権力を批判する人、おもねる人。
毎日新聞「松尾貴史のちょっと違和感」が、このところまことに快調。明晰な文章のテンポが小気味よいだけでなく、イラストも秀逸だ。羨ましいほどの才能が、日曜の朝刊を楽しいものにしている。
昨日(12月8日)は、「『桜を見る会』疑惑 安倍政権こそ『悪夢』そのもの」というタイトル。冒頭と末尾だけを、引用させていただく。
総理大臣主催の「桜を見る会」の疑惑は、安倍晋三氏のもくろみとは裏腹に、一向に収束する兆しを見せない。違法薬物所持による芸能人の逮捕でニュースや情報番組は一斉にそちらに傾くと思いきや、まさかの検査陰性という事態になって材料が乏しくなったのか、あるいはそれが追い付かないほど次から次へウソと新たな疑惑が浮かび上がってきて、この騒ぎは来年まで尾を引きそうだ。…ウソで蓋(ふた)をしようとすればするほど、つじつまの合わないところが出てきて疑惑が数珠つなぎに引っ張り出される構造になっている。
ウソの上塗りを続けると、さらに大きなウソや滑稽(こっけい)な言い訳を繰り出さざるを得なくなる。しかし、ここまでくると見苦しく人ごとながら恥ずかしい。
そして、おなじみ「困ったときの民主党」も持ち出していた。鳩山由紀夫総理の時も桜を見る会をやっていたということらしい。もし私物化し、反社会的勢力や問題のある人物を呼び、後援会で取りまとめ、資料の隠蔽(いんぺい)などをやっていたのなら、一緒に責任を追及すればいいだけのことだ。日本を良き方向にかじ取りをして浮揚させてくれていればまだマシだけれど、7年間もほしいままにやらかしておいて、「悪夢のような民主党政権」はもう使えないだろう。あの頃より何を良くしてくれましたか。私にとっては「悪夢そのものの安倍政権」である。
彼の言うとおり、「『桜を見る会』の疑惑は、安倍晋三氏のもくろみとは裏腹に、一向に収束する兆しを見せない」し、収束させてはならない。徹底して追及しなければならない。安倍晋三が逃げるのなら、追いかけなければならない。年を越しても、国会の会期をまたいでも。もう少しまともな政権と交替させるまで。
ところが、こういうときには、政権御用達の「御用言論人」がしゃしゃり出て来てゴマを摺る。たとえば、小川榮太郎(2019年12月4日)。読むだに、こちらが恥ずかしい。
【安倍総理の先見の明】に感心している。桜を見る会の中止決断の事だ。余りに早かったので、私は判断尚早と考え、ご本人にもそう申し上げたしコメントでもそう書いた。モリカケに較べてさえ愚の骨頂のから騒ぎがそう続くはずがないと思ったからだ。ところがどうだ。
「やつら」は通常国会でもこのネタで延々と騒ぐつもりでいるらしい。従来の人類の基準では測れない「この人達」の知能レベルと行動パターンを身を以て知悉している安倍総理ならではの早期決断だったわけだ。総理の慧眼、改めて感服した次第。
あるいは、木村太郎。「『桜を見る会』問題は『終わったんじゃないか…審議拒否する野党もどうか』」という具合。
…木村氏は「桜を見る会なんて、もうやめちゃえばいいと思うんですよ、こんなもの。まったく意味のない催しだと思うんで。やめちゃえばいいと思うんですけど」とコメントした。
一方で「だからと言って、桜を見る会を理由に審議拒否する野党もどうかなと思って。特に日米貿易協定って、あんな大事な協定の承認の問題をほとんど審議しないで終わっちゃった。これから、いろんな意味で日本人の生活に影響がある問題をほったらかしにして、やる問題ではなかった」とした。(報知新聞社)
日米貿易協定の審議を実質行わないまま、国会通したのは与党じゃないか。こういうときに、人の中身が顕れる。自分の信念でものを言う人であるのか、政権に忖度して甘い汁を吸おうという人であるのか、と。
(2019年12月9日)