澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

今回仙台市長選は野党の選挙共闘モデルだ。

「自民惨敗の都議選」(7月2日)に続く大型地方選挙として、民意の動向を占う機会と注目されていた仙台市長選。昨日(7月23日)投開票の結果、郡和子候補の勝利となった。同候補は、民・共・社・由の4野党共闘候補。「市民と野党」の共闘が結実したことになる。安倍内閣の支持率が急落するさなかでのこの結果、政権への影響は不可避である。それだけではなく、今後の野党共闘選挙のモデルとして大きな意義がある。

都議選は、部分的な野党共闘はあったものの基本は各政党の選挙戦。特殊な事情として、都民ファーストの会という本来保守でありながらヌエのごとき政治勢力の存在があった。反自民票の主たる受け皿の地位は、この政治勢力にさらわれた。しかも都議選では、「都ファ+公明」の選挙協力が成立し、自民は公明に離反されて孤立してもいた。

それと比較して仙台市長選は、与党勢力対野党勢力が四つに組んでの総力戦となった。「自・公の与党」対「民・共・社・由の野党」の闘い。極めて普遍性の高い選挙状況。いずれ迎える「天下分け目の」次の総選挙の小選挙区共闘のモデルケースである。地元紙「河北新報」の出口調査が、「無党派層の投票先は、自公候補28.1%、野党共闘候補45.2%」となっているのが象徴的である。野党共闘陣営が、無党派票(≒浮動票)獲得に成功し、ここで勝敗が決まった。票差は、16万5000票対14万9000票である。

河北新報の以下の記事も紹介しておきたい。
「(敗れた)菅原さんは自民、公明の政権与党に加え、盟友の村井氏(宮城県知事)、奥山氏(前仙台市長)が支える盤石の態勢だった。『だからこそ負けるわけにはいかない』と訴えたが、知名度不足を最後まで覆せなかった。
告示直前の都議選で自民が大敗し、学校法人「加計学園」問題などで安倍政権の支持率が下落する中での選挙戦。『国政どうこうという話は私の頭の中には全くない』と述べたが、支援した市議は『アゲンストの風が吹いた』と悔やんだ。」

けっして、野党が勝って当たり前の選挙ではなかった。
与党側候補には、自民公明の政権与党が付き、宮城県知事も前市長も推しているのだ。負けるはずのない「盤石の態勢」と言ってもよい。それでも投票率が上がり、野党共闘に票が流れた。『アゲンストの風が吹いた』のだ。

河北新報は次のようにも伝えている。
「村井氏(知事)との近さを前面に出したことで、他候補から『お友達政治は許されない』『市は県の支店ではない』との批判も招いた。落選が確実となり、事務所では吹っ切れた表情で敗戦の弁を述べ、支持者らに頭を下げた。村井氏と奥山氏は姿を見せなかった。」

こんな風にはならないだろうか。
「首相との近さを前面に出したことで、国民から『お友達政治は許されない』『行政は総理のご意向や忖度で動くべきではない』との批判も招いた。文科省の設置不認可が確実となり、愛媛県も今治市も、吹っ切れた表情で敗戦の弁を述べ、地元民に頭を下げた。しかし、加計学園も安倍晋三首相も姿を見せなかった。」

これも、河北新報記事。
「郡氏は民進、社民両党の宮城県連が支持し、共産党県委員会と自由党が支援。衆院議員を四期務めた知名度を生かし、幅広く支持を集めた。自民党県連と公明党県本部、日本のこころが支持した菅原氏は、政権への逆風の余波を避けようと党幹部らの応援を控え、地元市議や県議が組織戦を展開したが、及ばなかった。」

全体状況と経過が簡潔にまとめられている。弱小ながらも極右の「日本のこころ」が、与党勢力にくっついていることにも触れられている。与党や自民が何者であるかを考えるうえで貴重な役割を果たしている。

ところで、衆議院議員総選挙宮城県第1区の最近の総選挙開票結果を確認しておこう。

2014年第47回衆議院議員総選挙
土井 亨 56 自・公 前 93,345票 46.8%
郡和 子 57 民主党 前 81,113票 40.6%
松井秀明 46 共産党 新 25,063票 12.6%

2012年第46回衆議院議員総選挙
土井 亨 54 自民党 元 87,482票 39.2%
郡 和子 55 民主党 前 60,916票 27.3%
林 宙紀 35 み・維 新 38,316票 17.2%
角野達也 53 共産党 新 13,454票? 6.0%
桑島崇史 33 社民党 新  6,547票? 2.9%

宮城1区に限らない。共闘ができずに野党乱立すれば、確実に共倒れ。野党共闘ができれば、今回市長選のように十分な勝機がある。ということは、野党共闘ができずに乱立すれば確実に改憲発議を許してしまう。野党共闘ができれば、今回市長選のように改憲を阻止する勝機があるのだ。
(2017年7月24日)

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