澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

今年は平穏無事だー2017年東京弁護士会役員選挙事情

早春、梅の咲くころは弁護士会選挙の季節。今年も、最大単位会東京弁護士会(会員数約8000名)の選挙公報が届いた。会長立候補者は1名のみ。副会長は、定員6名に立候補者6名。

常議員定数が80のところに、公報では立候補者数85名となっているが、実は5名が立候補を辞退したとのことで、結局は2月10日予定の選挙は全て無投票となった。今年は、日弁連会長選挙もない。例年、私が批判している「理念なき弁護士」群からの立候補もない。立候補してくれてこそ、弁護士や弁護士会のあり方についての議論が沸き起こることになる。だから、選挙がないというのはさびしいものだ。

それでも、選挙公報に目を通して見る。会長候補は渕上玲子氏(法曹親和会)。2月10日に無投票当選となる。私の認識の限りだが、東京弁護士会初の女性会長だろう。結構なことだ。

公報には、会務に取り組む基本姿勢欄に、「私は、市民と弁護士との双方向のアクセスを容易にし、市民の権利擁護に努めるとともに弁護士業務の基盤を拡充していきたいと考えています」とある。弁護士会内での、常識的な感覚と言えよう。

以上の基本姿勢を踏まえて、選挙公約は、「市民や企業のために弁護士会が取り組むべきこと」「弁護士のために弁護士会が取り組むべきこと」を掲げ、その次に、「基本的人権を擁護し社会正義を実現するために弁護士会が取り組むべきこと」を連ねている。以下に、この弁護士の使命に関する項目についてだけ、公約を引用する。

☆安保法制と憲法改正問題に取り組む
 憲法前文および恒久平和主義に反し、憲法改正手続を経ずに実質的に憲法を改変しようとする安全保障関連法に対して、引き続き廃止を求めます。またPKO活動計画に「駆けつけ警護」を付与した閣議決定の撤回を求めるなど平和主義に反する法執行を行わせない取組も必要です。
 2016年参議院選挙の結果、両院ともに憲法改正に賛同する勢力が3分の2となった国会では、現実に憲法改正議論が始まりました。基本的人権の尊重や恒久平和主義という憲法の基本原則を否定するような憲法改正には反対します。

☆新たな刑事手続における冤罪・誤判の防止に取り組む
 2016年5月24日に成立した改正刑事訴訟法は段階的に施行されることになっており、2017年度は対応態勢を整える年になります。2018年5月までに拡大される全件被疑者国選弁護事件に確実に対応できるようにします。2019年6月までに施行される取り調べの可視化は、すでに検察庁が事実上可視化の対象事件を拡大したことで、今も件数は増加しており、研修を強化し、弁護人が十分な弁護活動を行えるように支援します。拡大した通信傍受、新たな司法取引制度などについては、監視を強化し、研修を重ねて有効な冤罪・誤判防止策を講じます。

☆人権諸課題に取り組む
 東弁の各委員会が取り組む人権課題は、消費者、高齢者・障がい者、子ども、女性、外国人、犯罪被害者、LGBTなど多岐にわたります。外国人に対するヘイトスピーチ問題、高齢者を被害者とする消費者被害の深刻化、DV・ストーカー、児童虐待による悲惨な被害など問題は山積しています。これらの人権課題に積極的に取り組むことは弁護士会の責務です。委員会活動に対するなお一層の支援を行います。
 成人年齢を引き下げる少年法改正の動きには、強<反対します。現行少年法の手続と処遇は、可塑性に富む18、19歳の少年が更生し、社会に適応して自立していくために有効であり、再犯防止に繋がるものです。
 東日本大震災の被災者や福島第一原発事故被害者は今も多くの人々が避難生活を余儀なくされています。甚大な被害を受けた地域の復興と、原発事故による賠償が不十分な被害者のために、東弁は引き続き支援していきます。東日本大震災を忘れないこと、そして東京で必ず起こる首都直下型地震に備えていくことが弁護士会の社会に対する責任と考えます。

☆男女共同参画のさらなる伸展を図る
 2016年に策定された東弁の第二次男女共同参画基本計画の推進に全力を傾けます。会員それぞれが個性と能力を発揮できる弁護士会の実現を目指します。
 弁護士会の意思決定過程に女性弁護士が参加することのメリットをもっとアピールし、参加への意欲と理解を高めることが私自身に課せられた使命と考えています。女性弁護士や育児期間中の会員が研修や会務活動に参加しやすいように、テレビ電話会議システムなどの情報通信技術を積極的に活用し、参加のための援助制度をさらに工夫していきます。

☆弁護士の不祥事防止策を強化する(略)

喫緊の課題である「共謀罪」についてコメントないのがやや残念だが、全体としてその意気や良し、というべきだろう。会内に向けてというだけでなく、多くの市民に対する公約ともなっている。

解釈改憲にも明文改憲にも反対。安全保障関連法の廃止を求める。「駆けつけ警護」の撤回を求める、などは弁護士多数派の意見として定着しているのだ。

副会長に無投票当選となるのは、下記の6人。
磯谷文明(期成会)、遠藤常二郎(法曹親和会)、平沢郁子(法友会)、松山憲秀(法友会)、露木琢磨(法曹親和会)、榊原一久(法友会)。

6人全ての公約に、「憲法改正反対」、あるいは「立憲主義・平和主義の堅持」「憲法問題への取り組み」が掲げられている。また、人権課題への積極的な取り組みが唱われてもいる。これが、会員弁護士が執行部に望む声だからである。

なお、選挙公報を一読しての感想。会長・副会長・監事の各候補者合計して、9名が、公報に、経歴を載せ、公約を述べている。その記事の西暦表記派が8名、元号派が一人である。この副会長候補者も、「人権と憲法理念」という一項を起こして、「恒久平和主義等に関する日本国憲法が有する基本的価値観が揺らいでいます。当会としては、現行憲法の有する普遍的価値の維持のため、積極的な活動を行っていく必要があると考えます」として、特定秘密保護法や、集団的自衛権問題に触れている。元号派必ずしも保守反動ではないのだが、不便な元号使用にこだわっているのは、頑固な思想のゆえかと勘ぐられる時代になりつつあるのではないだろうか。

こんなことを心穏やかに書いていることができるのだから、今年は平穏である。国内外の政治が穏やかでなくなったのに比較して、弁護士会は立憲主義と人権・民主主義尊重の姿勢に揺るぎがない。もちろん、弁護士会を理想化するつもりはないが、国政よりはずっとマシだ。国政が弁護士会程度になれば、どんなにか居心地の良い社会になるだろうに、と思う。

しかし、来年のことは分からない。去年と一昨年のことについては、関連ブログのURLを掲載しておこう。

弁護士会選挙に臨む三者の三様ー将来の弁護士は頼むに足りるか(2015年2月2日)
http://article9.jp/wordpress/?p=4313

東京弁護士会役員選挙結果紹介-理念なき弁護士群の跳梁(2015年2月15日)
http://article9.jp/wordpress/?p=4409

野暮じゃありませんか、日弁連の「べからず選挙」。(2016年1月29日)
http://article9.jp/wordpress/?p=6309

東京弁護士会副会長選挙における「理念なき立候補者」へ(2016年2月1日)
http://article9.jp/wordpress/?p=6329
(2017年2月7日)

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