安倍解釈改憲に地方からの異議
本日の東京新聞朝刊。目次に当たる「きょうの紙面」に、「解釈改憲 地方が異議」とある。
まずは2面に、「解釈改憲反対『立憲ネット』地方議員215人で発足」との記事。
「憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認に反対しようと、超党派の地方議員でつくる『自治体議員立憲ネットワーク』の設立総会が15日、東京都内で開かれた。安倍晋三政権に対抗し、市民と連携して地方から立憲主義と平和を守る方針を確認した。
北海道から九州までの民主や社民、生活者ネット、緑の党、無所属の都道県議や区市町村議ら215人で発足。共同代表に西崎光子東京都議(生活者ネット)や角倉邦良群馬県議(民主)ら5人が就いた。
各自治体で解釈改憲に反対する決議を目指すほか、来春の統一地方選で連携する議員を増やすための政策提言をまとめる。安倍首相が進める憲法解釈変更の閣議決定に向け、東京で抗議集会も予定する。
角倉県議は『地方議員が平和を守る運動の先頭に立ち、閣議決定や法改正に歯止めをかけたい』と訴えた。」
このネットワークに共産党議員ははいっていない。呼び掛けられてもいないようだ。同党の地方議員総数は約2700名。現時点でのネットの215人は決して多い数ではないが、大きな可能性を感じさせる。
そして、3面。「首長『解釈改憲ノー』続々」「地方政治 強まる危機感」「戦争に直結」「9条守れ」の見出し。こちらは、「集団的自衛権の行使容認のための憲法解釈変更に、各地の知事や市長らが次々と反対の声を上げている」「解釈改憲を急ぐ首相を黙認できないとの思いは静かに広がっている」という、首長の声を拾っている。
批判の声を挙げている首長として名を挙げられたのは13名。上田札幌市長や、松井広島市長、田上長崎市長、末松鈴鹿市長などだけでなく、舛添東京都知事、阿部長野県知事、湯崎広島県知事、広瀬大分県知事、大村愛知県知事など。
「発言が目立ち始めたのは、首相が5月15日の記者会見で憲法解釈変更を検討する考えを表明してから。‥行使容認反対などを求めた意見書を国会に提出した市町村議会も約60あることと合わせ、地方でも危機感が強まっている」という内容。
注目すべきは、長崎市の田上富久市長。記者会見で、安倍政権の動きについて「原爆被爆者には、日本の在り方の大きな方針転換になるのではないかという不安に結び付いている」と指摘。8月9日の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典で読み上げる平和宣言文で、この問題に触れる方針だという。三重県鈴鹿市の末松則子市長は、解釈改憲での行使容認を「戦争に直結すると捉えられかねない」と批判。「母親の立場からみても素晴らしい憲法。9条は変えてほしくない」と訴えた。札幌市の上田文雄市長は消費者問題の弁護士出身。首相は会見で、乳児や母親を描いたパネルを用いて行使容認が必要とする事例を説明したが、「危機感だけをあおる手法は、国民に冷静な判断をさせない催眠商法のやり方に酷似している」と厳しく批判したという。 また、長野県中川村の名物村長曽我逸郎氏のインタビューが紹介されている。このインタビューの内容もおもしろいが、同村のホームページの「村長の部屋」も一見の価値がある。
信濃毎日新聞から村長へのアンケート依頼に対する丁寧な回答があり、その中に「集団的自衛権の行使容認に関する質問」への村長の見解が示されている。
(2)集団的自衛権行使を憲法解釈の変更で容認することについてどう思うか。
・反対
▽その理由は
憲法とは、時代を超えた普遍的な規範である。移り変わる時代の中における個々の政権によるその場その場の政治的判断は、憲法を基準として検討され、下されなければならない。最高法規とはそういう意味である。
従って、もし憲法を変更しようとするなら、人類にとっての時代を超越した普遍的な価値について、踏み込んだ十分な議論がなされ、合意が形成された上でなければならない。
にもかかわらず、解釈によって憲法の内実をお手軽に実質的に変更できるとする考えは、自分の個人的かつその時の判断・解釈を憲法より上位に置くものであり、不遜である。このような考え方のできる人は、時代を超えた人類普遍の価値が存在することを理解しておらず、その場の都合や利害しか判断基準として持っていない。」
東京新聞は、これを「村長は、村のホームページで首相を戒めている」と解説している。
「地方の異議」は、自民党内部からも生じている。本日の朝日に、「自民岐阜県連『性急すぎる』 集団的自衛権で異例の要請」との記事。
「安倍政権が今国会中にも閣議決定を目指す集団的自衛権の行使容認について、自民党岐阜県連が「性急すぎる」として、県内全42市町村議会議長に、慎重な議論を求める意見書を議会で採択するよう要請したことがわかった。県議会でも同様の意見書を採択し、政府に提出する方針。
要請文は10日付。農協改革とあわせて、各議長に『国民生活に重大な影響を及ぼす案件であるのに、関係者と十分な議論を経ることなく、性急なスケジュールで検討が進められている。国民の理解を得る形で結論を出すべきだ』と呼びかけ、意見書案を添えた。
意見書案は集団的自衛権について、『議論を否定するものではないが、国防、安全保障の根幹に関わり、国民生活に影響を及ぼす重要な問題』と指摘。『全国で公聴会を開くなどの方法で、結論を出すべきだ」としている。異例の意見書案の背景には、来春の統一地方選へ向け、公明党への配慮もあるとみられる」
自民党県議の「党本部や官邸がやっていることがすべて正しいわけではない。あまりにも性急というか、慎重さに欠ける」「公明党との関係もぎくしゃくし、統一地方選にも影響する。選挙で公明党の票がなかったら危ない議員もいる」と安倍政権を批判する発言も紹介されている。
「全国有数の自民王国」でこの事態。安倍政権の性急さ強引さを、快く思わない自民党地方組織が岐阜だけであるはずはない。このようなやり方では、民意を蹴散らすことになりはすまいかと心配しているにちがいない。議員も、首長も、自民党地方組織も、だんだんとものをいうようになってきた。
東京新聞のインタビューで曽我村長が語っている。
「住民が地元の議会や首長に、行使容認に反対する意見書や声明を出すよう働き掛けてほしい。ゲームのオセロは、黒ばかりの盤面でも、少しずつ白のこまが増えれば、局面は大きく変わる。政治も同じだ」
少しずつ、白のこまが増え始めているという手応えがある。
(2014年6月16日)