宇都宮健児フライングに続いた志位和夫フライング
(2020年5月29日)
都知事選が目前である。6月18日(木)の告示まで3週間を切った。既に、具体的な選挙運動準備が始動していなければならないこの切迫した時期に、革新陣営の予定候補者が未定である。
これまで、「市民と野党共闘」という枠組みでの統一候補の擁立が模索されてきた。その動静は、「東京革新懇」や「革新都政を作る会」、あるいは「九条の会」などを通じて公式・非公式に伝えられて来た。そして、現在は「市民と野党の共闘の実現で都政の転換をめざす呼びかけ人会議」がその任務を担っている。アベ政治や小池都政を容認しがたいとする多くの都民の期待は大きい。
国政レベルでの「市民と立憲野党の共闘」が大きく進展し、安倍改憲を阻止し、国政私物化のアベ政権を追い詰める成果を上げている。今、その都政レベルでの、「市民と野党の共闘」という枠組みの設定が重要なことが自明である。そのうえで、その枠組みにふさわしい候補者の擁立が必要なのだ。
これまで、期待を込めて見守ってきた。予定候補者として、何人もの有力な人の名前が上がっては消えた。水面下の事情についてはまったく知らないから、もしかしたら完全には消えていない人がいるのかも知れない。おそらくは、ギリギリの段階で、しかるべき人が出てくるのだろうとの希望は捨てていない。
そんな中で、宇都宮健児君が立候補を表明し、一昨日(5月27日)出馬の記者会見をした。もちろん、「市民と野党共闘」の候補ではない。その意味ではフライングである。まだ間に合う。宇都宮君、立候補はおやめなさい、と申しあげたい。
言うまでもなく、「出たい人より、出したい人」が候補者としてふさわしい。これまで、都知事選に「出たがっている」人としては、宇都宮君を措いてない。しかし、到底彼が、「市民と野党の共闘」候補者としてふさわしいとは考え難い。2020年都知事選の共闘候補として、これまで彼が考慮の対象であったことはない。
半年ほど前のこと、ある集会後の懇親会の席上、都レベルでの野党共闘と統一候補擁立に努力をされている方から、意見を聞かれたことがある。「宇都宮さんは、野党共闘からの要請がなくても、立候補したいんだろうか?」「私は彼の動静についてはまったく知りません。それでも、出たいんだろうと推測はしています」「それが困るんだ。共闘の立場から出したい人を説得して決意させることはなかなか難しい。宇都宮さんに先に手を挙げられると、余計に困難になる。何とかならないでしょうかね」
なんともならないうちに、憂慮が現実となった。5月27日記者会見で、彼は記者の質問に答えてこう発言したそうである。
「私が立候補(表明)するまでに政党との関係はないし、今まで政党に支援要請はしていない」「今回は、どういう候補が出てきても降りるつもりはない」「それ(山本氏が出馬しても立候補を断念しないこと)は、もう当然。(宇都宮氏以外の候補者で)野党共闘ができても、降りないわけだから」(括弧内は、J-CASTの記者による)
むくつけなまでの野党共闘拒否の宣言である。もちろん、そのような考え方があってもよかろう。しかし、誠実に社会進歩を望む人の発言ではない。日本の首都の首長選挙である。市民や野党間の共闘あっての候補者でなければならない。市民と野党の共闘が先行して、一致して「出したい人」が候補者として擁立されねばならない。「出たい人」に引き摺られての形だけの共闘は無意味である。今後への弊害が大きい。
問題は、野党の対応である。何より注目されるのは共産党の姿勢。本日(5月29日)の赤旗が、志位和夫委員長の以下の発言を報じている。
「昨日(27日)の宇都宮さんの会見を拝見しましたが、基本的な政治姿勢、基本政策は私たちと共有できると思います。日本共産党として宇都宮さんの出馬表明を歓迎します。今後のたたかいについては、よく話し合っていきたい」と語りました。
志位氏はまた「この間、野党の党首間では、都知事選挙で統一候補を立ててたたかうことを何度も合意しています。わが党としては野党共闘でたたかう体制をつくるために努力したい」と語りました。
その見出しが、「東京都知事選で志位委員長 宇都宮氏の出馬表明を歓迎 野党共闘の体制づくりへ努力」というもの。まことに思慮に欠けた発言と指摘しなければならない。
《野党共闘拒否宣言の宇都宮出馬表明歓迎》と《野党共闘の体制づくりへ努力》が、両立するわけはない。これでは、共産党が、野党共闘を壊しているとの批判を避けがたい。
問題は、それだけではない。市民運動としての「呼びかけ人会議」に対する背信行為というべきだろう。「市民と野党の共闘の実現」を目指す活動は、有力野党の共産党の特定候補者評価できわめて難しくなる。共闘を否定しての宇都宮健児出馬表明がフライングであり、これを容認するかのごとき志位和夫発言もフライングというほかはない。
本来、共産党はこう言うべきだった。「呼びかけ人会議のお骨折りによる候補者選定の成果を待ちたい」「白紙の立場で野党共闘による候補者擁立の努力を重ねたい」「宇都宮候補への評価は、今は控えたい」
私は、水面下の動きは知らない。まさか、とは思うが、同会議が宇都宮健児の推薦をするようなことになれば、だまし討ちに等しい。さまざまな憶測を呼ぶことになるだろう。私も、「呼びかけ人会議」の呼びかけ人の一人だが、そのときは即刻下りることにしよう。