DHC関連訴訟10件の提訴目的は、応訴の負担を強いることにある。 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第135弾
DHCと吉田嘉明が、私(澤藤)に6000万円を請求したスラップ訴訟。私がブログで吉田嘉明を痛烈に批判したことがよほど応えたようだ。人を見くびって、高額請求の訴訟提起で脅かせば、へたれて吉田嘉明批判を差し控えるだろうと思い込んだのだ。そこで、自分を批判する言論を嫌っての「黙れ」という私への恫喝が、当初は2000万円のスラップ訴訟の提起だった。私が黙らずに、スラップ批判を始めたら、たちまち提訴の賠償請求額が6000万円に跳ね上がった。なんと、理不尽な3倍増である。「2000万円で黙らないのなら6000万円の請求だ。それでも黙らなければ、もっとつり上げるぞ」という脅し。この経過自体が、言論封殺目的の提訴であることを雄弁に物語っているではないか。
この私に対するDHCスラップ訴訟では最高裁まで付き合わされた。請求棄却、控訴棄却、上告受理申立不受理決定で、私(澤藤)の勝訴が確定したが、DHC・吉田嘉明が意図した、「吉田を批判すると面倒なことになる」「面倒なことに巻き込まれるのはゴメンだ。だから吉田嘉明を刺激せずに批判は差し控えた方が賢い」という風潮は払拭されていない。そこで、今私は、DHC・吉田嘉明を相手に、スラップ提訴が不法行為となるという主張の裁判を闘っている。これを「反撃訴訟」「リベンジ訴訟」などと呼んでいる。
その反撃訴訟係属部は、東京地裁民事第1部合議係。次回期日は2018年8月31日(金)午後1時30分?、415号法廷である。
次回期日には、当方が準備書面(4)を提出し、立証計画も明らかにすることになる。是非、傍聴をお願いしたい。
本日までの当事者間の書面のやり取りの経過は以下のとおりである。
前々回4月26日の法廷では、澤藤側が「反訴原告準備書面(2)」を陳述した。25頁の書面だが、要領よくなぜスラップの提訴が違法となるかをまとめている。それに対するDHC・吉田嘉明側の反論が、6月1日付の「反訴被告ら準備書面2」として提出された。これがどうにも投げやりな6頁の書面。6月7日付で「反訴原告準備書面(3)」に基づく当方(澤藤側)からの求釈明をしたが、回答は一切拒否の姿勢。そこで、8月13日までに当方が再反論の準備書面(4)を提出の約となっている。
本日は、その準備書面(4)作成のための弁護団会議。骨子がほぼまとまった。
そのさわりの一部をご紹介しておきたい。但し、確定稿ではなく、現実に提出するものとまったく同一ではない。
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☆ 反訴被告吉田の主導による提訴、控訴、上告等
反訴被告ら(DHC・吉田嘉明)による反訴原告(澤藤)に対する前件訴訟を含む10件の高額名誉毀損損害賠償請求訴訟(以下、「関連訴訟」という)の提起及びその各上訴、和解、取下げは、いずれも反訴被告吉田が自己の言動に対する批判の言論(自己の意に反する言論)を封殺する目的をもってしたことを物語るものであって、自己の正当な利益救済のためにしたものではない。
反訴被告吉田は、自己の意見と異なる思想や表現に対して「反日」「左翼」等のレッテルを張って攻撃を繰り返してきた者であるが、関連訴訟10件の提起はいずれもこれと軌を一にするもので、自己を批判する言論を排斥しようとする意図のもとに、訴訟の帰趨についての見通しなどお構いなしに提訴を決意し、その吉田の意向に、代理人弁護士らが従ったに過ぎない。
☆ 「理性による言論」の危機
この10件の関連訴訟は、反訴被告吉田嘉明が訴外渡辺喜美代議士への秘密裡の8億円貸付の事実を自ら週刊誌に暴露したところ、予想外の批判を浴びたことに憤慨し狼狽もして、批判者の言論を封殺しようとして提起されたものである。数多い批判の言論のうち、比較的に社会的影響力があると考えられた当事者のブログや記事を取り上げ、反訴被告らの名誉が毀損されたとして極めて高額な損害賠償請求訴訟を提起し、自己の威勢を示して批判の言論を封殺しようとしたものである。そして、訴訟に敗訴しても、相手方当事者や弁護士、果ては裁判官にまで、反日、左翼等のレッテルを張りつけて自己の正当性を主張し、資金力に飽かせて同じ行動を繰り返している(乙18=産経新聞社が主宰するネットサイトに掲載された吉田の新たなブログ)。
このような形で言論が封殺される事態は「理性による言論の危機」と評せざるを得ない。思想の自由、表現の自由が死に瀕したマッカーシズムの再現ともなりかねず到底放置しえない。
☆ 裁判制度の濫用(スラップ訴訟)
反訴被告らの裁判手続き利用の直接的な目的は、批判者に過重な応訴負担(経済的、精神的負担)を強いることにあった。そして、間接的には批判者の過重な応訴負担を見せしめに、当該各訴訟における被告以外の多くの者に、反訴被告らに対する批判の言論を萎縮させ回避させることにあった。その両者を併せて、自己への批判の言論を封殺する目的の訴訟である。そして、各提訴はいずれも現実にそのように機能しその目的のとおりの役割を果たした。
