
とりわけ、政府が好ましくないとする団体の行動については、恣意的に監視し取り締まることができるようになってしまいます。つまり、治安立法として、また弾圧法規として利用される危険な法案ではありませんか。だから、国民の強い反対を受けて、過去に3度も提案されながら、その都度廃案に追い込まれてきたではありませんか。
にもかかわらず、今回、4度目の法案提出となったその理由を明確に述べていただきたい。
委員長…澤藤大河法務大臣。
A 答弁のまえに、一言申しあげます。
今、委員のご質問に「共謀罪法案」という法案名が出てきました。しかし、「共謀罪法案」ではございません。正確には「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」でありまして、これを提案者である内閣は「テロ等準備罪法案」と略称しているわけでございます。
法律の名称は、正確におっしゃっていただきたい。あなた方は、すぐにレッテルを貼りたがるが、これまで3度廃案となった「共謀罪」と今回提案の「テロ等準備罪法案」とはまったく違うものであることを最初に申しあげておきます。
委員長…福手ゆう子君、どうぞ。あとはお二人で、時間まで適宜質疑と答弁を。
Q 今の答弁聞き捨てなりません。これまで3度廃案となった「共謀罪」と、今回提案の内閣が「テロ等準備罪法案」という法案が、どう違うのか。そこから、ご説明をいただきましょう。
A まず、分かり易いところでは、テロ等準備罪の対象となる犯罪の数が違います。
共謀罪法案では、実行行為への着手がなくても共謀の段階で処罰される犯罪の数は、676もあったのです。今回は、これをわずか91の法律の、たった277罪に絞り込んだのです。どうです。676を277ですよ。全然違うでしょう。
Q 大した違いではありません。これこそ現代版「五十歩百歩」というべきでしょう。刑法や憲法の大原則を崩していることが問題なのではありませんか。
A それだけではありません。何が犯罪で、何が犯罪ではないかが、大変明瞭になったのです。今ある組織的犯罪処罰法に、6条の2という、分かり易い条文を新設することにしました。どんなに分かり易くなったか、新しい条文を読み上げてみましょう。
「次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮」
どうです。分かり易いでしょう。あとは、別表四と、別表三に書いてある277の罪のリストを探し、条文をよく読めばよいのです。しかも、捜査機関が濫用しないよう、厳格にいくつもの縛りがかけられていることがよくお分かりでしょう。
Q ちっとも、分かり易くないじゃないですか。
分かり易いというのは、「人を殺す」「人を傷つける」「財物を窃取(せっしゅ)する」という条文のことをいうのです。ことさらに分かりにくく作られているこんな条文がどう使われるのか、不安でなりません。
本筋に戻って、いったいなぜ、いま4度目の法案提出となったのかその理由をお聞かせいただきたい。
A これは、国際組織犯罪防止条約の批准のために必要な法案であると考えております。
この法案が成立すれば、条約の批准ができます。そうすることで、効果的に国際的な組織犯罪を防止し、テロをも防止することができます。
この条約は平成15年9月に発効しています。この条約については、同年5月にその締結について国会の承認を得ておりますが、我が国としても、早期に批准することが必要です。我が国も、国際社会の一員として、この条約を早期に批准し、国際社会と協力して、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するため、この条約が義務付けるところに従い、「テロ等準備罪」を新設する必要があることをご理解ください。
Q 国際組織犯罪防止条約、これはテロ対策とは無関係でしょう。だいたい何年に締結された条約ですか。
A 平成12年です。
Q 西暦2000年ですね。2001年の9・11事件の前年じゃないですか。テロが国際的な関心事になる前の条約ですよ。この条約はパレルモという都市で締結されて、パレルモ条約とも呼ばれているわけですが、パレルモとは、イタリア、シチリア島の最大都市でマフィアの本拠地といわれているところ。マフィアやヤクザ、そういう組織犯罪を対象にした条約ではありませんか。経済的なマネーロンダリングを防止することを主たる目的とした条約であって、政治的なテロを対象にした条約ではないことをお認めいただきたい。
