最高裁裁判官の国民審査では、全員に×を
10月22日総選挙が近い。総選挙の陰に隠れて忘れられがちだが、同時に最高裁裁判官の国民審査が行われる。今回は、第24回目となる国民審査。これも、有権者の貴重な意思表示の機会だ。ぜひ関心をもって、適切な意思表示をしていただきたいと思う。
日本民主法律家協会はこれまで毎回国民審査の対象となる各裁判官の適否に関する判断資料をパンフレットに作成して多くの人に提供してきた。今回急な解散・総選挙だったが、事務局長以下のスタッフが立派なものを作りあげて本日、日民協のホームページに掲載した。URLは以下のとおり。
http://www.jdla.jp/kokuminshinsa/2017kokuminshinsa.pdf
以下に、国民審査の趣旨や各裁判官の関与判決、投票上の注意などについて、その内容を抜粋して紹介するが、まずは私的な見解から。
今回の国民審査に付される最高裁裁判官は、下記の7人。その全てが、安倍内閣の任命によるものである。
大谷直人(おおたに なおと)裁判官出身(最高裁事務総長)
木澤克之(きざわ かつゆき)弁護士出身
山口 厚(やまぐち あつし)学者・弁護士出身
林 景一(はやし けいいち)行政官出身(外交官)
小池 裕(こいけ ひろし)裁判官出身(東京高裁長官)
菅野博之(かんの ひろゆき)裁判官出身(大阪高裁長官)
戸倉三郎(とくら さぶろう)裁判官出身(最高裁事務総長)
結論から言えば、素晴らしい裁判官は一人もいない。気骨のある人物も見あたらない。比較的リベラルと評価すべき者もない。毎回何人かは、×とすることを躊躇させる裁判官がいるものだが、今回に限っては見あたらない。遠慮なく全員に×をつけてしかるべきだろう。
権力に対するチェック機能の弱い裁判所の姿勢への総体的な批判として、全裁判官に×をつけての投票をしたい。
中で経歴や任命方法に大きな問題あるのが、次の2名。
※2016年7月任命された木澤克之氏は、2013年「加計学園監事」に就任していた人物。弁護士出身で日弁連の推薦リストにも入っていたそうではあるが。安倍批判の矛先がこの人に向かうことは避けられない。
※山口厚氏は、著名な刑法学者(東大名誉教授)だが、2016年弁護士登録し、2017年「弁護士枠」で最高裁に入った。日弁連の推薦はない。弁護士として1件の事件も担当していない人を「弁護士枠」(15名中4名)で任命してよいはずがなかろう。
判決内容に問題なのは次の事件の関与裁判官。
※厚木基地の周辺住民が、騒音被害を理由として夜間の自衛隊機の運航差止を求めた訴訟について、住民の被害の深刻さを認めながら、防衛大臣の自衛隊機の運航にかかる権限の行使には広範な裁量があり、「それが社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否かという観点から審査を行うのが相当」であるところ、自衛隊機の運航は我が国の平和と安全、国民の生命、身体、財産等の保護の観点から極めて重要な役割を果たしており公共性、公益性があり、他方で住民の被害を軽減するための対策措置が講じられている事情を「総合考慮」すれば、防衛大臣の権限行使は違法でないとして、差止を認めた1審・2審判決を取り消し、差止請求を棄却した。
この恐るべき判決を書いたのは、大谷・小池・木澤の各裁判官。
※国土交通大臣が沖縄県知事を被告として提訴した辺野古新基地建設に関する訴訟の上告審では、第二小法廷の全員が国の肩をもった判断をしている。その中の一人が、菅野裁判官。
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(日民協リーフから)
最高裁は、憲法の番人として人権の砦たれ
憲法の危機がせまっています。最高裁は、どう向かいあってきているのでしょうか?
忖度がまかりとおる政治の私物化に、最高裁が人権の最後の砦として、その、チェック機能を発揮しているのでしょうか?
私たちには? 最高裁裁判官をやめさせる権利があります。
憲法と人権をないがしろにする裁判官には、×を
政府や大企業にいいなりの裁判官には、×を
国民審査とは… 私たちの憲法は、立法・行政・司法の三権分立を原則としています。裁判所は、違憲立法審査権を持ち、「憲法の番人」「人権の砦」の役割が課されています。
とりわけ裁判所の頂点に立つ最高裁判所は、重要な憲法解釈・法律解釈を担うほか、全国の下級裁判所裁判官の任命権を持っており、その権限と役割は重大です。
憲法上、最高裁判所の裁判官(定員15名・定年70歳)の任命権は内閣にあります。このように、最高裁裁判官の人事は時の政府によって独占されている上、密室で行われるため、時として、政府に迎合したり、国民の常識からかけ離れた判決を下すような裁判官が生まれる危険性があります。
国民審査は、このような危険性をふまえ、内閣が任命した最高裁裁判官が適任であるかどうかを、主権者である私たち国民が審査し、不適格な裁判官を罷免することができる制度です(憲法79条)。
最高裁判所の裁判官は、その任命後最初に行われる衆議院議員総選挙の際に国民審査に付され、その後10年を経過した後の最初の総選挙の際さらに審査に付されます。そして、この審査において、投票者の過半数が罷免すべきだとした裁判官は辞めさせられるのです。
いま憲法は危機の時代にあります。忖度政治がまかりとおっています。最高裁裁判所が憲法の番人として、人権の砦として、司法本来の機能をはたせるように、国民審査の重要性は高まっています。
国民審査の問題点・注意点
■投票方法
現行の国民審査は、1枚の投票用紙に対象裁判官全員の氏名が印刷され、罷免したい個々の裁判官ごとに「..」をつける仕組みですが、分からないから棄権するつもりで何も書かなかった投票は、全て「信任」とみなされるという重大な問題があります。棄権したい場合、投票用紙を受け取らないことはできますが、投票用紙は1枚なので、裁判官ごとに信任・罷免・棄権を分けて投票することは不可能です。また、「×」以外の記載は認められず、「〇」などをつけるとその投票用紙は丸ごと無効票にされるという問題もあります。
■衆議院選挙と同様の期日前投票・在外投票が可能に!
前回(2014年12月)までは、国民審査の期日前投票は投票日の7日前からしかできませんでしたが、2016年12月の法改正により、今回の国民審査から、総選挙の公示日の翌日(投票日の11日前・今年は10月11日.)からできるようになりました。不在者投票・海外からの投票(在外投票)も可能です。
また、今回の国民審査から18歳以上の方は投票できます。投票に行きましょう!
投票上の注意点
1 信任できない裁判官には一人ひとりに×印をつけましょう。
2 何も書かないと、なんと信任票になってしまいます。
3 ○や△など、×以外を書くと全体が無効となってしまいます。要注意!
4 信任か不信任か、判断ができないときには、投票用紙を受け取らないようにしましょう。
(2017年10月13日)