《統一教会スラップ・有田訴訟》の判決が3月12日(火)に迫っています。注目されるこの判決法廷の傍聴と、報告集会にご参加下さい。
本訴訟は、単なる名誉毀損事件ではなく、また典型的なスラップ訴訟の一事例というだけでのものでもありません。被告とされた有田芳生さん側から原告統一教会の「反社会性」の立証を積み上げた点で注目に値する事件になっています。昨年10月以来東京地裁で審理中の《統一教会解散命令請求事件》と立証課題を共通にするものとして、「解散命令先取り判決」、あるいは「統一教会解散パイロット判決」となるはずなのです。
(2024年3月2日)
判決当日のスケジュールは下記のとおりです。
・判決言い渡し 15:30 東京地裁103号法廷。
・判決報告集会 16:00?18:00 東京弁護士会502ABC(弁護士会館5階)
(出席予定 青木理・鈴木エイト・二木啓孝・郷路征記・澤藤統一郎)
・記者会見 16:30 ? 17:00 東京地裁司法記者クラブ
(出席予定 有田芳生・光前幸一・阿部克臣・澤藤大河)
統一教会は有田芳生さんの口を封じようと、このスラップ訴訟を提起しました。しかし、訴訟の進行は原告(統一教会)側の目論見とは正反対のものになって、判決は《統一教会の反社会性》を明示するものとなるはずです。
有田芳生弁護団は、この訴訟において「統一教会が反社会的集団である」ことを立証しました。その立証のために統一教会の違法を認めた民事・刑事の裁判例を積み上げました。この立証活動は、統一教会に対する解散命令請求事件審理の焦点である「悪質性・組織性・継続性の立証」にそのまま重なります。
こうして、はからずも本件有田訴訟は、文科大臣による統一教会に対する「解散命令請求事件の前哨戦」となり、3月12日判決は「解散命令先取り判決」「統一教会解散パイロット判決」となるはずです。ご注目ください。
なお、報告集会では、この判決を受けての、青木理さん・鈴木エイトさんらの報告も予定されています。こちらにもご注目いただき、ご参加をお願いします。
《統一教会スラップ・有田訴訟》経過説明
2022年8月19日、日本テレビの情報番組「スッキリ」に、解説者として出演した有田芳生さんは、およそ40分間に及ぶ番組のなかの一言で、統一教会から訴えられました。
有田芳生さんは、統一教会との深い関係を断ち切れない萩生田光一議員を批判する文脈で「(統一教会は)霊感商法をやってきた反社会的集団だってのは警察庁も、もう認めている」(「だから、萩生田議員は統一教会ときっぱり手を切るべきだ」)と発言したところ、統一教会は、これを名誉毀損だとして、有田さんと日本テレビを訴えました。その損害賠償請求額が2200万円。
こうして、「統一教会は反社会的集団である」という事実の『真実性』、あるいは「統一教会は反社会的集団である」という意見の前提事実の『真実性』が、被告側の主要な立証対象となり、有田訴訟が、統一教会の解散命令請求裁判と同様に、統一教会の「悪質性・組織性・継続性」についての司法判断を求める訴訟となったものです。
東京地裁民事第7部合議B係(荒谷謙介裁判長)
R4ヮ第27243号名誉毀損事件
原告 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)
被告 日本テレビ放送網株式会社・有田芳生
(以下、※裁判所、◆原告、◎被告有田、☆被告日テレ、★訴訟外事件)
★22・07・08 安倍元首相銃撃事件
★22・08・19 日テレ「スッキリ」番組放映(萩生田光一議員批判がテーマ)
◆22・10・27 提訴 訴状と甲1?6
請求の趣旨
(1) 被告らは連帯して2200万円(名誉毀損慰謝料と弁護士費用)を支払え
(2) 日テレは番組で、有田はツィッターで、謝罪せよ
請求原因 名誉毀損文言を、有田の番組内発言における「(統一教会は)霊感商法をやってきた反社会的集団だって言うのは、警察庁ももう認めているわけですから」と特定している。
