横須賀市議会での「ロシア非難決議」に反対票の問題提起
(2022年6月7日)
ロシアのウクライナ侵攻が始まったのが、2月24日。早くも3月上旬には各地の地方議会でロシア批判の決議が採択されている。多くは全会一致である。3月7日、神奈川県議会には「ロシアによるウクライナへの侵略に断固抗議する決議(案)」が自民党議員から上程され、同日全会一致で成立している。
3月24日には、横浜市議会が、これも自民党提案で「ロシアによるウクライナへの侵略を非難するとともに、国際紛争における武力行使の根絶を求める決議」が成立している。全会一致である。
そして同じ3月24日、横須賀市議会も、自民党提案による「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議」を賛成多数で採択した。但し、全会一致ではない。
採択された同決議の全文が以下の通りである。
ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議
国際社会の懸命の努力にもかかわらず、2 月2 4 日にロシア軍はウクライナへの軍事侵攻を開始した。
これらは、ウクライナの主権及び領土の一体性を侵害するとともに国際法に違反する行為であり、断じて容認できるものではない。また、その影響はヨーロッパにとどまるものではなく、アジアを含む国際秩序を揺るがす重大な事態であり、横須賀市議会としても看過できるものではない。
政府においては、在留邦人の安全確保と避難民への支援に努めるとともに、国際社会と連携し、あらゆる外交手段を駆使して、ロシア軍の即時撤退と速やかな平和の実現に全力を尽くすことが求められる。
よって、横須賀市議会は、ロシアによるウクライナ侵攻に対し厳重に抗議し強く非難するとともに、ロシア軍が即時に完全かつ無条件で撤退するよう強く求める。
以上、決議する。
この決議に二人の議員が反対にまわった。二人とも右翼でも右派でもない。無所属の市民運動派である。平和運動へのこだわり故の反対ということのようだ。この間の事情が、先頃届いた《非核市民宣言運動・ヨコスカ/ヨコスカ平和船団》からの「たより 330」(発行5月13日)に窺える。
3月・月例デモ出発前集会
ロシアのウクライナ軍事侵攻抗議
私たちの反戦も問われている
という見出し。「ロシアのウクライナ軍事侵攻抗議」は分かり易いが、「私たちの反戦も問われている」は、「何がどう問われている」というのか、けっして分かり易いものではない。それでも、みんな真剣に考えている大きな問題点なのだ。
新倉裕史(月例デモ・リーダー) コロナ感染対策で、1月、2月、月例デモを休みました。口シアによるウクライナヘの軍事侵攻は今も続いていて、反戦の声を上げようと、今月は月例デモの実施に踏み切りました。感染は収まっていないので、総監部前とゲート前での兵士への放送はありますが、商店街はサイレントです。
ロシアの軍事侵攻には抗議の声を上げますが、ウクライナ頑張れが、自分の国は自分で守る、そのためには軍事力も必要だという声も生まれています。私たちの反戦が問われています。ぜひご意見を。
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市川平(平和船団) ロシアは、ウクライナヘの軍事侵攻以前にも、1990年から 2000年にかけては、チェチェンの独立を弾圧しています。2008年にグルジア、今はジョージアと呼ばれていますが、ここに軍事侵攻し、2014年にはケリミア地域への攻撃とロシアヘの編入。その後も、2015年にはシリアヘの軍事介入と、アメリカと同様に、周辺の国々への軍事侵攻をしてきました。
今、バイデン大統領はプーチン大統領を戦争犯罪人と言いますが、アメリカも同じようなことを繰り返してきている。だから、そんなふうに言う資格はありません。
私たちはこうした大国による軍事侵攻を、どう食い止め ることができるのか。昔、ペンは武器より強し、といいましたが、今はSSNの活用で、個人が世界に向けて情報を発信できる時代です。この「ペン」を大いにに活用して、反戦の発信をしていきましょう。
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新倉 ロシアの武力による現状変更は、今に始まったことではないという指摘ですが、そのことはしっかりと認識したいと思います。その上で「ロシア許すな!」がナショナリズムを刺激し、反戦が翼賛化したり、軍事化したりする傾向も無視できません。
横須賀市議会で、ロシア抗議の意見書が賛成多数で採決されました。本会議で二人の議員が、この意見書に反対しました。そのお一人、小室たかえ市議がいらしていますので、経過の報告をお願いします。
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小室たかえ(市議会議員) 先日木曜日が、横須賀市議 会定例会の最終日でした。《口シアによるウクライナ侵攻に抗議する》という決議案が、当日の午前中の議運に自民党から提出されました。私は会派に入っておりませんので議運に席がありません。オンラインで傍聴していましたが、そのときには内容までは確認できませんでした。
ロシアがウクライナに軍事侵攻したこと自体は、本当に許されないことだと思いますが、今朝提出された決議文を、その日の午後に、賛成か反対かというのは、内容が内容だけに、とまどいました。
決議文のなかに、あらゆる外交手段をという文言がありました。あらゆるのなかに武力が含まれるのか、含まれないのか。武力も外交手段という言い方もありますし、そんなことを考えると、私はこれにはそう簡単には賛成できないなと、迷いました。
多くの人が、抗議決議当然でしょという中にあって、賛成できないというのは、正直怖いなという思いもありました。
そんなふうに思っていたところ、小林(伸行)議員が反対討論をしました。その内容は、私が悶々としていた内容といっしょでしたので、小林議員が反対討論を終えて議席に戻ってきたところで、わたしも同感ですと伝え、採決のときには40人中38名が起立をして賛成。私たち二人だけが着席したまま、反対の意思を表明した、ということです。
私の今日の話はつたないものですが、近くホームページに自分の考えをちゃんと載せるつもりです。ありがとうございます。
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新倉 小林議員の反対討論をネットの中継録画で聞きました。小林さんも、ロシアがしているとはとんでもなくひどいことで、一刻も早い停戦を求めるのは当然のごととしたうえで、問答無用の「正義」が振りかざされていることへの、抵抗としての反対討論だったと思います。お二人の反対票は、重要な視点を私たちに与えてくれていると思います。
市民派議員二人から投じられた《ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議》への反対票は、もちろんロシアによるウクライナ侵攻を免罪しようというものではない。反対票を投じた議員の1人は、「決議文のなかの《あらゆる外交手段を》という文言が武力を含のか含まれないのか。この点が曖昧では簡単には賛成できない」という。
そして、運動体の側は、この反対票を《問答無用の「正義」が振りかざされていることへの抵抗》であり、《「ロシア許すな!」がナショナリズムを刺激し、反戦が翼賛化したり、軍事化したりする傾向への警戒》と評価する。
まだ十分に咀嚼されていないが、重要な問題提起をしているように思う。