「鶴も鳴かずば撃たれまいに」ー鶴保庸介「政治とカネ」疑惑を撃つ
毎日新聞の社会面トップが、11月20日、21日、そして本日(22日)と3日連続で、鶴保庸介の「政治とカネ」疑惑を報道している。「土人発言擁護」のあの鶴保、スピード違反検挙歴2回のあの鶴保、そして女性スキャンダルで信じがたい背信的行為で話題となったあの鶴保、そしてアベ政権が必死に擁護をはかっているあの沖縄担当大臣である。
11月20日と21日の記事は必見。いずれもネットで読める(見出しなどは、多少新聞記事と異なるが)。是非、目をお通し願いたい。
http://mainichi.jp/articles/20161120/k00/00m/040/094000c
http://mainichi.jp/articles/20161121/k00/00m/040/116000c
そして、いつもながらリテラの解説記事が遠慮なく切れ味がよい。毎日の書かない鶴保のスキャンダルなどは、こちらに詳しい。こちらも是非。
http://lite-ra.com/2016/11/post-2716.html
報じられている疑惑の内容は、表面上パー券購入に関しての「政治資金規正法違反」疑惑だが、毎日の記事がターゲットにしているのは、明らかに「収賄」ないしは、「あっせん利得処罰法違反」容疑である。あの甘利明とおなじ容疑なのた。これは看過できない。
毎日がスクープした疑惑は2件ある。両件を通じて鶴保が受けとったカネの合計額は450万円(20日報道のA事件350万円、21日報道のB事件100万円)。行政の担当者を呼び出して、自分の執務室(当時国交副大臣)で献金者に会わせているところまで、甘利疑惑とそっくりである。そこまでしていれば、鶴保の行政への口利きがあったと考えるべきが常識というもの。鶴保への献金者二人は、二人とも行政から利益を得ている。甘利に続いて、これを立件できないとなれば、いったい何のための法、なんのための検察なのか。
それにしても鶴保の手口は汚い。献金(パー券購入)は、他人名義とされていた。毎日のA事件のサワリはこうだ。
「鶴保氏は12年12月、第2次安倍内閣発足時に副国交相(観光庁などを担当)に就任。男性の(二人の他人名義での)パーティー券購入はその翌月で、男性らによると購入から5日後の13年1月16日午後、男性は山梨のNPO代表らと国交省の副大臣室で鶴保氏と面会した。観光庁観光産業課出身の秘書官も同席。男性らは補助事業制度全般について意見を述べ、河口湖での駐車場やトイレの増設を要望したという。
NPOは翌2月、観光庁の補助事業「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」(補助金上限1500万円)に応募。3月に倍率8倍を突破し対象事業に選ばれた。14年2月には追加補助の「観光地ビジネス創出の総合支援」(同700万円)にも選ばれた。」
これを政治家利用ビジネスとしてみれば、このA事件疑惑は、鶴保への献金合計350万円のコストで補助金2200万円を獲得したことになる。8倍の倍率を突破しての補助金受領は、ビジネスに金銭以上のメリットを付与するものとなる。献金(パー券購入)は他人名義でさせておいて、鶴保はこの真の献金者を行政の担当者に紹介して、メリットを付与したとの濃厚な疑惑。
そのコストパフォーマンスをもたらした「名義擬装」については、献金授受の両者の共謀あったことが明らかと言うべきである。その隠蔽工作がバレたから「カネは返した」という、いつものパターン。カネを返さねばならないということは、違法を認めたということ。これを放置しておいては、同種犯罪をはびこらせることに手を貸すものとして、司法の権威を失墜せしめると指摘せざるを得ない。
私の印象では、毎日の記者が鶴保の土人発言擁護をはじめとする一連の行動に、義憤を燃やしたのだ。徹底して調査してやろうと考えたに違いない。こうして叩いてみたら、案の定ホコリが出てきた。到底看過できない「立派なホコリ」。鶴は、言わずもがなの土人発言擁護の一声を発して、撃たれたのだ。
さすが毎日、よく調べている。毎日が報道する鶴保政治資金規正法違反疑惑は、報告書を眺めているだけでは把握できない。執念で歩き回ってはじめて書ける記事だ。立派な新聞の立派な記者が、薄汚い議員の隠蔽された疑惑をよくぞ見つけてきた。
甘利の場合は「献金」という形で現金の授受があった。鶴保疑惑は、パーテイ券購入という形での金銭授受。しかも、悪質なのは甘利陣営が、これを隠そうと工作していることだ。当然にやましいところがあるからである。そして、隠蔽工作は、金銭授受の両当事者が、相互に協力して美しくも心を合わせた共同作業によるものと考えざるをえない。
理由はあるのだろう。献金(パー券購入)側の名前は伏せられている。「山梨県のNPO法人副代表」とか、「前年に法人税法違反容疑で逮捕された会社の社長」などという特定のしかた。汚い政治家にカネをやることを通じて、行政を動かそうとしたこちらも汚い輩だ。少なくとも、政治や行政の廉潔性に対する信頼を傷つけた人物。ちょうど、渡辺喜美にカネを提供したDHC・吉田嘉明と同じ立場。政治家にたかって、利益に与ろうという世にはびこっている不正には、強い警告を発しなければならない。
甘利の場合は、献金者とURとの間の損害賠償交渉への口利きだった。鶴保は、国交省の副大臣として、業者への補助金取得口利きがメインの疑惑である。これを隠蔽するための工作が政治資金規正法違反疑惑となって表面化している。政治資金規正法が政治資金の流れの透明性を確保して、職務の廉潔性に対する国民の信頼を確保しようという法律なのだから、政治資金規正法違反の裏には、カネで政治を動かそうという献金者側の思惑と、これにたかろうという薄汚い政治家の、相寄る魂の抱擁があるわけだ。
カネを持っている連中は、政治家にカネをやりたくてならないのだ。もちろん、見返り期待のない献金などはありえない。そのことを常識として、カネの授受や利益供与が、政治や行政の廉潔性に対する国民の信頼を損なうものとして規制されているのだ。DHCの吉田嘉明の如く、「他は知らず、自分の献金だけは別」などが通じるはずもないことを弁えねばならない。
惜しむらくは、この疑惑の発覚が、7月参院選のあとになったことだ。もし、参院選の前だったら…。もしかしたら、和歌山選挙区では、市民と野党の共同候補が、当選していたかも知れない。
鶴保は、鳴いて撃たれた。鳴かずに、ひっそりと同様の疑惑を抱えたままの議員も多いに違いない。これを暴く旺盛なメディアにも期待したいし、新たな政治資金監視の市民運動の出現が望まれる。
(2016年11月22日)