※22・11・10 被告有田宛訴状送達(第1回期日未指定のまま)
※23・01・23 On-line 進行協議
◎23・02・27 被告有田・答弁書提出 証拠説明書(1) 丙1?7提出
(本件発言は、一般視聴者の認識において全て意見であり、当該意見が原告の社会的評価を低下させるものではない。仮に社会的評価を低下させるものであったにせよ、その前提事実は真実である)
☆23・02・27 被告日テレ・答弁書提出 乙1(番組の反訳書)提出
◆23・03・07 原告準備書面(1) (被告日テレの求釈明に対する回答)提出
◆23・03・14 原告準備書面(2) (被告有田に対する反論) 甲7?12提出
◎23・05・09 被告有田準備書面1 提出
☆23・05・09 被告日テレ・第1準備書面
◎23・05・12 被告有田準備書面2 証拠説明書(2) 丙8?13 提出
※23・05・16 第1回口頭弁論期日(103号法廷) 閉廷後報告集会
島薗進氏の記念講演、望月衣塑子・佐高信・鈴木エイト各氏らの発言
◆23・06・26 原告準備書面(3) (有田準備書面1に対する反論) 甲13?25
◆23・06・26 原告準備書面(4) (有田準備書面2に対する反論)
◆23・06・26 原告準備書面(5) (日テレに対する反論)
◎23・07・17 被告有田準備書面3 提出
※23・07・18 On-line 進行協議
◆23・07・20 原告甲26(番組全体の録画データ)提出
◎23・08・31 被告有田 証拠説明書(3) 丙14?19
証拠説明書(4) 丙20?23
証拠説明書(5) 丙24?27
証拠説明書(6) 丙28?43
☆23・09・15 被告日テレ・第2準備書面 証拠説明書(2) 乙2?7
◎23・09・22 被告有田準備書面4
(甲26ビデオを通覧すれば、「警察庁ももう認めているわけですから」は、一般視聴者の印象に残る表現ではない。早期の結審を求める)
◆23・09・22 原告証拠説明書 甲27?29
※23・09・26 第2回口頭弁論期日(103号法廷)
裁判所 「双方なお主張あれば、10月30日までに」
◎23・10・27 被告有田「早期結審を求める意見」書を提出
(主張は尽くされた。次回結審を求める)
◆23・10・30 原告準備書面(6)提出 内容は横田陳述書(甲30)を援用するもの
証拠申出・証人横田一芳(国際勝共連合) 甲30・横田陳述書提出
◎23・10・31 被告有田、証人(横田)申請を却下し重ねて次回結審を求める意見。
※23・11・07 On-line 進行協議 原告の証人申請却下
次回結審とし、法廷では15分の被告有田側の意見陳述を認める。
※23・11・28 第3回口頭弁論期日(103号法廷) 結審 閉廷後報告集会
※24・3・12 15時30分 判決言い渡し(103号法廷)
16時 報告集会 16時30分 記者会見(予定)
《有田芳生さんのメッセージ》
(訴訟開始当時)
▼教団が韓国で生まれて、ほぼ70年。統一教会=家庭連合は組織内外に多くの被害者を生んできました。まさに反社会的集団です。
私は元信者はもちろん現役信者とも交流してきて思ったものです。日本史に埋め込まれた朝鮮半島への贖罪意識を巧みに利用して真面目な信者を違法行為に駆り立ててきた統一教会の犯罪的行為の数々は絶対に許すわけにはいきません。
▼安倍晋三元総理銃撃事件をきっかけに、自民党との癒着など「戦後史の闇」の蓋が開きはじめました。私は信頼する弁護団と、社会課題についてはたとえ立場が異なれども教団に立ち向かう一点で集ってくれた「有田さんと闘う会」の高い志を抱きしめて、みなさんとともに、統一教会と徹底的に本気で闘っていきます。
(結審時)
