《自・公・維・国・連》対《立・共・社・令・市》
(2021年12月22日)
昨日、臨時国会が終わった。なんとも、見せ場のない盛り上がり欠けた国会であった。野党から国会開けという要求は徹底して無視し、与党の都合だけで国会を開いて、補正予算が成立したらもう用はないという身勝手な姿勢。積み残したものを山積のまま、早々の幕引きが得策というわけだ。
国会で議論すべき緊急のテーマは無数にある。とりわけコロナである。コロナの蔓延を防止し、医療体制を充実させながら、国民生活の安全と生業の継続のためには、与野党の知恵を寄せ集めなければならない。抜本的なパンデミック対策も、保健所削減政策の根源にメスを入れ全面的な再編拡充も、そのための原資を調達するための税制の改革も課題であり、沖縄での米軍基地内クラスターにどう対処すべきかについても国民的議論が必要であろうに…。
但しこの国会、注目すべきは究極の不要不急というべき改憲論議についてだけは過剰に踏み込んだことである。多少なりとも憲法審査会が審議に入り、ハト派と思われていた岸田首相のタカ派ぶりの言動が目立った。岸田の改憲への積極姿勢や敵基地攻撃能力論への言及には少し驚ろかされた。これは手品か妖かしか、化かされた思いが強い。いや、これまでが化かされていたのだろうか。
まごうことなきタカであり、その爪を隠そうとしなかった安倍晋三の言動は分かり易かった。右翼もリベラルも、「安倍のいるうちが千載一遇の改憲のチャンス。安倍がその地位を失えば改憲の望みはなくなる」と、この点では見解一致であった。その安倍と安倍後継の失脚で、「改憲のチャンスは潰えた」はずだったのだが、どうやらこれまでは爪を隠していた新種のタカが現れた様子である。
岸田が、これまではハトを装ったタカだったのか、今はタカを装わざるを得ないハトなのか、実はよく分からない。が、その本性如何に関わらず、いまの岸田の言動を批判すべきことが重要なのだ。
その臨時国会閉幕の日に、自民党は党本部で、名称を新たにした「憲法改正実現本部」(本部長・古屋圭司)始動の総会を開いた。この席に岸田が出席している。岸田だけでなく、安倍も麻生も茂木も高市も、有象も無象も出席したという。
そこで岸田がなんと語ったか。「国会での議論と国民の理解を車の両輪と考えてしっかりと押し上げてもらいたい」「『憲法改正推進本部』から『憲法改正実現本部』への改組の狙いは、わが党の覚悟を示したもの」「憲法9条への自衛隊明記など党の4項目のたたき台(条文イメージ)は、いずれも国民にとって早急に実現しなければならない内容だ。総力を結集して結果を出したい」
会合では今後の活動方針について協議し、実現本部の中に「憲法改正・国民運動委員会」を設置し、全国遊説や対話集会などの活動を精力的に進めていくことを確認したという。もっと急がねばならないことがたくさんあるだろうに、不要不急の改憲のための全国遊説や対話集会とは恐れ入った次第。
なお、今国会では、維新がはしゃいで臆面もなく右翼的本質を露呈した。また、国民民主が与党に擦り寄ったことも印象に残った。その結果、改憲をめぐる政党レベルでの改憲派対改憲阻止派の対抗関係は、下記のとおりとなった。
《自・公・維・国》対《立・共・社・令》
改憲派に連合が与し、護憲派に市民連合が味方している。こうして、それぞれの陣営が、主権者である国民の支持を集めようと運動することになる。はっきり言えば、改憲派は国民を騙しにかかるのだ。騙されてはならないし、騙しを看過してもならないと思う。