改めて要求する。「森下俊三のNHK経営委員辞任」と「議事録の全面公開」を。
(2020年7月6日)
コロナ禍再び拡大の虞れの中、風雨激しきを衝いて、本日またまたNHK放送センターに出向いた。応接の経営委員会事務局職員に下記2通の要望書を提出し、趣旨を説明してきた。
要望書の一通は、NHKの在り方を民主主義に重要な問題として考え行動しようという全国の市民運動23団体連名の申し入れ。もう一通は、研究者・弁護士・ジャーナリストら有志21名の申し入れ。
両者に共通する主要な申し入れの主旨は2点である。その資格ないことが明らかになった森下俊三NHK経営委員長に改めて経営委員の辞任を求めるということ。そしてもう1点は、上田良一NHK会長を厳重処分とした2018年10月23日の経営委員会議事録の速やかな公表を求める、ということ。
いずれも3回目の申し入れになるが、この時期緊急に本日を選んで改めての申し入れとなったのは、われわれにとっての新事実が明らかになったからだ。
とりわけ、6月29日毎日新聞朝刊のトップ記事が、質も量も圧倒的なものだった。「『NHKの大問題』前会長抗議」「経営委、法抵触か 議事全容判明」という大見出し。3面に解説記事を載せ、8面にほぼ全面を使っての生々しい「議事全容」を掲載している。
この記事の衝撃を受けて、全国の関連市民団体と有志が、それぞれ7月7日経営委員会に間に合うよう、改めての「森下俊三氏辞任」「議事録全面開示」を申し入れたのだ。
「森下俊三氏辞任要求」に理のあることは、従前からのことだが、6月29日毎日新聞8面の生々しい「議事全容」を読むと、改めてこの人は、NHKのあり方についても、ジャーナリズムのなんたるかについても、およそなんの理解もない人物だとよく分かる。このような不適格者が安倍政権からNHKに送り込まれている。NHK経営委員不適格と言うよりは、ジャーナリズムに関わるべきではない。なるほど、経営委員会はこんな内容の議事録だからこそ公表したくないわけだ。
しかし今や、NHK自身が創設した情報公開制度において、「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が全面公表すべしと答申しているのだ。ことここに至って、非公開で押し通すことはできまい。明日の経営委員会に向けて、ダメ押しの申し入れなのである。
NHK(経営委員会)に申し入れの後、衆院第1議員会館で記者会見。けっして、多くの記者の参加を得たわけではないが、出席記者の質問はいずれも的確で活発だった。みのりのある1時間の小討論であった。報告者の側から記者の諸君に、「明日の経営委員会終了後のブリーフィングの際には、是非、本日(7月6日)付2通の申入書が、どのように議論され、どのような結論となったかを質問していただきたい」とお願いする場面もあった。明日の結果を待ちたい。
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2020年7月6日
NHK経営委員会委員長 森下俊三 様
NHK経営委員会委員 各位
改めて森下俊三氏の経営委員辞任と議事録の一般公開を要求する
NHKとメディアを考える東海の会/NHK・メディアを考える京都の会/NHK問題大阪連絡会/NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ/NHKとメディアを語ろう・福島/NHKとメディアを考える会(兵庫)/表現の自由を市民の手に 全国ネットワーク/NHK問題を考える岡山の会/NHK問題を考える会・さいたま/時を見つめる会/NHKを考えるふくい市民の会/日本の政治を監視する上尾市民の会/マスコミを語る市民の会(宮城)/政府から独立したNHKをめざす広島の会/NHK問題とメディアを考える茨城の会/NHK問題を考える奈良の会/NHKを考える福岡の会/NHKとメデイアを考える滋賀連絡会/NHKとメディアの今を考える会/放送を語る会/ジャーナリズムを考える市民連絡会とやま/言論の自由と知る権利を守る長崎市民の会/「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える11.5シンポジウム」実行委員会
