澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

麻生太郎だ。不都合な報告書は受け取らない。文句があるか。

なに? 前代未聞だと? ミゾユウの事態だって? な?に、いつものことだ。騒ぐほどのことではない。もっとも、「騒ぐほどのことではない」というしかない、が正確なところか。

私は政治家だ。政治家にとって大切なものは、真実でも事実でもない。票だ。選挙だよ。選挙でものをいうのは、幻想だ。何が真実であるかが問題ではない。選挙民に、真実らしく見えるものが何か。それだけが問題なんだ。こんなあたりまえのことが、キミたちにはわからんかね。

ダチョウという鳥があるだろう。危険が迫ると、砂の中に頭を突っ込んで自ら目隠しをするというじゃないか。ほんとかどうかは知らんが、よくできた話だ。私から見ると、選挙民も同じさ。少なくとも、我が党や友党支持の選挙民は。

目を開けるのは、安全を見て安心したいとき。危険は見たくない。不都合には目をつむる。これが私の支持者だ。だから、選挙民の望むように不安を取り除いてやればよいのだ。不都合な真実を取り除くのではない。目隠しすればよいだけのこと。それが、「年金不足・2000万円」の報告書不受理というわけだ。

申し上げたとおり、この金融庁の金融審議会が作成した報告書は、「世間に著しい不安と誤解を与えており、これまでの政府の政策スタンスとも異なりますので、正式な報告書としては受け取らない」んだ。これで、文句があるか。

えっ? 何が誤解かって? これまでの政府の政策スタンスとどう異なるのかって? 世間に与えた著しい不安は、真実が明らかになったからではないかだと? そんなことに、まともに回答していたら、ますます不都合な真実が明らかになってくるだろう。受け取らないと言ったら受け取らないんだ。同じ質問を繰り返すんじゃない。

えっ、なに? 「そもそも、受け取らないなんてことができるのか?」って。森羅万象を司っている内閣の一員である私が、「受け取らない」と言えば、結局はこんな報告はなかったことになる。それだけのことだ。

繰り返し申し上げるが、標準的な夫婦が年金受給を30年継続するとして、公的年金のほかに、「30年間で約2000万円が必要」というのが報告内容だが、このことが真実かどうかは問題ではない。参院選が近いだろう。こんな時期に、「不都合な真実」などは要らん。「不都合な真実」を前提の議論もまったく用がない。必要なのは、「100年安心」という年金制度のキャッチフレーズに、ひびを入れないという配慮だけだ。

最近の審議会は、政権に対する忖度が足りない。選挙間近のこの時期に、こんな答申出すことはないじゃないか。選挙が終わってから、出しゃあいい。トランプだって、安倍晋三との協議内容についての発表を、参院選終了までは伏せると配慮をみせているじゃないか。選挙後ならこんな答申問題にもならなかったのに。

なんだって、敵に塩を送るようなマネをするんだ。たとえば、9月10日参議院決算委員会での安倍晋三に対する小池晃質問だ。これじゃ安倍晋三形なしだ。赤旗が鬼の首を取ったようなはしゃぎようで、こんな風に報道している。これでは困るのだ。

 「金融庁は、高齢夫婦の平均収入と支出の差は毎月5万5000円で、公的年金だけでは30年間で2000万円不足すると試算しています。小池氏は、政府がこれまで『厚生年金で必要な生活費はまかなえる』『100年安心の年金』などと宣伝してきたけれど、今回の金融庁の報告書でそれがウソだったことを『ある意味、正直に認めた』とただしました。安倍晋三首相は『国民に誤解や不安を広げる不適切な表現だった』と弁明しましたが、金融庁の試算自体は否定できませんでした。

 小池氏は「『100年安心』といっていたのに、人生100年になったら『年金はあてにするな』『自己責任で貯金せよ』というのは国家的詐欺に等しいやり方だ」と批判。答弁に窮した安倍首相は「では、どうしたらいいというのか」などと激こうして繰り返すだけでした。」

赤旗はしょうがないとして、産経系のFNNまでがこんなことを言っている。これは困った。他は推して知るべし、だ。

加藤綾子キャスター:風間さん、麻生大臣が(報告書を)受け取らないってどういうことなんですか? 
風間晋解説委員:政府にとって、不都合な真実が明るみに出てしまった報告書なんですよ。今までも年金だけではちょっと心配だよね、赤字だよねってみんな薄々勘付いてはいたわけです。ところがここに、長寿というか、政府が「人生100年時代」だって盛んに言い始めているわけじゃないですか。この赤字が人生100年と合体して『30年で2000万円足りない』という、数字としてはっきり出てしまった。だからインパクトが大きい。これはちょっとまずいということで、報告書はなかったことにしようとしていますけど、この状況は隠せないわけですよね。
加藤綾子キャスター:受け取らなくても、これは変わらないということですよね。

お分かりだろう。こんな報告、普通に受け取っちゃいかんのだ。難癖つけて、なかったことにしなければならない。えっ? かえって、目立つことになったって? やっぱり、私もダチョウになろう。砂の中に頭を突っ込んで目隠しだ。
(2019年6月12日)

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