澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

判決が認定した「DHCに対する行政指導の数々」ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第59弾

DHC・吉田嘉明が私のブログ記事を名誉毀損として、6000万円の慰謝料支払いや謝罪文などを求めているのが「DHCスラップ訴訟」。本年9月2日に東京地裁民事第24部(阪本勝裁判長)で一審判決の言い渡しがあって、被告の私が全面勝訴した。全面敗訴となったDHC・吉田は、一審判決を不服として控訴し、事件は東京高裁第2民事部(柴田寛之裁判長)に係属している。

控訴人側の控訴理由も、被控訴人側の控訴答弁書も裁判所に提出済みで、おそらくは12月24日の第1回口頭弁論で即日結審となり、控訴審判決の言い渡し日が指定されることになるだろう。

控訴人らに、原審での主張の蒸し返し以上の新しい主張はない。目新しいことと言えば、同種訴訟での判決書1通と和解調書1通が書証として提出されたこと。本日のブログではその判決書(被告は、かなりの販売部数を持つ業界紙の発行会社)を紹介したい。

控訴人(DHC・吉田)の証拠説明書によると、この判決を証拠として提出した立証趣旨は、「控訴人吉田による8億円の貸付に関連する記事について,控訴人らに対する名誉毀損を肯定して損害賠償請求や削除請求が認容された事実等」となっている。この立証趣旨の記載だけをみると、別件とは言え「関連事件でそんな判決もあったのか」と一瞬幻惑されざるを得ない。しかし、内容を読んでみると何のことはない。「控訴人吉田による8億円の貸付に関連する記事について」は、DHC・吉田側の完敗判決である。むしろ、よくもまあこんな自分に不利な事実認定の判決をどうして提出してきたのだろうかと、首を捻らざるを得ない。

しかし、せっかくDHC・吉田自らが、自主的に私との訴訟で提出した判決書である。その内容を多くの人に知っていただくことが公共の利益に資することになるものと考え、被告に迷惑のかからない配慮をしつつ、なるべく正確にご紹介したい。

以下は裁判所が証拠によって認定した事実である。けっして、被告の主張ではない。私の感想を交えずに、判決書の記載を20頁から23頁まで、そのまま引用する。なお、原告会社とは、DHCのことである。

エ 原告会社に対する行政指導等
(ア)群馬県は,原告会社から製造委託を受けたコスメイトリックスラボラトリーズ株式会社が製造した清涼飲料「アロエベラ」を購入した消費者から腐敗臭がする等の苦情が寄せられたため,平成13年4月に同社工場を立ち入り調査したところ,食品衛生法の定める殺菌処理を実施していない等の製造管理上の問題が判明したことから,原告会社に対し,自主回収と製造自粛を指導した(甲14,乙2)。なお,原告会社は,当該商品を製造していなくとも,企画・開発に携わった「表示製造業者」として責任を負うべき地位にあった。

(イ)原告会社は,通信販売をしていた「アスタキサンチン」を利用した健康食品に未承認添加物が混入していた疑いが強まったことから,平成14年4月1日までに,販売した製品を自主回収して購入者に返金することを決定し,管轄する保健所に事実関係を報告した(甲15,乙3)。なお,同製品の原料調達には複数のサプライヤーが関与していた。

(ウ)厚生労働省は,平成15年5月30日,原告会社が販売していた健康食品「メリロート」の摂取が原因と見られる健康被害例を発表したが,原告会社がその後の消費者からの問い合わせに「調査中」などとして,自社製品であることを認めない説明をしている疑いがあったため,同年6月10日,原告会社に対し,メリロートが自社の製品であることを消費者に伝えるよう指導した(乙4)。それにもかかわらず,原告会社の対応が不十分であったことから,厚生労働省は,同年10月にも原告会社に対し,メリロートが原因と見られる健康被害事例に対する消費者からの問い合わせに自社製品であることを伝えるよう指導した(乙5)。
厚生労働省は,原告会社が上記指導に対して十分な改善を行わなかったことから,同月31日,ホームページに掲載している「いわゆる健康食品による健康被害事例」に「販売者」の欄を追加し,それまでに寄せられた健康被害事例のうちブルーベリーエキスの製造者及びメリロートの製品販売者が原告会社であることを公表し,消費者等に告知した(乙7)。
独立行政法人国民生活センターは,平成16年6月17日頃,メリロートを含む健康食品について有効成分や表示などを調査した結果として,原告会社の製品を含め,医薬品の基準を超えるメリロートを含有しているものがあったこと,表示に景品表示法や薬事法に違反する疑いがあるものが見られたことを公表し,消費者に対して注意喚起するとともに,販売会社に改善を要請した(乙1O)。
これに対し,原告会社は,同月,メリロートに含まれる有効成分「クマリン」の含有量は,ドイツ保健省の中にある医薬品と医療器具の安全性と効果を評価する専門機関が規定する基準の範囲内であり,薬事法,食品衛生法その他関連法規の観点でも問題はなく,上記機関の定める基準に沿った安全性の高いサプリメントであるから,販売を継続する旨表明した(甲17)。なお,当時,日本の健康食品において,クマリンの配合量に関する規制はなかった(甲17,乙10)。
もっとも,原告は,メリロートの摂取目安量の変更やパッケージ変更を行い(甲16),その後は厚生労働省から指導を受けていない。

