小選挙区制における究極の一票の格差
安倍内閣が勢いづいている。今は経済優先で人気を維持し、7月参院選の結果次第で牙を剥き出すことになる。羊を狼に変身させてはならない。
ところで、強気に改憲を目論む与党自民党の294議席は「つくられた多数派」であり、安倍内閣は「虚構の上げ底政権」である。このネーミングは、上脇博之さんによるもの。言い得て妙である。一見大きく見える安倍自民党政権も、実は上げ底、実力はそれほどのものではない。
どうして「上げ底」が可能なのか、いわずと知れた小選挙区制のマジックにほかならない。
上脇さんによれば、前回選挙における各党の小選挙区得票率と議席占有率とは以下のとおりである。
自民党 43% 79%
民主党 23% 9%
維新 12% 4%
公明党 1.5% 3%
共産党 7.9% 0
社民党 0.8% 0.3%
自民党は、得票率のほぼ倍の議席を獲得している。改憲を目論む安倍内閣は、虚構の多数派に支えられた、上げ底政権にほかならない。
明らかに民意を反映した議会の構成にはなっていない。民意を枉げて、多数派をより手厚く遇してより多数に、少数派をより少数にして切り捨てようとするものが小選挙区制である。
これを別の角度から眺めてみたい。
自民党の得票実数は2564万票である。この票数で237議席を獲得している。1議席当たり10万8000票。約11万人の支持者で1議席を得ている。
ところが、日本共産党はどうだ。得票実数470万票で、獲得議席数はゼロなのだ。470万人の支持が1議席にもつながっていない。全部が死票となっている。
自民党支持者は11万票で1議席を獲得し、日本共産党支持者は470万票で議席ゼロである。仮に、共産党にも自民党並みに「11万票当たり1議席」を配分すれば、470万票では42議席の獲得となる。これに比例区の議席8を加えれば、50人の共産党議員団ができあがる。護憲勢力としての、共産党、社民党などの議席が、得票実数に応じたものとなっていない。切歯扼腕の思いである。
今各地の高裁で違憲判決が相次いでいる「一票の格差」とは、各選挙民の選挙区ごとの格差である。居住地の如何による一票の価値の格差が問題とされているのだ。では、「支持政党の別、あるいは投票先政党の別による一票の格差」は許されるのだろうか。これこそ「究極の一票の格差」である。「民意を議会に正確に反映すべき選挙制度」という代議制の根源的要請と、憲法14条の信条における平等原則がこの格差を許さない。この格差を原理的に解消し得ない小選挙区制は、根本的な欠陥制度として廃止されなければならない。
本日も、恒例となった新装開店サービスのエッセイ。
『安倍のリスク・アベノリスクのこと』
時事川柳(長谷川 清)
日銀の人事争い白と黒
二枚舌アベのみくすっとほくそ笑む
長谷川さんは矍鑠としたご近所のご老体。安倍政権に一貫して腹を立てておられる。目がお悪いのですが、新聞をよく読みます。不正には我慢のならない江戸っ子ぶり。
日銀総裁が、白から黒に移って、アベノミクスが本格化。新聞に連日、「東証空前の上げ」、「日経平均株価最高値」、などという大活字が飛び交っている。「日銀が国債を1.2兆円購入、毎月7兆円ペースで」、とも書いてある。私たちの生活では毎月電気代が千円上がるとか、国保料が五千円上がるというのが現実感のある話だ。「兆」の単位の話となると、はなから拒絶反応が先に立って、思考停止する。でも、みんなこんなに騒いでいるのなら、蚊帳の外に置かれるのもおもしろくない。ひるむ心をねじ伏せて、新聞を読んで、生かじりしてみた。
黒田日銀新総裁が、安倍首相の経済政策「アベノミクス」を遂行するために、物価を2パーセント上げようとしている。好景気にして、消費税導入に持ち込みたいというのが目的。よくよく新聞を読んでみれば、つまるところ、日銀で大胆にバンバンお金を刷って、金融緩和をすれば景気回復ができるはずというストーリーらしい。
? 日銀が金融機関から国債などを大量に買う。その金額は半端じゃない。出回っている現金の総量と金融機関が日銀に預けている当座預金の総額(マネタリーベース)は現在139兆円。それを14年末には倍額の270兆円にする。(2パーセント物価上げるために、どんどんひるまずお金を刷り続ける。まるでチキンゲームだ。)
? そうすれば金融機関が日銀内に持っている当座預金の残高が膨らむ。金融機関が金余りになって、株、不動産など融資に回せば景気を刺激する。乗り遅れまいとする人々が物価上昇するのではないかと慌てふためく。バブル気分の醸成だ。
? 値上がりする前に企業は設備投資をし、個人は住宅ローンを借りに走る。こうしたインフレ予測や気分から景気が上向いて、需要が高まり、給料が上がり、雇用が改善する。国民ををその気にできるかできないか、大芝居を打とうというわけだ。
こんなノーテンキなこと考え出す人たちを「リフレ派」というらしい。通貨を再膨張させて、再びインフレを引き起こそうというのだ。人々がまだまだ物価が下がると思って物を買わないのではいつまでもデフレだ。だから、大胆に金融緩和して、「物が上がっちゃう。だから貯金は下ろして使おう。ローンを組んで家を買おう。」という気分にさせることで、景気回復しようと考えているらしい。
黒田さん、こんな風に都合良く世の中動かせる自信ありますか。うまくいかなかったら、安倍さんキチンとリスクの責任とりますか。理論通りにいきますか。
大部分の人は給料は上がらす、年金は減って、子供は派遣で働いて、投資に回せる貯金や余裕なんてありません。2パーセントのインフレも10パーセントの消費税もごめんです。旗を振られても庶民はとうてい踊る気分にはなれません。これが現実です。
いちはやく時流に乗ってはしゃいでいる富裕層や外国投資家も、いつ食い逃げしようかと虎視眈々としているじゃないでしょうか。
黒田さんも安倍さんも去ったあとで、結局、国家には、今にも増して膨大な財政赤字、国民には、インフレによる物価高で赤字の家計が残されるのが落ちではないでしょうか。原子力発電所と同じで誰も責任なんかとれっこありません。
いっそのこと、これから刷る130兆円を1億人で分けちゃったらどうでしょう。一人あたり130万円、使用期限1年間、貯金は厳禁で。利益も不利益もみんなで分けたほうが、公平でいいじゃないですか。
二枚舌 閻魔が抜いても もう1枚
ミニバブル ハゲタカ連の おおさわぎ