都議会選挙の構図は、 「日本共産党」対「靖国派」
東京都議選が近い。6月14日が告示で23日が投票日である。このたびの都議選は、参議院議員選挙の前哨戦として格別の意味をもっている。改憲を許すか否かの天下分け目の闘いの、既にその一部といってよいだろう。私は、改憲阻止の一点で、日本共産党の躍進を期待している。
曇りない目で見るとき、日本共産党が改憲阻止の運動における揺るぎない本体としての立ち場にあることに異論は無いだろう。衆議院憲法審査会では、50人の委員のうちたった一人の「純正改憲反対派」として、共産党議員(笠井亮さん)が奮闘している。全国各地で地を這うような改憲阻止の組織活動に取り組んでもいる。この本体を強く大きくせずして、改憲阻止の運動の成功はおぼつかない。さらにこの本体を一回りも二回りも大きくすることによって、改憲阻止にとどまらず、憲法の理念を実現する壮大な運動の力を生み出すこともできよう。日本国憲法を大切と思う人に、日本共産党への支持・支援を呼び掛けたい。
その闘いにおける「敵」は誰か。自民・維新というよりは、「靖国派」というべきではないだろうか。本日(6月8日)の赤旗に拠れば、「日本会議地方議員連盟」の正会員計41人が、都議選に立候補の予定だという。この41人が、日本国憲法の理念に敵対する改憲派として「敵」といわざるを得ない。
靖国神社境内では、毎年8月15日に「戦歿者追悼中央国民集会」が開催される。その主催者となっているのが「英霊にこたえる会」と並んで、「日本会議」である。「日本会議」は、日本の右翼運動のナショナルセンターと言ってよかろう。ちなみに、この右翼組織の会長は三好達・元最高裁長官である。最高裁と右翼、よくお似合いなのだ。
日本会議の憲法問題についての認識を要約すれば、次のとおりである。
「皇室を敬愛する国民の心は、千古の昔から変わることはありません」「わが国の憲法は、占領軍スタッフが1週間で作成して押し付けた特殊な経緯をもつとともに、数々の弊害ももたらしてきました。すなわち、自国の防衛を他国に委ねる独立心の喪失、権利と義務のアンバランス、家族制度の軽視や行きすぎた国家と宗教との分離解釈、などなど」「日本人自らの手で誇りある新憲法を創造したい、これが私たちの願いです」
つまりは、明確な改憲運動団体である。と言うよりは、憲法を根底から否定してまったく別の原理に立つ新憲法の制定をめざす、反体制組織である。彼らには、憲法改正の限界論など眼中にない。
その「日本会議」の地方議員版として地方議員連盟があり、その正会員計41人が都議選立候補予定だという。会派の内訳は以下のとおり。
自民 36人(現職28)
民主 1人(現職1)
維新 2人(元職2)
みんな 2人(新人2)
これら“靖国派”は、歴史認識において先の大戦を正義の戦争とし、日本の「国柄」を天皇が君臨する国体とし、憲法の個人主義を排斥して国家主義を鼓吹し、人権ではなく秩序を重んじ、国際協調を否定して排外主義をとる。要するに日本国憲法がことごとく気に入らない。
本日の赤旗は、そのうちの何人かを紹介している。
維新の野田数は、都議会維新の会の中心にあって、12年10月の都議会本会議で、「現行憲法を無効とし、戦前の大日本帝国憲法の復活を求める時代錯誤の請願」に賛成して批判を浴びた人物。また、自民党都議だった10年12月の都議会本会議でも、明治天皇が首相らに与えた「教育勅語」について「日本人の芯となる価値が存在している」と賛美。民主党政権の日韓併合100年や過去の政権の謝罪談話は大間違いだと非難しているという。
自民の中屋文孝は10年11月の都議会総務委員会で、都議会自民党を代表して、「慰安婦問題に関して謝罪及び個人補償をしないよう求める意見書提出を求める陳情」の採択を主張。旧日本軍「慰安婦」問題について、「日本政府が韓国政府及び韓国国民に対する謝罪や個人補償を行うことに反対」と主張したとのこと。
このように、「自民が右翼となった。維新がさらに右から自民を補完している」この図式が、国会だけでなく、都議会にも現れようとしている。そして、「みんな」にはもちろん、民主にも靖国派は棲息している。
都議選の構図は、「日本共産党」対「靖国派」の対決。日本国憲法を大切に考える都民には、ぜひともその考えに最もふさわしい選択をお願いしたい。
(2013年6月8日)