衝撃!ー ウイグルでの赤裸々な人権弾圧の実態
(2022年5月26日)
昨日の毎日新聞朝刊のトップに、「逃げる者は射殺せよ」というおどろおどろしい横見出し。そして、主見出しは「ウイグル公安文書流出」。これは、衝撃的な記事だ。野蛮な中国共産党専制支配によるウイグルでの赤裸々な人権弾圧の実態。全世界の人々が、この記事を読むべきであり、権力と人権との緊張関係についての教訓を汲み取らねばならない。
そして「内政干渉だ」「フェイクだ」「反中勢力の謀略だ」などという弁明を容れることなく、「人権擁護は人類共通の課題だ」との姿勢を貫いて中国批判の声を上げ続けなければならない。
https://mainichi.jp/xinjiangpolicefiles/
この記事のリードは以下のとおり、中国のウイグル族「再教育施設」内部資料が流出したというもの。その流出資料の量と内容が半端なものではない。そして、内容の信憑性は限りなく高い。このリードはけっして誇張ではなく、この記事の全体を真実と前提しての議論に憚るところはない。
「中国新疆ウイグル自治区で少数民族のウイグル族らが「再教育施設」などに多数収容されている問題で、中国共産党幹部の発言記録や、収容施設の内部写真、2万人分以上の収容者リストなど、数万件の内部資料が流出した。「(当局に)挑む者がいればまず射殺せよ」などと指示する2018年当時の幹部の発言や資料からは、イスラム教を信仰するウイグル族らを広く脅威とみなし、習近平総書記(国家主席)の下、徹底して国家の安定維持を図る共産党の姿が浮かぶ。」
毎日の記事では、まずこの資料の信憑性が語られている。
「今回の資料は、過去にも流出資料の検証をしている在米ドイツ人研究者、エイドリアン・ゼンツ博士が入手した。毎日新聞を含む世界の14のメディアがゼンツ氏から「新疆公安ファイル」として事前に入手し、内容を検証。取材も合わせ、同時公開することになった。」
世界の14のメディアとは、以下のとおり、信頼に足りる世界のビッグネームである。およそ、フェイクとも、偏向とも無縁と言ってよい。
BBC News(英)▽ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)▽USA TODAY(米)▽Finnish Broadcasting Company YLE(フィンランド)▽DER SPIEGEL(独)▽Le Monde(仏)▽EL PAIS(スペイン)▽Politiken(デンマーク)▽Bayerischer Rundfunk/ARD(独)▽NHK WORLD-JAPAN(日本)▽Dagens Nyheter(スウェーデン)▽Aftenposten(ノルウェー)▽L’Espresso(イタリア)▽毎日新聞
「14のメディアは、収容者リストに載っている人の家族への取材や流出写真の撮影情報の確認、衛星写真との比較、専門家への鑑定依頼などを行った。毎日新聞は検証で確認された情報の信ぴょう性と社会的意義から報道する価値があると判断した」「流出文書を検証した14のメディアは、事前に内容について共同で中国外務省にコメントを求めたが、直接回答はなかった」
本文の内容は厖大で、とうてい全体を紹介しきれない。そのごく一部を引用する。
「流出した内部文書は、ウイグル族など少数民族の収容政策を厳しく推進した新疆ウイグル自治区トップの陳全国・中国共産党委員会書記(当時)ら発言記録や、収容施設の管理マニュアル、不審人物がいないか調べた報告書など多岐にわたる。」
幹部の発言記録は、公安部門トップの趙克志・国務委員兼公安相や自治区トップの陳全国・党委書記(当時)らが会議で行った演説。
収容政策で重要な役割を果たした陳氏は17年5月28日の演説で、国内外の「敵対勢力」や「テロ分子」に警戒するよう求め、海外からの帰国者は片っ端から拘束しろと指示していた。「数歩でも逃げれば射殺せよ」とも命じた。
また、18年6月18日の演説では、逃走など収容施設での不測の事態を「絶対に」防げと指示し、少しでも不審な動きをすれば「発砲しろ」と命令。習氏を引用する形で「わずかな領土でも中国から分裂させることは絶対に許さない」と述べ、「習総書記を核心とする党中央を安心させよ」と発破を掛けていた。
内部の写真が流出したのは、自治区西部イリ・カザフ自治州テケス県の「テケス看守所(拘置所)」とされる収容施設。手錠や足かせ、覆面をつけられ連れ出された収容者が、「虎の椅子」と呼ばれる身動きができなくなる椅子で尋問を受けている。また、銃を持つ武装警察らが制圧訓練をしているとみられる写真や、収容者が注射のようなものを受けている写真もある。
これらは、中国当局が過激思想を取り除くためなどとして運用した「再教育施設」の元収容者が証言した内容とも一致した。
収容者のリストには、身分証番号や収容の理由、施設名などが記されている。主に自治区南部カシュガル地区シュフ県在住のウイグル族など少数民族のもので、ゼンツ氏は、数千人分を含む452枚のリストを検証。17〜18年の時点で、シュフ県の少数民族の成人のうち12・1%(2万2376人)以上が「再教育施設」、刑務所、拘置所に何らかの形で収容されていると推計した。別に警察署などで撮影された収容者約2800人の顔写真も流出した。驚くべきは、「新疆南部では過激な宗教思想の浸透が深刻なグループが200万人以上いる」といった趙克志・国務委員兼公安相の発言。 これまで、「再教育施設」の規模は「100万人を超える」と言われてきたが、この推測に根拠を与えるものとなった。
2017年5月28日、陳全国(新疆ウイグル自治区トップ)党委書記の「安定維持司令部」会議での演説の中で、下記のとおり発言しているという。
「苦難を恐れず、疲労を恐れず、犠牲を恐れぬ精神でそれぞれの責任を果たせ。特に神経をとがらせているのは海外からの帰国者の動向だ。片っ端から捕らえ、手錠や覆面をつけ、必要なら足かせもしろ」と指示。「逃げるものは射殺しろ」とまで言い切っている。
ウィグル人権弾圧問題をめぐっては、国連のバチェレ人権高等弁務官(元チリ大統領)が今月23日から6日間の日程で中国を訪問中である。この国連の代表に対して、習近平は、「教師面して偉そうに説教するな」と述べたという。本日の東京新聞が「ウイグル訪問中の国連人権高等弁務官にクギ刺す」と報道している。
「中国の習近平国家主席は25日、新疆ウイグル自治区の視察のため訪中しているバチェレ国連人権高等弁務官とオンライン会談した。習氏は「人権を口実に内政干渉するべきではない」と訴え、中国が少数民族ウイグル族の人権を弾圧しているとして批判を強める欧米をけん制した。
中国外務省によると、習氏は「国ごとに異なる歴史文化や社会制度を尊重するべきだ」と主張した上で、「教師面して偉そうに他国を説教するべきでなく、人権問題を政治化してはならない」と国際社会の非難に反論した」
世界の良識を代表する国連人権高等弁務官に対しての「教師面して偉そうに説教するな」である。恐るべき野蛮、唾棄すべき夜郎自大。今、世界はプーチン・ロシアを非難の的としているが、習近平・中国も、兄たり難く弟たり難し、と言わねばならない。