「釧路議会広報問題」と「岸井成格誹謗問題」ー ひとつひとつに批判の発言を重ねよう
本日の赤旗・社会面の以下の記事に目が留まった。
「共産党2氏質問 一転掲載」「特別委の委員長謝罪」「『政権批判』と拒否 市民が批判 北海道 釧路議会広報」の見出し。
記事の内容は以下のとおり。
「北海道釧路市議会は15日、会派代表者会議と議会広報特別委員会を相次いで開き、日本共産党の松永俊雄、梅津則行両氏の質問を『不適切だ』などとして議会広報に掲載しないとしてきた態度を改め、掲載することを決定し、金安潤子広報特別委員長は2人の議員に公式に謝罪しました。
掲載が決まった両氏の質問は、昨年12月議会で行われたもので、松永氏は、蝦名大也市長の政治資金の報告漏れを指摘。梅津氏は、政権批判を口実にした道教委による組合活動への不当な介入問題について、市教委の見解をただしていました。
広報特別委員会は、梅津氏が質問で触れた『アベ政治を許さない』の文言が『政権批判であり、議会広報になじまない』として、松永氏の質問とともに掲載を拒否。市民から『検閲だ』『政治に対してモノを言えなくなる』など強い批判があがっていました。
日本共産党釧根地区委員会の村上和繁委員長(釧路市議)は『議会多数派が多数を力に強行しようとした暴挙が、市民世論と運動、日本共産党の反撃で完全敗北した。勝利した最大の力は、市民の反対の声、マスコミや識者からの厳しい批判だ』とコメント。引き続き市議会で奮闘する決意を表明しました。」
赤旗以外に記事はないものかとネットを探したら、毎日新聞・北海道版の本日(1月17日)朝刊にも、ほぼ同内容の次の記事が掲載されたという。
「北海道・釧路市議会広報 共産市議の質問 一転掲載へ」「市民から批判意見 多数寄せられ」
「北海道釧路市議会の共産党市議2人の質問が『特定政党への批判にあたる』などとして議会広報への掲載が拒否された問題で、同市議会は15日、一転して掲載を認めることを決めた。
この問題を巡っては、議会の不掲載決定を受け、共産市議らが抗議の意味を込めて広報の持ちスペースを空欄にすると主張。市民からも議会の対応を批判する意見が多数寄せられたことから、各会派代表者会議が決断した。不掲載を主導した議会広報特別委員会の金安潤子委員長は『混乱を招き責任を感じている。2人におわびする』と述べた。
掲載を拒否されていたのは、道高校教職員組合が組合員に配布した『アベ政治を許さない』と書かれたクリアファイルに関する市教育委員会の対応をただした質問と、蝦名大也市長の資産公開での記載漏れを指摘した質問。昨年12月の議会で質問した後、今月29日に発行される広報2月号への掲載を求めていたが、広報特別委が不掲載を決めた。
市議会には13日までに不掲載を批判する意見がファクスやメールで37件寄せられた。賛成意見は1件もなかったという。共産市議の質問欄が空白のまま広報が発行された場合、さらに批判が高まることが予想されていた。
不掲載決定が撤回されたことについて、共産党市議団の松永俊雄団長は『自由であるべき質問を多数決で抑えつけるのは許されることではない。市議会が本来の姿を取り戻した』と評価した。」
これはよいニュースだ。
アベ政権が醸しだす時代の雰囲気に迎合する、「忖度」と「萎縮」の蔓延が目に余る。釧路市議会も、アベ政権や自公与党だけでなく、アベ一強への擦り寄りを世論が許すとの読み違いがあったのだ。不掲載を主導した議会広報特別委員会の金安潤子委員長の所属会派は自民党。定数28のうち、自民党の議席が7、公明が4である。共産の議席は4。多勢に無勢は否めない。しかし、正論が、傲慢アベ政権の釧路版を許さなかった。痛快事というべきではないか。
昨年の12月17日付で、日本共産党釧路市議会議員団(松永俊雄団長)が、釧路市議会議長(月田光明)に宛てて次の申し入れをしている。
「議会だより」のルールを尊重した公正・公平な編集を求める申入書