(エ)厚生労働省は,平成15年10月,原告会社が発行する会報誌に掲載している健康食品の広告において,厚生労働省が許可する特定保健用食品だけに許される「コレステロールが気になる方に」「血圧が気になる方に」「血糖値が気になる方に」「体脂肪が気になる方に」などの表示を,許可を得ないまま行っていたことにつき原告会社を指導した(乙5,6)。

(オ)厚生労働省は,平成16年3月25日,コエンザイムQ10が承認なしで化粧品に使用することができない「医療品成分」に該当すると判断し,これを受けた各都道府県は,厚生労働省が化粧品にコエンザイムQ10を使用することを許可した「承認前例」が確認できない場合,同成分配合の化粧品の製造・輸入を自粛するよう化粧品メーカーに要請した。原告会社は,同要請後もコエンザイムQ10を配合する化粧品の製造を継続していたため,神奈川県は,原告会社の横浜工場に同成分配合の化粧品の製造等の自粛を指導したところ,原告会社は,同年4月23日以降は製造していないと回答した。原告会社は,同年5月,コエンザイムQ10を配合した化粧品の販売を休止したとホームベージ上で告知した(乙8,9)。
その後,原告会社は,安全性データを厚生労働省に提出して上記化粧品の販売を再開したが,その後は東京都や厚生労働省から指導を受けていない(甲18)。

(カ)厚生労働省は,承認なく化粧品へ配合することを禁じられている「医薬品成分」に該当すると判断したコエンザイムQ10を配合した化粧品を,平成16年4月に原告会社がテレビ等で公開したことを問題視し,同年5月に東京都に調査を依頼したところ,原告会社が発行する会報誌に薬事法に抵触する記載(効能効果等の広告)が残っているとして,これを改めるよう原告会社を指導した(乙9)。東京都は,その後も原告会社が薬事法違反の広告を行っているとして,同年9月28日までに,原告会社に対し,薬事法違反(無承認無許可医薬品の広告等)の指導を行った(乙12)。

(キ)厚生労働省は,平成18年7月28日,原告会社が通信販売する清涼飲料水について,WHO等が設ける基準値の7倍を超えるベンゼンが検出されたとして,原告会社に対し,製品の自主回収を要請した(乙13)。なお,日本では食品中のベンゼンに関する基準値は定められておらず,水道法上の基準値を超えた製品を一定量飲んだとしても健康に大きな影響はないが,厚生労働省は念のため自主回収を要請したものであり,原告会社は同要請に応じて商品の回収及び製造の休止を行った(甲19,20,21,乙13)。

(ク)厚生労働省は,平成19年4月13日付けで各都道府県に発出した事務連絡の中で,原告会社を含む健康食品販売会社10社に対し,効能効果を暗示させる健康食品名の改善を要請した(乙14)。なお,同要請に対しては,規制の基準が見えにくいとの批判もあった(甲22,23)。

(ケ)公正取引委員会は,平成21年2月3日,「シャンピニオンエキス」と称する成分を使用して口臭,体臭及び便臭を消す効果を標ぼうする商品の製造販売業者(原告会社を含む。)に対し調査を行ったところ,これらの業者が販売する上記商品に係る表示が景品表示法4条2項の規定により,同条1項1号の「優良誤認」に該当するとみなされ,同号の規定に違反する事実が認められたとして排除命令を行った(乙15)。

(コ)経済産業省中部経済産業局は,平成24年8月,原告会社が同局の委託による消費者が利用する機能性食品会社に関する調査結果を承諾なく新聞広告に掲載したことにつき,原告会社に抗議を申し入れた(乙16)。

私は、2014年4月2日のブログで、「『DHC8億円事件』大旦那と幇間 蜜月と破綻」と題して、機能性表示食品制度導入に反対の意見を書いた。その記事のなかで、次のように述べたことが、DHCと吉田嘉明の名誉を毀損したとされた。

「サプリの業界としては、サプリの効能表示の自由化で売上げを伸ばしたい。もっともっと儲けたい。規制緩和の本場アメリカでは、企業の判断次第で効能を唱って宣伝ができるようになった。当局(FDA)の審査は不要、届出だけでよい。その結果が3兆円の市場の形成。吉田は、日本でもこれを実現したくてしょうがないのだ。それこそが、「官僚と闘う」の本音であり実態なのだ。渡辺のような、金に汚い政治家なら、使い勝手良く使いっ走りをしてくれそう。そこで、闇に隠れた背後で、みんなの党を引き回していたというわけだ。
大衆消費社会においては、民衆の欲望すらが資本の誘導によって喚起され形成される。スポンサーの側は、広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい。薄汚い政治家が、スポンサーから金をもらってその見返りに、スポンサーの儲けの舞台を整える。それが規制緩和の正体ではないか。「抵抗勢力」を排して、財界と政治家が、旦那と幇間の二人三脚で持ちつ持たれつの醜い連携。これが、おそらくは氷山の一角なのだ。」

