四党修正合意ーけっして「勝負あった」という事態ではない
「維新」も「みんな」も改憲志向政党である。改憲と軌を一にする特定秘密保護法案の審議においては、衆院段階ではやばやと法案修正の協議に応じて、自民党の補完勢力であることを露呈している。人権や民主々義の観点から、その存在自体が有害というべきである。
しかし、そのメンバーのすべてが、等しく国家主義的で、新自由主義的で、どうしようもない改憲志向であるかといえば、必ずしも一色ではなさそうだ。というのは、本日の毎日「特定秘密保護法案に言いたい」欄に掲載された「みんな」の井出庸生議員の意見にいたく感心したからだ。彼は、衆議院本会議の秘密法採決で党議に反して反対に回った。毎日紙上の発言で、その行動に筋が通っていることを知った。
彼は、次のように言う。
「法案は国家が国民に足かせをはめかねない。作るなら最低限の内容に抑えるべきだが、修正案は運用面に不安が残る。…納得できなかったのは、違法な秘密指定を告発する者を守る制度が担保できなかったことだ。告発ができなければ取材への情報提供もない。秘密の範囲から警察情報を外せなからたのも問題だ。…秘密が裁判の場で明かにならない可能性があることにも疑問が残る。…政治家は自分の発言、行動を封じ込めてはいけない場面がある。後悔していない。後悔があるとしたら、与党との交渉の場で、党内の慎重な意見をくめなかったことだ。」
「拙速審議に反対」の立場だが、その見解を行動で貫こうとする姿勢の真摯さには頭が下がる。
彼だけではない。井出議員が言及しているとおりに、「党内の慎重な意見」が確実にあるのだろう。「みんな」の参議院議員では、国家安全保障委員会審議での活躍が目立つ小野次郎議員に期待がかかる。議事録を見ると、その迫力たるや相当なものだ。本気で法案の危険性を追求している。到底、四党修正案で手を打とうという姿勢ではない。
もう一人、川田龍平議員にも期待をしたいところ。彼は特別委の委員ではなく、ブログを見る限り、法案の内容にさしたる理解があるようには見えない。しかし、情報公開を求める立ち場にある彼が、「みんな」の党議に拘束されて、この法案に賛成の立場にまわれば、その政治生命(が今あるものとして)は完全に断たれる。彼は、たまたま居所を間違えて「みんな」という政党に所属しているのか、実は「みんな」べったりがふさわしいのか。きちんと説明責任を果たさなくてはならない。
彼が、「公式ブログ」で表明している特定秘密保護法案に対する姿勢は、次のとおり。
「自分はこの法案の拙速な成立に、一貫して反対の立場を訴え続けてきました。薬害も原発問題も、その根底にあるのはすべて国による情報統制であり、この法案もまた、同じ危険性を帯びているからです。」
見てのとおり、「法案反対」とは言わない。反対なのは、「拙速な成立」に対してのこと。「拙速でなければ賛成」「審議が尽くされれば賛成」という余地を残す発言となっている点においてもどかしい。これまでの「公式ブログ」を読み返しても、自分が政治家として関わってきた問題に、この法案が具体的にどう影響するのかという掘り下げた思索がない。自分の言葉で語る迫力もない。
川田龍平議員よ、この法案に反対であれば今の時点で速やかに意見を述べるべきではないか。是非とも「廃案を目指す」と言ってほしい。「拙速成立批判」も結構だが、具体的に「どこをどう改めない限り賛成はできない」と言わねばならない。「政治家は自分の発言、行動を封じ込めてはいけない場面がある。」という井出議員に倣った覚悟を見せていただきたい。本会議での不起立で、後出しの抵抗ポーズをとっても、時既に遅し。法案成立の阻止には無意味ではないか。
国会情勢は、いまなお流動的である。
民主、みんな、共産、維新、社民、改革、生活の野党7党全会派の参院国会対策委員長は28日夕、国会内で会談し、
「特定秘密保護法案に関し国家安全保障特別委員会での徹底審議」
を合意した。
さらに本日、この合意は、7党の幹事長・書記局長会談でも確認されている。維新・みんなを含めて、この合意は誠実に実行されている。四党修正ができたからこれで盤石、安心して採決の強行ができるという事態ではない。いま、全野党が結束して要求する「徹底審議」を無視することは容易なことではない。
このような状勢は、院外の運動が作り出したものだ。院内の議席数では、少数でも、「今国会の成立にこだわらない徹底審議」は国民の圧倒的多数の声だ。実は、世論の渦の中に孤立しているのは安倍政権と与党の側である。
院外の集会の声が、彼らの耳に「テロ行為のごとく」突き刺さるのは、彼らの焦りの故である。与党中枢にも、反対運動の声は確実に届いている。維新や「みんな」の良心派議員の耳にも届いていないはずはない。もしかしたら、心ある公明党議員の胸にだって。
(2013年12月2日)