「統一教会」と「安倍派」 醜悪な相寄る魂
(2022年11月13日)
先週日曜日(11月6日)の毎日新聞朝刊トップに、「旧統一教会教祖の発言録が流出 『安倍派を中心に』浮かぶ政界工作」という大見出し。
統一教会(現名称は「世界平和統一家庭連合」)は、意識的に「安倍派」を手掛かりに「政界工作」を行うという構想を持っていたという記事。今や、常識に属することだが、教団側の資料が生々しくそのことを物語っている。
教祖・文鮮明の厖大な韓国語説教録が残されているという。「文鮮明先生マルスム(御言)選集」と題されたもので、各巻300?400ページ、実に615巻に及ぶ。毎日新聞は、その全部がネットに「流出」していることを把握し、内容の信憑性を確認して、日本語に翻訳した。
その中で、毎日が注目したのは、この「選集」に記された統一教会と日本政界との関わりである。文が1989年に韓国で行った説教では、「自民党の安倍晋太郎(元外相)が当時会長を務めていた保守系派閥「安倍派」(清和会)を中心に国会議員との関係強化を図るよう信者に語っていた」という。
選集468巻264ページによると、文は04年9月16日の説教の中で「岸首相(の時)から私が(日本の政界に)手を出した」と振り返り、自ら岸氏に接近したことを示唆している。
以下、毎日記事記事の、要約引用である。
「これに続けて『中曽根の時に130人の国会議員を当選させた』とも語った。教団系政治団体「国際勝共連合」が発行する「思想新聞」は、中曽根政権下で行われた86年7月の衆参同日選で、当選した638人のうち130人について『勝共推進議員』と報じており、文氏は教団の支援によって多くの当選者を輩出したと強調したとみられる。
思想新聞によれば、晋太郎氏は88年2月の勝共連合の懇親会で『皆さんには我が党同志をはじめ大変お世話になっている』とあいさつしたといい、晋太郎氏ら自民党の保守系議員と教団との関係が深まっていたことがうかがわれる。この後、文氏は安倍派を中心とした更なる関係強化を口にする。
『国会議員の秘書を輩出する』
192巻250?251ページの記述によると、文氏は89年7月4日、日本の政治をテーマに韓国で行った説教の中で「国会議員との関係強化」に言及し「そのようにして、国会内で教会をつくる」「そこで原理を教育することなどで、全てのことが可能になる」と語った。加えて「国会議員の秘書を輩出する」「体制の形成を国会内を中心としてやる。そのような組織体制を整えなければならないだろう」「そして、自民党の安倍派などを中心にして、クボキを中心に超党派的にそうした議員たちを結成し、その数を徐々に増やしていかないといけない。分かるよな?」と語った。
クボキは、日本の教団本体と勝共連合で初代会長を務めた久保木修己氏を指すとみられる。
さらに「行動結束と挙国だ。挙国とは国を挙げて一致団結することだ」「日本の中央の国会議員たちだけではなく、地方もそうだ。地方には皆さんがいるよね? 分かるだろ?」と地方政界にも言及した。」
岸氏、晋太郎氏と「親子2代」の関係を築いた文氏は、岸派を源流とする安倍派との関係を強化することで、日本政界への影響力を高めようとしたとみられる。実際、晋三氏が率いていた現在の安倍派を中心とした議員に教団との接点が次々と明らかになっており、清和会との関係強化を訴えた文氏の発言が今につながっているとみることもできる。」
また、毎日は、元信者で教団関連の「世界日報」記者だった金沢大の仲正昌樹教授(政治思想史)の次の言葉を紹介している。
「教団はいろんな議員にアプローチする中で結果的に『反共』の議員が集まる清和会との関係強化に狙いを絞ったのではないか。」
なるほど、「統一教会」と「安倍派」、似た者同士。反共という赤い糸で結ばれた切っても切れない間柄。お互いに、利用価値があったに違いない。「安倍派」は「統一教会」に選挙協力を求めた。「統一教会」が、「安倍派」に求めた見返りとは、文のいう「国会議員との関係強化」⇒「そのようにして、国会内で教会をつくる」⇒「そこで原理を教育することなどで、全てのことが可能になる」という構想の実現のごとくである。
この文脈の中では、「安倍派」の「統一教会」への見返りの提供のなかに、霊感商法取締りへの手心が含まれていたとしても不思議ではない。このことについての今後の徹底解明が望まれる。