(1)『毎日新聞』は6月29日の朝刊で、NHK経営委員会が上田良一会長(当時。以下、役職名はすべて当時)を厳重注意した2018年10月23日の会合の「議事全容」を掲載しました。
これは、正規の議事録ではありませんが、『毎日新聞』NHK問題取材班が「複数の関係者」への独自の取材に基づいてまとめたもので、信憑性が極めて高い内容と考えられます。
「議事全容」を一読して、際立つのは、森下経営委員長代行者が石原進経営委員長とともに、経営委員の個別の番組への干渉を禁じた「放送法」第32条を蹂躙する発言を繰り返し、会長厳重注意に至る議事を強行した実態です。
その最たるものは、森下氏が、「今回の番組の取材は極めて稚拙で、取材をほとんどしていない」と番組編集と一体の取材をあからさまに攻撃すると同時に、「郵政側が納得していないのは取材内容だ。納得していないから、経営委に言ってくる。本質的なところはそこで・・・」と語ったくだりです。
これは、森下氏が、ガバナンス問題よりも取材を問題視し、個別の番組の編集に踏み込み、干渉する認識と意図があったことを示す何よりの証拠であり、森下氏の一連の発言が「放送法」第32条に違反するものであったことは、もはや弁明の余地がありません。
(2)さらに、森下氏のみならず、今も経営委員にとどまっている他の数名の委員が、個別の番組の取材・編集に干渉する発言をしていたことも見過ごせません。「クレームへの対応というより、番組の作り方で若干、誤解を与えるような説明があった」、「番組の作り方に公平さを欠く要因がなかったか」、「こういう問題では〔経営委も〕番組内容に踏み込まざるを得ない」といった経営委員の発言も、個別の番組への干渉を禁じた「放送法」に抵触することは明らかです。
(3)経営委員会が、会長厳重注意に至る議事録を全面開示するよう促した「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」(以下、「審議委員会」と略す)の道理ある答申にいまだに応えない間に、メディアが独自取材をもとに議事録に極めて近いやり取りを「議事全容」と題して報道したことは、情報公開の責務を果たさない経営委員会の背任を改めて浮き彫りにしたものです。
とりわけ、森下氏が、「放送法」第41条で議事録を遅滞なく公表する任を負わされた委員長の職責を省みず、「審議委員会」によって、事実上、ことごとく退けられた「経営委員会議事運営規則」に固執して、2018年10月23日の会合の議事録の公表を拒み続けてきた責任も重大です。
これによって、森下氏が経営委員会に対する視聴者、広くは社会の信頼を失墜させたことは、重大な背任と言わなければならず、もはや、森下氏に残された道は経営委員長の辞任にとどまらず、経営委員を引責辞任する以外、ありません。
そこで、私たちは以下のことを申し入れます。
申し入れ
〔1〕森下俊三氏は、「放送法」第32条を蹂躙する発言を繰り返すとともに、2018年10月23日の経営委員会議事録の公表を拒み続け、経営委員会が会長厳重注意という極めて異例の決議をした経緯の説明責任を果たさなかった責任を取って、直ちに経営委員を辞任するよう、重ねて要求する。
〔2〕経営委員会は「審議委員会」の道理ある答申を尊重して、開示の請求があった2018年10月23日の経営委員会議事録と配布資料を直ちに開示するとともに、それを経営委員会のHPにも掲載して、一般に公開するよう、重ねて要求する。
〔3〕2018年10月23日の経営委員会で、複数の経営委員が、森下氏ほど露骨ではないにせよ、委員が個別の番組の編集に干渉することを禁じた「放送法」第32条に抵触する発言をしたことも重大で、これら委員も猛省が必要である。この先の経営委員会で反省・自戒の意思を表明し、それを議事録に記載するよう、求める。
以上
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2020年7月6日
NHK経営委員長 森下俊三 様
同 経営委員各位
国民の知る権利に資するNHKを蝕む内部問題を許さない
?経営委員会の番組編集への介入と情報公開制度違反について?