▼10月13日、政府は旧統一教会に対する解散命令請求にようやく踏み切りました。文科省の説明によると、遅くとも1980年代から、多数の者を不安と困惑に陥れ、自由な意思決定に制限を加え、正常な判断が妨げられる状態で、問題ある物品販売や献金獲得を長期間にわたり、継続的に行ってきたことを理由としています。遅きに失したとはいえ、多くの被害者の声と社会の良識が政府を動かした成果として、国民の圧倒的多数が歓迎するところとなっています。
▼政府は統一教会の「悪質性」「組織性」「継続性」の3要件を意識して、5000点に及ぶ厖大な証拠によって立証しえたと胸を張っています。「悪質性・組織性・継続性」という三拍子をそろえた行為主体とは、日常的な用語における「反社会的集団」以外の何ものでもありません。このたびの解散命令請求は、統一教会のこれまでの長年にわたる行為を集大成して、政府が「反社会的集団」と認めたことにほかなりません。
▼統一教会が「反社会的集団」であることはいまに始まったことではないのです。教団を「反社会的集団」と批判することが違法な言論であるはずはありません。また、ジャーナリズムは、多くの人を不幸にする悪質な集団やその行為への批判を躊躇してはなりません。
▼しかし、批判の言論は往々にして過剰な反応に曝されます。2022年年7月8日の安倍晋三元総理銃撃事件をきっかけに、教団と政治家との癒着、高額献金、二世の苦悩などが大きな社会問題として噴出しました。私も、永く統一教会の取材を続けてきたジャーナリストとして、テレビ、ラジオ、新聞などの取材に応えて、報告も解説もしてきました。ところが、昨年10月27日に教団が本件訴訟を提起したとたん、私に対するテレビ出演の依頼は完全になくなっていまに至っています。教団を追及する私に対する「口封じ」は、訴えることだけで、目的を達したのです。これこそ、典型的なスラップ訴訟の効果と言わざるをえません。
▼教団が私を訴えたのは、昨年8月19日の朝に放送された日本テレビ系の「スッキリ」という番組での発言を捉えたものです。この番組のテーマは、教団との癒着を断ちきれない萩生田光一自民党政調会長への批判でした。スタジオ出演した私は、教団との癒着を断つべき理由として、「霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めているわけですから」と発言しました。かなり長い多くの発言のなかの、たった40文字、たった7秒。しかも番組本来の主題である萩生田議員批判とは離れた発言でした。教団はここを狙い撃ちしてきました。
▼この私の発言が、視聴者の認識にどれほど届き、統一教会のいかなる名誉を毀損したというのでしょうか。教団の教義に基づいて信者たちが行ってきた霊感商法や高額献金勧誘の悪質性・組織性・継続性は、教団を「反社会的集団」というに相応しいものではありませんか。そのことは、本件に提出された厖大なこれまでの判決が明らかにしています。
▼本件訴訟において積み上げられた教団の「反社会的集団性の立証」は、解散命令請求での「悪質性・組織性・継続性の立証」に重なります。はからずも、本件の判決は、解散命令裁判を先取りするものとして、注目されることになっています。裁判官の皆様が、本件に提出された多くの証拠を適正に判断されるものと確信して、私の意見陳述を終わります。
《何が争われているか》
?本訴訟の主要なテーマは、「統一教会の反社会的集団としての性格」をめぐる攻防です。原告(統一教会)は、「統一教会を、反社会的集団と言ってはならない。その表現は名誉毀損に当たる」と主張。これに対して、「統一教会が霊感商法や高額献金勧誘をしてきた反社会的集団であることは厳然たる事実。警察庁も一貫してそのような立場を貫いてきた。これを指摘できないようでは、言論の自由の保障が泣く」というのが有田側の反論。
?名誉毀損とされた有田発言は、テレビ番組での「(統一教会が)霊感商法をやってきた反社会的集団だって言うのは、警察庁ももう認めているわけですから」というもの。その「霊感商法をやってきた」「反社会的集団である」「警察庁も認めている」のすべてが真実性を欠く事実の摘示に当たる、と原告(統一教会)は主張。
