西暦表記を求める企業の合理性 ー 「西暦表記を求める会」にて
(2021年9月6日)
本日、衆議院議員会館の一室を借りての「西暦表記を求める会」世話人会。私も、この会の世話人の一人として、リアルに出席。肩の凝る会議ではない。半分は雑談が楽しい。
「西暦表記を求める会」は小さな市民団体だが、「変えるのは私たち! 全ての公文書に西暦表記を入れさせましょう」と、意気は高い。その会の趣旨とや活動については、下記のURLを開いてご覧いただきたい。
https://seirekiheiyo.blogspot.com/
本日の議題は、生保会社に対するアンケート調査の件。
国内には42社の生保会社があるという。その全社と、幾つかの共済事業体を対象に、西暦と元号との使用状況についてアンケートをしようということなのだ。そのきっかけが、下記のとおり会のホームページに掲載されている。《長期契約になることもある生命保険》というのが、ミソなのだ。将来の長期期間を元号では表記できないじゃないか、との含意がある。
「元号」は原理として「未来の年」を表示できません。
ところが、人生の全期にわたる長期契約になることもある生命保険において、元号のみの表記をいまだ続けている会社もあります。日本生命保険相互会社の保険契約をお持ちの方から、契約者(相互会社という仕組みでは社員でもあるそうです)として、契約情報は元号表記でなく、西暦にして欲しいと要請したところ、順次西暦化していくとの回答が直ちにきました、という情報をいただきましたので、紹介します。
生命保険会社では年に1回、契約者に対して、契約内容や請求漏れがないか契約者情報の変更がないか、などの確認を行っています。2021年現在、日本生命保険相互会社の場合、契約確認書類の年表記は元号のみでした。(被保険者の生年月日・契約日・確認書類作成日がすべて元号表記)
そして、以下が連絡フォームから送付した要請文だそうです。
契約内容の確認を致しましたが、契約者の生年月日、保険の契約年月日などすべて元号表示のみになっていますが、なぜですか。
何年前の契約か、何年経過したか、何年後終了する契約か、どう考えてみても西暦でなければいちいち換算しなくてはならず、なぜあえてわかりにくい表示を御社がしているのか、理由を教えてください。
どうか、顧客満足の立場に立つのであれば、西暦表記に変更してください。よろしくお願いします。
以下が、それに対する回答文だったそうです。
いつも格別のお引立てをいただき厚くお礼申しあげます。
当社ホームページからお問合せいただきました件につきまして、
以下のとおりご回答申しあげます。
このたびは、契約内容の画面の年号表記につきまして、
ご不便をおかけいたしまして申し訳ございません。
当社といたしましては、将来的には西暦表記でご案内する予定でございます。
※順次変更していく予定でございます。
すぐにご案内できず申し訳ございませんが、何卒ご了承ください。
今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申しあげます。
いずれ、システム改修の時にでも、西暦にするから、それまで待てや、という風に読めなくもない、やる気の無い印象も受けてしまいましたが、それぞれの会社の顧客に対する思想が良く現れる事柄だと思いますので、今後も注視していきます。
この日本生命の件をきっかけにして、本日の会議では、アンケートの文案を検討し確定した。併せて、この生保各社に対するアンケートの意義について意見が交わされた。
・大事なのは、西暦表記が人々の予想を超えて広がっているのを示すことだ。
・生保業界だけでなく、銀行でも鉄道でも食品流通でも、民間には着実に西暦表記が主流となっている。
・そして、民間の潮流を官庁の公文書にまで押し及ぼすこと。
・どう考えてもビジネスには元号表記は不合理で高コストではないか。
・それでも、一部企業では元号表記を継続している理由を知りたい。
・おそらくは、「企業合理性の要請」と、「顧客の意識状況」とのズレの中で揺れているのだろうが、やがては「企業合理性」に収束することになるのだろう。
誰が考えても、元号は不合理だ。まずは連続性に欠ける。将来を表記することができない。元号は煩瑣で面倒。一人の人間の死という偶然で連続性が断たれる。いつ変わるのか予想ができない。元号では国外に通じない。元号では一貫した過去の記述もできない。元号は、紀年の手段としては欠陥品なのだ。この不便な欠陥品が国民に押し付けられている。ひとえに天皇制という不合理とセットになってのこと。
国民に元号使用を事実上強制しているのが、自民党政権である。自民党政権とは、一面民族の歴史を重んじるという保守層に支えられている。元号使用に馴染み、元号を民族の文化として受容する勢力。しかし、もう一面、自民党政権は大資本を中心とする財界に支えられてもいる。企業ともビジネス界とも言い換えることができよう。
合理性を追求する企業は元号使用を望まない。元号使用を妥協せざるを得ないときには、これを高いコストの負担ととらえる。元号を駆逐して、西暦使用を求めるに当たっては、保守政権を支えている半分の勢力が味方なのだ。企業に対する西暦使用のアンケート結果は、そのことを示すに違いない。