澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

水原一平にこそ弁護士が必要なのだ。

(2024年3月24日)
資本の論理は、この世のあらゆるものを呑み込む魔力をもっている。この魔物にスポーツが呑み込まれて久しい。そして、本来は人権に仕えるべき弁護士の業務も、同様の危険に曝されている。資本主義先進国アメリカがその典型である。

大谷翔平という野球に達者で著名となった若者がいる。かつては、水沢・花巻の出身者として個人的な親近感をもって眺めていたが、資本のゲームの中での成功者となって以来は興醒めである。彼の収入と、彼を支えるファンの収入との天文学的格差は異常というしかない。彼を褒めそやす社会心理のアブノーマルの分析が必要であろう。

その大谷に、巨額ギャンブル関与の疑惑が浮上している。今、確実な情報として伝えられているのは、大谷の個人名義銀行口座からブックメーカー(賭博の胴元)への複数回の巨額の送金があって、昨秋から税務当局が捜査を行っているということ。日本と同様、カリフォルニア州ではスホーツ賭博が違法とされている。当然のことだが、大谷の関与は「疑惑」に過ぎない。その黒白は、今後の捜査の進展を待つしかない。

私が気にかかるのは、大谷にも違法博打の胴元であるボイヤーという人物にも、代理人として弁護士が付いているが、水原には適切な法的助言を求める弁護士がいないことである。

この問題に関する水原の当初の発言は、「大谷に巨額の賭博での借金があることを明かして返済の肩代わりを依頼し、承諾した大谷は自分の目の前でパソコンを操作してブックメーカーに送金した」という内容と伝えられている。特に不自然さのない内容と言ってよい。

これが一日にして覆った。前言を翻して、「大谷は何も知らない。何もしていない」という趣旨の発言となる。この発言の内容は明らかに不自然。いったい大谷本人以外の誰が、何度も、大谷の口座からの送金をしたのか、問い質さなければならないが、今のところ、その内容の報道は何もない。

むしろ、大谷の代理人になっている弁護士の「大谷は知らぬうちに大金(450万ドル・約6億8000万円)の窃盗に遭った」という声明に符節を合わせて、水原が発言を変えたのではないのかという疑問が湧く。

なお、違法賭博の胴元であるマシュー・ボウヤーも、メディアの取材にノーコメントを繰り返した後に、その代理人弁護士が「ボウヤーは大谷と会ったことはなく、水原とだけ取引していた」とメディアに発言している。また、「賭博をしていたのは大谷ではなく、水原だったことを強調しながらも、ボウヤーが巨額な借金を許した背景に『彼は大谷のベストフレンドだったから』と説明した」(ワシントン・ポスト)とも報じられている。

カネを持つ者だけが、弁護士を付けて法の知識を活用しているのだ。水原は、大谷・ドジャースやボウヤーとの関係で、明らかに劣位にある。このままだと、場合によっては、真実が押し潰され、過剰な責任の引き受けを余儀なくされる虞もないとは言えない。

最も弱い立場にある者にこそ、法の保護が必要であり、弁護士が必要なのだ。資本の論理に絡めとられた弁護士ではなく、人権の擁護を使命とする本来の弁護士が。

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