?名誉毀損訴訟実務では、言論全般を《事実の摘示》と《意見ないし論評》との2種の構成部分からなるものと考えます。このうち、《事実の摘示》部分に、(人の社会的評価を低下させる)名誉毀損表現があれば原則違法とされ、発言者は、事実摘示の言論が、
(1) 公共の利害に係り、(公共性)
(2) もっぱら公益目的によるもので、(公益性)
(3) しかも真実であること、(真実性)
を立証すれば、違法ではないとされます。
その要件の中で、「公共性」「公益性」のハードルは低く、重要なのは『真実性』(あるいは、真実と信じたことについての『相当性』)です。
?《意見ないし論評》によっても名誉毀損が成立しうるというのが判例の立場です。しかし、通例、公共性・公益性ある限り、《意見ないし論評》こそは、最大限に表現の自由が保障されなければならない局面として、人格的攻撃などの逸脱ない限り、原則違法性はないものとされます。
もっとも、《意見ないし論評》は、何らかの《事実》を前提とすることが通常で、その意見・論評の根拠とされた前提事実については、やはり真実性(あるいは相当性)が要求されることになります。
こうして、名誉毀損訴訟では、摘示事実の『真実性』ないしは、意見の前提としての事実の『真実性』が証明の対象となります。
《本件での当事者の主張と立証活動》
?原告・統一教会の主張の骨格と立証
有田発言の名誉毀損文言を、「(原告が)霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めているわけですから」と特定して、これは事実摘示である。少なくも、「警察庁ももう認めている」という表現部分は、事実摘示による名誉毀損文言であると主張。
そのうえで、「原告(統一教会)は組織として霊感商法をしたことがない」「原告(統一教会)自身が反社会的行為をしたと判断した判決はない」「警察庁が原告(統一教会)を反社会的集団と認定した事実はない」から、有田発言の事実摘示は真実性を欠くと言います。
?被告有田の主張の骨格と立証
テレビ放映における発言が名誉毀損となりうるか否かは、《一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準》として判断するというのが、判例の立場。ビデオを再現して視聴してみると、この番組は萩生田光一批判をテーマにするもので、有田発言も萩生田批判の発言のごく一部。一般視聴者にとって統一教会批判の文言として印象に残るものではなく、そもそも名誉毀損にあたらない。
仮に、有田発言が統一教会の社会的評価を低下させるものであったとしても、発言の全てが意見ないし論評である。また、その前提とする事実は公知の事実であるだけでなく、「統一教会は反社会的集団である」という意見を支える判例は、これまで数多く言い渡され、確定している。
「警察庁も認めている」も国会答弁などから真実である。被告有田の提出した書証(上記の丙各号証)の多くは、統一教会の霊感商法や高額献金勧誘を違法としたこれまでの判決例です。
《本件は統一教会によるスラップである》
?統一教会は、自身への批判の言論を嫌って、名誉毀損訴訟を濫発しています。
下記のすべてが、統一教会批判言論の萎縮を狙ったスラップ訴訟です。
被告 紀藤正樹・讀賣テレビ (請求額2200万円)9月29日提訴
被告 本村健太郎・讀賣テレビ(請求額2200万円)9月29日提訴
被告 八代英輝・TBSテレビ(請求額2200万円)9月29日提訴
被告 紀藤正樹・TBSラジオ(請求額1100万円)10月27日提訴
被告 有田芳生・日本テレビ (請求額2200万円)10月27日提訴
統一教会スラップ5事件のうち、八代英輝事件は、東京地裁と高裁の判決があり、本村事件も地裁判決を経ています。当然のことながら、すべて統一教会の敗訴、請求棄却判決でした。有田事件も、これに続くはずです。