提訴に際しては、判決における勝ち負け(権利の真の回復)は眼中にないから、勝訴の見込みの十分な検討や、相手方との事前の折衝もないまま闇雲に高額請求訴訟を提訴し、敗訴しても、高裁、最高裁まで裁判を継続することになる。そうすることが、被告とされた者の負担が大きいからである。他方、逆に一部でも勝訴すれば、それが名誉毀損とは無関係の抱き合わせ提訴でのどんな些細な名目的な勝訴でも、「目的達成」として訴訟を終了させる。既に十分な応訴負担を与えているからである。また、相手が応訴負担に耐え切れず屈服したと分かれば、権利回復措置を取らないままの和解、取下げもする。10件の名誉毀損訴訟の顛末はこの事実を見事に描出している。反訴被告らのかかる裁判手続きの利用は明らかな不当訴訟であり、経済的強者による言論封殺を意図したスラップ訴訟(不法行為)である。
☆ 名誉毀損訴訟に限らず、事実の不当な分断や行き過ぎた細分化が、真実を曇らす結果となることは、法律家が経験的事実として知ることであるが、本件は、その教訓を生かさなければならない事件である。他の9件の類似訴訟のなかの1件として、反訴被告らの行った反訴原告に対する事前折衝なしの前件訴訟の提起、さらに訴訟提起を批判したことに対し賠償請求額を2000万円から6000万円に増額する行為、1審敗訴判決後も訴訟継続だけを目的とした勝算の見込みのない控訴と上告(受理申立)、さらに、他の訴訟案件の不合理な和解や取下げといった諸事実は、前件訴訟(DHCスラップ訴訟)が真に吉田嘉明の名誉の回復を目的として提起されたものではないことを雄弁に物語っている。仮に百歩譲って、多少なりとも名誉回復の目的が併存していたとしても、関連訴訟全体の推移を見れば、前件訴訟の提訴の主たる目的が、反訴被告らが自己の言動を批判する言論を現在と将来にわたって封殺するということにあり、勝訴の見込を十分に検討せずに提訴されたスラップ(嫌がらせ)訴訟の提起として、不法行為を構成することが明らかというべきである。
☆ 関連して指摘しておきたい。6000万円という前件訴訟における反訴被告らの慰謝料請求金額の過大さについてである。
訴訟実務における慰謝料額は、交通事故訴訟を中心に類型化されてきた。現時点における死亡慰謝料は一家の支柱の場合でも、2800万円が標準とされている。生命の喪失についての慰謝料が2800万円とされる現在、名誉を毀損されたとする慰謝料が500万円に達すれば、驚くべき高額慰謝料の言い渡しとして話題となる。ましてや、政治的批判の言論については認容判決自体が少なく、仮に慰謝料請求が認容されたとしても、100万円を超えるものは例外的な事例と言って過言でない。
前件訴訟(DHC・吉田嘉明から澤藤に対するスラップ訴訟)における、提訴時2000万円の請求も高額であるが、4000万円の請求の拡張による6000万円は明らかに異常と言うほかはない。死亡慰謝料の倍額をも上回る超高額請求は、訴訟実務から見て前件訴訟の原告らの被害の回復とは明らかに均衡を失している。前件訴訟の提起を表現の自由に対する挑戦として、吉田嘉明批判の発言を継続した反訴原告(澤藤)の言論を封殺する目的としてなされた提訴と断ずべき重要な要素である。
☆ 裁判には、法による紛争解決機能(勝訴による権利回復)以外にも、提訴による立法推進や法政策形成(提訴により事案解決のための法の欠缺や法の不備を知らしめ、早期の立法や行政による政治的・政策的解決を促す)等の機能があり、提訴には複数の目的が併存することが多いが、併存する目的の中に裁判の機能を濫用したものがあり、その不当な目的が主要な因子(それがなければ、提訴に至らない筈)となっていれば、当該提訴中に正当な目的が含まれていたとしても、全体として不当訴訟と評価されるべきで、その関係と判断構造は、処分理由が競合する際の不当労働行為の判断に類比される(例えば、荒木尚志「労働法第3版」684頁等)。
勝訴による権利回復を主たる目的としない訴訟や、勝訴を希望していたとしても、提訴の主たる意図が勝訴による権利回復以外の不当な目的であった訴訟(少なくとも、当該不当な目的がなければ提訴には至らなかったであろうと合理的に推測される提訴)は、勝訴の見込みの全くない不当な提訴と同様、裁判の濫用を意図した提訴として、不法行為となると考えるべきである。
☆ 以上のとおり、反訴被告ら(DHC・吉田嘉明)による前件訴訟提起の主たる目的は、被告とされた者に応訴が義務付けられ過重な応訴負担を余儀なくされる裁判という場を利用しての反訴原告(澤藤)に対する嫌がらせであり威嚇にあった。また、その嫌がらせや威嚇を通じての現在と将来にわたる言論封殺でもあった。封殺の対象とされた言論は、直接には反訴原告(澤藤)のものであったが、間接的には社会全体の吉田嘉明批判の言論であり、さらには言論一般というべきで、DHCスラップ訴訟の提起は、社会の言論の自由を封殺しあるいは萎縮せしめるものと言うべきである。
反訴被告ら(DHC・吉田嘉明)は、反訴原告(澤藤)に対する訴訟提起、請求金額の増額、控訴、上告の全経過を通じて、違法な目的のもとに裁判を受ける権利を濫用したものとして、不法行為による損害賠償の責めを負わねばならない。
(2018年8月2日)