澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

こちら特報部に、澤藤大河「『自衛隊マンガ』から見えるもの」

本日(12月22日)の「東京新聞・こちら特報部。タテの見出しに、「沢藤弁護士に聞く」とある。「沢藤弁護士」とは、私のことではない。澤藤大河のインタビュー記事。ヨコ見出しは、「『自衛隊マンガ』から見えるもの」。そして、「『空母いぶき』現実先取り?」「いじめや閉鎖体質描く作品も」「大きな顔しない自衛隊望ましい」等の中見出しが続く。最近のマンガが自衛隊をどう描いているか。そのことから、何を読みとることができるかを澤藤大河が解説している。

リードは、下記のとおり。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2018122202000151.html

「海上自衛隊の護衛艦「いずも」の空母化が新たな防衛大綱などに明記され、その現実を先取りしたかのようなマンガ「空母いぶき」が注目されている。近年自衛隊が登場するマンガには、フィクションの世界ながら、艦船などの装備や隊員生活をリアルに描く作品が多い。そこから自衛隊や社会の何が読み取れるのか。法律雑誌で作品を分析した沢藤大河弁護士に聞いた。」

この「法律雑誌」とは、「法と民主主義」(2018年7月号・№530)のこと。その特集が、「自衛隊の実像」だった。
https://www.jdla.jp/houmin/

◆特集にあたって………編集委員会・澤藤統一郎
◆旧軍と自衛隊 シビリアン・コントロールの視点から………纐纈 厚
◆「防衛計画の大綱」改定への動向………大内要三
◆現代の戦場経験から考える自衛隊の憲法明記問題………清末愛砂
◆防衛大学校の「教育」と人権侵害の実態………佐藤博文
◆自衛隊関連文献解説・文献編 読書ノート・自衛隊………小沢隆一
◆自衛隊関連文献解説・漫画編 漫画に描かれた自衛隊………澤藤大河

特集のコンセプトを要約すれば、次のようなもの。

本特集は、安倍九条改憲案が、憲法上の存在として位置づけようという自衛隊と、隊員の実像をリアルに把握するための論稿集である。これまで「専守防衛」に徹するとされてきた自衛隊の実態は安保法制下、どう変容しようとしているのか。また、実力組織としての自衛隊を統制する仕組みは、今どうなっているのか。統帥権干犯を口実に暴走を始めた旧軍の歴史の教訓はどう生かされているのだろうか。そして、にわかにクローズアップされてきた、自衛隊隊内とりわけ幹部教育における人権侵害の実態は、どうなっているのか。

その特集にふさわしい錚々たる研究者・実務家の論稿に混じって、ひとり錚々ならざる少壮弁護士が「漫画に描かれた自衛隊」を寄稿している。その紹介文が下記のとおり。

◆「漫画に描かれた自衛隊」(澤藤大河・弁護士)。こちらは漫画編。サブカルが社会の雰囲気をよく反映している側面は軽視し得ないし、社会への影響力も看過できない。漫画でもリアルにいじめやしごきの実態が描かれ、「これがあってこそ精強な軍隊を維持できるというイデオロギーが根付いている」という。また、「最近、何のてらいもなく自衛隊を絶賛する漫画が増えている」「戦争や兵器、しごきやいじめまでエンターテイメントとして消費している現状は、読者も戦争を巡る理不尽にならされてきているのではないか」という居心地の悪さが語られている。

硬い、硬すぎる法律雑誌に、異例の軟派記事。それだけで多少の話題となり、「こちら特報部」の目にとまったということなのだろう。

なお、この「漫画に描かれた自衛隊」の稿の末尾に、「この稿を書くのに、漫画評論家紙谷高雪氏の助言を得ました」とある。この人、大河の学生時代の友人だそうだが、当時は無名の人。その人が、12月3日の「ユーキャン新語流行語大賞」のトップテンに入賞した「ご飯論法」の名付け親として上西充子さんと共同受賞して、俄然有名人になった。人とのマンガつながりも面白い。

本日の「こちら特報部」、何よりも分かり易い。書き出しはこうだ。

「かっては『軍隊もの』の中で自衛隊はマイナー分野だった。専守防衛を掲げる自衛隊を扱っても、実戦が描けずドラマになりにくいためでした」

それが、今は違うという。リアリティをもった自衛隊の実戦がストーリー化されている。また、自衛隊内部のリアルなイジメやシゴキが、それなりの意味づけをほどこされて描かれてもいるという。マンガに描かれた自衛隊像・自衛隊員像は明らかに変化しているというのだ。少なからぬ人々の意識の変化を反映するものなのだろう。

その社会意識の変化に対するインタビュー記事の結びの言葉は、以下のとおりだ。同感である。

「軍事力を増強し、実力行使でものごとを解決しようという姿勢は幼稚だが、それが正しいと考える社会に向かっている。平和を語ると、理想主義だとあざける風潮もあるが、私には熱に浮かされているように見える」

(2018年12月22日)

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Published in 土曜日, 12月 22nd, 2018, at 14:45, and filed under 自衛隊.

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