統一教会と安倍晋三との癒着の実態解明こそが切り込むべき本丸である。
(2022年8月17日)
風の動きが目まぐるしく変わる。あのとき、今日の風は読めなかった。明日の風はどうなることやら。
7月8日、安倍晋三が銃撃を受けたとの報は衝撃だった。一瞬のことではあったが、政治的テロの時代到来かという暗澹たる思いを拭えなかった。何よりも、模倣犯や報復テロが続くことを危惧した。ややあって、「悲劇の政治家安倍晋三」という偶像化と参院選への影響を心配した。そのような風が吹いてきたのだ。
右から左への強い風が吹くなかでの参院選の投票日を迎えた。自民党とりわけ右派にとっての追い風、野党には逆風の厳しい選挙。案の定、与党が圧勝し野党は大きく議席を減らした。余勢を駆って、岸田内閣は安倍国葬を決めた。この風向きに乗じて、さらにこの風を確固たるものにしようとの思惑からである。
この風は、安倍と安倍政治を美化する方向に吹いていた。安倍の政治路線に国政を引き込み、憲法改正も実現させかねない風となっていた。
ところが、この風は長く続かなかった。安倍晋三を銃撃した犯人の動機や背景が明らかになるに連れて、風はおさまり吹きやんだ。のみならず、やがて風向きが変わった。今度は、左から右へ。まったく逆方向への返し風。
安倍銃撃の衝撃に震撼した世論は、容疑者の安倍銃撃の動機報道に再び驚愕することになる。そして、あらためて統一教会というカルトの所業の悪辣さを思い起こし、その統一教会と安倍晋三との癒着の深さを知ることになった。こうして被害者であった安倍を悼む世人の心情は急激に冷めた。むしろ、安倍は、統一教会という反社会的団体と癒着する《反共右翼で権謀の政治家》というイメージを深く刻印されることになる。当然のことながら安倍国葬反対の世論が台頭し、過半を制した。
思いがけぬ事態に慌てた岸田内閣は、統一教会対策を主眼に内閣改造を前倒した。8月10日注目の中で発足した「統一教会関係者隠し」人事は失敗し政権への逆風は却って強くなった。
8月12日には、岸田改造内閣の副大臣と政務官計54人の顔ぶれが決まった。統一教会と接点をもっていた者は登用しないという触れ込みだったが、これも完全に期待を裏切り、教団と自民党全体との深刻な癒着関係があらためて国民に印象づけられた。杉田水脈の政務官採用など、今の時期にあり得ない「安倍人脈」への配慮優先が不信感を増幅させた。
現在、統一教会と自民党議員との関係に向けて、厳しい風が吹いている。これは外堀を埋めている段階。衆院議長細田博之も、国家公安委員長を務めた山谷えり子も、文科大臣を務めた下村博文も、そして萩生田光一も、井上義行も、杉田水脈も、外堀に位置する。その風が、いま本丸に近づきつつある。統一教会と安倍晋三との癒着こそが本丸であり天守閣である。ここに切り込まねばならない。
ジャーナリズムの諸賢にお願いしたい。これから、本丸を攻めなければならない時期に来ている。そうして初めて、政権が安倍晋三を通じて統一教会をどのように擁護していたのかも、明確にすることができるだろう。既に、安倍晋三は世にない。安倍晋三に近い位置にあった人々も、安倍に対する忖度は不要となつている。徹底して、真相を明らかにしていただきたい。そのことによって、安倍国葬は撤回を余儀なくされ、日本の民主主義は再生することになる。
なお、統一教会と安倍晋三を結ぶものは、反共という黒い糸である。反共という大義を共通にする統一教会と安倍晋三、この両者のイデオロギーの交流も明るみに出していただきたい。
是非とも今、この風向きが変わらぬうちに。