A 委員は、よく勉強なさっているようですが、組織的な犯罪に対する対応は、経済的なマネーロンダリング防止だけではなく、この際、今や待ったなしのテロ対策を盛りこんだ方がよいに決まっていると考えています。
Q 新たな刑罰法規を作ろうというのですから、立法事実つまり差し迫った必要性がなくてはならないわけです。我が国に、テロの危険が差し迫っているというのでしようか。日本がテロの脅威にさらされているという具体的な根拠をお示しください。
A 世界中で、不安定な地域がたくさんあります。これだけ安全保障体制が揺らいでおるわけでありまして、先進諸国、たとえばアメリカでの9・11事件、イギリス・ロンドンでの連続爆破テロ、フランス・パリでの出版社襲撃事件などが起こっているわけです。
日本だけが、これらの事件に目を背けていていいのでしょうか。自由と民主主義・人権という共通の価値を守るために、憎むべきテロリストとの戦いに、日本だけが安穏としていることはできないのです。
Q 世界の情勢を聞いているのではありません。立法事実として、つまり、新たな法律を作らなければならない根拠として、日本にテロの具体的な危険があるかとお聞きしています。
A それはいろいろな考え方がありえます。日本人が、イラクやシリアで誘拐され、殺害される事件も起こっている。
Q 日本でテロの危険が差し迫っているのか。
A 我々は、テロの脅威から、国民を守るべき責務を負っております。常に備えなければならないのです。オリンピックも迫っております。安全なオリンピックを開催するためにも、どうしてもテロ等準備罪は必要なのです。
Q 日本にテロが迫っていると、あなたですら言えないような状態で、どうして包括的な共謀罪が必要と言えるでしょうか。
個別的なテロ対策としては、国連のテロ防止関連条約は13件あり、日本はすべてその批准を終え、それに対応した国内法の整備もできているではありませんか。たとえば、「テロリズム資金供与防止条約」「プラスチック爆薬探知条約」「核物質の防護に関する条約」「空港不法行為防止議定書」「海洋航行不法行為防止条約」「爆弾テロ防止条約」などなど。テロ対策の法整備はきちんとされており、共謀罪法案が成立しなければテロ対策がされていない訳ではありません。
どうして、屋上屋を重ねるような、「共謀罪」の新設が必要でしょうか。
A 政府といたしましては、国民をテロから守る責務を負うものです。屋の上に何重に屋を重ねても、念には念を入れて、国民の安全を守る法律を作ろうとしているわけでございます。
Q 問題は、不必要な法律というだけのものではなく、国民の人権を侵害する有害な法律であるということなのです。この共謀罪法案、もし成立してしまったら、犯罪を実行することなどなく、ただ話し合っただけで処罰されてしまうのではありませんか。
A そういう印象操作はやめていただきたい。絶対にそんなことは、ないのであります。先ほど読み上げた条文に書いてあったとおり、まずは、組織的犯罪集団の団体の活動でなければ、処罰されることはありません。しかも、共謀が成立しただけ、つまり計画しただけでは犯罪が成立しないことは、法文上明らかであります。「準備行為」が必要なのです。一般の方が話しているだけで犯罪者になるなど、絶対にあり得ません。
Q では「組織的犯罪集団」から、お伺いしましょう。労働組合や、市民団体が組織的犯罪集団に当たることはないのでしょうか。
A 組織的犯罪集団だけしか、対象とならないことは、明文で規定しております。
適法な活動をしている労働組合や、その他の団体は、その目的が犯罪はないのですから、当然対象とはなりません。繰り返しますが、この法律はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団を取り締まるのが目的で、一般の方には無関係なのです。
Q 更にお尋ねします。既に存在する適法な団体の目的が、ある時点から犯罪目的に変化したと認定することはあり得ないのですか。
A 一般論としてお答えすると、この法律は組織的犯罪集団の組織的行為だけを処罰対象とし、一般人は対象とならないことは申しあげたとおりです。しかし、もしこれまでは合法的な活動をしていた団体が、ある時点から犯罪を企む集団となったとすれば、すでにその集団の構成員は一般人ではないのです。適法な団体の目的が、ある時点から犯罪目的に変化することがないとは言えません。
