言論弾圧と運動弾圧のスラップ2類型?『DHCスラップ訴訟』を許さない・第12弾
☆ブログを拝読し、DHCスラップ訴訟の件、知りました。
驚愕の事態ですね。気持だけですが、表現の自由のためにカンパをさせていただきます。
★ありがとうございます。多くの方のご支援に励まされています。
ご意見を寄せられる多くの方が、本件を表現の自由に対する悪質な妨害行為、とりわけ政治的言論に対する封殺の問題ととらえていらっしゃいます。私も、私一人の問題ではないと身に沁みて考え、負けられない思いです。
☆ところで、素朴な質問があります。
高江のスラップ裁判との比較で、「運動対抗型とは別に言論封殺型というものがある」とお書きになっている点についてです。高江は前者で、DHCは後者にあたるということだと思うのですが、運動対抗型と言論封殺型に相当するという論理が、よく理解できません。
★スラップを「運動対抗型」と「言論封殺型」とに分けたのは、私流の勝手な理解です。
いずれも政治的・経済的強者が訴訟提起を手段として不当な意図を完遂しようとする点では同じですが、何を目的とした提訴なのか、あるいは提訴によって侵害されるものが何なのかの違いがあると思うのです。
仮に「運動対抗型」としたのは、市民運動・労働運動・政治運動などの弾圧を目的とした提訴をイメージしています。高江の米軍用ヘリパッド建設反対の市民運動をつぶす目的での国の住民に対する提訴や、反原発運動の制圧を目的とする経産省前テント撤去訴訟などは、その典型でしょう。マンション建設反対や公益通報に対するスラップも報告されています。「運動弾圧型」「運動つぶし目的型」「運動忌避型」などとネーミングもできるでしょう。
これに対して、純粋に不都合な言論の封殺を目的とする「言論封殺型」スラップ訴訟を分けた方が、闘い方の理論構築に資するのではないかと思うのです。
もちろん、両者の混交タイプはいくらでもありえます。たとえば、「DHCというサプリメントや化粧品の通販会社で、リストラに抵抗して4人が労働組合を作った。その組合のホームページの記載を名誉毀損だとして会社が損害賠償を求め、裁判に疲れた組合側は退職を条件に和解した」と複数のソースが報じています。この件などは、かたちは言論封殺型ですが、真の狙いからは労働運動弾圧型といえるのでしょう。
☆お書きになった記事をよみますと、両者は別個のものと考えられているようです。もしや、運動対抗型は違法性を持つ運動を対象にするものと(読者に)受け取られはすまいかと危惧いたします。両者の違いの強調よりは、共通であることの強調、両者とも表現の自由の侵害なのだと認識することこそが大切だと思うのですが。
★なるほど、私の記事はその点での配慮が足りなかったかも知れません。当然のことながら、運動弾圧型のスラップをいささかも許容するつもりはありません。
むしろ、私は「表現の自由」の対象を、「純粋な言論」と「言論に伴う行動」とに峻別して、純粋な言語的表現だけを手厚く保護しようとする伝統的な考え方には抵抗しているつもりなのです。それは、「日の丸・君が代」に関して、ピアノ伴奏をしたり、起立・斉唱をする行為を、「外部的な行為」に過ぎないとする考え方への反発があるからです。内心の思想・良心とは峻別された「外部的行為の強制は直ちには内心の思想・良心を侵害するものではない」という最高裁判例を容認しがたいという思いが強くあります。
言語的表現である純粋言論も、これに伴う行動も、ともに思想・良心の外部表出として保護されるべきであると思っています。場合によっては、言語的表現以上に身体的行動による表現形態こそが重要なこともありうると思います。
☆高江裁判で、最高裁で敗訴したIさんは、防衛局が敷地内に機材を搬入しようとした際、ゲート前に座り込んだ人々のなかで狙いうちされたのです。搬入を阻止しようとして思わず両腕を真ん前に伸ばして肩の位置まで上げたことが、「国の通路使用を物理的方法で妨害した」と認定されました。住民運動側は、ヘリパッド建設に反対する意思表示、抗議行動は憲法に保障された表現の自由にあたるとして、闘いました。そして今も、連日、灼熱の辺野古でオスプレイ用のヘリパッド建設反対の運動が、繰り広げられています。運動の正当性を支える表現の自由の強調をお願いします。
★了解しました。まったく異存ありません。
ただ、言語的表現を封殺するタイプのスラップは、名誉毀損の違法性阻却要件、あるいは公正な論評の法理などというかたちで、訴訟を舞台での闘い方がパターン化されています。その点では、明らかに「運動弾圧型」とは異なるものとして、少なくとも訴訟技術においては意識する必要があるとは思います。
「運動弾圧型」と「言論封殺型」、どちらも許容しがたいものですが、それぞれ特有の課題があると思います。『DHCスラップ訴訟』は、政治的な純粋言語的表現に対する直接的な封殺行為です。客観的に不当極まる高額な金額の請求をすることで言論の萎縮効果を狙っています。
なお、かつてサラ金業界の盟主だった武富士が、スラップ訴訟受任を常習とする弁護士を代理人として、同時多発的にスラップ訴訟を連発して悪名を馳せました。
被告にされたのは、「サンデー毎日」、「週刊金曜日」、「週刊プレーボーイ」、「武富士の闇を暴く」、「月刊ベルダ」、「月刊創(つくる)」など。
DHCの濫訴の実態は追い追い明らかになるはずですが、その規模において、武富士を上回るものであることは確実です。とりわけ、「政治とカネ」をめぐる批判の政治的言論に対する拒否反応の強さに驚かされます。
高江のヘリパッド建設反対運動への弾圧のスラップも許し難いものがありますが、『DHCスラップ訴訟』も明らかに驚愕の事態。これから、訴訟の進展だけでなく、「DHCスラップ」の全体像についても把握しえた情報をご報告いたします。表現の自由の今日的状況として関心をお持ちいただき、ご支援いただくようよろしくお願いします。
(2014年7月31日)
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『DHCスラップ訴訟』応訴にご支援を
このブログに目をとめた弁護士で、『DHCスラップ訴訟』被告弁護団参加のご意思ある方は東京弁護士会の澤藤(登録番号12697)までご連絡をお願いします。
また、訴訟費用や運動費用に充当するための「DHCスラップ訴訟を許さぬ会」の下記銀行口座を開設しています。ご支援のお気持ちをカンパで表していただけたら、有り難いと存じます。
東京東信用金庫 四谷支店
普通預金 3546719
名義 許さぬ会 代表者佐藤むつみ
(カタカナ表記は、「ユルサヌカイダイヒョウシャサトウムツミ」)