市議会のようすをつたえる「議会だより」2月号編集にあたり、わが党の梅津則行議員の「アベ政治を許さない」と書かれたクリアファイル問題と、松永俊雄議員の市長の政治資金借入、資産公開訂正の問題の本会議質問をともに不掲載とする方針を示していることは、これまでの釧路市議会のルールを踏みにじるものであり、とうてい容認できるものではありません。
「アベ政治を許さない」は、流行語大賞にもノミネートされ安保関連法案をめぐる運動のなかでひろく知られた表現であり、それのどこが「議会だより」になじまないのか、理解に苦しむものです。
一方、市長の政治資金借入は市長が市議会で陳謝、資産公開を訂正すると明言し新聞などでも報道されました。いずれも、市議会としては当然の議論であり、これまでのルールを踏みにじり当人の意志を無視して不掲載とすることなど許されません。
議会は「言論の府」であり、自由な議論を制限することなどあってはなりません。これは誰もが認める道理であり、何人も否定できない原則です。議会広報委員長、議長が提起している不掲載との方針はこの原則を投げ捨てるばかりでなく、まるで「検閲」のような理不尽極まりないものといわなければなりません。
よって議長におかれては、「議会だより」編集にあたって2つの本会議質問を不掲載とする方針をあらため、これまでのルール通り両議員の質問を掲載するよう公平に取り扱うことを強く求めます。
この正論にはいかんとも反論しがたいものがある。にもかかわらず、議会内「忖度派」がもっともこだわったのが、「アベ政治を許さない」のクリアファイル。そしてもう一つが「市長の政治資金借入、資産公開訂正の問題」。政権トップと、市政のトップに対する批判を封じようというトンデモナイ振る舞い。こんなことが、可能だと思っている人物が議員になり、委員長にもなり、議会がそれを許しているのだ。
共産党が果敢に抗議をしたことは当然として、決め手になったのは、「不掲載を批判する意見がファクスやメールで37件寄せられた。賛成意見は1件もなかった」(毎日)という市民の批判であったようだ。「多数決がなんでもできるわけではない」「議会内での多数も、実は市民世論の中での少数」という教訓の実例として意義のある、明るいニュース。
昨日の毎日新聞報道「岸井成格氏 『スペシャルコメンテーター』就任へ TBS」も明るいニュースと言ってよいのだろう。
「TBSは15日、報道番組『NEWS23』や『サンデーモーニング』に出演している岸井成格氏(71)=毎日新聞特別編集委員=が、『スペシャルコメンテーター』に就任すると発表した。4月1日付。
TBSによると、スペシャルコメンテーターは同局との専属契約で、番組の垣根を越えてさまざまな報道・情報番組に出演し、ニュースについて解説や論評をする。就任は岸井氏が初めて。『サンデーモーニング』などの報道番組に引き続き出演し、選挙特番などにも幅広く出演する。4月にリニューアルするNEWS23には、コメンテーターとして随時登場するという。
岸井氏は、毎日新聞で政治部長、論説委員長、主筆などを歴任。スペシャルコメンテーター就任について「報道の第一線で発信を続けていくことになった。その責任・使命の重さを自覚し、決意を新たにしていく」とコメントした。」
「市民団体が11月中旬の読売新聞と産経新聞に、9月16日放送の『NEWS23』で『(安保関連法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ』とした岸井氏発言を、「(放送法の)重大な違反行為」とする意見広告を出した。TBSは、岸井氏が番組内で見解を示すことについて『これまでも多くの視聴者に受け入れられており定着している』としており、今回の契約については『意見広告の前から話し合ってきた。岸井氏の発言とは全く関係ない』と説明している。」
こちらは、「忖度」や「萎縮」の域を大きく超えた、アベ政治応援団による言論弾圧のお先棒である。ナチスも、天皇制政府も、戦争遂行のために人心を掌握し統制する労苦を厭わなかった。上からの統制に下からの呼応があって、戦時体制を支えるファシズムが形づくられた。アベ政治への擦り寄りや、アベ政治批判の言論への弾圧に、一つ一つの闘いが重要なのだと、改めて思う。
(2016年1月17日)