Q 今、大変な答弁が出た。つまり、「この法律が罰するのは、一般国民ではない」という意味は、「この法律が罰するときには、既に一般人ではないからだ」と、こういうことではないか。これでは、何の縛りにもならないではありませんか。
A 委員の解釈は、あまりに一方的で偏っているのではないでしょうか。重大犯罪を目的とする団体に、それと知って属しているということは、一般国民の目から見て、一般人とは呼べないことは通常の感覚ではないですか。
Q 企業でも、市民団体・労働組合、サークルでも、適法な通常の団体が、ある時点から犯罪目的だと認定されることはありうるのだから、国民誰でも、共謀罪の犯罪者になり得るということじゃないですか。
A 重大な犯罪を計画している団体に属して、具体的な重大犯罪を計画していたらできるだけ早期に、処罰せられるべきは当然ではありませんか。
Q ついに、国民の誰もが共謀罪適用の対象になりうることがよく分かりました。しかも、犯罪目的があるかどうか、計画があるかどうか、捜査段階では、判断するのは、裁判所ではなく、捜査機関。つまりは警察になるわけです。その結果、警察が、国民生活に監視の目を光らせ、あらゆる団体が犯罪目的をもっていないかを調べる。これは、まさに現在の治安維持法ではないか。
A 全くそうではございません。
治安維持法は、私有財産制を否定し、国体を変革しようとするという、思想そのもの、つまり、犯罪とは切り離して、特定思想を有する団体を結成すること、加入することを処罰する法律でございます。
今回の、テロ等準備罪は、思想のみを処罰するのものではありません。準備行為という外に表れた具体的行為の存在を要求しています。
また、団体も重大犯罪を目的とするという、犯罪集団に限って対象とするものですから、ご指摘はあたりません。
捜査についても、捜査機関は、刑事訴訟法、その他関連法令を遵守し、裁判所の令状審査を経て、適法な捜査を行うことになりますので、委員のご指摘はあたらないものと思います。
Q 結局は捜査機関が、最初の判断をする。政府に批判的な活動をしていると、犯罪を行っているとして、捜査の対象とされかねない。しかも、計画と準備で犯罪が成立するのだから、団体監視を常に行うことが主たる捜査方法になることは明白ではないか。団体に対する警察の監視、団体内部でも密告を恐れて活動が萎縮する。これこそ治安維持法そのものではないですか。
A 委員は、少し感情的になっておられる。お答えしたとおり、一般人が処罰されることはないのです。
治安維持法だって、一般人は処罰されることはなかったわけですよ。天皇制を否定したり、革命をたくらむような、当時の言葉でいえば、国賊・非国民を取り締まったわけで、けっして善良な一般人が取り締まりの対象となったわけではないのです。
Q 「共謀罪が現代の治安維持法」といわれているいみが、とてもよく分かりました。
処罰範囲拡大の危険性について、以下の具体例を想定してお聞きします。次の設例で、共謀罪は成立するのでしょうか。
米軍基地の建設に反対している沖縄の市民団体。ついに本格的工事着手が3日後に迫ってきた。市民団体幹部メンバーのXYZは、今度は工事現場のゲート前に座り込んででも、美しい自然を守ろうと話し合った。
翌日、Xはゴザを購入した。2日後、台風のせいで海が荒れ、結局工事は延期となり、座り込みは中止された。
どうですか。これで、一網打尽にXYZを、組織的威力妨害罪の共謀罪で逮捕し有罪にできますか。
A 細かい点がわからないため、具体的な事案ではお答えしかねる。
Q どこがわからないというのですか。
A 市民団体が団体の活動として多人数でゲート前に座り込んで現実に工事を妨害すれば、組織的威力業務妨害罪が成立することになります。問題は、この場合座り込みはないのですから、「テロ等準備罪」の要件としての共謀が成立したといえるのかは議論の様子を調べなければならない。準備行為があったと言えるためには、ゴザの購入目的なども検討しなくてはならない。犯罪の成否は軽々に答えられない。
Q つまり、犯罪が成立しうるから検討が必要だということですね。
A それはそのとおり。犯罪が成立するか否かは、常に微妙な事実の問題を含んでいるのであります。
