週刊ポスト「安倍首相を引きずりおろす」「今こそ落選運動を」特集の意味。
(2020年8月3日)
本日の各紙朝刊に、週刊ポスト(8月14・21日合併特大号)の大広告。イヤでも目に飛び込んでくる冒頭タイトルが、白抜きの「今こそ落選運動2020を始めよう」である。落選させようという対象に驚く。なんと、「安倍首相を引きずりおろす『国民の最強手段』がこれだ!」。保守色のイメージが強い小学館の週刊ポストが、安倍首相を引きずり下ろせキャンペーンの大見出しなのだ。
世には、定評というものがある。講談社はリベラルで、小学館は保守というのもその一つ。だから、週刊現代は政権批判に厳しいが、週刊ポストは生温い。いやどうも、この思い込みもあてにならない。あの嫌韓イメージの強い週刊ポストが、かくも果敢に安倍政権攻撃の特集を組もうとは、びっくり仰天というほかはない。そして、仰天のあとには考えさせられる。
週刊ポストの広告は、「落とすべき議員リスト」を挙げる。本文では実名が語られているのだろうが、広告では下記のとおりだ。
・無策でコロナ禍を拡大させた7人
・緊急事態宣言中に私腹を肥やした6人。
・スキャンダルを”なかったこと”にした6人。
・政権交代の邪魔になる野党の7人 ほか
これは、さすがだ。確かに、誰もが、こんな議員は落とすべきだと思うに違いない。読者の共感を獲得しそうではないか。
さらに驚くべきは、「10・25総選挙『289選挙区&比例』完全予測」である。「自民68議席減、野党連合73議席増!」「総理大臣もニッポン政治も変わる!」とのシミュレーションを提示している。
10月25日総選挙の根拠については分からないが、仮に、ここで総選挙となれば、現状286の自民党議席は68減となって、216となる。過半数に必要な233を下回るというのだ。代わって、「野党連合73議席増!」となる。もちろん、アベ晋三は総理の座から追い落とされる。日本の政治は変わらざるを得ない。
もっとも、このシナリオには条件が付いている。野党連合が成立し、各小選挙区に一本化された野党連合候補が擁立されなければならない。これさえできれば、週刊ポストシミュレーションが現実味を帯びてくる。
週刊ポストが、このような特集を組んだことの意味は大きい。30万部超の発行部数をもつ週刊誌の編集者が、世の空気を「反安倍」の風向きと読んだのだ。今や、安倍政権への提灯記事では部数は増えない。「安倍首相を引きずりおろす」という特集記事でこそ、ポストは売れると踏んだのだ。
しかも、もっと具体的に、国民は「コロナ対策での政権の無為無策」に憤っており、「緊急事態宣言中に私腹を肥やした安倍政権に近い議員もいるぞ」「安倍政権下であればこそ、スキャンダルを”なかったこと”にした議員もいる」「政権交代の邪魔になる野党の議員をあぶり出せ」。こんな議員たちを落選させようというアピールが多くの国民を引きつけると判断している。
このポストの特集は話題を呼ぶことになるだろう。その話題が反アベの世の空気を増幅することにもなるだろう。類似の企画を生むことにもなる。安倍指弾の世論は着実に興隆することになるだろう。
この広告を載せた、本日(8月3日)の朝日新聞朝刊が、「内閣支持率30代も低下」という解説記事を掲載している。「安倍内閣の「岩盤支持層」だった30代が、コロナ禍の対応を評価せず、支持離れの兆し」「コロナ対応に不満」という内容。
「今年5月の世論調査では、30代の内閣不支持率は45%で、支持率27%を大きく上回り、全体の支持率を押し下げる要因となった。」というのだ。
また、「本日(8月3日)発表されたJNN(TBS系)の世論調査では、内閣支持率が35.4%、不支持率は62.2%を記録。JNNは2018年10月に調査方法を変更しているとはいえ、第二次安倍政権発足後、支持率最低と不支持率最高を記録したことになる」という。
週刊ポストに先見の明あり、ということのようである。