メルケルの爪の垢を煎じて、安倍晋三に飲ませたら…
第2次大戦の敗戦から70周年。この事情は日本もドイツも変わらない。そのドイツでは、ナチス・ドイツ降伏の5月8日を目前にして、メルケル首相の活発な動きが注目されている。
5月2日、メルケルは国民に歴史と向き合うよう呼びかける映像メッセージを政府ホームページに公開した。「『歴史に終止符はない。我々ドイツ人は特に、ナチス時代に行われたことを知り、注意深く敏感に対応する責任がある』と訴えている」「ドイツ国内のユダヤ系の施設を警官が警備している現状を『恥だ』とし、『意見を異にする人々が攻撃されるのは間違っている』と指摘。学校や社会でも歴史の知識を広めていくことの重要性を強調した」(朝日)という。このビデオでは、「独国内で戦争責任に対する意識が希薄になっていることについて『歴史に終止符はない』と強い口調で警告。『ドイツ人はナチ時代に引き起こした出来事に真摯に向き合う特別な責任がある』と述べ、戦後70年を一つの『終止符』とする考えを戒めた」「人種差別や迫害は『二度と起こしてはならない』と訴えた(毎日)とも報じられている。
また、メルケルは3日、4万人以上が犠牲となった独南部のダッハウ強制収容所の解放70年式典で演説し、「『我々の社会には差別や迫害、反ユダヤ主義の居場所があってはならず、そのためにあらゆる法的手段で闘い続ける』と述べ、ナチス時代の記憶を世代を超えて受け継ぐ重要性を訴えた」「式典には、収容所の生存者約130人や解放に立ち会った元米兵6人も参加。メルケル氏は『収容所の経験者が、まだ自らの経験を語ってくれるのは幸運なことだ』と述べた(毎日)。「ナチスがこの収容所で犠牲者に与えた底知れない恐怖を、我々は犠牲者のため、我々のため、そして将来の世代のために、決して忘れない」と語ってもいる(朝日)。
同所の演説では、「『われわれは、皆、ナチスのすべての犠牲者に対する責任を負っている。これを繰り返し自覚することは、国民に課せられた義務だ』と述べ、一部の若者らにみられる反ユダヤ主義や、極右勢力による中東出身者を狙った犯罪に強い懸念を示しました」(NHK)、「昨年起きたベルギーのユダヤ博物館のテロ事件などを例に、今もユダヤ人への憎しみが存在すると指摘。『決して目を閉じてはならない』と呼び掛けた(共同)」とも報じられている。
さらに、メルケルは、自身が10日にモスクワを訪れ、ロシアのプーチン大統領と無名戦士の墓に献花する。「ウクライナ危機でロシアと対立していても『第2次大戦の多数の犠牲者を追悼することは重要だ』と理解を求めた」(朝日)という。
世に、尊敬される指導者、敬服に値する政治というものはあるものだ、と感服するしかない。安倍晋三に、メルケルの爪の垢を煎じて飲ませたい。そうすれば、次のことくらいは言えるようになるのではないか。
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某日、安倍晋三は、こう語った。
「歴史に終止符はない。我々日本人は、過去天皇制政府がおこなった近隣諸国民に対する蛮行について、敗戦時意図的に隠滅し隠蔽された証拠を誠実に探し出して、よく見極め注意深く敏感に対応する責任がある。学校でも、社会でも過去の日本人がした行為について、歴史の知識を広めていくことの重要性は最大限に強調されなければならない」
「われわれは、皆、私たちの国がした蛮行のすべての犠牲者に対する責任を負っている。これを繰り返し自覚することは、日本国民に課せられた義務にほかならない」
「現在なお、歴史修正主義が横行し、被害者からの抗議の声やそれを伝える報道を『捏造』と切り捨て、あまつさえ排外主義の極みとしてのヘイトスピーチが野放しとなっている現状を大いに恥辱だと認識しなければならない」
「日本人は、旧天皇制の時代に引き起こした、侵略戦争と植民地支配に真摯に向き合う特別な責任がある。これまで、その責任に真摯に向き合って来なかったことに鑑みれば、戦後70年を一つの終止符として、『もうそろそろこの辺で謝罪は済んだのではないか』『いつまで謝れというのだ』『これからは未来志向で』などという被害者の感情を無視した無礼で無神経な発言は厳に慎まなければならない」
「人種差別や民族迫害は、絶対に再び犯してはならない。我々の社会には差別や迫害、他国への威嚇や武力行使があってはならず、そのような邪悪な意図の撲滅のために、あらゆる法的手段で闘い続ける覚悟をもたねばならない」
「天皇制政府と皇軍が被侵略国や植民地の民衆に与えた底知れない恐怖を、我々は今は声を発することのできない犠牲者のためだけでなく、我々自身のために、そして将来の世代のためにも、決して忘れてはならない」
「脱却すべきは戦後レジームからではなく、非道な旧天皇制のアンシャンレジームの残滓からである」「取り戻すべき日本とは、国民主権と人権と平和を大原則とする日本国憲法の理念に忠実な日本のことでなければならない」
「厳粛に宣言する。われわれは、日本と日本国民の名誉にかけて、決して過去に目を閉じることなく誠実にその責任に向かい合うことを誓う」
こうすれば、日本は近隣諸国からの脅威と認識されることなく、真の友好関係を築いてアジアの主要国として繁栄していくことができるだろう。もちろん、戦争法の整備による戦争準備は不要になろう。
ところで、国民はそれにふさわしい政府や政治家をもつ、という。ドイツはワイツゼッカーやメルケルの政府をもった。日本は、安倍や橋下のレベルの政府や政治家しか持てない。このレベルが、日本国民にふさわしいということなのだろうか。私も、恥の文化に生きる日本人の一人である。まったくお恥ずかしい限り。
(2015年5月5日)