統一教会の「三位一体」と、反共・改憲・家庭の政治理念。
(2022年8月21日)
統一教会とは、宗教団体でもあり、政治団体でもあり、反社会的な財産収奪組織でもある。この各側面が三位一体化した存在なのだが、その中心は飽くまで宗教団体性にあると言ってよい。
この宗教団体が宗教法人として認証を受けるに際して作成した「規則」(会社の定款に相当)には、その目的がこう書かれている。
規則第3条(目的)「この法人は、天宙の創造神を主神として、聖書原理解説の教義をひろめ、儀式行事を行い、信者を強化育成する為の財務及び業務並びに事業を行う事を目的とする。」
「天宙」も、「創造神」「主神」「聖書原理」も外部の者にはさっぱり理解不能であるが、「何らかの宗教教義」を広める目的を有していることは分かる。そして、その説くところが「宗教」であることに間違いはなかろう。
マニュアル化されたシステムを活用して信者を獲得するところがこの組織の活動における始動点である。だから、この信者獲得のための勧誘活動を違法であるとする民事訴訟と判決が決定的に重要なのだ。けっして宗教活動の自由は万能ではない。
教団は、入信させた信者の人格を支配して、多額の献金をさせ布教活動に参加させるだけでない。霊感商法や献金勧誘活動に稼働させて他者から教団への財産収奪の手駒とする。こうして、莫大な経済的利益を上げて財政基盤を築く。この人的・財政的基盤あればこそ、政治的な活動が可能となり、政党活動に影響を及ぼす力量をもつのだ。
この宗教が特異なのは、「反共」という政治理念・政治行動と密接に結びついていることである。この教会の教祖が、岸信介や笹川良一などの右翼と語らって勝共連合を結成した。今でも、教会の幹部が勝共連合の幹部を兼ねている。そして、注目すべきは、「反共」とならぶもう一つの政治スローガンが、「家庭」であることだ。これは、反ジェンダー、反フェミニズム、反個人主義を意味する。自民党保守派ないしは右翼政治家と相性が良すぎて、切っても切れない関係にあるわけだ。
勝共連合のホームページを覗いてみると、「反共」「改憲」「家族」というスローガンが躍っている。たとえば、次のように。
《国際勝共連合の50年の歩みは、内外の共産主義との熾烈な思想戦そのものです。国際勝共連合の提唱者・文鮮明総裁は、常々「共産主義は間違っている」「世界から共産主義者が1人もいなくなるまで勝共の旗を降ろさない」と語ってこられました。国際共産主義(ソ連中心)に勝利宣言をした当連合ですが、なお残存する共産国(中国や北朝鮮など)の解放に向けた言論活動、そして国内おける日本共産党等の共産主義勢力、及び、文化共産主義(家族など伝統基盤破壊)との更なる闘いを継続しています。》
《日本共産党は資本主義を根底から否定します
彼らの綱領には、「社会主義・共産主義の社会」を目指すと書かれています。これは資本主義を根底から否定するもので、憲法29条に反しています。彼らの目的は憲法を改正しなければ絶対に果たせません。「憲法守れ」というのは偽りです。》
《そして何より、彼らは「国家権力そのものが不必要になる社会」を目指しています。つまり、日本という「国家」の存在そのものを否定しているのです。日本共産党は、日本を倒すことを究極的な目的とする政党なのです。》
《憲法改正をあきらめてはいけない!
『勝共UNITEと憲法改正?若者たちによる改憲運動?》
とりわけ、留意すべきは、統一教会ホームページの次の姿勢。
《今までの宗教は、個人圏を目標としたのであって、家庭圏を目標とした宗教はありませんでした。いかなる宗教も個人救援を唱えていたのであって、そこには家庭救援や氏族救援、また国家救援という言葉はありませんでした。私たち統一教会は、家庭を中心として国家救援、世界救援を主張しているのです。》
《さあ、『世界平和統一家庭連合』と、一度言ってみてください。その中心は何かというと、家庭です》
安倍晋三の目から統一教会の政治的側面を眺めれば、「カルト的情熱に支えられた反共・改憲」集団以外のなにものでもない。支援団体としてこの上なくありがたい存在。そして、個人ではなく家族の強調は、安倍と安倍を取り巻く復古主義的右翼の主張そのものである。これが、ジェンダー平等を妨げ、選択的夫婦別姓の実現を阻止し、LGBTに非寛容の潮流を形作っている。正確な規模は分からぬまでも、この反社会的勢力が安倍ないし安倍的なものへの力強い支援勢力なのだ。