澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

嘘で掠めとった東京五輪招致

私は、40年を超す弁護士生活の相当の時間と労力とを悪徳商法との対決に費やしてきた。その結果として学んだことは、どんな悪徳商法も一見悪徳とは見えないことだ。一見しての悪徳では人をだませない。外見において詐欺師面をした人に詐欺はできない。もちろん、強面ではなおさらできない。いかにも紳士的で、いかにも誠実そうで、いかにもあなたの利益のために尽くしますよという、人を信頼させる雰囲気がある人物において、初めて詐欺も悪徳商法も可能となる。

そのような目で見ると、安倍晋三という人物、その分野における資質には天性のものがある。たいしたものだ。その堂々たる嘘。みごとに、IOC委員を欺しおえた。その分野の人々が、大いに学ぶところが多かろう。

彼はこう述べた。(朝日デジタル版より)
【招致演説で】
状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えるようなことを許したりはしない。
【国際オリンピック委員会(IOC)委員の質問に対し】
結論から言うと、まったく問題ない。(ニュースの)ヘッドラインではなく事実をみてほしい。汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0・3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている。
福島の近海で、私たちはモニタリングを行っている。その結果、数値は最大でも世界保健機関(WHO)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ。これが事実だ。そして、我が国の食品や水の安全基準は、世界で最も厳しい。食品や水からの被曝(ひばく)量は、日本のどの地域でも、この基準の100分の1だ。
健康問題については、今までも現在も将来も、まったく問題ない。完全に問題のないものにするために、抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している。
【演説後、記者団に】
一部には誤解があったと思うが、誤解は解けた。世界で最も安全な都市だと理解をいただいたと思う。

「状況はコントロールされている?」 
えっ? ご冗談でしょう。廃炉の工程も目途立たず、汚染水漏れがたいへんな事態だというのに? 自信ありげにこんなことをいえるのは、分かってない故の強みか、天性のふてぶてしさか。
「決して東京にダメージを与えるようなことを許したりはしない」
これは、フクシマにダメージを閉じ込めて、東京だけは守ろうという、やや本音の表れか。
「汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている。」
ほんとにこんなこと言っていいの? 港湾内の0.3平方キロメートル範囲って、どこのこと? 東電は、外海と完全にブロックされた状態ではなく、水が行き来していると説明しているのに? 20キロ先で捕れたアイナメからも2万5800ベクレルが検出されているのに? 一国の首相の嘘として歴史に残るんだろうね。

本日(10日)の朝刊では、「湾内のフェンス内の海水からベータ線を出すストロンチウムなどの放射線物質が1リットル当たり1100ベクレル、トリチウムが同4700ベクレル検出された」と報じられている。
東電は、「フェンス外の濃度は内側にくらべて5分の1まで抑えられている」と言うけれど、それは海水が内と外で1日50%入れ替わって、外へ出た汚染水が海水で薄まっているというだけのこと。完全にコントロールされて、完全にブロックされて、「私」の責任で解決に着手したはずなのに…。

東電自身が、完全にブロックできているとは考えていない。「私どもとして(首相の)お考えが同じかどうか確認」の問い合わせをしたと述べている。「完全にブロックしたいのはやまやまだけど、できないんです。完全ブロックができない責任は、大見得を切った安倍さん、あなたの方で取ってくださいね」。そう、東電は言いたいのだ。

私が引っかかるのは、「完全に問題のないものにするために、抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している」という、 「私が責任をもつ」という言葉。これも悪徳商法の手口の一つ。そもそも、責任をとりようのないことについて、ケロリと「責任をもつ」「保証する」と言ってのける。客観的に嘘をついていることになる。

安倍さん、あなたには放射線漏れの防止策について責任をとりようがない。あなたができるのはせいぜいが「知恵を集め、金を注ぎこんで全力を尽くす」ことだけ。今の日本の叡智を集めても、福島第一原発の後始末をうまくできるかどうかは、誰にも分からないのだ。

「うまくいかなかったら潔く辞任する」という責任のとりかたは、「あとは野となれ、山となれ」と言っているに等しい。あなたには、6年前いとも簡単に政権を投げ出した実績がある。同じことを繰り返すおそれが多分にあるが、それで責任を取ったことにはならない。

嘘は人を不幸にする。一国の首相の嘘は、その国の国民の信用を落とすことになる。とりわけ、トルコとスペインの国民には、日本国民全体がオリンピック招致を掠めとった嘘つきの一味と映ることになるだろう。悪徳商法の被害者は、誠実そうなセールスマンを信用したことをあとになって後悔する。世界も日本の国民も、あとになって、「アベノダマシ」に臍を噛むことになる。
(2013年9月10日)

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Published in 火曜日, 9月 10th, 2013, at 22:30, and filed under 未分類.

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