最終的には裁判官が判断するわけでありまして、今、この事例についてどうかということは、大変難しく、諸般の事情をよく調べなければならない。
Q この例はどうでしようか。
「認可保育所の設置を求める文京ママの会」の会合で、区の保育所認可設置の問題も老人対策もいっこうに進展せず、もう我慢できない。みんなで区庁舎に押しかけて区長をカンヅメにして徹夜になっても徹底して談判しよう、同時に世論に訴えようという相談をした。決行の日を決めてその前日に、区長室を下見に行くまではしたが、決行予定の日が子どもたちの行事と重なることが分かってやっぱりやめた。
これも、組織的監禁罪の共謀罪ということになりませんか。
A 乱暴なママさんたちですね。日常的な監視対象とすることが必要だとは思いますが、「テロ等準備罪」として処罰可能かどうか、なんともお答えのしようがない。
Q つまり、犯罪は成立しうるから検討が必要だということですね。
A それはそのとおり。現実的に犯罪が成立するか否かは、常に微妙な事実の問題を含んで諸般の事情をよく調べなければなりません。
Q 諸般の事情をよく調べるとは、つまり、とりあえず逮捕や家宅捜査をしなければならないと言うことではありませんか。
A それは、そのとおりであることもあれば、そうではないこともある。一概には申しあげられないところです。
Q 結局、どちらの事案も共謀罪が成立しうること、少なくとも、絶対に共謀罪が成立しないわけではないという答弁であることを確認しました。
共謀罪は、国民の自由な団体活動のみならず、表現の大幅な萎縮を生み出し、思想・信条の自由を侵害する、違憲なものであることが明白になりました。けっして成立させるわけにはいきません。
治安維持法で大弾圧を受けた経験をもつ日本共産党は、絶対にこのような弾圧法規の成立を許さない。この法案の廃案を求める国民運動の先頭に立つ覚悟を述べて、私の質問を終わります。
(2017年4月15日)
「国民は、自身にふさわしい政府をもつ」とか。情けない話だが、アベ政権が我々国民にふさわしい政府なのだろうか。さらには、共謀罪だ。これが、われわれ国民にふさわしい法律ということなのだろうか。まっぴらご免だ。何としても、この法案は廃案に追い込みたい。この法案には暗さが伴っている。アベの旧体制復古願望のもつ暗さだ。あるいは、腐臭がする。いやな時代の前兆としての腐った臭い。
私も何度か、共謀罪の講師活動を引き受けた。現在も幾つか予定を抱えている。定番のとおり、法案の内容を説明し、刑法の保障機能や罪刑法定主義、そして構成要件論をお話しすることになる。そのキモは、類推解釈を許さない厳格な構成要件の解釈こそが、権力の市民生活への介入の歯止めになるということ。権力の側は、できるだけ曖昧な構成要件がほしいのだ。必要あればいつでも、市民生活に介入できるように。
そのうえで、戦前の治安維持法や国防保安法などの実例を挙げ、今回の共謀罪法案が成立した際には、どんなことが起こるか想定例をお話ししてみる。短時間ではなかなか伝わらないもどかしさが残る。
次の機会には、どう工夫すればよいだろうか。集会やすぐれた発言に学びたいと思う。そんな問題意識で、幾つかの集会名や発言内容を拾ってみた。それぞれがどこに力点を置いているか、自ずから伝わってくるものがある。
第1 ズバリ本質をえぐるキャッチフレーズ
「現代の治安維持法・共謀罪反対!」
「話し合うことが罪になる共謀罪法案の廃案を求める大集会」
「マジありえない共謀罪」
「共謀罪創設は国民の『思想・信条の自由』を奪う」
「あなたも犯罪集団の一員に!?共謀罪を考える市民集会」
「共謀罪はいらない!?自由に考え、集まり、話がしたい?」
「『安全・安心』な社会に『監視』される??どうして監視社会が止まらないのか??」
「合意だけで処罰!??共謀罪法案を考える?」
「市民の行動が筒抜けに??高度化する捜査手法と共謀罪で社会が変わる前に?」
「?進む監視社会化について考える?」
「?あなたの想いが閉じ込められる!??」
「会話しただけで犯罪に!? 監視される社会 ?共謀罪・通信傍受法・特定秘密保護法の向かう先?」
「またも共謀罪法案が!?電話・メール・SNSが監視され、つぶやきが犯罪に!?」
「その会話で逮捕??共謀罪を考える?暗黒の社会への道を許すな」
「共謀罪を考える市民集会 あなたの会話がのぞかれる!??市民生活を脅かす共謀罪と盗聴?」
