澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

当世恐ろしきもの ー 地震・原発・アベ・コロナ

今も昔も、恐いものの筆頭は地震である。動かぬはずの大地の揺らぎほど恐ろしいものはない。3・11のあの衝撃と傷痕が癒えない今、必ず起こるという次の大地震はひたすらに恐い。

次が原発である。安全神話が脆くも崩壊して以来、観念的な原発事故の脅威とそれに伴う放射線被害の恐怖は、リアルな肌感覚に染みこんでいる。戦後保守政権は放射性廃棄物処理方法を確立しないままに原発稼働を開始し、いまだに状況変わらぬままに再稼働だという。地震は天災であるが、原発は明らかに人災。恐いだけでなく、腹だたしい。

さらに恐るべきは、アベ政治である。苛政は虎よりも猛しという。アベ政権の国政私物化と、嘘とごまかしの政治手法はことさらに恐い。真の恐怖は、こんな政権を支持する勢力が幅を利かせ、こんな政治手法に国民が甘んじていることにある。日本の民主主義は、いったいどこに行ったのだ。

そこにコロナ禍の登場である。誰も免疫をもっていない感染症なのだから当然に恐い。しかし、コロナの真の恐さは、アベ政治によって増幅されているところにある。本来国家的難局に対処するときには、リーダーの誠実さや正直さが鍵となる。アベ政権にはその点が決定的に欠けている。しかも、あわよくば、この難局を改憲に利用しようという思惑が見え透いているだけに、いっそう恐いのだ。

安倍晋三にしても、自分ファーストで目立ちたがり屋の小池百合子にしても、到底信頼できる人物ではない。知事は大仰に、東京は「感染爆発の重大局面」にあると言った。欧米の事態を見れば、そうなのかも知れない。しかし、為政者たちは何かを隠しているのだろうか。東京の感染者数の急増が、都民の行動の自粛を求める根拠だと言われても、材料が不足だ。得心できようはずはない。

根拠となる具体的な数値は以下のとおりである。
(東京都のホームページ https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/ 掲載データから)

これによると、最近の都内での陽性患者確認人数とPCR検査の実施件数の各推移は以下のとおりである。(なお、「医療機関が保険適用で行った検査は含まれていない 」と(注)がある。どうしてそれくらいの集計をしないのか、もどかしい)

17日  12   84
18日   9  112
19日   7   50
20日  11   16
21日   7   55
22日   2
23日  16   77
24日  17   86
25日  41  105
26日  47  100
27日  40(うち15人が永寿総合病院関係者)
28日  63(うち29人が永寿総合病院関係者)

このデータの的確な読み方の説明はない。このデータを根拠として将来をどう予測し、今を「感染爆発の重大局面」であるとの評価する理由の説明が放棄されているのだ。

このデータを見て誰しもが持つ疑問は、検査実施件数の極端な少なさである。

検査に到達する患者は厳重なスクリーニングを経なければならない。掛かり付け医の判断で検査を受けられるわけではない。「新型コロナ外来(帰国者・接触者外来)」なる機関で受診し、医師が検査の必要ありと判断した場合にのみ、(東京都健康安全研究センター等)でPCR検査実施となる。掛かり付け医のない場合は、発熱4日(リスク患者は2日)で、保健所に電話し問診を受けた上、スクリーニングされて、「新型コロナ外来(帰国者・接触者外来)」にまわされることになる。つまり、感染者のうち、重症者だけを把握しようというコンセプトなのだ。感染はしているが、無症状の者あるいは軽症者の把握は意図されていない。

おそらくは、日本の医療体制の脆弱さから余儀なくされている事態なのだろうが、そのことは率直に語られていない。東京都は、この期に及んでもなお、都立病院の独立法人化の方針を変えず、世論に逆らって強行しようとしているのだ。

対照的な戦略を採っているのが、韓国である。
「世界で賞賛される『韓国』コロナ対策の凄み―行動制限を課すことなく増加曲線を抑制」という下記のネット記事が興味深い。「東洋経済オンライン」翻訳して紹介する The New York Timesの記事である。
https://toyokeizai.net/articles/-/340150

韓国は大規模なアウトブレイクが発生しながら、新規感染者数の増加曲線を抑えることに成功した。しかも、中国のように言論や行動に厳しい制限を課すことなく、またヨーロッパやアメリカのように経済に打撃を与える封鎖政策を行わずにである。無症状の人を含む最大限の検査態勢を整え治療を保証しているという。

世界保健機関の事務局長テドロス・アダノム・ゲブレイェソスは、ウイルスの封じ込めは難しいものの「可能である」ことを示したとして、韓国を称賛した。テドロス氏は各国に「韓国その他で得られた教訓を応用する」よう促した。

韓国はほかのどの国よりもはるかに多くの人を検査してきた。そのため、多くの人を感染後すぐに隔離・治療することが可能となった。 同国では30万回以上の検査を実施し、1人当たりの検査率はアメリカの40倍となっている。

首脳陣の結論は、「アウトブレイクの制圧には国民に対し完全な情報共有を続けること」、そして「国民の協力をお願いすることが必要」ということだった。世論調査では大多数が政府の取り組みに賛同を示しており、パニックは少なく、買いだめもほとんど起こっていない。

韓国のすべてが理想的とは言わないが、見習うべき点が多々あるのではないか。徹底した情報公開と、受診・治療体制。その前提となる検査キットの開発や普及のスピードなど。

そして、学ぶべきは何よりも「コロナ禍の制圧には国民に対し完全な情報共有を続けること」という政権の基本姿勢である。アベ政権には望むべくもないが。
(2020年3月28日)

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