澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「使い回し」「コピペ」「剽窃」 ー 菅義偉弔辞の評価一転

(2022年10月4日)
 安倍国葬が終わって、臨時国会が始まった。明日からは、3日間の各党代表質問が行われる。この頃には、内閣支持率も回復しているだろうという岸田首相の読みは大外れとなった。あらゆる世論調査に岸田批判が鮮明である。真偽定かならざる、「岸田狼狽」「岸田切れた」「側近離れた」の類いの記事が溢れている。

 昨日(10月3日)の岸田首相所信表明演説は、はなはだ評判がよくない。今は、何をやっても、何を言っても、岸田叩きの材料とされる。演説の内容もさることながら、覇気がない、投げやり、国民の声を聞く耳がない、などという評価は、ややお気の毒でもある。

 岸田経済政策の目玉と言うべき「新しい資本主義」の評判がすこぶる悪い。「アベノミクスとどこが違うのか」という叩かれ方である。岸田の苦しい立場がよく表われている。安倍に批判の立場をとれば党内主流に叩かれる。安倍に擦り寄れば、国民の支持を失う。右するも、左するも、叩かれるのだ。どうすりゃいいのさこのワタシ、という心境とお察する。

 安倍の怨霊に取り憑かれている岸田である。ここは乾坤一擲、この背後霊を切り捨てなければならない。まずは山際大志郎を切って、返す刀で安倍派を成敗である。それができなければ、ジリジリと怨霊の生け贄にならざるを得ない。

 ところで、私は保守政権に「良・可・不可」の成績をつける。保守政権である以上は「優」はやれない。しかし、「良」はある。宮沢喜一政権にも福田康夫政権にも「良」をやってよい。一方、中曽根康弘こそ「不可」の最たるものと思っていたら、下には下がある。安倍晋三という最低・最悪の「不可」政権が現れた。これに較べれば、岸田政権はずっとマシ。悪法成立のリーダーシップのないことだけで、「可」の評価をやってよい。「可」の政権を倒したとたんに、「不可」政権が成立したのでは面白くない。

 防衛費倍増やら原発再稼働発言は怪しからんと岸田を引きずりおろすことができたとして、さて次はどうなるだろう。今、菅義偉の復権がささやかれているが、この人、安倍とどこまでも一緒に駆けて駆けて駆けぬいてきた、安倍の分身である。安倍亜流、安倍コピーと言っても、安倍の使い回しと言ってもよい。実証済みの「不可」政権である。

 今、目くそ岸田を取るか、鼻くそ菅を取るかと聞かれたら、どう答えるか。「鼻くそはご勘弁。目くそで我慢をしておこう」とは言いたくないが、絶対に鼻くそだけは御免こうむると言わざるを得ない。「目くそも鼻くそも、まっぴらご免」と威勢よく言うためには、野党の自力の増大と、共闘の進展を展望するしかない。

 目くそ・岸田の葬儀委員長挨拶は不評甚だしく、鼻くそ・菅義偉の弔辞には拍手が湧いた。「感動した」などという、おべんちゃらが垂れ流されている。しかし、先のリテラの記事が菅の愚かさを暴き、昨日の日刊ゲンダイがこれに続いている。「菅前首相の“絶賛弔辞”コピペ疑惑で赤っ恥 『前提すっ飛ばしなら一種の剽窃』と識者バッサリ」という見出し。記事の中に、「まさかお悔やみまでコピペ…?」とも。なるほど、使い回しというよりは、コピペ弔辞の方が分かり易いのかも知れない。そして、『剽窃』とは辛辣極まる。

 日刊ゲンダイはこう言う。

 「安倍元首相の「国葬」強行から1週間。友人代表として参列した菅前首相の弔辞がいまだに話題を集めている。なぜか? 流用疑惑が浮上し、大炎上しているからだ。元ネタは、あろうことか故人が指南役の逝去にあたって寄せた追悼メッセージ。第2次安倍政権以降、広島・長崎の平和祈念式などであいさつの使い回しが常態化しているが、お悔やみまでコピペとは……。

 菅前首相の弔辞をめぐる疑惑を報じたのは、ニュースサイト「リテラ」。〈菅義偉が国葬弔辞で美談に仕立てた「山縣有朋の歌」は使い回しだった! 当の安倍晋三がJR東海・葛西敬之会長の追悼で使ったネタを〉(1日配信)と題した記事で、流用の可能性を指摘した。

  高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。

「ア然としています。菅前首相は遺影に向かって『歩みをともにした者として』と語りかけていましたよね。いわば盟友の安倍元首相が恩人を偲んで引用した句だと知らなかったのでしょうか? 前提をすっ飛ばして、あたかもオリジナルであるかのように振る舞っていたのだとしたら、一種の剽窃です」

 「8年8カ月のアベ政治は嘘にまみれたハリボテだった。この国のレベル、儀礼にふさわしい弔辞だったかもしれません」

 この言葉を噛みしめたい。「8年8カ月のアベ政治は嘘にまみれたハリボテだった」というのは、まことにそのとおり。徹底してアベを持ち上げた菅弔辞は、嘘にまみれたアベ政治の葬送にふさわしいものだったという。目には目、嘘には嘘、ゴマカシにはゴマカシである。

 そして、鼻くそ・菅への大絶賛は一転する。「菅前首相は赤っ恥だ」とゲンダイ記事は締めくくっている。相対的に、目くその地位は上がった。しっかりせよ岸田。菅や安倍派や麻生派に負けるな。超低支持率でその地位を3年死守せよ。そうすれば、自ずから「可」の評価を得ることができよう。しかも、限りなく「良」に近い「可」だ。

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