「テロ等組織犯罪準備罪?気を付けよう、そのひと言が犯罪に?」
「共謀罪は『テロ対策』に騙されるな! 国家権力の暴走を監視せよ」
「共謀罪の狙いはテロ対策ではない! スノーデンの警告に耳を傾けよ」
「話し合うことはテロ?」
「国民を監視 自由脅かす『共謀罪』」
「『共謀罪』は、憲法で保障された思想・信条、内心の自由を侵します。
『共謀罪』は、広く市民、団体を監視することになります。
『共謀罪』は、警察の日常的監視、『密告』社会を招きます。」
「国民の思想・信条や言論・表現の自由を脅かす希代の悪法」
第2 政府のウソをあばくフレーズ
「共謀罪なしで国連越境組織犯罪防止条約は批准できます」
「組織的な共謀罪を設けるのは、国際組織犯罪防止条約を締結するためではない」
「そもそも、共謀罪法案はテロ対策法案でない」
「テロ対策に必要というのも有効というのも嘘だ」
「『テロ等』というネーミングは羊頭狗肉、看板に偽りありの詐欺商法」
第3 具体例想定示タイプ
沖縄の平和運動に対する『共謀罪』弾圧シナリオ
労働組合の団体交渉のこじれが「共謀罪」に
パワハラ上司をとっちめろ
「保育問題・介護問題で区役所に押しかけよう」が、組織的威力業務妨害の共謀罪に
第4 時代の危機を語るタイプ
時代状況に敏感な作家たちの発言が身に沁みる。
4月8日の東京新聞に、日本ペンクラブ(浅田次郎会長)が7日夜に、「共謀罪は私たちの表現を奪う」と題する集会を開いたと報じた。作家や漫画家、写真家ら14人が登壇して時代への危機感を語ったという。
報道の見出しが、「『共謀罪、心の萎縮招く』『今抵抗しないと』作家ら声上げる」となっており、リードに、「平和のために言論、表現の自由を守る」「四度目の廃案を目指す」「作家や若者らから相次いで『NO!』の声」などとされている。
作家の浅田会長は「平和のために言論、表現の自由を守っていくことが使命で、共謀罪は看過できない大問題。人間には命があっていずれ死ぬが、法律は死なない。子や孫の代にこの法律がどう使われるか。今が大事なときです」と強調した。
同紙は、日本ペンクラブの声明のタイトルを、「共謀罪によってあなたの生活は監視され、共謀罪によってあなたがテロリストに仕立てられる」と紹介されている。
14人のコメントが短くまとめられているが、印象的な幾つかを転載しておきたい。
◆金平茂紀さん(テレビキャスター) まだやっていないことが取り締まりの対象になる共謀罪は特別に危ない法律だ。沖縄で基地反対運動のリーダーが逮捕されたが、これは共謀罪を先取りした予行演習だ。
◆香山リカさん(精神科医) メールやツイッターをするだけでも、もしかしたらまずいんじゃないかといちいち忖度していくと、考えることすらいけないんじゃないかとだんだんなっていく。
◆田近正樹さん(日本雑誌協会) 共謀罪によって、いつでも捜査ができるような状況が、市民を萎縮させ、社会を変えてしまう。さらに単独テロ対策のために1人で計画することも犯罪になるかもしれない。
◆ちばてつやさん(漫画家) 日本は今、ゆっくりとした大きな渦の淵にいる。戦争とかどす黒いものがたくさん入っていて、その渦に巻き込まれるかどうかの境目だと思うので、非常に危惧している。
◆長谷部恭男さん(早稲田大教授) 犯罪というのは、やり終わったものを裁くのが基本原則。それが277の大量の罪について計画段階で捜査の対象になる。市民生活に直接にかかわるもので危険性も高い。
そのときの中島京子さんの発言要旨が、本日の赤旗に写真入りで掲載されている。とても、印象的な内容。こう語れるようになりたいと思う。
理不尽に慣らされない(タイトル)
森友学園の問題と共謀罪は裏表だと思います。
権力が味方だと思えば、ありえない利益を供与するのが森友学園のケース。権力が敵だと思えば、ありえない方法で取り締まれるのが共謀罪。公文書を公表せず、破棄するような権力が共謀罪をつくる。本当に恐ろしい。
テロ対策と言われていますが、対象となる277の犯罪がテロとどう関係があるのか分からない。むしろこれは誰かを取り締まりたいときに、277の犯罪からどれかを選んで使うための法律ではないでしょうか。国会で審議されると聞いた時は、また強行採決かというあきらめの気持ちがありましたが、理不尽に慣らされることに抵抗しなくてはいけない。
安保法制の時のように反対の声を上げ続け、4度目の廃案にもっていきたいと思っています。
(2017年4月13日)