澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

NHKのトップに位する経営委員会委員長・森下俊三。この人物は、NHK支配のために送り込まれた政権の手先である。その森下俊三の任期が本日で終わる。NHK情報開示訴訟判決がこの人物を断罪した。在任中の判決が明らかにした森下の違法は、同時に安倍晋三や菅義偉の責任をあぶり出している。安倍・菅・森下、みんなちがって、みんな悪い。

(2024年2月29日)
 2月が終わることを「逃げる」と表現する。短い2月の終わりを惜しむ奥床しい響きがある。が、誰にも惜しまれることなく、本日、跡を濁し、砂を蹴って「逃げる」人物もいる。奥床しさとは無縁の、NHK経営委員長森下俊三である。

 放送法33条1項は経営委員の任期を3年とし、同2項が「委員は再任されることができる」としている。森下俊三の経営委員任期は3期、9年に及ぶ。第1期と2期とは内閣総理大臣安倍晋三の任命によるもので、3期目は菅義偉内閣総理大臣の任命。安倍も菅も、公共放送の運営のトップにふさわしい人物を任命することはなく、NHKという公共放送を権力の道具として使えるように、政権の手先を送り込んだのだ。

 森下俊三は、2018年3月13日経営委員長代行者に就任し、翌2019年12月24日には経営委員長に就任して今日に至り、2024年2月末日の今日、任期が切れてようやくにしてNHKを去る。

 もちろん、無事に任期を全うしたわけではない。9日前の2月20日、経営委員会委員長としての職務に違法があったとして、文書開示請求をした視聴者100名に、判決によって損害賠償を命じられている。NHKに対する視聴者の信頼を傷付けること甚だしい。安倍も菅も、その任命責任を問われる事態となっている。目利きができないばかりに、おおきな目算外れとなった。

 それにしても、判決の言い渡しが森下在任中に間に合って良かった。2月20日判決の、原告団・弁護団声明は以下のとおりである。

                              

声  明

1 本日、東京地方裁判所民事第26部(大竹敬人裁判長)は、被告NHKに対し、経営委員会の議事の録音データの提出を命ずる画期的な判決を言い渡した。
さらに、開示すべき債務を履行しない被告NHKの債務不履行損害賠償請求、および被告森下の開示妨害の不法行為損害賠償請求についてもこれを全面的に認めた。
2 本件訴訟は、わたしたち100人余が原告となり、NHK経営委員会の森下俊三委員長によるNHK会長厳重注意を巡る経営委員会の「議事録隠し」を発端とし、被告NHKに対し議事録および録音データの開示を求め、被告森下に対し損害賠償を請求して提訴したものである。
3 本日の判決は、被告NHKに対して、当該録音データを抹消したとの被告主張を排して、その開示を命じたものである。
 また、被告森下に対しては、「議事録音データ」の存在を知りつつ、開示するための措置を講ずることのなかったことを違法とし、不法行為損害賠償責任を認めた。
いずれも私たちの主張を認めた素晴らしい判決である。
4 被告森下の「議事録隠し」の動機は、自らが行った放送法第32条(委員の権限等)が禁じる「個別の放送番組の編集」への違法な介入を隠蔽することにあったことは明らかなのであって、反省と陳謝の意を表明し、直ちに経営委員(長)を辞任すべきである。
5 私たちは、今後とも放送法の精神に基づき、NHK及び経営委員会が「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって」「放送が健全な民主主義の発達に資するよう」(放送法第1条)努力することを求めるとともに、そのために一層の監視・激励を行なっていくことを表明するものである。

2024年2月20日

NHK文書開示等請求訴訟原告団
同          弁護団

 以上のとおり、「被告森下の『NHK会長厳重注意』が「個別の放送番組の編集への介入」として違法であり、その隠蔽のための議事録の不作成も、開示の拒否も違法なのだ。森下俊三、ガバナンスもコンプライアンスも無茶苦茶なのだ。

 だから、声明は「反省と陳謝の意を表明し、直ちに経営委員(長)を辞任すべきである」と要請した。にもかかわらず、本日で森下の任期切れである。思えば、これまで、いったい何度、森下に辞任を要求してきたことだろうか。本日、森下の反省の機会も辞任の機会も、永久に「逃げる」ことになる。

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