改憲阻止を目指す野党選挙共闘実現の流れー32の一人区のうち、あますところはあと3区。
参院選の野党統一候補擁立の動きに注目し続けている。その成否が改憲阻止の成否に直結するからだ。アベ壊憲政権の与党勢力に3分の2の議席を与えてはならない。そのためには、明文改憲阻止の一点で野党の選挙共闘が不可欠だ。民進・共産・社民・生活の野党4党間で進んでいる、候補者統一が改憲を阻止しうる院内勢力を形づくることになる。そして、参院選後の総選挙での選挙協力にも道を切り開くことになる。
注目の一人区は全部で32(県数では34)。このところ、5月15日に鹿児島、16日に奈良、そして昨日(18日)和歌山と岩手の野党統一候補擁立の発表があった。残るは3選挙区、三重・香川・佐賀のみである。ここまでくれば、一人区全部で野党統一候補擁立実現の見通しが高くなってきた。がぜん、参院選は伯仲模様、熱を帯びたものとなってきている。
岩手は、民進が生活に譲った形での共闘成立。協議難航した生活と民進両党を説得したのが、間にはいった社民・共産の両党だったと報道されている。「野党共闘は衆参一体で捉えるべきだ」との立場から、生活推薦候補を参院選の共闘候補とし、民進推薦候補を次期衆院選岩手2区候補とする案を提示して、打開につなげたという。これで、野党4党対自公の一騎打ちとなる。注目選挙区の一つである。
和歌山の共闘模様は、やや複雑だ。すんなりの全野党合意ではない。
まず、安全保障関連法廃止を掲げる「市民連合わかやま」の主導で、統一候補者が模索された。「市民連合わかやま」が、各野党に呼びかけた政策の合意は次の3点である。
?安全保障関連法の廃止
?集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回
?日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻す
結局、「市民連合わかやま」は、この3項目の政策で参議院選挙の和歌山選挙区予定候補に由良登信弁護士(元和歌山弁護士会会長)を推薦することを決定し、民進、共産、社民の各野党に「野党統一候補として推薦いただきたい」と申し入れた。市民組織先行での野党への呼びかけは、「この指止まれ方式」だ。
これに対し、共産・社民・生活の3党は、この指にとまって、由良推薦を決めた。共産は独自候補を比例区に回してのこと。民進党県連の、この指への止まり方は微妙だった。自党の参院選予定候補者を「次の衆議院選挙の和歌山2区で候補とする」と「転戦」を発表はしたが、由良候補推薦とはならなかった。「基本的な理念や政策に違和感がある。野党の統一候補とは言えない」として、参議院選挙では、自主投票としたという。
複雑な事情は知り得ないが、民進も既に決めていた候補者を下ろしたのだ。由良候補を、「事実上の野党統一候補」と言ってよいだろう。
私は、由良さんをよく知る一人だ。日弁連の消費者委員会で活動をともにした。信頼のできる人だし、社会的弱者の立場に立つことを鮮明にしている人。到底、自ら国政に出ようというタイプには見えなかったが、この人が選挙に出るなら、なるほどよい候補者だ。人当たりが柔らかで、誰の意見にも穏やかに耳を傾ける。何よりも声がよい。歯切れがよいし、滑舌が滑らかで聞きやすい。そして、話が分かりやすい。説得力がある。
がんばれ、由良さん。がんばれ、和歌山野党共闘。
「野党は共闘」とは、市民の声であり、今や天の声でもある。野党はこの天の声に耳を傾けざるをえない。なんと言っても、これが大義なのだ。この大義が、由良さんのような無所属候補を擁立したのだ。これで、「野党共闘+市民の陣営」対「与党(自公)の陣営」の対立構図が明確になってきた。対立軸は、明文改憲と解釈改憲の是非である。「憲法擁護の、野党+市民」対「改憲の自公」の対立なのだ。
典型例としての愛媛県の例。無所属の候補と、これを擁立した市民組織「安保法制(戦争法)の廃止を求める愛媛の会」と4野党(ここでは、民進、共産、社民、新社会)との合意内容は以下のとおりである。
?憲法違反の安全保障関連法廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を公約する
?安倍政権の打倒をめざす
?自民党改憲案にもとづく憲法改正を阻止する
?立憲主義と民主主義の回復をめざし、その姿勢を貫く
こうして、日本国民は、憲法12条の「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」を実践し、日本国憲法とその理念を、日々選び取り血肉化しているのだ。憲法を排撃すること厳しいアベ政権が、国民の憲法意識を鍛えているとも言えるだろう。
最後に、もう一度。がんばれ、由良さん。がんばれ全国の野党統一候補者の皆さん、そして共闘を支える野党と市民の皆さん。
(2016年5月19日)