研究者・法律家・ジャーナリスト・NHK退職者他有志
かんぽ生命保険の不正販売を報じた2018年4月のNHK番組「クローズアップ現代+」をめぐり、NHKの経営委員会において委員らが当時のNHK会長を番組内容に関わって厳重注意したことは、経営委員が個別の番組の編集に干渉することを禁じた「放送法」第32条違反を強く疑わせる問題である。NHKの社会に対する圧倒的な影響力を考えれば、国民の知る権利保障のためには、編集と経営は分離されなければならない。
この放送法32条違反の編集介入の事実を検証すべく、NHKの情報公開規定に基づき、2019年9月ある視聴者が「NHK経営委員会が2018年10日23日、上田良一会長に対して行った厳重注意について、経営委員会で行われた議論の内容が分かる一切の資料」の開示請求を行った。ところがこれに対して、NHKは「議論のための資料、および議事録(非公表部分)」については、「NHKの事業に関する情報であって、開示することによりNHKの事業活動に支障を及ぼす恐れがある」という理由で開示できないとした。しかし、請求者が不開示についての「再検討」を求めたところ、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会は「開示が妥当」と答申した。にもかかわらず、NHKは未だ開示していない。これは放送法29条1項1号ノがNHKの情報公開制度を予定し、また、NHK自らが、「視聴者から受信料を得ていることに鑑み視聴者に情報を公開し、放送による言論の自由を確保しつつ、視聴者に対する説明責任を果たす」ために情報開示基準をさだめている趣旨に明らかに反する。
今回、毎日新聞が6月29日朝刊において、複数の関係者の取材に基づき「NHK会長厳重注意 経営委の議事全容」を掲載した。そこでは、森下委員長代行(当時)は、「今回の番組の取材は極めて稚拙」だとか、「視聴者目線に立っていない」などと番組内容を批判し、監査委員会が「ガバナンス上の瑕疵は認められない」と報告しているにもかかわらず、郵政側が納得していないとの理由で、会長自身が直接対応することを強要している。また7月2日の朝日新聞「けいざい+」では、郵政側に経営委員会宛文書の送付を示唆したのは、森下氏自身であることも報じられている。
以上から、私たちは、上記国民の知る権利に資するべきNHKの存在意義に照らし、次の2点を森下俊三経営委員長ならびに経営委員会に要求する。
1.複数の経営委員が個別の番組の編集に干渉する発言をしたと言われている2018年10月23日の経営委員会の議事録(議事概要ではなく発言者の氏名、発言の内容を全文記した議事録)を全面開示すること。
2.NHKの番組編集の自由を侵害し、NHK自らが定めた情報公開制度を履践できない森下俊三氏は、経営委員長はもとより、経営委員の職も直ちに辞すること。
以上
研究者・法律家・ジャーナリスト・NHK退職者ほか有志賛同者名簿
梓澤和幸(弁護士)
池住義憲(元立教大学大学院教員)
池田文夫(言論の自由と知る権利を守る長崎市民の会幹事)
小田桐 誠(ジャーナリスト/大学教員)
児玉勇二(弁護士)
小玉美意子(武蔵大学名誉教授)
小林 緑(国立音楽大学名誉教授・元経営委員)
佐藤真理(弁護士)
澤藤統一郎(弁護士)
白垣詔男(日本ジャーナリスト会議(JCJ)福岡支部長)
杉浦ひとみ(弁護士)
関口達夫(言論の自由と知る権利を守る長崎市民の会事務局長)
醍醐 聰(東京大学名誉教授)
?野春廣(東海学園大学名誉教授)
田島泰彦(早稲田大学非常勤講師・元上智大学教授)
永田浩三(元NHKプロデューサー)
根本 仁(元NHKディレクター)
服部孝章(立教大学名誉教授)
皆川 学(元NHKプロデューサー)