澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

香港・加油(香港の市民よ、がんばれ)!!

10年ほども前のある土曜日の午後のこと。NHKラジオからこんな言葉が、耳にはいってきた。

「今日の番組では、折り込み都々逸を募集しています。季節にちなんで、『クチナシ』を折り込んでください。」「さっそくこんな句が届きました。なるほど。これは面白い。」

 くちじゃ勝てない
 ちからも負ける
 なれてしたしむ
 しりのした

これを思い出したのは、香港の抗議デモで、「逃亡条例案」完全撤回のニュースを聞いたから。少数民族は別として、中国の人びとの大方は、習近平の尻の下に「慣れて親しんでいる」ように見えるのだ。おそらくは、改革開放以来の経済生活の向が評価されてのことなのだろう。目の眩むような経済格差の存在にもかかわらず、中国の人びとの経済的な不満感は少ないように見える。それゆえにか、多くの人々は、習近平の尻の下で、パンのみにて生きることに甘んじているごとくである。

ところが、香港の人びとは、中国共産党の尻の下に慣れて親しむことを敢然と拒否しているのだ。ここで求められているものは、パンではなく、自由であり、民主主義である。切実な自律の制度への要求でもある。今ごろ、「逃亡条例案」完全撤回だけでは不十分だ。まだ、4項目の要求が残っている。到底、尻の下に温々とはしていられない。

韓国のキャンドルデモは、最大時170万人の民衆を光化門広場に集めたという。もちろん、家族連れのデモ。到底広場に収まる人数ではなく、ソウルのメインストリートが民衆に埋めつくされた。その壮観は、次の選挙によって朴槿恵政権を打倒し、政権交代が代わるというシグナルでもあった。だから、不必要にデモが先鋭化する必要はなかった。ソウルのデモは選挙の前哨戦であった。

しかし、香港は韓国とも大きく事情を異にする。香港には、「次の選挙」がない。この抗議デモの圧倒的民意を政治に反映するルートが欠けているのだ。この大規模なデモは、普通選挙を勝ち取るにふさわしく、それなくして終熄しがたい。誰から普通選挙を勝ち取る? 言うまでもなく、大国となった中国政府から。今、750万人の香港の民衆が、13億の人口を抱える中国政府と対峙しているのだ。到底、中国の尻の下では、安閑と生きられない。

なお、5項目要求は必ずしも統一した文言ではないようだが、たとえば、次のとおり。
1. 徹底撤回逃犯條例
  (逃亡犯条例改正案の完全撤回)
2. 撤回612暴動定性
  (市民活動を「暴動」とする6月12日見解の撤回)
3. 必不追究反送中抗爭者
  (デモ参加者の逮捕、起訴の中止)
4. 成立獨立委員會,徹査警方濫權濫暴及元朗暴力事件
  (警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査実施)
5. 要求特首林鄭月娥下台全面落實雙真普選
  (林鄭月娥長官の辞任と民主的選挙の実現)

下記のように、簡潔に6字でまとめたスローガンもある。正確には読めないが、事情を理解した上で漢字を読めば、なんとなく分かりそうな気がする。

香港人的五大訴求
1.撤回送中悪法
2.撤消暴動定性
3.制止秋后算帳
4.徹査警方暴力
5.落実双真普選

大雑把に言えば、悪法を撤回し、デモ弾圧の被害者を解放し、弾圧の責任を認め、長官を辞めさせて、本当の民主的な選挙制度を作ろう」という要求なのだ。今や、主たるスローガンとなった「真普選(本物の民主的な選挙制度)」を作ろうというのが、雨傘運動以来の一貫した要求。あまりにも当然の要求ではないか。

翻って日本の民主主義の実情を顧みる。香港と違って民主主義の形はある。しかし、韓国のごとくこれを生かしきってはいない。むしろ、安倍政権の尻の下に、ぬくぬくとしていると指摘されてもやむえないこの体たらく。

香港の市民に成り代わっての心意気を詠む。

 くちじゃ負けない
 ちえなら勝てる
 なにせごめんだ
 しりのした

 くるしい日々だが
 ちは沸き返る
 ないて笑って
 しんじる明日

(2019年9月6日)

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