澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

都内共産党支持者3割の諸君、間違っても小池百合子に投票してはならない。

本日は、都内共産党支持者のうちの3割の方、そして民進党支持の2割の皆さんにお願いしたい。来たるべき都知事選に、この割合の方が小池百合子候補支持を表明しているという。それは大きな間違いだ。小池百合子が何者であるかを見きわめて、その誤解にもとづく支持を撤回し、是非とも鳥越俊太郎候補に支持を変更していただきたい。

2016年都知事選の様相はまだ混沌としている。基礎票の配分という王道の思考パターンでは、鳥越有利が明らかだ。参院選東京選挙区の保守系(自・公・維・こ)各候補の合計得票数も、これに対する4野党系(民・共・社・生等)の得票合計もほぼ280万票で拮抗している。これを基礎票と考えれば、保守が割れて野党が統一候補を擁立しているのだから、鳥越俊太郎悠々当選ということになる。それが千載一遇のチャンスという根拠。

しかし、そううまくは行かない。明らかに鳥越候補は出遅れた。事前の根回し活動も、知名度アップ作戦もまったくできなかった。公約の作成さえ必ずしも十分ではない。これに対して、先出しジャンケン作戦に成功した小池百合子が、今のところ先攻のメリットを十分に生かしている模様。自公や基礎自治体の組織に乗った増田寛也ではなく、小池が鳥越の対抗馬として有力という報道がなされている。

産経世論調査の報道に至っては、「民進党支持層の約2割、共産党支持層の約3割が小池氏を支持していた。」という。野党支持者に小池百合子への幻想ないし誤解があるのだ。あらためて、小池百合子Who?である。小池について、何者であるかを明らかにしなければならない。

私も、これまで小池百合子という政治家に注目したことはなかった。変わり身の早い「渡り鳥」政治家の典型という程度の認識。自民党政権で重用される女性政治家の常として保守的性向の強い人だとは思っていたが、どうもその程度ではなさそうだ。

小池は、今話題の超保守団体「日本会議・国会議員懇談会」の副会長である。会長が、平沼赳夫、会長代理が額賀福志郎、そして副会長が6名、石破茂・小池百合子・菅義偉・中谷元・古屋圭司・山崎正昭という面々。

そして、下記は7月9日付「日刊ゲンダイ」の記事。8日の外国人特派員協会での会見の報道だ。

「“シャンシャン会見”で終わろうとしていた時、ジャーナリストの江川紹子氏の質問が空気を一変させた。
『ヘイトスピーチ対策法が成立した。自治体の首長としてどう取り組むのか。小池さんは野党時代の2010年、ヘイトスピーチをやってきた“在特会”関連の講演をされていますが、事実ですか』
小池氏は一瞬表情をこわばらせたが、キッパリとこう言った。
『対策法にのっとってやるべきことはしっかりやっていきます。いろいろな講演に出ていますが、在特会がどういうものか存じ上げませんし、主催された団体と在特会の関係も知らない。したがって在特会の講演をしたという認識はありません』
当時、講演会の案内には〈演題:「日本と地球の護りかた」講師:「小池百合子衆議院議員」主催:「そよ風」協賛:「在日特権を許さない市民の会 女性部」〉とハッキリ書いてある。“潔さ”をウリにするオンナにゴマカシは似合わない。」

2010年に小池が在特会女性部の講演をしていたことは初めて知ったが、私も「在特会の講演をしたという認識はありません」はゴマカシだと思う。

「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が「排外主義を掲げ執拗な糾弾活動を展開する右派系グループ」として知られるきっかけになったのは、2009年6月の徳島県教組業務妨害事件と、同年12月の京都朝鮮学校襲撃事件である。その後両事件とも逮捕、起訴を経て実行犯の有罪が確定している。民事の損害賠償請求訴訟も高額の認容判決が確定済み。2010年段階では、既に在特会はおぞましい排外主義団体として著名な存在だった。そのような団体と知らずに講演を引き受けたとは考え難い。もし、本当に認識がなかったというのなら、その迂闊さは政治家失格といわざるを得ない。

韓国人学校敷地貸し出し方針を白紙撤回するという、小池の迅速な対応は在特会の講演を引き受ける姿勢にいかにも親和的である。
「韓国人学校を増設するため、東京都が新宿区にある約6千平方メートルの都有地を韓国政府に貸し出す方針を固めたことに、批判が相次いでいる問題で、舛添要一知事は(3月)25日、報道陣の取材に対し『(見直す考えは)全然ありません』と計画を撤回しない考えを示した。」(産経)というのが、前知事の態度だった。

政府とは違う、ソウルとの首都間友好外交の理念にもとづくものだ。この点は、国際政治学者としての舛添の信念であったろう。小池はこれを簡単に覆すという。小池は、舛添よりもはるかに保守的な立場にあり排外的なのだ。

この人のホームページを開いてみた。「小池百合子が目指す『日本』」というページがいきなり出てくる。「小池百合子の政治活動において、一貫して訴え続けているものであり、政策実現のため、あらゆる可能性に挑戦する。」と勇ましい。

柱は7本立てられている。大方は、無難なものだが、いくつか見逃せない。
7本目の柱が「憲法改正」である。どんな憲法改正をたくらんでいるか。「小池百合子の政策」として並んでいる、右翼お定まりのフレーズの数々から明確になっている。以下はその抜粋。
「守る!家族の絆、主権・領土、日本の心と伝統」
「変える!憲法、歪んだ戦後教育」
「NSC(国家安全保障会議)創設で総合安全保障確立」
「拉致、領土問題など、主権死守と憲法改正」
さすが、日本会議所属議員ではないか。

そのほか、見逃せないのが、4本目の柱として掲げられている「教育改革と多様な文化の創造」。
ここに、「文化・伝統を重んじる、教育制度・教育行政への転換を図る」との一文があってギョッとさせられる。この人は、「変える!憲法、歪んだ戦後教育」なのだから、戦後の民主教育・平和教育は歪んでいるという認識のようだ。だから、憲法とともに「戦後教育」も変えなければならないという立場。

小池は、憲法問題については、「憲法問題は自民党で議論されている流れでよい」と明言している。「自民党で議論されている流れ」とは、自民党改憲草案(2012年4月27日)のこと。「日本固有の歴史・文化・伝統」が強調されているが、その内実は、前文冒頭の「天皇を戴く国」ということに尽きる。「文化・伝統を重んじる、教育制度・教育行政」とは、戦前回帰のベクトルと考えざるをえない。人類の叡智が「人類普遍の原理」とした方向性は見えてこない。

都内共産党支持者3割の諸君、そして民進党支持の2割の諸君、あなた方は、「自民党に迫害されて孤立無援で闘っているけなげな女性」などという、小池自作自演のイメージ操作に欺されてはいないか。あなたが、小池に投ずる票は、「憲法改正」賛成票になってしまう。目を見開いていただきたい。こんな右翼政治家に、貴重な票が投じられるか。もう一度、じっくりと考えていただくようお願い申しあげる。
(2016年7月18日)

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