澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

内藤光博先生からのお祝いメール?「DHCスラップ訴訟」を許さない・第85弾

DHCスラップ訴訟の勝訴確定に関して、たくさんの方からお祝いメールやハガキをいただいた。そのなかの最も遠方からの一通が、専修大学の内藤光博先生からのもの。なんと、イタリア・ボローニャ大学で、研究中とのこと。

日民協で親しく、「経産省前『テントひろば』裁判」で被告側の依頼で鑑定意見書を作成されたと聞いていた。「法と民主主義」493号(2014年11月号)には、そのことを寄稿いただいてもいる。DHCスラップ訴訟一審段階での法廷後報告集会で、ミニ講演をお願いして、ご快諾いただいた。

その際のレジメの冒頭は以下のとおり、とても分かり易い。
スラップ訴訟の本質?裁判を利用した言論弾圧
(1)「スラップ訴訟」とは何か?
?1980年代にアメリカで誕生した[違法な訴訟]の概念。
?Strategic Lawsuit Against Public Participasion(SLAPP)
直訳:「公的参加に対する戦術的訴訟」
大企業・政府機関(政治的・経済的・社会的強者)による市民(弱い立場にあるもの)に「公的意見表明の妨害」を狙って提訴された民事訴訟であり、「恫喝訴訟」とも呼ばれている。
(2)特質
?表現活動に対する、文字通りの「萎縮効果」が目的
 裁判により金銭的・精神的・肉体的負担(疲弊)を被告に強いることにより、言論活動に萎縮的効果を与え、原告の利益に反する言論活動を弾圧することに真の目的を有する訴訟=濫訴
?現在ばかりでなく、将来の公的発言者に対する萎縮効果を特つ。
?提訴により目的が達成されるので、訴訟の勝敗にこだわることのない「裁判を利用する言論弾圧」であり、「裁判としての意味を特たない訴訟
」(以下略)

ところで、イタリア・ボローニャ大学である。
ウイキペディアを検索してみたところ、「ヨーロッパ最古の総合大学であり、規模においてイタリア国内第2位の大学でもある。世界の大学の原点とされ、『母なる大学』とも雅称される。創立以来9世紀を超える歴史のうちには、ペトラルカやダンテ、ガリレオ・ガリレイ、コペルニクスなどといったそうそうたる著名な才人が過去の在籍者に名を連ねる。」とある。なんだか途方もなく、すごいところ。

ご承諾をいただいたので、内藤先生からのお祝いメールを、ご紹介する。
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内藤光博
ご無沙汰しております。
お元気でご活躍のことと存じます。

DHCスラップ訴訟で、最高裁が上告不受理を決め、先生の完全勝訴となったことを知りました。おめでとうございます。心よりお祝い申しあげます。

スラップ訴訟は、日本ではまだ認識が低く、これから究明を進めなければならない重要な課題だと考えております。
先生の勝訴が、スラップ訴訟の実態を社会に広く知らしめることになると思います。その意味で、今回の訴訟は大きな意味を持つと思います。

私は、現在、イタリアのボローニャ大学で、研究生活を送っております。
スラップ訴訟についても調べておりますが、やはりイタリアでもスラップ訴訟については弁護士や法学者に間にも認識はないようです。

ただ、ボローニャの著名な左派リベラルの弁護士に会って、スラップ訴訟の話しをし、イタリアでも問題となっているのかなど聞き取り調査をしましたところ、スラップ訴訟の概念はないが、そのような訴訟は頻繁に起きており、イタリアでは社会的連帯という憲法原理から、民主主義を擁護する市民団体により、かなり厳しい批判が寄せられ、裁判所に大きな影響を与えるので、問題はないとのことでした。

私のイタリア語力の問題もあり、もう少し詳しく、調べてみようと思います。

ボローニャは、日本の初冬にあたる気候で、朝晩は10度を下回っております。夏から一気に冬に向かうという感じで、日本の秋がありません。日本は暑い日があったり、台風が来たりと異常気象が続いていると聞いております。また、阿蘇山の爆発的噴火があったとのニュースも聞きました。被害が心配です。

どうかお元気でお過ごください。
匆匆
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拝復、お返事をいただき、ありがとうございました。
イタリア・ボローニャ大学には、今年の3月から来ています。
専修大学長期在外研究員制度を利用して、1年間の研究休暇をいただきました。
出発の連絡もせず、たいへん失礼いたしました。
こちらの生活は、残すところ半年となり、来年3月には帰国いたします。
ボローニャ大学では、イタリア共和国憲法の「連帯」の基本原理と抵抗権について調査し、勉強しています。

2010年代以降の日本の憲法政治は、立憲主義を突き崩す「暴政」とみており、安保法制反対運動・沖縄基地反対運動・反原発運動は、日本国憲法を否定している政府に対する抵抗権行使だと見ております。それに抵抗するために、市民の政治的・社会的連帯と抵抗権行使が行われているのだと思います。

抵抗権論については、今年の年末に出版予定の論文集に、経産省前テントひろば裁判に関して抵抗権論を展開しています。帰国しましたらお送りしますので、ご笑覧いただければと存じます。

先生の憲法日記は、毎回欠かさず拝読させていただき、勉強させていただいております。お祝いメールは、拙文で恐縮の限りですが、もちろん公開していただいて構いません。
よろしくお願いいたします。
不一 (2016年10月12日)

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Published in 水曜日, 10月 12th, 2016, at 19:53, and filed under DHCスラップ訴訟.

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