無知と偏見にもとづく「沖縄差別NO!」の声を。そして「安倍政権NO!」の声も。
この社会に理不尽な差別が絶えない。新たな差別が生み出されてもいる。部落や在日に対する差別に加えて、どうやら「沖縄差別」「沖縄ヘイト」というものが存在するらしい。このような差別を許していることを恥ずかしいとも、腹ただしいとも思う。
差別は、社会のマジョリティがつくり出す。権力の煽動と結び付くことで、差別は深刻化し、痛みを伴うものとなる。マジョリティの周辺部に位置する弱者が、「無知と偏見」によって煽動に乗じられることとなる。軽挙妄動して差別の行動に走るのは、より弱い立場にある被差別者に、安全な位置から差別感情を吐露する者。こうしてカタルシスを得ようとする「無知と偏見」に彩られた者たちなのだ。
権力やマジョリティの中枢に位置するエスタブリッシュメントは「無知と偏見」を助長することによって、自ら手を汚すことなくヘイトに走る者を利用するのだ。
いま、「無知と偏見」の輩が、沖縄ヘイトに走っている。本日(12月25日)付毎日の朝刊一面トップ記事が、「米軍ヘリ窓落下被害小学校に続く中傷」の大見出し。「のぞく沖縄差別」と続く。
12月13日米軍ヘリが普天間第二小学校の校庭に窓を落下させて以来、米軍への抗議ではなく、小学校や普天間市教委に抗議の電話が続いているという。「文句言うな…」「やらせだ」「自作自演だ」など…。
毎日新聞はよくぞトップ記事としてこのことを書いた。全国紙がこれだけの扱いをしたことそれ自体のインパクトが大きい。
リードは、「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に隣接する市立普天間第二小学校への米軍ヘリの窓落下事故で、同校などに『学校を後から建てたくせに文句を言うな』といった抗議電話が続いている。第二小の歴史を踏まえ、差別意識ものぞく抗議の背景を考えた。」というもの。事実関係は、今さら繰り返すまでもない。
この件については、朝日の報道が先行している。恐るべき中傷の内容だ。
「市教委によると、中傷電話は事故翌日の14日が13件と最も多く、その後も1日2?3件ある。米軍が窓を落としたことを認めているにもかかわらず、『事故はやらせではないか』などと中傷する内容もあった。東京在住と説明した男性は『沖縄は基地で生活している。ヘリから物が落ちて、子供に何かあっても仕方ないじゃないか』と言ったという。
18日には、謝罪に訪れた米軍大佐が『最大限、学校上空は飛ばない』と告げたことに、喜屋武悦子校長が『最大限ではなく、とにかく飛ばないでほしい』と反発し、文書での回答を求めたが、これに対しても『校長のコメントは何だ。沖縄人は戦闘機とともに生きる道を選んだのだろう』と批判する電話があった。」
この報道を踏まえて、12月22日朝日は、「沖縄への中傷 苦難の歴史に理解欠く」という社説を掲載した。
冒頭に、「沖縄の長い苦難の歩みと、いまなお直面する厳しい現実への理解を欠いた、あるまじき言動だ。強い憤りを覚える。」と珍しく感情を露わにした。
「後から学校を造ったくせに文句を言うな」「沖縄は基地で生活している」。事実を正しく把握しないまま、学校側をののしるものもあるという。
「中傷電話が『無知と偏見』によるものであるのは明らかだ。日々の騒音や墜落への恐怖に加え、心ない日本国民から『二次被害』まで受ける。あまりに理不尽な仕打ちではないか。」
「今回だけではない。オスプレイの配備撤回を求めて沖縄の全市町村長らが東京・銀座をデモ行進したとき、『売国奴』との罵声が飛んだ。ヘリパッド建設工事に抗議する住民を、大阪府警の機動隊員は『土人』とさげすんだ。沖縄差別というべき振る舞いが後を絶たない。」
「嘆かわしいのは、本土の政治家らの認識と対応である。防衛政務官が沖縄の基地負担は重くない旨のうその数字を流す(13年)。自民党若手議員の会合で、普天間飛行場の成立過程について間違った発言がまかり通る(15年)。沖縄担当相が土人発言を批判せず、あいまいな態度をとる(16年)――。
誹謗中傷を許さず、正しい情報を発信して偏見の除去に努めるのは、政治を担う者、とりわけ政府・与党の重い責任である。肝に銘じてもらいたい。」
まったく同感。「無知と偏見」に凝り固まった「政府・与党の走狗」たちの迷妄を啓くことは、容易ならざる難事なのだ。
ところで、本日の毎日の記事は社会的背景を考えさせる4名のコメントを付している。
まず、翁長知事。
「翁長雄志知事は21日、『目の前で落ちたものまで「自作自演」だと来る。それ自体が今までにない社会現象だ』と語った。」
次いで、沖縄現地の政治学者。
「中傷の背景に何があるのか。沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)は『基地集中を中国の脅威で正当化する誤った正義感がある。一度デマが広がると、事実を提示しても届かない』と話す。」
そして江川昭子さん。
「ジャーナリストの江川紹子氏も『政権に一体感を覚える人には、飛行反対は現政権にたてつく行為と映るのだろう』と指摘する。」
最後が、安田浩一さん。
「2013年、東京・銀座でのオスプレイ反対デモは『非国民』との罵声を浴び、昨年には沖縄県東村でヘリパッド移設に反対する住民に大阪府警の機動隊員が『土人』と言い放った。差別問題に詳しいジャーナリストの安田浩一氏は「沖縄が悪質なデマ、『沖縄ヘイト』の標的になっている。それを日本社会全体の問題として議論すべきだ」と語った。」
全員が、社会現象として「沖縄差別」を論じている。「無知と偏見」の輩が、現政権に煽られ、現政権にたてつく者に対する攻撃を行っているのだ。「無知と偏見」の輩には確信がある。安倍政権と米軍に味方する自分こそが、この社会の多数派で、政権と米軍に楯突く不届き者を懲らしめてもよいのだ、という確信。強者にへつらうイジメの心理である。そのイジメの心理の蔓延が、社会現象としての「沖縄差別」を形成している。
この沖縄差別に象徴される今の社会が安倍晋三を政権に押し出し、また政権に就いた安倍が差別を助長し利用している。DHCテレビが制作し、DHCが提供のテレビ番組「ニュース女子」も在日差別と沖縄差別に充ち満ちたフェイク番組だった。これも、在日や沖縄を攻撃しても安全という、イジメの構造が生み出したものだ。
沖縄差別は、安倍政権と同じく、日本社会の病理が生み出したものだ。あらゆる差別とともに、安倍政権も一掃しなければならない。イジメは加害者と被害者だけで成立するのではない。これを見て見ぬふりをする多くの傍観者の存在が不可欠なのだ。本土の私たちが、そのような消極的加害者であってはならない。「沖縄差別NO!」の大きな声をあげよう。そして、「安倍政権NO!」の声も。
(2017年12月25日)