澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

スウェーデンのNATO加盟に反対の野党見解もある。

(2022年5月24日)
 これまで軍事的中立を国是としてきたフィンランドとスウェーデンが、相次いで NATO 加盟申請に踏み切った。ロシアのウクライナ侵略を脅威と感じた世論が大きく動いた結果だが、残念でならない。

 とりわけスウェーデンは、200年も続けてきた軍事同盟非加盟の外交方針を転換することになる。もっと熟慮あってしかるべきとも思うが、如何ともしがたい。

 とは言え、国内がNATO加盟支持一色ということではないという。3月の世論調査では加盟支持が51%と初めて過半数に達してはいるが、市民の間には中立政策を捨てることへの懸念が広がっているとも報じられている。

  NATO加盟をめぐる議会審議では、「左翼党」と「緑の党」が明確な反対意見を表明した。スウェーデン政府は、5月13日に安全保障政策の見直しに関する報告書「安全保障環境の悪化?スウェーデンへの影響」を発表したが、これには「左翼党」と「緑の党」の見解が収録されている。赤旗が、これを掲載しているので、その一部を抜粋して転載する。なお、議会の全349議席中、左翼党は27議席、緑の党は16議席を占めているという。

「安全保障状況を悪化させる」 左翼党

 「スウェーデンの軍事同盟不参加は、スウェーデンが何世代も平和に暮らすことを保障するのに役立ってきた。我々が支持できない戦争や紛争に関与してきた国家グループと永続的な軍事同盟を構築することは、リスクを増大させる。各同盟への加盟は我々の安全保障状況を著しく悪化させるだろう。NATOの戦争や紛争にスウェーデンを関与させることになる。
 NATOに加盟申請をすれば、我が国の安全保障政策の大部分を米国に委ねることになる。米国はNATOの行動に拒否権を持っており、NATO内で他国を自国の利益に沿って行動させることができる。
 NATOはアフガニスタン・イラク・リビアという大失敗した三つの戦争を遂行した。それは欧州連合(EU)の難民危機に繋がり、ISの出現に繋がった。
 NATO加盟は、NATOの各ドクトリンを信奉することを意味する。ロシア?NATO間の緊張関係は、核兵器の抑止効果に対する信仰を増大させることになる。
 大国や軍事同盟が、核抑止をその安全保障政策の基礎としている限り人類は全面的破壊破滅の脅威にさらされたままである。」

 このような明確な軍事同盟拒否・中立政策擁護の野党勢力が健在であることが頼もしい。「ロシアの野蛮な侵略的姿勢を見よ、あのような国と外交することも、あれに譲歩を迫る交渉をすることも、非現実的な選択肢ではないか」 というのが当世の風潮。要するに果敢に闘うしかないという圧倒的な世論の中での、落ちついた意見にホッとする。我が国でもこうありたい。

「仲裁者の役割疑問視される」 緑の党

 「緑の党はスウェーデンが核兵器のない世界を目指して取り組む上で推進力となる。我々は、それがNATOに加盟しないことで最もよく行われると考える。NATO に加盟することは、核兵器を脅迫として使用することにスウェーデンが同意することを意味する。
 NATO加盟は、民主主義や人権などの基本的価値を推進するスウェーデンの外交能力に影響を与えかねない。
 スウェーデンの仲裁者としての役割は、一定の文脈で疑問視されることになるだろう。」

 一つは、核兵器廃絶の立場から、NATO 加盟は核兵器を脅迫として使用することへの加担だとしての反対論。そしてもう一つが、これまでスウェーデンが果たしてきた国際紛争解決の仲介者としての役割への否定的影響に言及しての反対理由。これは、我が国の外交のあり方について、示唆に富む見解ではないか。

 1952年日本が独立したときの全面講和論を採用していたら…、あるいはその後に日米安保条約を廃棄していたらてん、さらには憲法9条を遵守していたら…。日本こそが、世界の各国からの信頼を得て、国際紛争の仲裁者としての権威を確立し得ていたのではないだろうか、などと夢想してみるのだが。

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