前掲判決の事実認定をみれば、「スポンサーの側は、広告で消費者を踊らせ、無用な、あるいは安全性の点検不十分なサプリメントを買わせて儲けたい。薄汚い政治家が、スポンサーから金をもらってその見返りに、スポンサーの儲けの舞台を整える。それが規制緩和の正体ではないか。」という私の見解は図星ではないか。

もっとも、前掲の判決は、DHC・吉田の全面敗訴ではない。1%だけ勝っている。1億円の請求に対して100万円だけを認容している。訴訟費用は、100分の99が原告らの負担とされている。一部ウエブサイトの記事削除を命じられたが、謝罪文の請求は全面棄却である。

原告らが勝訴した1%分は、「吉田・渡辺間の政治資金8億円授受事件」に関わるところではない。被告が業界紙の掲載した、「(DHCは)人のものを真似るのが得意。だから訴訟も多い」との記述にまつわるところなのだ。およそ、私の事件となんの関わりもない。これも、公共の利益に資するものとして、判決書き中の裁判所の事実認定を引用しておく。

「オ 原告らを当事者とする訴訟等
(ァ)原告会社は,平成17年1月,解雇した従業員のうち,解雇無効を争ってネットワークユニオンに加入した4名が開設したホームページ上の記載等が名誉毀損に該当するとして提訴したが,原告会社が上記元従業員らに対し,1名当たり200万円から700万円の和解金を支払う内容の和解が成立した(乙19)。
(イ)原告吉田は,東京地方裁判所に対し,東京国税局の違法な税務調査により精神的苦痛を受けたとして,国を被告として約1億4000万円の支払を求める訴訟を提起した。同訴訟においては,平成17年7月14日,原告吉田の請求を棄却するとの判決が言い渡され,同判決は確定した。なお,同判決では,税務調査の際,原告吉田が「高額納税者であることを知っているのか。」「挨拶にも会わない。その辺の会社とは違う。」などと述べて,税務調査に協力できない旨の回答をしたとの事実が認定されている(乙18,22)
(ウ)株式会社ファンケルは,平成22年7月13日,東京地方裁判所に対し,原告会社を被告とし,原告会社が販売する製品がファンケルの特許権を侵害していると主張して,同製品の製造販売の差止め及び損害賠償を求める訴訟を提起した(乙20)。東京地方裁判所は,平成24年5月,原告会社に対して1億6500万円の支払を命じる判決を言い渡したが,原告会社はこれを不服として控訴したところ,知的財産高等裁判所において,原告会社は特許権侵害の事実を認めず,金銭の支払もしない内容で和解が成立した(甲25)。

以上の事実認定にもとづいて同判決は、「ファンケルから提起された特許権侵害に基づく損害賠償請求訴訟においては,控訴審において原告会社が特許権侵害を認めず,金銭も支払わないとの内容の和解が成立しており,同和解の内容からは原告会社がファンケルの商品を模倣していないと推認される。そして,他に原告らが人のものを真似したとの理由で訴訟を提起されたと認めるに足りる証拠はない」として、「原告らが人のものを真似することが原因で多数の訴訟が提起されているとの摘示事実が真実であるとは認められない。」と結論した。

DHC吉田はこの訴訟で、4本の記事における13個所の記述が、名誉毀損や侮辱に当たると主張した。その内の1個所だけがヒットして、1%の勝訴を得たことになった。しかし、「8億円政治資金授受事件」に直接関わる記述では、全部原告敗訴の完敗なのだ。もちろん、私の事件への影響などはあり得ない。

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   DHCスラップ訴訟12月24日控訴審口頭弁論期日スケジュール
DHC・吉田嘉明が私を訴え、6000万円の慰謝料支払いを求めている「DHCスラップ訴訟」。本年9月2日一審判決の言い渡しがあって、被告の私が勝訴し原告のDHC吉田は全面敗訴となりました。しかし、DHC吉田は一審判決を不服として控訴し、事件は東京高裁第2民事部(柴田寛之総括裁判官)に係属しています。

その第1回口頭弁論期日は、
 クリスマスイブの12月24日(木)午後2時から。
 法廷は、東京高裁庁舎8階の822号法廷。
ぜひ傍聴にお越しください。被控訴人(私)側の弁護団は、現在136名。弁護団長か被控訴人本人の私が、意見陳述(控訴答弁書の要旨の陳述)を行います。

また、恒例になっている閉廷後の報告集会は、
 午後3時から
 東京弁護士会502号会議室(弁護士会館5階)A・Bで。
せっかくのクリスマスイブ。ゆったりと、楽しく報告集会をもちましょう。
 表現の自由を大切に思う方ならどなたでもご参加ください。歓迎いたします。
(2015年12月19日・連続第993回)

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