澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

逆襲される安倍自民党ー偽りの看板がはげ落ちて

本日の朝日川柳欄に
  己こそ党名変えよ自由民主(西崎敦子)

なくてもがなの選者のコメントが「看板倒れ」。党名という看板と党の実態との大きなギャップが、川柳子の嘲笑の種になるのだ。

もっとも、「自由民主党」の党名は、「自由党」と「民主党」が合党したことによる安直なネーミング。「三菱東京UFJ銀行」だの「三井住友海上あいおい生命保険株式会社」などというノリなのだ。既に事実上は、「自由民主公明おおさか維新党」が結成されているとみて間違いがない。

民主党の党名変更の是非と、変更あった場合の新党名が話題となっている。
個人の命名は、「最短形式の詩」である。生まれいずる者への祝意と期待が、短い詩となって生涯その命を表すことになる。子をなした者が、いつくしみを込めた名を考えればよい。個人の命名に他人が介入する余地はない。命名される本人さえ、何も言わないし言えない。

政党名の命名はなかなかに難しい。党名自体が、政党に結集する多くの人々を統合する役割を担うことになるからだ。また、政党は多くの有権者に政策を発表して支持を得、票を獲得しなければならない。そのとき、党名の果たす役割はけっして小さくない。

最もオーソドックスには、その政党が実現を目指す社会や政治手法の理念を党名にすることだ。名は体を表すという常識に沿ったネーミング。これが王道である。
 社会主義党・共産主義党・資本主義党・社会民主主義党・民主社会主義党・民主主義党・立憲主義党・平和党・自由党・平等党・友愛党・民生増進党・国民福利党・女性の権利党・子どもの福祉党・国家主義党・軍事大国化党・軍事緊張煽動党・経済的強者の自由を目指す党・経済格差拡大党・政党「大阪だけの繁栄を約束しまっせ」・アメリカ従属党・51番目の州を目指す党・大アジア主義党・政策は風向き次第票を頂戴党・株価上昇党・天皇親政党・復古党・祭政一致党・日本民族優越党・王仏冥合党…。

支持者・支持層をそのまま党名にしてもよい。
労働者党・勤労者党・政党「中小企業の権利のために」・貧困者党・農民党・漁業党・消費者党・青年党・女性党・奥羽越列藩同盟後継者党・賊軍末裔党・東北人の党・王党・金持ち党・右翼人脈党…。

政党のイメージをウリにした党名
清新党・親切党・誠実党・真理党・献身党・実行党・言行一致党・断固党・ぶれない党・政党みどり・青空党・元気いっぱい党・ゆるゆる党・新党・新新党・フレッシュ党・チェンジ党…。

特定の事件を想起させる党名
8月15日党・12月8日党・6月15日党・9月19日党・3月11日党・6日9日15日党・2月11日党…。

アメリカでは、共和党が、「移民拒絶党」か「世界のカネをアメリカに!党」に党名を変更しそうな勢い。民主党は、「格差解消党」か「格差容認党」か。

さて、政権与党「自由民主党」の党名問題である。「自由」と「民主」。
「自由」とは多義である。本来の「自由主義」は、国家権力の制約からの自由を意味する。フランス革命の理念とされた自由・平等・友愛の「自由」がまさしく王権からの自由であり、自由民権運動の「自由」も藩閥権力からの自由であった。

当時、「自由」は市民の権利とされた。市民とは新興ブルジョワジーを中心とするもので、彼らが市民革命の推進者となった。いま、新興ブルジョワジーの中の一部が、巨大企業となって様相が大きく変わっている。企業活動の自由は、多くの人の犠牲をもたらすのだ。これには、民主主義を武器にして、企業活動に厳重な規制をかけなければならない。

一握りの大企業とそれ以外の広範な国民との利害が鋭く対立するとき、「自由」の内実が問われる。自民党の看板の「自由」は何を表しているのか。大企業の「自由」擁護とは、労働者の搾取と収奪の自由のことであり、消費者の権利を蹂躙する自由にほかならない。いったい自民党とは誰の味方なのか。

たまたま今日の新幹線車内で開いた週刊朝日のトップの記事が「農協の逆襲」だった。「逆襲」とは、安倍政権に対する逆襲の意である。これまで、自民党に操られ虐げられてきた農協が、ついに自民党に叛旗を翻し、逆襲に転じたというのだ。痛快きわまる事態ではないか。

要因はいろいろあるが、要は自由民主党の「自由」が、大企業の横暴の自由で、農民を犠牲にする自由だということなのだ。農協こそは、長く自民党最大の大票田だった。特に、地方に強い自民党を支える屋台骨だったはず。

ところが、同誌が独自にした全国の農協組合長に対するアンケート調査(但し、悉皆調査ではない)では、「各地の組合長が本誌に激白『選挙で与党は推薦しない』」という。まさしく「安倍政権に対する農協の逆襲」の実態なのだ。

安倍政権の農政改革について
  支持する     3.6%
  支持しない   74.5%
  どちらでもない 21.8%

今夏の参院選で与党候補を推薦するか
  推薦する    37.7%
  推薦しない   13.2%
  決まっていない49.1%

自由記入のアンケート回答もなかなかのもの。
「自民党議員を減らさないといけない。驕ってもらっては困る。」
「組合員の与党への不信感が強い。県単位では自民党候補を推薦すると思うが、地域農協が推薦することはない」
「県としても応援しないと会長が明言している」
「自民党の政治家は官邸のいうとおり。日本国の展望や未来に対する政治家の信条は、地に落ちたように感じる」
「自民党議員には入れたくないが、個人的関係で推さざるをえない」
「農家の思いや情報が伝わっていない」
「他に頼れる政党がない。仕方がない」

これが、農協組合長の意見なのだ。かつては考えられなかったこと。事態急変の最大の理由は、「TPPは平成の売国」という見出しのフレーズが物語っている。さらに、必ずや石原伸晃担当相が「農協の逆襲」の火に油を注ぐ役割を果たしてくれるだろう。

要は、自由民主党の「自由」は、製造・流通・通信・金融の大企業の自由であり、社会的規制を取っ払った、儲けの自由である。その自由の確保のために、農業も漁業も酪農も犠牲にされようとしている。そのことが、「農協の安倍自民党への逆襲」の原因なのだ。おそらく、「逆襲」は農協だけでなく、これからあちこちで起きてくるだろう。安倍自民党が、現今の不幸な日本の総元締めであることが、今分かりつつあるからだ。

では、「党名変えよ自由民主」に応えて、安倍自民党が、正確に党名を変えたらどうなるだろうか。

理念のうえからは、
市場原理主義党・大企業の利益本位党・規制緩和推進党・規制撤廃主義党・平成の売国党・格差貧困容認党・地方切捨党・沖縄蹂躙党・歴史修正主義党・ビリケン(非立憲)党・大日本帝国体制復古党・戦後民主主義否定党・メディアの自由抑制党・原発推進党…。

支持勢力からは
大企業党・アメリカ追随党・極右党・靖國党・神社党・軍需産業党・右翼人脈結集党…。

イメージからは
国防色党・茶色党・オスプレイ党・日の丸君が代党・頑迷固陋党・非知性党・感じ悪いよねー党・停波党・口利きあっせん党・失言妄言党…。

自民党にふさわしい特定の事件を想起させる党名といえば、
4月27日党(自民党改憲草案発表記念日)
7月1日党(集団的自衛権行使容認閣議決定記念日)
9月18日党(戦争法強行成立記念日)
そして、「コントロールとブロック党」であろうか。
(2016年3月1日)

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