核廃絶の大道は、まずアベ政権を廃絶することである。
本日(4月11日)、G7の外相たちがそろって広島の平和記念公園を訪問した。予定になかった原爆ドームにも足を運んだという。核廃絶・核軍縮の動きが思わしくないこの時期に、まずはけっこうなことである。
昨日(4月10日)は、南米ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領が、自ら望んで同じ施設を訪れ、次のように記帳したという。
「倫理がない科学は、考えられないような悪の道具になる。歴史は、人間が同じ石でつまずく唯一の動物と教えている。私たちはそれを学んだだろうか」(毎日)
サミットで来日するオバマにも、ぜひ広島に足を運んでもらいたい。原爆を投下した国の大統領として、被爆の実相を見つめ、被爆者の生の声を聞いてもらいたい。そして、「核こそが悪魔の道具であること」「同じ石でつまずいてはならないこと」を学んでもらいたい。願わくば、その地位にあるうちに核廃絶に向けた国際世論喚起に一石を投じていただきたい。このままでは、せっかくのノーベル平和賞が泣いている。
いうまでもないことだが、核廃絶に向けた国際世論の喚起のためには、何よりも被爆国日本が強力な発信源とならねばならない。被爆者も、被爆地の自治体も、全国の世論も、核廃絶を願う立場に揺るぎはないものと言ってよい。しかし、政府はどうだろうか。とりわけアベ政権の核廃絶に向けた姿勢は信頼に足りるものだろうか。さらに、日本は近隣諸国から、本気で核廃絶に取り組んでいると見られているのだろうか。実は、極めて心もとないといわざるを得ない。
昨年の8月6日、広島の平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)に出席した安倍晋三に、厳しい野次が飛んだ。「何しに来たのか」「かえれ」「戦争法案撤回しろ」などというもの。そして、安倍の首相としての式辞に、これまでは欠かさず盛り込まれていた「非核三原則堅持」の言葉がなくなっていたことが話題となった。日本の軍事大国化を願う立場のアベに、真摯な核廃絶を願う気持があろうとは思えないのだ。もっとも、囂囂たる非難を受けて、安倍は8月9日長崎での式辞には「非核三原則堅持」の文言を復活させている。安倍の本心を世論の批判が押し戻した形なのだ。
今年3月の参院予算委員会で、横畠裕介・内閣法制局長官が、核兵器使用について「国内法上、国際法上の制約がある」としたうえで「憲法上、あらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているというふうには考えていない」と述べている。このあと、戦争法施行(3月29日)直後の4月1日閣議は、「憲法9条は一切の核兵器の保有および使用を禁止しているわけではない」とする答弁書を決定した。「自衛のための必要最小限度の実力を保持することは禁止されていない」「核兵器であっても、仮にそのような限度にとどまるものがあるとすれば、必ずしも憲法の禁止するところではない」というもの。
「これは、従前からの憲法解釈の確認に過ぎない」「非核三原則により、政策上の方針として一切の核兵器を保有しないという原則を堅持している」というのが、政府の説明だが、憲法と「国是」とは天と地ほどの開きだ。憲法は、政権の意思を超えた主権者から政権に対する命令だが、非核三原則は政権が選択した政策に過ぎない。いつ変えられるか、甚だ心もとない。
しかも、政府の説明では、従前と同じだというのだが、専守防衛に徹すると言っていた時代と、戦争法が施行になった今とでは、「憲法上、あらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているというふうには考えていない」の意味は大きく異なっている。
朝日の記事によれば、「韓国のネットニュースは『日本政府は、現在は非核三原則を維持しているが、今後、状況の変化によっては核の保有や使用もできるという意味に受け取ることができ、論議を呼ぶことが予想される』(ニュース1)と報じた。」という。
今年1月中旬の韓国世論調査(韓国ギャラップ)では、過半数の54%が「韓国の核武装論」に賛成と回答し反対の38%を上回った。さらには、韓国・中央日報が2月15日付朝刊で発表した世論調査によれば、核武装論に賛成する意見は実に、67・7%で、反対の30・5%を大きく上回ったという。
当然に北朝鮮の核実験やミサイルの開発に刺激されてのことだと思うと、どうもそれだけではないようだ。日本の事実上の核武装を警戒してのことでもあるという。
これも朝日の報道。
「3月27日、東京・御茶ノ水でアジア各地の反核団体が集まる集会が開かれ、韓国からはソウルを拠点にする市民団体『エネルギー正義行動』の李憲錫(イ・ホンソク)代表(41)が参加。李氏は、韓国の原発・核問題の現状を報告する中で、韓国内で論議を呼ぶ「核主権(核武装)論」にも触れた。」
同氏の説明では、「韓国で「核武装」の主張が後を絶たない背景には、北朝鮮の核開発はもちろん、いつでも核兵器を造れる能力を維持しようとしているようにみえる日本の原発・核政策がある」という。
「韓国から見れば、韓国を取り囲むすべての国々が『核兵器』を事実上もっているような状態です。ロシア、中国はもちろん、北朝鮮は核開発を進め、日本も核兵器の原料となるプルトニウムを大量に持っている」
「安倍政権の親原発政策が加速度を増しています。日本の核武装に対する憂慮の声が膨らんでいます」。韓国のニュース専門放送局YTNは昨年2月、日本の原発再稼働への動きを報じるニュースで、こう伝えた。安倍政権の発足後、「日本の核武装」のニュースが韓国のメディアに登場している。集団的自衛権の行使容認など「軍事強化」を進める安倍政権は将来的に「核武装」も見すえているのでは、と報じられているのだ。
「日本は、原発の使用済み核燃料の再処理でできた計47・8トン(2014年末時点)の核分裂性物質プルトニウムを国内外に保有している。プルトニウムは約8キロあれば原爆ができるとされ、日本の保有量は計算上、『核兵器約6千発分に匹敵する』(米核専門家)とも警戒されている。核兵器を持たない国で、核兵器の材料になり得るプルトニウムをつくれる再処理と、ウラン濃縮の双方に取り組んでいるのは日本だけだ。六ケ所村の再処理施設が稼働すれば、プルトニウムはさらに増えるおそれがある。」これが日本を、潜在的核保有国とみる国際社会の根拠なのだ。安倍政権の憲法破壊、原発再稼働と核燃料サイクルの推進が、このような見方を実証するものとなっている。
日本が核廃絶の本気度を世界に示すためには、戦争法を廃止すること、憲法解釈において核兵器は保持できないと確認すること、原発再稼働・核燃料サイクルの推進を断念することが必要なのだ。すべてアベ政権には実行困難なこと。結局は、アベ政権を退陣させることこそ、核廃絶への大道ということなのだ。
(2016年4月11日)